「異世界レシピ」スキルで新人ギルドを全力サポートして、成り上がります!

沢野 りお

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初級ダンジョン 探索編

イメージが大切です!

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ハルトムートさんとオスカーさん、ディータさんは、ぼくの『異世界レシピ』スキルが贈ってくれた「人体組織図」の頁をパラリパラリと捲っている。
ぼくとビアンカさん、ミアさんは、そんな人たちを横目にドーナツを口に運んでいます。

……あれ? ぼくは食いしん坊こっちのグループでいいのだろうか?
でも、人の体の中が図解されている本なんて、直視できなそうだからいいか。
ドーナツおいしいし。

「本当に父ちゃんの足は治るんだろうか?」

「さあ。オスカーの治癒スキルは中級だし、そこそこの怪我なら問題はなく治すけど、特上ポーションレベルは難しいかも」

ミアさんはドーナツを口に運んでもぐもぐしては、はーっとため息を零している。
その隣で、ビアンカさんはドーナツも紅茶もすごい勢いでお腹に入れまくっている。
ちゃんと噛んでくださいね?

「おい、クルト」

「っぐ」

おっと、ハルトムートさんに呼び出されて、ドーナツが喉に詰まった!

「んんっ。なんですか?」

もぐもぐと口の中のドーナツを咀嚼して、紅茶でごっくんと喉の奥に流し込みます。
トントンと胸を叩いて、ハルトムートさんに応えました。
でも、その物騒な本は覗きたくないので、そちらには顔を向けませんよ?

「なんで、そっぽ向いているんだ?」

不思議そうに首を傾げたハルトムートさんが、長い足でぼくの座っている場所まで来てしまいました。

「な、なんでもないです」

ただ、その物騒な本を見たくないだけですっ。

「ハルトムート。クルトがどうかしたのか?」

「ああ。オスカーの治癒魔法スキルのレベルアップに必要な情報を、こいつが持っていると思ってな」

「へ?」

「クルトが?」

ハルトムートさんは急に何を言い出すんでしょうか?
ぼくがオスカーさんのスキルをレベルアップさせる方法を知っているなんて?
知りませんけど?

「レオ。そんなこと『異世界レシピ』は教えてくれなかったよね?」

レオもドーナツを二本の触手で持ったまま、体を大きく横に傾げてみせた。

「お前のふざけた魔法のことだ。ボス部屋でお前が放った【ウォーターボール】がおかしな変化をしていただろうがっ!」

ええーっ、そんなこと言われても……。

「あれは……ハルトムートさんがゴブリンの数を減らせって言ったから、ぼく頑張って増やしたんですよ? 水の塊」

ぼくの【ウォーターボール】では大きな水の塊は出せないから、小さな水の塊で威力増を目指しています。
その方法が水の塊を早い速度で回転させること。

「……だけど、回転させるのも魔力操作が大変なので、水の塊も少し小さめにしているんですよ?」

「おいおい。普通【ウォーターボール】をそんな変化させることはできないからな」

ぐにぐにとハルトムートさんの大きな手が、ぼくの頬を力強く揉んでいます。
イタタッ。
そもそもぼくは『異世界レシピ』スキルのおかげで、ハズレスキルと軽視されていた『器用貧乏』スキルがちょっとグレードアップして水魔法の【ウォーターボール】が使えるだけなんです。
だから人とはちょっと違う【ウォーターボール】でも、仕方ないでしょ?
潰れた頬に突き出した唇でピヨピヨしていると、ハルトムートさんが、はあーっと肩で息を吐き出しました。

「それなのに、さらに放出した水の塊を分裂させるなんて技、どうしたらできるんだよ……」

「それは、一つの魔法でいっぱいゴブリン倒したいと思ったので、分かれろーって念じたんです!」

ふんすっと胸を張ったぼくを一瞥したハルトムートさんは、すっごく嫌な表情をして頭を振った。

「念じただけで、できて堪るかっ!」

今度はハルトムートさんの太い腕で、ガシッとヘッドロックをされました。
イタタッ、イタタッ。

「しかし、このクルトの奇天烈な発想が、オスカーの治癒魔法のレベルをアップさせるヒントじゃないかと思うんだ」

ぼくはぎゅっと締め付けられたこめかみを摩りながら、パチパチと瞬きをします。
ぼくが【ウォーターボール】の水の塊を分裂させたことが、オスカーさんの治癒魔法のレベルアップのヒントになるって、意味がわからないんですけど?

「いや、どうしたらいいのか、私にもわからないな」

オスカーさんも苦笑しています。

「つまり、魔法を行使するのに大切なのはスキルや魔力操作だけじゃなく、その魔法のイメージが大事だってことだ」

「「イメージ?」」

ぼくとオスカーさんが揃って首を捻り、ビアンカさんとディーターさんが「はああっ?」と顔を顰めた。









魔法はスキル持ちじゃなければ使うことができないけど、生活魔法はほぼ全員が使える。
ただ、生活魔法が使えるのが常識なので、わざわざ【点火ファイア】や【灯りライト】の生活魔法を使うときに「人差し指に灯るぐらいの火」や「本が読める明るさの灯り」などと、その効果をイメージすることはない。
だいたいは親や周りの人が使っているのを見て、覚えて、使えるようになっていくからだ。

「じゃあ、イメージしたらどうだ?」

「……つまり、魔法を使うときにその威力や影響をイメージして使うと、その魔法に変化があると?」

ハルトムートさんはオスカーさんの質問に鼻白んだ。

「ああ、めんどくせぇ。難しいことは俺にはわからん。ただ、クルトを見てそう思ったんだ。こいつみたいに「こうしたい」と思って魔法を使えばもっと効率よく魔法が使えるんじゃねぇかと思ってな。だって、こいつが使えるのは水魔法の初級レベルの【ウォーターボール】だぜ?」

なぜか、その言葉にみんながハッとした顔でぼくの顔を凝視する。
……ちょっと怖いです。
ぼくは、ススーッとミアさんの背中に隠れました。
ミアさんは、ぼくがダンジョンでどんな魔法を使ったかわからないので、きょとんとしています。

「確かに、初級レベルの魔法でゴブリンを一瞬で数体を倒すのは無理だ」

「クルトの魔法って、他の人が使うより威力があるわよね?」

「……初級とは思えん」

わわわっ! オスカーさんたちがブツブツと考えこんでしまった。

「だから、オスカーがその本で人体の造りを把握したら、治癒魔法の効果が変わるんじゃねぇかと思ったのさ」

ハルトムートさんが指差す先には、ぶ厚い「人体組織図」の本……図鑑?
その本で人の体に詳しくなったら、ここをこう治すとか具体的にイメージできるってこと?

「……わかった。そもそも治癒士としての能力アップができるなら願ってもない。無駄になったとしてもいい。私はこの知識を得て必ずハルトムートの足を治す!」

ぐっと拳を握り、メラメラと瞳の中に炎を燃やし、オスカーさんが決意をする。
わーっ、とぼくたちが拍手してオスカーさんを讃えている横で、ハルトムートさんはバツの悪い顔でドーナツを頬張っていた。

「べ、別に俺の足なんていいんだよ……」

よしっ! ぼくも協力するぞー!

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