みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

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石を見つけましょう

本当の全員集合しました

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初めましての妖精さんと、水晶の洞窟の泉の周りでキャッキャッうふふとピクニックをしています。
たぶん、迷子のヴィーです。
現実逃避もいい加減にしないと・・・冗談で済まされなくなるわね。

「じゃあ、そろそろ仲間のところに戻りたいんだけど?」

「ンぐぐっ・・・モグモグ・・・ゴックン」

妖精よ・・・お菓子を口いっぱいに頬張り過ぎじゃないだろうか?

「もう、帰るの?」

「・・・あなたに言われると、ちょっと帰りづらいけど、仲間が心配しているから」

お茶とお菓子を互いに楽しみながら話を聞いたところ、このダンジョンは運命の鉱石を見つけるダンジョンではなく、ハイエルフの遊び場だった。
妖精さんから聞いたハイエルフ像では、ハイエルフはその長い生の弊害で感情が希薄で、ほぼ死んだように生きている種族だそうで、私がアルベールから聞いた話と一致するわ。

ただ、その魂が震えるような出会いをすると、まるでその時から時間が動き出すように感情が生まれ、覚醒する種族。

このダンジョンは覚醒する前のハイエルフの暇つぶしと、覚醒したハイエルフへの贈り物をする場所・・・って誰が決めたのかしら?そんなこと。
詳しいことは妖精さんにも分からないらしい。
決められた使命のまま、このダンジョンにずっと長いこと住んでいる妖精さん。
でも長い間、たぶん私たちの時間の感覚とは違う妖精さんが思う長い間、ハイエルフたちは遊びに来なくなったらしい。

そんなときに感じた久々のハイエルフの気配。
妖精さんは思わず、ダンジョンに遊びにくるように誘ってしまったと。
それが、私の頭の中に響いた「おいで」の声の正体だった。
思念波みたいな物でも飛ばしたのか?

そして、まんまとおびき寄せられたハイエルフもどきの私。
ちゃんと説明したのよ?私にハイエルフだという意識は無いし、もしかしたら人族とのハーフかもしれないって。
でも妖精さんの眼はキラリーンと光り、「騙せないわよ!」とばかりに胸を張って、私はハイエルフだと断言されてしまった。

ただ、まだ幼体のハイエルフなのに覚醒しているのは貴重で、下手したら寿命がエルフ並みに短くなるかもと心配されたけれども。
いや・・・そんなに長く生きたくないのですが・・・元人間としては・・・。

ハイエルフが覚醒する理由のほとんどが、いわゆる伴侶に出会ったときで、そうなると永久と思われる寿命がその伴侶と同じになるんだって。
なんでも、その伴侶が先に逝ってしまうと、ショックで長くは生きられないらしい。
なんだ、その純愛システムは・・・。

「淋しいけど・・・しょうがない。覚醒したハイエルフはひとりでは生きていけないもの。じゅあ、はい」

ポトンと手の平に落とされた、涙型の水晶。

「これが覚醒したハイエルフにあげる贈り物。大切にしてね」

「うん。でもこれ・・・何?ただの飾り?」

指で摘まんで掲げて見るけど、水晶がキラキラと輝くだけで特に何もない。
ついでに「鑑定」しても、水晶とだけ表示される。

「うん。でもね、これが必要になるときが必ず来るの。だからずっと持っていてね!」

ハシッと私の顔面に張り付いてお願いされた。

「うん、わかった」

わかったから、顔から離れてくれ、微妙に苦しいのだよ。

「・・・仲間のところに、送ってあげるね」

妖精さんはヒラヒラと私の周りを飛び回る。
キラキラと妖精の体から鱗粉みたいに光が零れ出して、私の足元に不思議な魔法陣を描いていく。

「わあっ、キレイね」

魔法陣が綺麗で嬉しくて、妖精さんの顔を見ると、涙でぐしゃぐしゃに崩れていた。
ひとりぼっちの妖精さん。
かわいそうな、妖精さん。

「また、来るよ。贈り物はもういらないから、あなたに会いに・・・また来るからね!」

下の魔法陣から眩い光が溢れ出し私の体を包んでいく。
私は頭上に飛ぶ妖精さんに手を振って、再会の約束をするのだった。












「で、駄犬は何を持ち帰ってきたのですか?」

嫌味エルフの毒舌が酷すぎる。
ぐぬぬぬと唸りながら、俺はその質問もされたくなかったと臍を噛む。

「なんですか?手に入れられなかったのですか?貴方が一番騒いでいたのに?」

「・・・手に入れた。ただ・・・あまり、そのう・・・」

言いたくないが、この状況では仕方ない。
俺は諦めて魔法鞄に手を突っ込み、拾った鉱石の中で一番小さい物を取り出す。

「・・・何ですか、これ」

「知らん」

俺が取り出した物にアルベールは首を傾げる。
聞いたところ、セヴランはミスリルを、リオネルはアダマンタイトらしき鉱石を、ルネはキラータランチュラの魔眼を手に入れたらしい。
なんだよそれ、羨ましい。

「それ・・・鉄とか錫とかの混合物に見えますが・・・」

ちっ、「目利き」のスキルを持つセヴランの言葉にムカムカと腹が立つ。

「これだけですか」

「ああ。ただ似たような鉱石が・・・リオネルぐらいの量がある」

「全部、持ってきたんですか?」

「しょうがないだろうっ!なんか残せなかったんだよ!拾っていかないと後悔するような・・・なんかそんな気持ちだったんだよ」

俺はヤケになって叫んで、みんなに背を向けてお茶をズゾゾゾと啜った。
くそうっ、俺だって運命の鉱石はミスリルやオリハルコンやアダマンタイトみたいなレアな鉱石だと思ってたよ。
俺は神狼族だし希少種だから、当然そういうレア物が運命の鉱石だと信じていたよ!
何が腹立つって、俺がそういう種族を鼻にかけるような、ちっぽけな奴に成り下がっていたことだ。

「ま、何か意味かあるんでしょう。ガストンさんに渡してみればわかりますよ」

クククと笑いを嚙み殺して、鉱石を俺に返すアルベール。
ちえっ、楽しみにしていたのに・・・。

お嬢のことも合わせてズウウウゥゥゥンと落ち込んだ俺の耳に、ヒュルルルルと風切り音が。
なんだ?と見上げた先に小さな何かが見えた。

「・・・っ!」

立ち上がりダッシュして、その落下地点で腕を広げると、「きゃああああ」という悲鳴と共にドスンと落ちてきた、俺の腕の中に。

「お嬢!」

「あーっ、びっくりした!あれ?リュシアン。おっ、全員揃っているみたいね、良かったわ」

俺の腕の中でお嬢がにっかりと笑っている。

「よかった・・・お嬢」

俺は、お嬢の小さな体をぎゅっと抱き込んで、深く息を吐いた。
本当に、よかった、お嬢が無事で。
そして、俺とお嬢の周りにみんなが集まって・・・ニコニコ顔でそれぞれの無事を喜んだんだ。

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