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石を見つけましょう

これからどうするか、訊かれました

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翌日、目を覚ますとすっかり日は高く昇っており、隣のベッドで寝ているはずのアルベールは、すでにいなかった。
ぐっすりとたっぷり寝たはずなのに、半分寝ぼけたままで顔を洗い服を着替えてリビングへ。

「あれ?」

どうやら、私以外はみんな出かけているみたいだった。
どこへ行ったんだろうと首を捻るが、そのうち戻るだろうと楽観視して、とりあえずブランチにしよう。

ミルクティーを淹れて、無限収納から総菜パンと甘い菓子パンを出して、もきゅもきゅ。
ゆっくりと食べていたパンがあとひと口分残る頃、まずはリュシアンとリオネルが帰ってきた。

「おっ!お嬢。やっと起きて来たか」

「おはよー」

「もう、昼だぞ。あー、腹減った」

リュシアンはリオネルを連れてカヌレとブリュレの散歩に行ってきたらしい。
そうね、昨日、宿の馬丁に怒られたものね・・・。

ここディナールの町には長逗留する冒険者も多く、その人たちが連れている馬や騎乗用の魔獣のために専用の馬場があるんですって。
裾野の町の一角に設けられていて、かなりの広さのスペースに馬と魔獣、魔獣は強さのランク別に区分けされている。
カヌレとブリュレはその中でもトップクラスの魔獣だったので、係の人にくれぐれも目を離さないように注意されたとか。
そこで思いっきり走らせてきたと、いい笑顔で報告するリュシアン。
あれね、前世の世界のドッグランみたいな場所よね。

「それよりも・・・リオネルはなんで連れて行ったの?乗れないでしょ?」

乗馬をさせた覚えがないから、魔獣馬にだって乗れないでしょ?

「ああ。俺の前に乗せたけど、こいつがいるとあいつら大人しいからな」

横目でリオネルを見ると、私の残したパンをじっーと見つめている。
私は取られる前にひょいと口に運んでしまう。
もぐもぐ、ゴックン。
そ、そんな恨めしい顔で見ないでよっ!

「セヴランがついでに昼飯買ってくるから、もうちょい待てよ、リオネル」

リュシアンが大きな手で、リオネルの頭をグワングワンと揺れる強さで撫でる。

「セヴランたちは?」

「ああ。アルベールの爺はギルドにダンジョンの報告とドロップアイテムの買取な。セヴランとルネは市場に買い物だ」

「買い物?」

はて?何か必要な物があったかな?

「なんだよお嬢、覚えてないのか?昨日夕飯食いながら、小麦粉が無いとか砂糖が足りないとか呟いてたぞ?半分寝てたけどな」

・・・覚えてないわ。

「そうね。カヌレとブリュレにおやつを全部あげてしまったから、作らなきゃと思ったのよね」

私は顎に人差し指を当てて、視線を上に上げて昨日のことを思い出していく。

「そうそう、作ろうと思ったけどリュイエの町では粉物は買い足しできなかったから、もう無いのよ小麦粉とか」

お菓子を作りたくても作れないのよねーと、笑って言うと、ガシッとリオネルに両肩を掴まれた。

「え?何?なに、なに?」

「・・・お菓子・・・ない?」

う、うん。
私が頷くと、リオネルはギリッと顔つきを厳しくして、私の体を前後に揺さぶりながら「おーかーしー!」と騒ぐ。
作る!作るから!手を離してよっ!
体がガックンガクンと揺らされて・・・。
き・・・きぼち・・・わる・・・い。

私の顔から血の気が引いたのを見て、リュシアンが慌ててリオネルを剥がしてくれた。
ふーっ、恐ろしい・・・リオネルのお菓子愛。










「おや、私が最後でしたか」

リュシアンたちの後に、すぐにセヴランとルネも宿に戻ってきた。
私はセヴランの買ってきた物を確認して、さらに買い足したい物のリストを作る。
ルネは買ってきたお昼ご飯を並べて、人数分のお茶を淹れてくれた。

おい!リュシアンにリオネル!まだアルベールが帰ってきてないんだから、食べちゃダメ!
なーんてやりとりをしていたら、帰ってきたのだアルベールが。

「お疲れ様!ギルドの買取って、いいお金になった?」

「まあまあですね。それは、ご飯を食べた後に話しましょう」

そして、肉串ばかり食べるリュシアンとリオネルの口に葉っぱを突っ込んだり、味付けに文句を垂れるセヴランに稲荷寿司を出してやったりと忙しない昼食を終えて。

「ヴィー。貴方、これからどうするつもりですか?」

「はにゃ?」

なんだ、そのザックリとした質問。

「これから・・・って?」

コテンと首を傾げてアルベールの顔を見つめると、彼はゴホンと咳払いをして。

「私たちは国を出ることを第一の目的としていました。その目的は達成されて、次はどうするのかってことです」

「次・・・。うーん・・・そんな急に言われても・・・」

これからのことか・・・。

「そうねぇ。アンティーブ国まで無事に辿り着いたから、やっぱり王都まで行きたいかな?この国に定住するとしてもやっぱり、どんな国なのか治安とか国民性とかは知りたいし」

あんまり酷い治安だったり、国民性だったら別の国に移動することも考えたい。

「アンティーブ国が定住するのに最適な国だって分かったら、次は拠点となる町を探したいわ」

冒険者稼業メインであちこちフラフラするのもいいけど、拠点となる場所が欲しい。

「そう考えると、みんなで住む家が欲しいわね。それなりの広さになるかな?カヌレとブリュレもいるから厩がある家ね」

そうなると庭とかもある方がいい・・・下位貴族の屋敷か裕福な商人の屋敷ぐらいの家がいいかも。

「余裕ができたら、拠点の町に小さくてもいいから店を持ちたいかも」

「店ですか?」

私はコクンと頷いてから、セヴランに視線を送る。

「セヴランはお店・・・やりたいかな?って。商人として生きてきた今までの経験を活かしてあげたい・・・かな?」

「ヴィーさん」

「あー、でもその拠点にずっと居るわけじゃないの。1年に1回は旅に出たい。もっといろんな所に行きたいし、いろんな経験をしてみたい」

せっかくファンタジーな世界に転生したんだもの!

「ふむ、リュシアンとかリオネルは拠点にいるときも冒険者として活動したいでしょうから。そうなると拠点となる町は近くに強い魔獣が生息している森があるか、中級以上のダンジョンを抱えてる領地がいいですね」

うんうん、とリュシアンがアルベールの意見に同意する。

「そうだな。そういう場所は、町も大きく人の往来もあって商売するのにもいいぞ。拠点でお嬢がゆっくりしているときは、俺たちはその町で冒険者として依頼を受けてればいいし」

「私は店を切り盛りして、旅に出るときは一緒に行って、行商しながら旅をすればいいですしね」

「ルネは、お屋敷でメイドします!」

「・・・お菓子」

おおうっ、みんなも私の未来記に乗り気になったみたい。

「では、そのためには必要な物があります・・・」

アルベールが凄く真剣な顔で、ひとりひとりを確認するように見回す。

「それは、な・・・なに?」

「それは・・・ズバリ、お金です!」

チャリーン!
頭の中でお金の音が聞こえた気がした。
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