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初級ダンジョン 探索編
初めてのダンジョン
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ビュオオオオオオッ。
いや、本当は爽やかなそよ風がぼくの頬を撫でているんだけど、心情的には強風に煽られているのです。
なぜって?
今、ぼくはバルツァー公爵領地のダンジョンに来ています。
そう、オスカーさんがマスターを務める冒険者ギルド「白い輪」パーティーが挑戦する、初級ダンジョン「アインス・ゼーレ」に来てしまっています!
オスカーさんの幼馴染……いや、裏切り者たちがギルドに参加しなかったせいで攻撃力が乏しく前衛がオスカーさん一人という戦力に、いくら初級ダンジョンでもいささか心許なくなった皆さんが、よりによってぼくに「一緒に行こう」と誘ったせいでこうなってます。
いや、試しに魔法が使えるかどうかやってみようと言われたときに、断固として拒否すればよかったのに……つい好奇心でギルドハウスの地下魔法訓練場で初級水魔法の詠唱をしてしまった自分が悪いのかも……。
だって……魔法スキルがないのに魔法が使えるなんてラッキーと思って。
ぼくのスキルは『器用貧乏』という、いわゆるハズレスキル。
生活魔法がとっても器用に扱えるというスキルで、主に家事で大活躍するスキルなのだ。
お嫁さんに持っていてほしいスキルだけども、ぼくの将来の夢はお嫁さんじゃないし。
ただ、魔物に襲われて頭を強く打ったせいで記憶もなく、子供のぼくを持て余した孤児院や治療院から救い出してくれたオスカーさんのためにもギルドを過ごしやすい快適空間に作り上げるために尽力しようと、『器用貧乏』スキルを存分に発揮しようと思っていただけなのです。
歴史上『器用貧乏』スキル持ちは他のスキルを得た人はいないと言われていたのに、ぼくにはもう一つのスキルがあった。
『異世界レシピ』という謎のスキルが――。
この謎スキルのおかげで、廃屋同然のギルドハウスの掃除も、ギルドメンバーへの食事もぼくの実力以上のものが提供できた。
しかも、レオと名付けたスライムもぼくのスキルと同期することで、ただの水処理スライムからなんだかとっても珍しいスライムに進化したみたい。
このレオが水魔法の攻撃魔法を覚えたことから、ぼくも魔法が使えるのでは? とオスカーさんに疑われしまったのだけど。
でも、まさかね、魔法スキルもないのに、魔法が使えるなんて思わないじゃないですか!
……使えたけど、レオと同じ初級の攻撃水魔法。
なので、我が「白い輪」の貴重な戦力としてダンジョン参加となりました。
……なんでこんな目に……。
しかも、その魔法を試す前日の夜。
ぼくの謎スキル『異世界レシピ』はおかしなモノを送り出してきた。
それは、小さな三人のおじさんだ。
和・洋・中を司るおじさんは、ぼくに「早く調味料を揃えろ」と無茶な要求をしてきた。
どうやら、それぞれ作りたい料理があるらしく、それをぼくに教えるために出てきたらしいんだけど……迷惑です。
もっと厄介なことは、このおじさんたちが見えるのはぼくとレオだけ。
次の日のキッチンで洋おじさんとギャーギャー口論しながら朝ご飯を作っていたら、すっごい不審者を見る目でビアンカさんがぼくを見ていた。
オスカーさんとディーターさんはかわいそうな子を見る目だった……。
今は、おじさんたちには消えてもらっている。
料理のとき以外は出てこないでいいよ、ってか、料理のときも出てこなくていいよ!
でも、あの三人のおじさんたち、「早くダンジョンに行け」ってぼくをけしかてきたから……ダンジョンに何かあるんだろうか?
「ゴクリ……」
お、思わず生唾呑み込んじゃったよぅ。
「クルト。緊張しているのか?」
「大丈夫よ! 危険なことなんてないわ」
「……守るから」
オスカーさん、ビアンカさん、ディーターさんがぼくを安心させようと笑顔で頭を撫でてくれる。
ぼくの腕の中でスライムのレオもぴょこんと触手を伸ばして頬を撫でてくれた。
「おいおい。レオ。もうちょっと普通のスライムのフリをしてくれ」
オスカーさんが小声でレオに注意するけど、レオは普通のスライムですよ?
「ぼ、ぼくは大丈夫です。い、行きましょう、ダンジョンへ!」
オスカーさんにここに来る前に買ってもらった木の杖を両手で握りしめて、ぼくは声を張り上げた。
「本当に……大丈夫なのか?」
オスカーさんのかっこいいキリリとした眉が今はへにょりと下がってしまっている。
ぼくは無言でコクコクと何度も頷いてみせた。
「行きましょう。ここでいろいろと考えてもしょうがないわよ。ダメだと思ったら早めに戻ってくればいいのよ。三階までは雑魚しか出ないから」
ビアンカさんがカラカラと明るく笑って、ボソッと「ドロップアイテムもしょぼいけど」と呟いた。
ポンポンと優しくディーターさんに背中を叩かれて、ぼくは恐る恐る一歩、足を前に出す。
はあーっ、無事に戻ってこれますように!
オスカーさんは治癒魔法を操るにふさわしい真っ白なケープを身に纏っているが、腰に佩いた長剣が相応しくない装備として目立っている。
侯爵子息として剣術を学んでいた頃の愛剣で、魔力を帯びやすいように魔鉄が混じっている長剣はシンプルな装飾ながら、治癒士としてパーティーに参加する冒険者としては似付かわしくないだろう。
いや、オスカーさんの少々ワイルドな外見からすると、白いケープ服のほうが似合わないんだけど。
ビアンカさんは背中に弓と矢筒を背負って、ディーターさんはフル装備でゴツイ盾を担いでいる。
ぼくは右手に持つ木の杖だけが真新しく、後はいつもの普段着です。
なるべくみんなの後ろから攻撃魔法を撃ち込みますので……。
「レオ? 人がいなくなるまでここに入っていてね」
ダンジョンに興奮しているレオに肩掛け鞄に入ってもらって、薄暗いダンジョンの入り口へと向かった。
いや、本当は爽やかなそよ風がぼくの頬を撫でているんだけど、心情的には強風に煽られているのです。
なぜって?
今、ぼくはバルツァー公爵領地のダンジョンに来ています。
そう、オスカーさんがマスターを務める冒険者ギルド「白い輪」パーティーが挑戦する、初級ダンジョン「アインス・ゼーレ」に来てしまっています!
オスカーさんの幼馴染……いや、裏切り者たちがギルドに参加しなかったせいで攻撃力が乏しく前衛がオスカーさん一人という戦力に、いくら初級ダンジョンでもいささか心許なくなった皆さんが、よりによってぼくに「一緒に行こう」と誘ったせいでこうなってます。
いや、試しに魔法が使えるかどうかやってみようと言われたときに、断固として拒否すればよかったのに……つい好奇心でギルドハウスの地下魔法訓練場で初級水魔法の詠唱をしてしまった自分が悪いのかも……。
だって……魔法スキルがないのに魔法が使えるなんてラッキーと思って。
ぼくのスキルは『器用貧乏』という、いわゆるハズレスキル。
生活魔法がとっても器用に扱えるというスキルで、主に家事で大活躍するスキルなのだ。
お嫁さんに持っていてほしいスキルだけども、ぼくの将来の夢はお嫁さんじゃないし。
ただ、魔物に襲われて頭を強く打ったせいで記憶もなく、子供のぼくを持て余した孤児院や治療院から救い出してくれたオスカーさんのためにもギルドを過ごしやすい快適空間に作り上げるために尽力しようと、『器用貧乏』スキルを存分に発揮しようと思っていただけなのです。
歴史上『器用貧乏』スキル持ちは他のスキルを得た人はいないと言われていたのに、ぼくにはもう一つのスキルがあった。
『異世界レシピ』という謎のスキルが――。
この謎スキルのおかげで、廃屋同然のギルドハウスの掃除も、ギルドメンバーへの食事もぼくの実力以上のものが提供できた。
しかも、レオと名付けたスライムもぼくのスキルと同期することで、ただの水処理スライムからなんだかとっても珍しいスライムに進化したみたい。
このレオが水魔法の攻撃魔法を覚えたことから、ぼくも魔法が使えるのでは? とオスカーさんに疑われしまったのだけど。
でも、まさかね、魔法スキルもないのに、魔法が使えるなんて思わないじゃないですか!
……使えたけど、レオと同じ初級の攻撃水魔法。
なので、我が「白い輪」の貴重な戦力としてダンジョン参加となりました。
……なんでこんな目に……。
しかも、その魔法を試す前日の夜。
ぼくの謎スキル『異世界レシピ』はおかしなモノを送り出してきた。
それは、小さな三人のおじさんだ。
和・洋・中を司るおじさんは、ぼくに「早く調味料を揃えろ」と無茶な要求をしてきた。
どうやら、それぞれ作りたい料理があるらしく、それをぼくに教えるために出てきたらしいんだけど……迷惑です。
もっと厄介なことは、このおじさんたちが見えるのはぼくとレオだけ。
次の日のキッチンで洋おじさんとギャーギャー口論しながら朝ご飯を作っていたら、すっごい不審者を見る目でビアンカさんがぼくを見ていた。
オスカーさんとディーターさんはかわいそうな子を見る目だった……。
今は、おじさんたちには消えてもらっている。
料理のとき以外は出てこないでいいよ、ってか、料理のときも出てこなくていいよ!
でも、あの三人のおじさんたち、「早くダンジョンに行け」ってぼくをけしかてきたから……ダンジョンに何かあるんだろうか?
「ゴクリ……」
お、思わず生唾呑み込んじゃったよぅ。
「クルト。緊張しているのか?」
「大丈夫よ! 危険なことなんてないわ」
「……守るから」
オスカーさん、ビアンカさん、ディーターさんがぼくを安心させようと笑顔で頭を撫でてくれる。
ぼくの腕の中でスライムのレオもぴょこんと触手を伸ばして頬を撫でてくれた。
「おいおい。レオ。もうちょっと普通のスライムのフリをしてくれ」
オスカーさんが小声でレオに注意するけど、レオは普通のスライムですよ?
「ぼ、ぼくは大丈夫です。い、行きましょう、ダンジョンへ!」
オスカーさんにここに来る前に買ってもらった木の杖を両手で握りしめて、ぼくは声を張り上げた。
「本当に……大丈夫なのか?」
オスカーさんのかっこいいキリリとした眉が今はへにょりと下がってしまっている。
ぼくは無言でコクコクと何度も頷いてみせた。
「行きましょう。ここでいろいろと考えてもしょうがないわよ。ダメだと思ったら早めに戻ってくればいいのよ。三階までは雑魚しか出ないから」
ビアンカさんがカラカラと明るく笑って、ボソッと「ドロップアイテムもしょぼいけど」と呟いた。
ポンポンと優しくディーターさんに背中を叩かれて、ぼくは恐る恐る一歩、足を前に出す。
はあーっ、無事に戻ってこれますように!
オスカーさんは治癒魔法を操るにふさわしい真っ白なケープを身に纏っているが、腰に佩いた長剣が相応しくない装備として目立っている。
侯爵子息として剣術を学んでいた頃の愛剣で、魔力を帯びやすいように魔鉄が混じっている長剣はシンプルな装飾ながら、治癒士としてパーティーに参加する冒険者としては似付かわしくないだろう。
いや、オスカーさんの少々ワイルドな外見からすると、白いケープ服のほうが似合わないんだけど。
ビアンカさんは背中に弓と矢筒を背負って、ディーターさんはフル装備でゴツイ盾を担いでいる。
ぼくは右手に持つ木の杖だけが真新しく、後はいつもの普段着です。
なるべくみんなの後ろから攻撃魔法を撃ち込みますので……。
「レオ? 人がいなくなるまでここに入っていてね」
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