68 / 85
新しい仲間は凄い人
体調は万全、ご飯は微妙?
しおりを挟む
久しぶりに全力でのダンジョン攻略を楽しんでいるハルトムートさんと、彼のテンションが高すぎてちょっとげんなりしているぼくたちです。
ぼくの『異世界レシピ』スキルの新しい能力「家庭の医学」で出現したぶ厚い本「人体組織図」を熟読し、治癒魔法に磨きをかけたオスカーさんの努力により、ハルトムートさんの古傷は無事に快癒されたみたい……です?
いや、だって、本人が「動いてみないとわからん」って言うから、この中級ダンジョンに来たんですよ。
そして、……ハルトムートさんは中級ダンジョンを単独踏破してしまいそうな勢いです。
たぶん……傷は治ったんでしょうね?
ぼくという弱小冒険者見習いを引き連れて、中級ダンジョンの高層階はやや危ないと判断していたけれど、ハルトムートさんの勢いは止まりません。
「このまま、今日中に中級ダンジョンを踏破してしまいそうですううぅっ」
治癒士のオスカーさんと一緒に後衛に控えているぼくは、ちょっと遠い目をしてしまう。
ちなみにぼくの肩から下げた鞄から、スライムのレオの見られてはいけない動きがビシバシ伝わってきます。
レオー、興奮しないでぇーっ。
「レオも暴れたいみたいだな」
微笑まし気にぼくの鞄を見つめるオスカーさんは、達成感に満足そうなお顔ではあるけど、目の下の隈が酷くて体調が心配です。
「おらっ、オスカー。上に行くぞ、上だっ」
満面の笑みでハルトムートさんは階段のところで足踏みをしてぼくたちを待っていました。
「ええーっ、まだ続けるのぉ?」
その近くには疲労困憊で半泣きのビアンカさんと、肩で大きく息をしているティーダさん。
ははは、みなさんお昼ご飯を食べに一旦、出ませんか?
ダンジョン内のセーフティーエリアでお昼ご飯を食べる事態にはならず、ハルトムートさんは「お昼ご飯」の言葉に耳をピクピクと動かして、素直に転移魔法陣のある階層まで移動してくれました。
ダンジョン外の広場にある休憩スペースは、初級ダンジョンにアタックしていたときよりも、広くなって日よけのフードもついてました。
いそいそとぼくがお昼ご飯の準備をしている横で、ビアンカさんとディータさんがダウンしています。
……かわいそうに……。
「ああ、オスカー、放っておけ。そんな体力回復ポーションなんて飲ませんでいい。もったいない」
ハルトムートさんはグビグビと水を煽ります。
「だが……」
ピクリとも動かないで倒れている二人が心配ですよね?
「メシを食えば元気になるだろう。ったく体力がなさすぎるぞ?」
ハルトムートさんは、ビアンカさんに「斥候の腕の見せどころ」と言ってパーティーの先頭を歩かせ……いや、ほとんど駆け足だったな。
しかも、途中の罠に気づかなかったら、わざわざハルトムートさんが罠を発動させてしまう始末。
「こんぐらいの罠はかわいいもんだ。今から解除に慣れておかないとこの先が辛いぞ」
ワハハハと楽しそうに罠にわざと小石をぶつけてましたよね?
おかげで、壁から毒矢がシュッパッと放たれたり、天井から魔物が降ってきたり、落とし穴があったりと散々でしたけど?
ディータさんはタンク役として、とにかく魔物と体当たりさせられていた。
中級ダンジョンの中階層で出現する魔物の強さもそこそこ強いけど、何よりも体躯が大きい魔物が大変だったみたいです。
まだ、盾の防具は新調していないから、ちょっと防御力が頼りないのに、そんな大きな体の魔物の体当たりは辛かったと思う。
オスカーさんも治癒魔法をバンバンかけていたけど、そのオスカーさんはちょっとニヤニヤしていた。
どうやら、今までの治癒魔法より「人体組織図」で知識を深めた今の治癒魔法のほうが効力が上らしい。
ディータさんの痛めた肩も腕もあっという間に治していた。
……ディータさんの精神的疲労までは無理だったけど。
「さあ、ご飯を食べましょう。今日は新しいメニューですよーっ!」
じゃじゃーんと大皿を幾つもテーブルの上に並べていく。
「お、とうとう例の穀物が届いたんだな?」
オスカーさんの言うとおり、とうとうハズレドロップとして手に入れた「コメ」が精米作業から戻ってきました!
和のおじさんに確認してもらったら、ちゃんと「ハクマイ」の状態になっているとお墨付きです。
まぁ、食べられるように炊く? のがたいへんだったけど、おいしくできたと思います!
でも……なんだが、みんなのリアクションが薄いような?
あれれれ? 食べないんですか?
「こ、これだけ?」
ビアンカさんが震える指で大皿の上に乗ったコメ料理を指差します。
「……」
ディータさんが無言で首を振りました。
「……坊主。おじちゃんは肉がないと力がでねぇなぁぁぁっ」
ハルトムートさんが耳と尻尾をぺしゃんと下げて呟きます。
「クルト。この白くて丸いものはなんなんだろう?」
オスカーさんがお皿に並べたものを一つ手に取って、困惑気味に問いかけてきました。
ぼくはみんなに向かって、えっへんと胸を張り堂々と料理名を教えてあげます。
ぼくの顔の横で和のおじさんも同じポーズで胸を張っていました。
「これは……おにぎりです!」
ドドーン!
どうだ、おいしそうでしょ?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
更新再開していきます。
不定期更新になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
ぼくの『異世界レシピ』スキルの新しい能力「家庭の医学」で出現したぶ厚い本「人体組織図」を熟読し、治癒魔法に磨きをかけたオスカーさんの努力により、ハルトムートさんの古傷は無事に快癒されたみたい……です?
いや、だって、本人が「動いてみないとわからん」って言うから、この中級ダンジョンに来たんですよ。
そして、……ハルトムートさんは中級ダンジョンを単独踏破してしまいそうな勢いです。
たぶん……傷は治ったんでしょうね?
ぼくという弱小冒険者見習いを引き連れて、中級ダンジョンの高層階はやや危ないと判断していたけれど、ハルトムートさんの勢いは止まりません。
「このまま、今日中に中級ダンジョンを踏破してしまいそうですううぅっ」
治癒士のオスカーさんと一緒に後衛に控えているぼくは、ちょっと遠い目をしてしまう。
ちなみにぼくの肩から下げた鞄から、スライムのレオの見られてはいけない動きがビシバシ伝わってきます。
レオー、興奮しないでぇーっ。
「レオも暴れたいみたいだな」
微笑まし気にぼくの鞄を見つめるオスカーさんは、達成感に満足そうなお顔ではあるけど、目の下の隈が酷くて体調が心配です。
「おらっ、オスカー。上に行くぞ、上だっ」
満面の笑みでハルトムートさんは階段のところで足踏みをしてぼくたちを待っていました。
「ええーっ、まだ続けるのぉ?」
その近くには疲労困憊で半泣きのビアンカさんと、肩で大きく息をしているティーダさん。
ははは、みなさんお昼ご飯を食べに一旦、出ませんか?
ダンジョン内のセーフティーエリアでお昼ご飯を食べる事態にはならず、ハルトムートさんは「お昼ご飯」の言葉に耳をピクピクと動かして、素直に転移魔法陣のある階層まで移動してくれました。
ダンジョン外の広場にある休憩スペースは、初級ダンジョンにアタックしていたときよりも、広くなって日よけのフードもついてました。
いそいそとぼくがお昼ご飯の準備をしている横で、ビアンカさんとディータさんがダウンしています。
……かわいそうに……。
「ああ、オスカー、放っておけ。そんな体力回復ポーションなんて飲ませんでいい。もったいない」
ハルトムートさんはグビグビと水を煽ります。
「だが……」
ピクリとも動かないで倒れている二人が心配ですよね?
「メシを食えば元気になるだろう。ったく体力がなさすぎるぞ?」
ハルトムートさんは、ビアンカさんに「斥候の腕の見せどころ」と言ってパーティーの先頭を歩かせ……いや、ほとんど駆け足だったな。
しかも、途中の罠に気づかなかったら、わざわざハルトムートさんが罠を発動させてしまう始末。
「こんぐらいの罠はかわいいもんだ。今から解除に慣れておかないとこの先が辛いぞ」
ワハハハと楽しそうに罠にわざと小石をぶつけてましたよね?
おかげで、壁から毒矢がシュッパッと放たれたり、天井から魔物が降ってきたり、落とし穴があったりと散々でしたけど?
ディータさんはタンク役として、とにかく魔物と体当たりさせられていた。
中級ダンジョンの中階層で出現する魔物の強さもそこそこ強いけど、何よりも体躯が大きい魔物が大変だったみたいです。
まだ、盾の防具は新調していないから、ちょっと防御力が頼りないのに、そんな大きな体の魔物の体当たりは辛かったと思う。
オスカーさんも治癒魔法をバンバンかけていたけど、そのオスカーさんはちょっとニヤニヤしていた。
どうやら、今までの治癒魔法より「人体組織図」で知識を深めた今の治癒魔法のほうが効力が上らしい。
ディータさんの痛めた肩も腕もあっという間に治していた。
……ディータさんの精神的疲労までは無理だったけど。
「さあ、ご飯を食べましょう。今日は新しいメニューですよーっ!」
じゃじゃーんと大皿を幾つもテーブルの上に並べていく。
「お、とうとう例の穀物が届いたんだな?」
オスカーさんの言うとおり、とうとうハズレドロップとして手に入れた「コメ」が精米作業から戻ってきました!
和のおじさんに確認してもらったら、ちゃんと「ハクマイ」の状態になっているとお墨付きです。
まぁ、食べられるように炊く? のがたいへんだったけど、おいしくできたと思います!
でも……なんだが、みんなのリアクションが薄いような?
あれれれ? 食べないんですか?
「こ、これだけ?」
ビアンカさんが震える指で大皿の上に乗ったコメ料理を指差します。
「……」
ディータさんが無言で首を振りました。
「……坊主。おじちゃんは肉がないと力がでねぇなぁぁぁっ」
ハルトムートさんが耳と尻尾をぺしゃんと下げて呟きます。
「クルト。この白くて丸いものはなんなんだろう?」
オスカーさんがお皿に並べたものを一つ手に取って、困惑気味に問いかけてきました。
ぼくはみんなに向かって、えっへんと胸を張り堂々と料理名を教えてあげます。
ぼくの顔の横で和のおじさんも同じポーズで胸を張っていました。
「これは……おにぎりです!」
ドドーン!
どうだ、おいしそうでしょ?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
更新再開していきます。
不定期更新になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
29
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
スキル『倍加』でイージーモードな異世界生活
怠惰怠man
ファンタジー
異世界転移した花田梅。
スキル「倍加」により自分のステータスを倍にしていき、超スピードで最強に成り上がる。
何者にも縛られず、自由気ままに好きなことをして生きていくイージーモードな異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる