132 / 271
石を見つけましょう
実習が終わりました
しおりを挟むその日の夜。
Aランク冒険者が入れる鉱山で、魔鉱石はもちろん、それ以外に宝石としても重宝される鉱石をガッポリ掘り出して売買してきたアルベールはご機嫌でした。
憂鬱な気分でご飯を食べて、部屋に戻ってきてからもソファにだらしなく座って動こうとしない私たちに、そのアルベールが声をかける。
「どうしたんです?あんなに採掘するのを楽しみにしていたのに」
さわさわと優しい手付きで頭を撫でてくれるけど、そんなことではこの落ち込みからは解放されないのよ。
んで、セヴランがアルベールに別行動だった私たちのことをご報告。
「・・・それで。・・・っぷ!」
「あ、笑ったわね!」
私は、がばあっとソファから起き上がってアルベールを指差す。
「まあまあ、いいじゃないですか。ヴィーは運命の鉱石に興味は無いでしょうし、高値の鉱石は私とリオネル、セヴランで見つければいいでしょう?」
確かに・・・。
クイクイと私の服の裾を可愛く引いて、ルネが「あたしは?」て顔をしている。
「ルネは、運命の鉱石を見つけて武器を作って欲しいですか?」
アルベールの問いに、うーんと上を見上げながら暫し考えるルネ。
「ううん。いらない。武器は投げちゃうし。戦うのは素手だから?」
そうだよね。
体術メインで戦うし、武器は投げナイフとかだから運命の鉱石で作っても、すぐに投げちゃうもんね。
「じゃあ、ルネは適当に気になったときだけ掘ってもらえば?あとは坑道に出る魔獣を倒していればいいと思う」
「うん。そうする」
「俺は・・・。今回のディナールの町での目的は俺の運命の鉱石を見つけて、ガストンさんに武器を作ってもらうのに・・・。その俺の運が・・・運が・・・無い」
あんたも運は無いかもね。
孤児で、孤児院で一緒に育った義兄弟的な友達には、いいように利用されて使えなくなったらポイされて、しかもご丁寧に奴隷商に売られたなんて・・・運、無いわー。
「まあまあ、明日も私が高値の鉱石を採ってきますから、運命の鉱石が見つかるまで滞在すればいいですよ」
「アルベール!いいのか・・・俺のことでそんなに時間をかけても。お前っていい奴だったんだな!」
リュシアンがソファから起き上がり、アルベールの両手を握ってブンブン振っている。
ついでに自分の尻尾もブンブン大きく振っている。
そこへ笑顔のアルベールが、
「でも、ちゃんと期限は設けますよ?ズルズルといつまでも滞在しててもしょうがないでしょ。貴方も覚悟だけはしていてくださいね」
上げて落とす男、アルベール。
リュシアンのケモミミと尻尾が、瞬時にしょんぼりとなったとさ。
翌日。
私たちはギルドで借りた採掘道具と、自前の作業着を着て、本日の初心者講習場所の坑道へと集合しています。
私たち以外にも、いくつかの冒険者パーティーたちがいます。
昨日の採掘講師の巨人族のおじさんと、ちょっといかつい顔の人族のおじさんに引率されて、坑道へGO!
昨日より広さが3倍ぐらいある坑道だけど、ここには鉱石を採掘しに来たのではない。
ここには、坑道での魔獣討伐の講習を受けにきたのだ!
私は魔獣を倒すと言っても魔法でちょいちょいなので、みんなの後ろで応援しますよ。
前には、大剣を構えるリュシアンに、ピョンピョンその場で跳ねて準備運動をしているルネとリオネル。
今日は鞭ではなく、久しぶりに剣を握るセヴラン。
この坑道に出没するのは、鼠系の魔獣とモグラ型の魔獣だからそんなに強くはない。
ただ・・・数が多いだけ。
それぞれのパーティーに別れて、道別れしている坑道へと進む。
これぐらいは楽勝だよね?私たちって結構強いもん!と油断していたのが悪かったのか・・・。
「オラッ!犬っころ、何やってる!剣が岩盤に刺さってんぞ!」
「チビ猫ども!壁を足場にしていたら崩れんだろうが!」
「狐ーっ!お前はさっきから一匹に時間がかかり過ぎてる!」
・・・と、指導係のギルド職員に怒られまくりです。
あれれ?
みんなも焦った顔で立て直すけど、すぐ同じように注意される。
あ、モグラみっーけ!ほいっ。
「嬢ちゃんは・・・問題ないな」
うん、さっきから氷魔法でカチンコチンに凍らせているからね!
ダンジョンの魔獣は倒すと消えてしまう・・・ダンジョンに吸収される?らしいけど、一般の坑道に出る魔獣はギルドに持って行けば解体されて、素材と肉になる。
肉の鮮度は大事だから、凍らせるのです!
しかし・・・他のメンバーは坑道での戦い方が雑すぎて、ずっと叱られているなぁ。
リュシアンは武器が大剣で大きいのに、それを振りかぶって使うから岩盤に刺さりまくり。
ルネとリオネルは、身軽な動きで魔獣を仕留めに行くスタイルなんだけど、壁を足場に飛び跳ねて、獲物の魔獣を天井や壁に叩きつけるので、パラパラと岩盤から岩が崩れてくる。
セヴランの武器の使い方は問題ないんだけど、魔獣を倒すと「ひゃあああっ」と悲鳴を上げて暫し固まっているのよね?なにしてんの?
「感触が・・・。ずっと鞭だったので、久しぶりに剣を使ったら・・・魔獣の体に刃がこう・・・ザシュッとかグサッとか・・・感触が・・・」
青い顔でそんなこと言うのよ?
懐かしいわね、旅の始めにそんな顔をして、泣きながら魔獣を解体してたもんね。
結局、実習2日目も問題を残して終了したのだった。
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
7,536
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。