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人助けをしましょう

偵察に行きました

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太い木の幹にバイコーンとバトルホースを繋いでおいて、私たちは馬車の中でひと休み・・・じゃなくて作戦会議よ!

アルベールに美味しい紅茶を淹れてもらって、私は甘い生クリームとフルーツを添えたパンケーキを「無限収納」から、せっせっとテーブルの上に出していく。

「この子をどうやって男爵夫人の手に返せばいいのか・・・。面識もない相手ですから、こちらが誘拐犯だと誤解される可能性もありますね」

セヴランは安定のネガティブ発言をしながら、ルネに抱っこされているエミール君のほっぺをぷにぷに突かない!

「家の門。置いて、逃げる」

口の周りを生クリームだらけにして、むっふぅと自慢気に言ったけど、生後三ヶ月の赤ちゃんを外に置いておけるか!
リオネルのエミール君に対する嫉妬が怖い。

「余計なことかもしれないけど、乗り掛かった舟ともいうし。あのゴロツキどもを片付けて、男爵夫人を助け出してからの話よねぇ。赤ちゃんの生育に悪い環境だって分かってて、はいって返せないでしょ?」

モグモグと口の中のパンケーキを堪能しながら、発言する私。
あ、横から手が伸びて、口の周りをアルベールに拭かれてしまったわ。

「そうですね。人道的にも今のままでは問題がありますし。この町の冒険者ギルドも機能してませんしね・・・。男爵位を狙ってる奴等を排除するのが先決ですね」

アルベールは所作も美しく紅茶を口に運ぶ。
ふむ。
このメンバーで一番気難しいアルベールでさえ、この状態はエミール君にとってよろしくないと判断し、私たちが行動することを容認したぜ!

「とりあえず、状況把握が一番だな。男爵家だけの問題のわりに、ギルドも巻き込まれているし。町の行き来が封鎖されているのも気になるし」

「そうね。リュシアンの言う通りだわ。男爵家の様子を伺うのと町の様子を偵察に行くのと分かれましょ」

ゴックン!あー、美味しかった。

「偵察にはすぐにでも行きたいわ。赤ちゃん用のミルクもオムツも何もかもないんだし。手に入れなきゃ不便だもん」

今はルネが寝具を切って縫った手製のオムツを使っているけど、いくらあってもオムツは足りないし。
それより、いつまでもミルク代わりにポーションを飲ませてるのが不安だわ。
みんなの意見も一致したことだし、さぁグループ分けしましょ。

「その前に馬の世話もあったわ。リュシアンは馬の名前付けして調教しておいて。セヴランは馬にもっと馴れたほうがいいから、エサやりとブラッシングしておいて」

「ええーっ!」

セヴランが悲鳴を上げた。

「ヴィーの意見に賛成です。あの凶暴馬を連れていたら、変に目を引きますし、変な輩に絡まれそうですし。リュシアンは種族性を前面に出して調教しておいてくたさい。セヴランは・・・頑張って」

「なんで、私なんですか?馭者だったらアルベールだってできるじゃないですか!すっごい怖いんですよ、あの馬たち。私の顔を見ると歯を剥き出しにしてガッチガッチ鳴らしてくるし・・・」

ぐすって、大人が泣かないでよ。
隣に座るルネがオロオロして、セヴランの頭をよしよししているのが、尊い。

「あ。あの・・・。私が代わりに・・・」

「ダメよ。ルネはエミール君のお世話で大変なんだから。リオネルが馬の世話も赤ちゃんのお世話もできないんだから、セヴランしかいないの!」

「ヴィーさんが馬の世話してもいいじゃないですか!」

「いやよ。私は町に行くから」

その瞬間、みんなの視線が私に刺さった。
な、なによ!私が町に偵察に行くのが、そんなに悪いのか?

「ちなみにヴィーの中では、どんな役割分担になってますか?」

「んー、リュシアンが馬の調教。セヴランが馬の世話。ルネが赤ちゃんのお世話。アルベールが男爵家の偵察。私が町で買い物兼偵察かな?」

だって、この町は封鎖されていて余所者がいない状態なんでしょ?。
そんな中に、大人のリュシアンやアルベール、セヴランが堂々と町を歩いてたらダメでしょ?
ここはやっぱり無害な子供でしょ?
私、外側は可憐な少女ですし?

「お嬢、ひとりで行くつもりか?」

「だって、ルネはエミール君のお世話があるし。さすがにエミール君連れて町を歩けないでしょ?」

意外と気づかれないかもしれないけど、そんな危ない橋をわざわざ渡りませんよ。

そして、男爵家の偵察はアルベールが適任だもん。
ゴロツキどもとやり合うことがあっても余裕だし、できれば男爵夫人がどういう状態なのか調べてほしいのだ。

「そうですね。ヴィーさん以外では私が適任でしょうね・・・。魔法の能力として」

ここでチラッとセヴランを見る、意地悪アルベール。
セヴランの魔法の先生でもあるアルベールとしては、セヴランの魔法習得のスピードに文句があるらしい。
セヴランもひゅっと肩を竦めて、だんまりを決め込んでいる。

「うーん・・・俺もあいつらの面倒をみなきゃだし・・・。確かに俺たちみたいな余所者が町を歩いてたら目立つしな・・・」

「それはヴィーでも同じですが、子供のほうが油断しますしね」

ふっふーん、だから私が町に偵察に行くのが正解なのよ!
そうと決まれば、出発よー!




ヒヒーン!
とバイコーンに威嚇されて、ひいーっと悲鳴を上げてうずくまるセヴラン。
手綱をグイッと引っ張るリュシアンの腕の筋肉がモリッと盛り上がった。
それをやや遠い目で見る私。

「いいですか。危なくなったらすぐに戻ってくること。誰かに捕まったら、遠慮なく防犯魔道具を使ってくださいね!」

ああ、私が造ったビービーって大音量でサイレンが鳴って、照明弾が打ちあがるやつね・・・。

「ふたりとも、返事は?」

「はい」

「・・・はい」

なんで、なんで・・・リオネルとふたりで町に行くことになったのよ!
この子の面倒なんて、無理よ?制御不能よ、この子?
はー・・・、絶対に何かが起きるわ。

一抹の不安を抱えながら、リオネルと手を繋いで、ポテポテと町の中心へと歩き始める。

おっかしいなー、こんなつもりじゃなかったんだけど・・・。


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