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悪を倒しましょう
白い部屋に迷いこみました
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物見の塔の屋上から、四方を警戒しつつも仲間が魔獣相手に戦っているのを、ついつい見守ってしまう。
ヴィーさんの兄であるヴィクトル殿下と、鬼畜の一族リシュリュー辺境伯の一員のベルナール様と和やかに会話を楽しむつもりもないし。
なんとなく気まずいままに、時間を潰していました。
カミーユさんが、リオネルの「それ、唐揚げの肉!」との指摘に嬉々としてコカトリスを狩って、太い木の幹に逆さに吊るして血抜きを始めたのも。
「熊肉!熊肉!」と跳ねるように、自分の何倍もの大きさの熊の魔獣に飛び掛かっていったリオネルの雄姿。
二人の食材調達?の邪魔にならないように、狡猾な魔獣であるクレイジーモンキーを瞬殺していくルネ。
そして・・・馬車を牽くよりも生き生きと闊歩している魔獣馬の二頭。
私の仲間は・・・みな規格外すぎる。
自分だけがマトモで平凡なんだなぁ・・・と改めて実感しました。
外の敷地内に捕まっていた魔獣はほとんど討伐され、小悪党どもは騎士や冒険者に捕縛されました。
別の建物に捕まっていたらしい亜人たちは解放されましたし、なんだか人族も何人か捕まっていたみたいでしたが、そちらも騎士さんたちが介抱しています。
外は私たちの仲間が完全に掌握して、状況が落ち着いたみたいですね。
そもそも、私の足元で大暴れしているはずの主要メンバーはどうしたのでしょう?
アルベールにリュシアン、そして冒険者のトップランクのクリストフさんとヴァネッサさんが一緒なら、大抵の敵は大丈夫でしょうけど。
でも、ヴィーさんが心配です。
もちろん、仲間の誰よりも魔法が得意で、悪知恵が働いて、命根性の汚い人ですけど、まだ8歳の女の子ですからね。
私は、ふうーっと深く息を吐いて視線を遠くへと飛ばしました。
・・・?
あれ?なんか、ミュールズ国側から馬車が一台近づいてきますね?
こんな夜更けに?馬車が一台だけで?こんな怪しい施設に向かってくる・・・。
「あのぅ、すみません」
なるべくなら関わり合いたくないけれど、私の今のお役目は監視ですから。
「ミュールズ国側から馬車が接近してます」
私の報告に、反対側の川を監視していたヴィクトル殿下とお付の従者がこちらへと小走りに走ってくる。
たまたま、塔からクリストフさんとヴァネッサさんが外へと出てきたところだった。
「ああ、丁度いいですね。クリストフさんたちなら対処できるでしょう」
どんな敵でもね?
まさか、ミュールズ国の国王その人がお越しになられた訳じゃあるまいし。
ははは、と私は乾いた笑いで誤魔化した。
私たちが上から見守る中、クリストフさんは何人かの騎士たちを連れ、馬車のために門扉を開けてやる。
疑問にも思わないのか、怪しい馬車はそのまま敷地内へと進み・・・拘束された。
「呆気ないですね」
わざわざ捕まりに来たんでしょうか?
フサンと自慢の尻尾をひと振りして、私はその馬車への興味を無くしました。
その声が聞こえるまでは・・・。
「離せ―っ!この馬車がどこの馬車だと思ってる!ミュールズ王族御用達、モフロワ商会の馬車だぞ!私はその跡取りのギャエル様だ!!」
真っ白い空間・・・。
ガブリエルとリュシアンの間に入り、奴の攻撃を代わりにこの身に受ける直前、眩しい光に包まれて、気が付いたらこの白い部屋にポツンと一人。
え?私、また死んじゃった?
困ったな・・・、こりゃまた転生でもするのかな?
今度は地球に戻してもらえるのかな?・・・だとしたら、やっぱり日本がいいかなぁぁぁ。
と、現実逃避してますが、だってこの白くて何もない空間ってアレでしょ?神様に会っちゃうヤツでしょ?
「しかし・・・人を呼んでいて、姿を現さないってどういうことよ!」
そもそも、最初の転生のときに神様に会ってないわよ!
プリプリ怒ってみたが、状況は何も変わらないので、とりあえず前進してみる。
この不思議空間なんだから、迷子になることもないでしょ。
第一、ここがどこかすらわからないんだから。
ポテポテとゆっくりとした歩幅で歩きながら・・・リュシアンのことを考える。
あいつ、大丈夫かしら?
私が死んじゃったことで責任とか感じないでほしいんだけど・・・無理だろうなぁ。
あっ、ちゃんとガブリエルの奴は捕縛できたかな?逃がしてたら承知しないんだから!
アルベールは、私がいなくても大丈夫だよね?エルフの里に帰ればまだ家族はいるんだし・・・私のことで落ちこまないで欲しいな・・・。
いや、アルベールのことだから、ガブリエルをボコボコにして、リュシアンを吊るし上げてそう・・・。
お願い。手加減してあげてー。
セヴランもルネもリオネルも、私がいなくて大丈夫かな?
セヴランはもう少し強くなって、ちゃんと天狐族の力を使えるようになって欲しいけど・・・あいつは精神を鍛えないとダメだな。
ルネとリオネルは、ちゃんとご飯食べて大きくなって欲しいな。
あー・・・もう、みんなと会えないのか・・・。
会えないのか・・・。
「・・・やだな、それ。・・・会いたいな・・・」
ピタリと足が止まり、ボタボタと大粒の涙から両目から溢れ両頬をびっしょり濡らし、顎を伝って足元に落ちる。
ううっ、ぐすぐす・・・うっ、うえーん。
「会いたいよー。やだよー。まだ、死にたくないよー!アルベール、リュシアン、セヴラン、ルネ、リオネル・・・。うえぇぇぇぇん、助けにきてよーっ!」
しゃがみ込み、顔を上に向けて、子供のようにビービーと泣きわめく私。
だって、死にたくないんだもん。
まだまだ、みんなと一緒にいたいんだもん。
「うえー、うえぇぇぇぇぇぇぇん!」
クスクスクス・・・。
「えぇぇぇーん・・・?」
クスクスクス。
あはははは。
誰やねん!笑ってんのは!
ギッと笑い声がした方向を睨むと、そこには・・・。
「あなたが、シルヴィーね?」
とっても綺麗な・・・美男美女の恋人同士が立っていました。
リア充ですか?
とりあえず、爆発してください。
ヴィーさんの兄であるヴィクトル殿下と、鬼畜の一族リシュリュー辺境伯の一員のベルナール様と和やかに会話を楽しむつもりもないし。
なんとなく気まずいままに、時間を潰していました。
カミーユさんが、リオネルの「それ、唐揚げの肉!」との指摘に嬉々としてコカトリスを狩って、太い木の幹に逆さに吊るして血抜きを始めたのも。
「熊肉!熊肉!」と跳ねるように、自分の何倍もの大きさの熊の魔獣に飛び掛かっていったリオネルの雄姿。
二人の食材調達?の邪魔にならないように、狡猾な魔獣であるクレイジーモンキーを瞬殺していくルネ。
そして・・・馬車を牽くよりも生き生きと闊歩している魔獣馬の二頭。
私の仲間は・・・みな規格外すぎる。
自分だけがマトモで平凡なんだなぁ・・・と改めて実感しました。
外の敷地内に捕まっていた魔獣はほとんど討伐され、小悪党どもは騎士や冒険者に捕縛されました。
別の建物に捕まっていたらしい亜人たちは解放されましたし、なんだか人族も何人か捕まっていたみたいでしたが、そちらも騎士さんたちが介抱しています。
外は私たちの仲間が完全に掌握して、状況が落ち着いたみたいですね。
そもそも、私の足元で大暴れしているはずの主要メンバーはどうしたのでしょう?
アルベールにリュシアン、そして冒険者のトップランクのクリストフさんとヴァネッサさんが一緒なら、大抵の敵は大丈夫でしょうけど。
でも、ヴィーさんが心配です。
もちろん、仲間の誰よりも魔法が得意で、悪知恵が働いて、命根性の汚い人ですけど、まだ8歳の女の子ですからね。
私は、ふうーっと深く息を吐いて視線を遠くへと飛ばしました。
・・・?
あれ?なんか、ミュールズ国側から馬車が一台近づいてきますね?
こんな夜更けに?馬車が一台だけで?こんな怪しい施設に向かってくる・・・。
「あのぅ、すみません」
なるべくなら関わり合いたくないけれど、私の今のお役目は監視ですから。
「ミュールズ国側から馬車が接近してます」
私の報告に、反対側の川を監視していたヴィクトル殿下とお付の従者がこちらへと小走りに走ってくる。
たまたま、塔からクリストフさんとヴァネッサさんが外へと出てきたところだった。
「ああ、丁度いいですね。クリストフさんたちなら対処できるでしょう」
どんな敵でもね?
まさか、ミュールズ国の国王その人がお越しになられた訳じゃあるまいし。
ははは、と私は乾いた笑いで誤魔化した。
私たちが上から見守る中、クリストフさんは何人かの騎士たちを連れ、馬車のために門扉を開けてやる。
疑問にも思わないのか、怪しい馬車はそのまま敷地内へと進み・・・拘束された。
「呆気ないですね」
わざわざ捕まりに来たんでしょうか?
フサンと自慢の尻尾をひと振りして、私はその馬車への興味を無くしました。
その声が聞こえるまでは・・・。
「離せ―っ!この馬車がどこの馬車だと思ってる!ミュールズ王族御用達、モフロワ商会の馬車だぞ!私はその跡取りのギャエル様だ!!」
真っ白い空間・・・。
ガブリエルとリュシアンの間に入り、奴の攻撃を代わりにこの身に受ける直前、眩しい光に包まれて、気が付いたらこの白い部屋にポツンと一人。
え?私、また死んじゃった?
困ったな・・・、こりゃまた転生でもするのかな?
今度は地球に戻してもらえるのかな?・・・だとしたら、やっぱり日本がいいかなぁぁぁ。
と、現実逃避してますが、だってこの白くて何もない空間ってアレでしょ?神様に会っちゃうヤツでしょ?
「しかし・・・人を呼んでいて、姿を現さないってどういうことよ!」
そもそも、最初の転生のときに神様に会ってないわよ!
プリプリ怒ってみたが、状況は何も変わらないので、とりあえず前進してみる。
この不思議空間なんだから、迷子になることもないでしょ。
第一、ここがどこかすらわからないんだから。
ポテポテとゆっくりとした歩幅で歩きながら・・・リュシアンのことを考える。
あいつ、大丈夫かしら?
私が死んじゃったことで責任とか感じないでほしいんだけど・・・無理だろうなぁ。
あっ、ちゃんとガブリエルの奴は捕縛できたかな?逃がしてたら承知しないんだから!
アルベールは、私がいなくても大丈夫だよね?エルフの里に帰ればまだ家族はいるんだし・・・私のことで落ちこまないで欲しいな・・・。
いや、アルベールのことだから、ガブリエルをボコボコにして、リュシアンを吊るし上げてそう・・・。
お願い。手加減してあげてー。
セヴランもルネもリオネルも、私がいなくて大丈夫かな?
セヴランはもう少し強くなって、ちゃんと天狐族の力を使えるようになって欲しいけど・・・あいつは精神を鍛えないとダメだな。
ルネとリオネルは、ちゃんとご飯食べて大きくなって欲しいな。
あー・・・もう、みんなと会えないのか・・・。
会えないのか・・・。
「・・・やだな、それ。・・・会いたいな・・・」
ピタリと足が止まり、ボタボタと大粒の涙から両目から溢れ両頬をびっしょり濡らし、顎を伝って足元に落ちる。
ううっ、ぐすぐす・・・うっ、うえーん。
「会いたいよー。やだよー。まだ、死にたくないよー!アルベール、リュシアン、セヴラン、ルネ、リオネル・・・。うえぇぇぇぇん、助けにきてよーっ!」
しゃがみ込み、顔を上に向けて、子供のようにビービーと泣きわめく私。
だって、死にたくないんだもん。
まだまだ、みんなと一緒にいたいんだもん。
「うえー、うえぇぇぇぇぇぇぇん!」
クスクスクス・・・。
「えぇぇぇーん・・・?」
クスクスクス。
あはははは。
誰やねん!笑ってんのは!
ギッと笑い声がした方向を睨むと、そこには・・・。
「あなたが、シルヴィーね?」
とっても綺麗な・・・美男美女の恋人同士が立っていました。
リア充ですか?
とりあえず、爆発してください。
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