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冒険しましょう

市場に行きました

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翌朝、市場に繰り出すために早起きして、宿の1階の食堂で朝ご飯。
もきゅもきゅ。
美味しい・・・。
具沢山なコンソメスープに目玉焼きと厚切りベーコン、ボイルした貝柱に新鮮なサラダとバゲット。
くし切りにしたオレンジと果実水。
ぷはぁーっ。
宿に泊まったのはいいけれど、お風呂やトイレ、ベッドに不満気だったみんなも、夢中で朝ご飯を食べている。
リオネル・・・セヴランのベーコンを取るんじゃありません。
さて、腹ごしらえも終わったし、いざ、市場へ!





幾つもの屋台が色鮮やかな布で飾られているのが、目に楽しい。
人もいっぱいいるわ。

「客船から下船した奴もいるし、冒険者たちが動き出す時間だしな。ほら、はぐれないようにアルベールと手を繋いでおけよ」

「はーい」

昨日と同じく、私とアルベール、ルネとセヴラン、リオネルはリュシアンが抱っこしている。
リオネルは迷子防止というより、逃走防止だな。

ふむふむ。
やっぱり海辺の街だから、魚や貝などの海産物を取り扱っているお店が多いわね。
ふふふっ、探したいっ、鰹節!昆布!出汁の素になる食材!
今までは、魔獣の骨とかきのことかで何とかしてきたけど、和食なら外せないのよっ、鰹節と昆布が!
あとは、根菜と葉物野菜ねー。
これは定番を買っておけばいいか。
玉ねぎとじゃがいもとキャベツとネギと・・・。
卵と牛乳は置いてないかー・・・。
直接、牧場に買いに行くか、直売所を見つけないとなぁ。
和食の食材は見つからないが、チーズやヨーグルトとか加工品はあるし、チョコレートとかお菓子もあるし、そこまで悲惨な状況ではないのは助かったよな。
おっと、ハーブ類が売っている。
ミントとローリエ、シナモン、ローズマリーと、塩と胡椒と砂糖も買っておこう。
異世界あるあるの定番、調味料が塩しかない世界じゃなくてよかった。
塩は岩塩だけでなく海から抽出する技術があるし、砂糖は甜菜とかの栽培も盛んで高価な物じゃないし、胡椒もふんだんに取り扱っている。
ただ・・・和食がない。

「おい、お嬢。野菜買ってきたぞ」

「魚と貝類もそこそこ揃いましたよ」

「ありがとー」

思った通り、鰹節が無かったのでカツオっぽい魚を買ってと、昆布はあったけど海苔が岩海苔状態のものしかなかった。
うーん、自分で鰹節に加工しなければ・・・、魔法でできるかな?
あと、日本米っぽいのがない。
他の米はあるけど、求めているのはパラパラなお米じゃないのよ。

「ヴィー?ハーブ類も買ったし、お菓子も買いました。他にも何か?」

「・・・家畜用の餌ってどこにあると思う?」

米が家畜用の安価な穀物として流通している、異世界あるあるにかけてみよう。

「はあ?家畜用?何買うんだ、そんな店で」

ブチブチ文句を言っても、こっちだぞと案内してくれるリュシアン、アンタいい奴だよ。
荷物をこっそり人通りのない所で、私の無限収納にしまって・・・。

「むー!むー!」

「なに、リオネル?」

「ヴィー様。たぶん・・・お菓子が欲しいんじゃないかな?」

「自分で持ちたいの?」

「うん」

満面笑顔で返事したな、リオネル。
しょうがない、お菓子と保存食にもなるドライフルーツを何種類か、みんなの魔法鞄に入れる。

そうして案内してもらったやや大きいお店は、騎獣屋さんでしたがそこにもお米はなかったよ・・・。
しくしくしくしく。
がっくり項垂れた私の目に入った、棚の奥の瓶・・・の中身の黒い液体。

「おじさん。それなあに?」

「ん?どれだい?ああ、これかぁ」

騎獣屋のおじさんは、渋い顔をして黒い液体が入った瓶を手に取る。

「こりゃ、騎獣を買いに来た客が金が足りなくて置いていったもんだ。何に使うが分からんのだよ」

「貸してもらってもいい?」

ほらよ、と渡された瓶の蓋を取り、クンクンと匂いを嗅ぐ。
この匂いは!と確信はあるものの、念のため手に少し出してぺろりと舐めてみる。

「「「ええーっ!」」」

おじさんと、リュシアンとセヴランが大きい声を出す。
しかし、私はそれどころじゃないっ!

「みーつけた!これよこれっ!」




おじさんは、お金が足りなくて置いて行った客が他にも持ち込んだ物も見せてくれた。
醤油と味噌と米酢とごま油。
むふふふ。
酸化して色が変わっているが、まだ食べられる!

「お嬢ちゃんは変な物を食べるんだな?これは、アンティーブ国の東の外れに接している小国、チハロ国の客が持ってきたんだよ」

「チハロ国?」

「ああ、変わった文化のある小部族だけどな、めちゃくちゃ剣術が盛んな国だよ。この客はもうアラスの街から離れちまっていると思うが・・・。チハロ国の物が欲しかったら、ラングラン伯爵の領地に行ってごらん。あそこの奥様はチハロ国の出身だったから取り扱っている店があるかもしれないよ」

「ありがとう!ありがとう、おじさん!」

そのラングラン伯爵の領地になくても、アンティーブ国の東の外れのチハロ国に直接買いに行ってもいいわ!
その国には、醬油も味噌も、お米もあるに違いないっ!
私は譲ってくれると言うおじさんに、お金を無理やり握らせて奪い取ったそれらの瓶を抱きしめながら、チハロ国に思いを馳せたのだった。
みんなの白けた視線を背中に受けながら。

アンタたち!和食作っても食べさせてあげないわよっ!

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