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国を出ましょう

アルベールと難しい話をしました

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トゥーロン王国第1王子誕生日パーティー当日に行われた、王族暗殺事件。
奇しくも、トゥーロン王が王太子を指名する直前の凶行。

「普通に考えたりゃ、次の王座を狙った第2王子派が第1王子とその派閥を潰したってことにゃんだけど・・・」

おかしくない?
王太子は十中八九、第1王子だったと思うわ。
それを阻止したかったとしても、あんな他の貴族たちの前で暗殺するなんて乱暴な方法じゃなくて、もっとこう、こっそりる方法が幾らでもあったと思うのよねぇ。
しかも、第1王子派閥の筆頭、第1妃の生家ジラール公爵共々、弑してしまうのはいささか悪手ではなかろうか?

「そうですね。あの日が第1王子の戴冠式ならまだしも、王太子の指名ですからね・・・。立太子式や戴冠式までまだ日にちに余裕はあったでしょうし・・・。とすると、至急に邪魔者を排除する必要があったということですかね?」

「それは、にゃに?」

アルベールは、両手を上に向け首を振ってみせる。
うーむ。
じゃ、こっちで。

「亜人奴隷解放としてイザックたちに協力していたのは、第1王子派だった、ていう線は?」

「私もそう思います。一緒に被害にあった第3王子は中立派に属します。もともと、第2妃の生家のノアイユ公爵家は野心など全くなく、芸術・美術をこよなく愛する一族らしいですからね。早々に第3王子は王位を望まないと書面に起こして宰相に提出しているらしいですよ。それなのに殺されてしまいましたが。亜人についてはトゥーロン国らしく差別意識は高く、奴隷はエルフなどの外見が美しい者を鑑賞用として飼っていたらしいですね」

アルベールが苦々しく言い放つ。

「しょうよねぇ。あと、第3王女は拘束しゃれていたけど、第2王女は斬りゃれていたし。今回のことって亜人奴隷解放のことと関係あるのかにゃ?」

イザックたちや冒険者ギルドの企みが、王家にバレているなんて、ないよね?

「難しいですね。彼らミゲルたちはミュールズ国に対して疑ってませんでしたから、うっかりミュールズ国と繋がっている貴族に交渉していたら、その貴族が計画に参加すること自体が彼らに対する罠ですからね。ただ、今回の暗殺を強行する理由にはならないと思いますよ」

私は焼き菓子をひとつ手に取り、口に運ぶ。
うむうむ、頭を使うときは甘い物を接種する!これ大事。

「でも、彼らに賛同していりゅのが第1王子派だったりゃ、計画の協力者として声をかけるのも第1王子派のみじゃにゃいの?」

アルベールは少し考えるように、眉間に皺を寄せて、

「そもそも、亜人奴隷解放を謳ったのは、イザックたち市民でしょうか?第1王子派が動き、ミゲルたちを味方にしたとも考えられます」

「にゃんで亜人奴隷を沢山抱え込んでいりゅ王家が、解放しようにゃんて考えりゅの?」

亜人奴隷いなくなったら不便なんじゃないの?あいつら。
人族が嫌がるようなキツイ仕事をやらしたり、人形のように着飾らしてみたり、イライラして暴力奮ってたりしてたんじゃない?
けっ、最低だな!

「もしかしたら、ミュールズ国との関係を切りたかった・・・とか?」

「・・・それは、ミュールズ国が許しゃにゃいと思うけど・・・」

でも・・・許さないから殺した?誰が?第2王子派を操った誰かが?誰を?ミュールズ国の暗部を知った聡明な王子を・・・。

「トゥーロン王族の全てがミュールズ国との繋がりを知っていりゅ訳じゃにゃい?もしかして、王は傀儡同然で裏で誰かがミュールズ国との密約を行っていりゅ?」

「あの第1王子はトゥーロン王族にしては真面まともに見えましたよ。もしかしたら自国とミュールズ国との歪んだ関係に気づき、自分が王になって国をミュールズ国との関係を正そうと思ったのかもしれませんね」

「王ににゃってから、自分で亜人奴隷を解放しゅればいいんじゃにゃい?」

そっちのほうが、ずっと簡単だと思うわよ?クーデターを起こす必要もないじゃない。

「ふーっ。古い体勢を崩し、いちから作り直すつもりだったのでは?そして、第1王子自らが動くなら、お嬢様が果たした奴隷魔法陣の破壊も容易いかと」

「ああ、その問題もあったもんね。ふむ、本来は第1王子主導で行われりゅはじゅだった亜人奴隷解放とクーデター。しょの情報が入ったかりゃ第2王子派は阻止しゅるために動いたのかにゃ?」

んんー、でもそうなると最初の問題に戻るんだよねぇ。
なぜ、に行動を起こさなければならなかったのか?

「別の理由があったのかもしれません。急ぎ第1王子派を潰し、王位継承権を持つ者を排除して、王たちを拘束して、トゥーロン王国の実権を握らなければならない理由が・・・」

「・・・うーん、みそっかしゅ王女でひきこもりの私には、わかりゃん。もっとクシー子爵に聞いておけばよかったー!」

私は両手を自分の髪の毛に突っ込んで、ぐしゃぐしゃにかき混ぜる。

「仕方ありません。私たちはお嬢様の命大事。リュシアンたちの解放第1で動いたのですから。今も追手が来ているかもしれないのです。貴方がトゥーロン王国の玉座を欲するのであれば、勿論助力しますけど・・・」

「いらん、いらん。そんにゃもの」

ブルブルと首を振る。

「とりあえじゅ、亜人奴隷解放に関わっていたのは第1王子派で、私たちが逃亡しゅるのに気を付けりゅのは、第2王子派とミュールズ国と繋がっていりゅ貴族、商人ってとこりょかしら?」

「ええ。私もそう思います。まあ、第1王子派だからと言って油断はできませんけどね」

確かに。
特に私はトゥーロン王族に見つかっても、ミュールズ国に繋がっている誰かに悟られても、待っているのは「死」だ。
うえーっ、死にたくない!死にたくない!
絶対、国を脱出してみせるわ!みんなで安住の地まで行ってみせるのよ!

「お嬢様。気合を入れておられると興奮して寝付が悪くなりますよ。もう大分夜も更けました。明日は特別にお寝坊を許しますので、お休みくださいませ」

「うん。もう寝りゅ。でも明日は王都を抜けりゅから、ちゃんと起きて備えておくわ」

カップなどの片付けをアルベールにまかせて、私はモコモコスリッパをパタパタさせて自室に戻る。
灯りを抑えて、ベッドに入って「身体強化」を解除して、おやすみなさーい。
ぐう。



そして、あんなに王都を抜けるのに緊張していたはずなのに、起きたらとっくに王都を抜けてお昼ご飯の時間でした。

あるれえぇぇぇ?

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