29 / 85
ギルド
オスカーさんの失態
しおりを挟む
今日は最後のギルド講習日です。
これでギルド立ち上げの条件を満たすので、オスカーさんはギルト支部からギルド証を発行してもらい持ち帰ってくるはずです。
それは、ギルドの受付の後ろの壁に額に入れて掲示することが義務付けられています。
オスカーさんが渋面で嫌がったマスターの執務室には、やっぱり立派な額に入れたギルドマスター合格証を掲示するんだよ。
ビアンカさんといつものお掃除を終えたあと、ぼくたちは市場に買い物に行きました。
調味料を買い足して美味しいものを作って食べさせてあげたい! と息込んでいましたが、いつもの食材を買って終わりにしました。
だって、これから出費がどれぐらいかかるかわからないんだもん。
そんなに高い調味料ばかりじゃないけど、節約しないとね。
それに、ディーターさんは質より量が大切かもしれない。
何気にビアンカさんもよく食べるし。
今日はお肉を焼いてサラダとスープとパンの食事で済ませます。
ギルド立ち上げのお祝いは、明日受付のミアさんを招待してお昼に行う予定なのです。
ビアンカさんとレオのつまみ食いを阻止しながら、ご飯を作っているとオスカーさんたちが帰ってきました。
「おかえりなさい、オスカーさん?」
はて? なんでオスカーさんはがっくりと肩を落として帰ってきたんだろう?
まさか、ギルド証が発行してもらえなかったとか?
いやいや、でもディーターさんは苦笑しながらオスカーさんの背中をポンポン慰めるように叩いているし……何があったの?
ビアンカさんと顔を見合わして、とりあえず食事にすることにしました。
「実は……忘れていたんだ」
「何をですか?」
オスカーさんはしょんぼりしたまま焼いたお肉を切って口に運んで、お肉が美味しかったのか口の端を上げる。
「そのぅ……」
言いにくそうに口をもごもご。
「オスカーはギルド名を決めるのを忘れていたんだ」
「えっ!」
そういえば、ギルド名なんて聞いたこともなかったな……。
「いや、ギルド名の候補を出してもエッカルトたちが文句を言うから後回しにしていたら……忘れたんだ」
講習の後にギルド支部の職員に呼び出されて思い出したらしい。
「明日中に申請に行かなければ」
つまり、後回しにしていたら締切が明日になってしまったので、今すぐにギルド名を決めなければいけないってことですね?
「あー、あたしはパス。そういうの苦手で」
ビアンカさんが片手を軽く振って不参加を表明。
「……俺も不得意」
「そう言ってこちらに押し付けてきたんだよな、お前たちは」
オスカーさんがジロッと二人を睨む。
「それは、エッカルトたちがうるさそうだったし」
てへっと笑って誤魔化すビアンカさんに、ディーターさんは同意するように激しく首を振る。
「明日、ミアさんと一緒に決めたらどうですか?」
ギルド名って適当に付けるものじゃないですし。
厄介な案件を後回しにして、ひとまず食事を再開するオスカーさんたち。
でも、明日には決めなきゃいけないから、全員一個は候補を上げることにしましょうね! と提案するとみんなの顔色が悪くなった。
もう! 協力し合いましょうね!
ぼくの足元でレオが何かを訴えるように見つめている……たぶん。
「お代わりほしいの?」
お肉が足りなかったかな?
でも、レオは体全体をブルルッと横に震わせて否定する。
も、もしかしてレオもギルドメンバーの一員としてギルド名の案を出したいとか? ハハハ、いや、まさかそんな?
じーっとレオを見つめていた視線をスーッと逸らすぼくでした。
次の日。
みんなの朝ご飯を手早く準備したあとに、ミアさんを招待した食事の用意をします。
気合を入れるぞ! おーっ!
レオもぼくの足元で右手の触手を高く突き上げます。
「それでは、食材を用意して『異世界レシピ』スキルを使おう」
ミートボールのトマト煮以来のスキル活用だけど、今日はとびっきり美味しいものが作りたいのです!
「お祝いだから甘い物も作っておきたいよね。とっておきの卵もあるし」
卵を市場で買っておいたけど、すぐに悪くなるからその日に使わないといけない食材だ。
これはオスカーさんの収納に入れておいてもらったので大丈夫だけど。
同じ理由でミルクも買ったらすぐに使わないといけない。
「あー、早く裏庭に家畜小屋ができないかなぁ。そうしたら鶏と牛を飼って、毎日新鮮な卵とミルクが手に入るのに」
ぼくの要望にオスカーさんは少し呆れ顔だったけど、ちゃんと侯爵家に連絡して裏庭の整備をしてもらえることになった。
どっちにしろ庭の訓練場にも現状維持の魔法陣を仕込むので、お金はかかるらしい。
なので、魔法障壁や魔法陣の仕込みに比べたら薬草畑も畑も家畜小屋も些細な出費扱いとなった。
ついでに薬草や野菜の種、苗ももらえるし、鶏と牛、馬車と馬も融通してくれるらしい。
「……オスカーさんって侯爵家の皆さんに愛されているよね」
オスカーさんは庶子だからと遠慮がちだが、侯爵家の皆さんはオスカーさんのことをとっても大事にしている気がする。
「さて。野菜にお肉、調味料。小麦粉と卵とミルクを揃えて」
あとは『異世界レシピ』に念じるだけ。
「この食材でできる簡単なお祝いメニュー、甘い物付きで!」
バンッと両手を合わせて目を瞑って願うぼくの前に「シュン」とお馴染みの半透明の画面が出てきた。
<リクエスト>簡単なお祝いメニューとスイーツ 食材指定
これでギルド立ち上げの条件を満たすので、オスカーさんはギルト支部からギルド証を発行してもらい持ち帰ってくるはずです。
それは、ギルドの受付の後ろの壁に額に入れて掲示することが義務付けられています。
オスカーさんが渋面で嫌がったマスターの執務室には、やっぱり立派な額に入れたギルドマスター合格証を掲示するんだよ。
ビアンカさんといつものお掃除を終えたあと、ぼくたちは市場に買い物に行きました。
調味料を買い足して美味しいものを作って食べさせてあげたい! と息込んでいましたが、いつもの食材を買って終わりにしました。
だって、これから出費がどれぐらいかかるかわからないんだもん。
そんなに高い調味料ばかりじゃないけど、節約しないとね。
それに、ディーターさんは質より量が大切かもしれない。
何気にビアンカさんもよく食べるし。
今日はお肉を焼いてサラダとスープとパンの食事で済ませます。
ギルド立ち上げのお祝いは、明日受付のミアさんを招待してお昼に行う予定なのです。
ビアンカさんとレオのつまみ食いを阻止しながら、ご飯を作っているとオスカーさんたちが帰ってきました。
「おかえりなさい、オスカーさん?」
はて? なんでオスカーさんはがっくりと肩を落として帰ってきたんだろう?
まさか、ギルド証が発行してもらえなかったとか?
いやいや、でもディーターさんは苦笑しながらオスカーさんの背中をポンポン慰めるように叩いているし……何があったの?
ビアンカさんと顔を見合わして、とりあえず食事にすることにしました。
「実は……忘れていたんだ」
「何をですか?」
オスカーさんはしょんぼりしたまま焼いたお肉を切って口に運んで、お肉が美味しかったのか口の端を上げる。
「そのぅ……」
言いにくそうに口をもごもご。
「オスカーはギルド名を決めるのを忘れていたんだ」
「えっ!」
そういえば、ギルド名なんて聞いたこともなかったな……。
「いや、ギルド名の候補を出してもエッカルトたちが文句を言うから後回しにしていたら……忘れたんだ」
講習の後にギルド支部の職員に呼び出されて思い出したらしい。
「明日中に申請に行かなければ」
つまり、後回しにしていたら締切が明日になってしまったので、今すぐにギルド名を決めなければいけないってことですね?
「あー、あたしはパス。そういうの苦手で」
ビアンカさんが片手を軽く振って不参加を表明。
「……俺も不得意」
「そう言ってこちらに押し付けてきたんだよな、お前たちは」
オスカーさんがジロッと二人を睨む。
「それは、エッカルトたちがうるさそうだったし」
てへっと笑って誤魔化すビアンカさんに、ディーターさんは同意するように激しく首を振る。
「明日、ミアさんと一緒に決めたらどうですか?」
ギルド名って適当に付けるものじゃないですし。
厄介な案件を後回しにして、ひとまず食事を再開するオスカーさんたち。
でも、明日には決めなきゃいけないから、全員一個は候補を上げることにしましょうね! と提案するとみんなの顔色が悪くなった。
もう! 協力し合いましょうね!
ぼくの足元でレオが何かを訴えるように見つめている……たぶん。
「お代わりほしいの?」
お肉が足りなかったかな?
でも、レオは体全体をブルルッと横に震わせて否定する。
も、もしかしてレオもギルドメンバーの一員としてギルド名の案を出したいとか? ハハハ、いや、まさかそんな?
じーっとレオを見つめていた視線をスーッと逸らすぼくでした。
次の日。
みんなの朝ご飯を手早く準備したあとに、ミアさんを招待した食事の用意をします。
気合を入れるぞ! おーっ!
レオもぼくの足元で右手の触手を高く突き上げます。
「それでは、食材を用意して『異世界レシピ』スキルを使おう」
ミートボールのトマト煮以来のスキル活用だけど、今日はとびっきり美味しいものが作りたいのです!
「お祝いだから甘い物も作っておきたいよね。とっておきの卵もあるし」
卵を市場で買っておいたけど、すぐに悪くなるからその日に使わないといけない食材だ。
これはオスカーさんの収納に入れておいてもらったので大丈夫だけど。
同じ理由でミルクも買ったらすぐに使わないといけない。
「あー、早く裏庭に家畜小屋ができないかなぁ。そうしたら鶏と牛を飼って、毎日新鮮な卵とミルクが手に入るのに」
ぼくの要望にオスカーさんは少し呆れ顔だったけど、ちゃんと侯爵家に連絡して裏庭の整備をしてもらえることになった。
どっちにしろ庭の訓練場にも現状維持の魔法陣を仕込むので、お金はかかるらしい。
なので、魔法障壁や魔法陣の仕込みに比べたら薬草畑も畑も家畜小屋も些細な出費扱いとなった。
ついでに薬草や野菜の種、苗ももらえるし、鶏と牛、馬車と馬も融通してくれるらしい。
「……オスカーさんって侯爵家の皆さんに愛されているよね」
オスカーさんは庶子だからと遠慮がちだが、侯爵家の皆さんはオスカーさんのことをとっても大事にしている気がする。
「さて。野菜にお肉、調味料。小麦粉と卵とミルクを揃えて」
あとは『異世界レシピ』に念じるだけ。
「この食材でできる簡単なお祝いメニュー、甘い物付きで!」
バンッと両手を合わせて目を瞑って願うぼくの前に「シュン」とお馴染みの半透明の画面が出てきた。
<リクエスト>簡単なお祝いメニューとスイーツ 食材指定
26
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる