224 / 226
エピローグ
帝国と冒険者
しおりを挟む
十年間の王様業務、お疲れさまでした私!
とうとう、解放されるときが来ましたよ。
先日、無事に私の退位に関しての諸々の手続きが終了しまして、昨日、ヴィクトル兄様が正式に王様になりましたーっ!
わー、パチパチ。
ヴィクトル三世として、戴冠式と国民へのお披露目を済ませ、祝いの夜会も終わり、今日は私たちの旅立ちの日です。
「・・・もう行ってしまうのかい?」
ヴィクトル兄様・・・そんな切なそうな眼で見つめないでください。
「うん! 王都の冒険者ギルドで再登録してリシュリュー辺境伯領地を目指すわ」
そして、飛竜を借りてアンティーブ国のアラスの町までひとっ飛びして、ゴダール男爵じゃなかった、今はゴダール子爵領地へと。
十年の間にシャルル様もベルナール様もなんとか腹黒い貴族とのやりとりにも慣れ、国王となるヴィクトル兄様の側近として及第点を貰えていた。
レイモン氏は三年前にブルエンヌへと帰っていきました。
いや、別の理由でさっさと王都を後にしたんだけどさー。
アデル王子とリリアーヌ姉様が結婚して、ミシェル陛下は自分にもしものことがあっても、二人の子供を世継ぎにすればいいと公言した。
なのでミシェル陛下は、いまだに婚約者もいない、独り者の王様である。
私は、どうせ十年経ったら退位するのがわかっていたので、そもそも婚約も結婚もない。
でも、ヴィクトル兄様の婚約者は探さないとねー、とレイモン氏とオルタンス様と話し合っていたのだが・・・。
まさかの伏兵が出てきたのだ!
レイモン氏は愛妻家なんだけど、十年近くも王都に単身赴任なのが嫌だったのか、すぐに妻子を呼び寄せて王城で家族と一緒に生活を始めた。
まだトゥーロン王国の政情が安定していないときだったから、お城で一緒に住めば? と進言したのは私だけど、まさかそうなるなんて思わないじゃない。
レイモン氏の愛娘、カロリーヌ姫がヴィクトル兄様に一目惚れするなんて!
ちょっと年が離れているけど、好きになったのはカロリーヌ姫のほうだから、ヴィクトル兄様がロリコンの訳ではない。
最初の頃は、ヴィクトル兄様も狼狽えていたしね。
レイモン氏は反対したけど、いや、あの人は誰が相手でも反対したと思うけど、意外にオルタンス様を始めリシュリュー辺境伯家は大賛成。
シャルル様やベルナール様、冒険者ギルドのロドリスさんも賛成だし、お嫁に行ったリリアーヌ姉様も賛成。
外堀をしっかりと埋められた結果、二年前に無事婚約し、来年の春には結婚式ですよ。
「シルヴィーも結婚式には参列してくれるよね?」
「うっ! しかし・・・私はそのぅ・・・」
本当の妹ではないのですよ?
「絶対だよ。カロリーヌもシルヴィーと会えるのを楽しみにしているんだ」
今は、何故かブルエンヌの屋敷で花嫁教育中のカロリーヌ姫だけど。
「・・・はい」
最後にヴィクトル兄様とハグしてお別れです。
アルベール、リュシアン、セヴラン、ルネ、リオネルも、この十年間で仲良くなった人たちと別れを惜しんでいる。
・・・いやいや、二年に一度は帰ってこいって命じられているから、ちょくちょく顔を出しますけどね?
久しぶりにカヌレが牽く馬車に乗り込んで出発!
窓から大きく体を乗り出して手を振って・・・ヴィクトル兄様たちの姿が見えなくなるまで手を振って・・・ぐすん。
「いや、すぐに帰ってくるじゃないですか」
うるさい、セヴラン! 涙腺が弱いお年頃なのだ。
はあーっ、馬車の中でお茶を楽しみながら十年間の王様生活を思い出していたけど、やっぱり・・・あれが一番強烈だったわー。
即位して五年ぐらい経った頃だったかしら? 各国に帝国から親書が届けられた。
帝国よ? あの帝国よ? 一体何を企んでいるのよーっ!
「あん? 皇帝即位?」
その中身は、誰が皇帝になるかで分裂し内紛が絶えなかった帝国にン十年ぶりに皇帝が誕生したという報せ。
しかも、無理やり併合されていてた小国の独立戦争も起きていた帝国なのに、その小国を一つにまとめ上げた男が皇帝になったとか。
その親書の真偽を確かめなければと、我が国の商業ギルドに残ってくれたオレールさんと冒険者ギルドマスターのロドリスを招集して、会議よ、会議。
「帝国の皇帝についての情報は・・・あまりなく・・・」
クッと苦しそうに顔を歪めるオレールさん。
情報部というか暗部というか、そういうことに長けているオレールさんたちは、もちろんピエーニュの森で隣接している帝国の情報は集めていた。
皇帝になったという青年が、いち地方領地から軍を起こしたのも知っていた。
しかし、その後、小国をまとめ上げ帝都に攻め上ってくるスピードが桁違いに速かったらしい。
正直、青年の素性を確かめるところまでしか、手元に情報がないと悔やんでいる。
「つまり、どんな奴なのか、どんなことを考えているのかはわからん、てことか?」
「ええ、ロドリス殿の言う通りです。過去の皇帝のように領土拡大を狙っているのか・・・それとも荒れた国を立て直す賢帝となるか。まだ未知数です」
ちなみに素性は、前皇帝の庶子・・・らしい。
皇帝の血族を現す銀色の瞳が証拠らしいけど・・・どうなんでしょうね?
「魔法や魔道具で瞳の色は変えられるしねー」
私は、帝国からの親書をピラピラと手で弄びながら言う。
なんせ、私自身が金色の瞳を変えていたんだから。
「・・・小国がそれぞれの思惑を越えて、本当の意味で一つの国として纏まっているのならば、脅威です」
シャルル様の顔が若干青い。
トゥーロン王国の今の国力は、帝国どころかどこの国を相手取っても厳しい戦いになる。
リシュリュー辺境伯ぐらいしかまともな戦力ないしね。
「・・・こんなときになんなんだが・・・実は、冒険者ギルドマスターとして報告しなければならないことがある」
ロドリスさんが急に真面目な顔をした。
「ど・・・どうしたの?」
「ピエーニュの森に変化が見られるらしい。森の奥で棲息しないはずの中級ランクの魔獣がいた。カミーユが調査をしているが、はぐれ魔獣ではなく・・・こちら側に流れてきているらしい」
カミーユさんの見立てでは、ピエーニュの森の向こう側、つまり帝国側に多く棲息していた高ランク魔獣がこちら側、トゥーロン王国側に移動してきていると。
「移動つーか、正しい棲息分布になってきているらしい」
今まで、トゥーロン王国側に低ランクの魔獣しかいなかったのが不自然だとカミーユさんは断言した。
「まさか、なにかの結界とかで魔獣の行き来が制限されていたとか? 今回の皇帝誕生の動きと関連があるの?」
うーん、と会議出席者全員で悩むが答えが出ない。
しょうがない、没交渉だった帝国の内情なんて知るはずもなく、情報通のオレールさんたちでさえお手上げなのだ。
「ふーん。新しい皇帝ねぇ・・・。ん?」
私は親書の最後に記されていた皇帝本人のサインの下に違和感を持った。
光に透かしてみると・・・何か書いてある?
「ファイアー」
掌にポワッと蝋燭の火程度の火魔法を展開させ、その上に親書を翳す。
「うわっ! 出た」
炙ったら文字が浮き出てきましたよ。
「・・・おいおい」
そこに書かれていたのは、懐かしい日本語でした。
「まっさか、帝国の皇帝があっちからの転生者だとは思わないわよね。しかも人族と魔族のハーフで私より劣るけどチート能力持ちだなんて」
モグモグとマカロンを次々に口に運びながら、当時のことを思い出す。
その親書に書かれていた内容は、皇帝の日本での名前と職業・・・て学生だったらしいけど。
あとは切々たる要望で、「日本食が恋しい」と。
すぐに送ったわよ、日本食っぽいもの。
それからミュールズ国やアンティーブ国に対しては帝国に対して少し様子を見てくれるように頼んで、特にアンティーブ国には連合国に対して牽制して欲しいって頼んだわよ。
それからは、いい文通相手です。
今回、私が退位することを知って、「遊びに来てくれ」と誘われているので、いつか行ってみたい!
独自にチハロ国と貿易も始めたみたいだしね。
「お嬢。着いたぞ」
「はーい」
では、冒険者ギルドで冒険者登録しましょうか。
Aランクのアルベールには期限はないけど、まだまだ駆け出し冒険者だった私たちは十年間冒険者としての活動をしていなかったので、資格がなくなってしまった。
なので、王都の冒険者ギルドで再登録です!
「陛下・・・じゃなかった。嬢ちゃん、本当に冒険者になるのか?」
ギルドマスターの執務室で出迎えてくれたロドリスさんはしょっぱい顔で、サブマスのモーリスさんはニコニコ顔だ。
「そうよ。名前もヴィー・シルヴィーにして登録よ」
ちなみに、みんなもファミリーネームを「シルヴィー」にして登録です。
ガシガシと髪を掻きまわしたあと、疲れた声でロドリスさんは私たちの冒険者登録手続きをしてくれました。
実際にしてくれたのは、モーリスさんだけど。
「はああっ、また一番下からやり直しか・・・」
「いいじゃねぇか。魔獣討伐してたら、すぐに上がるぞ」
リュシアンは軽く言うけども、セヴランなんか涙目で新しい冒険者ギルドカードを握りしめているわよ?
「ああ・・・せっかく、鞭から離れていたのに・・・。最初からやり直しですぅ」
アンタ・・・ちゃんと鞭スキルを磨いておきなさいよ。
「ヴィー様。ルネの新しいカード、ピカピカです!」
かわいい黒猫から、ダイナマイトバディの黒猫お姉様に成長したルネだが、中身はかわいい子猫のままである。
愛い!
「・・・。ちっ」
リオネルは舌打ちしたあと、カードをポイッと自分のアイテムボックスに入れる。
身長も伸びて青年らしい体付きになって、もの凄いイケメンに育ったリオネルだけと、中身は食いしん坊なバトルジャンキーのままだ。
アルベールはモーリスさんと言葉を交わしたあと、私たちの背中を押して部屋から出す。
「さあさあ、自分たちのステータスも確認しましたね。ある程度の無茶はいいですけど、張り切りすぎて怪我などしないように。では、行きましょう」
・・・ステータスか・・・。
冒険者に登録するときの水晶型魔道具に手を翳すと、自分のステータスが確認できる。
ギルドカードには、名前と年齢、種族と職業みたいなものが記載されるだけなんだけど、自分にしか見えないステータス表示には全て記載されている。
私は自分の能力「鑑定」でいつでも見れるから、気にしないけど。
「んー! さあ、馬車に乗って行こう!」
どこまでも、みんなで行こう! 楽しいことも苦しいことも一緒に乗り越えて!
名前 ヴィー・シルヴィー
性別 女
年齢 十八歳
種族 ハイエルフ
<スキル>
全魔法属性 生活魔法 鑑定(探査・探知)MAX 隠蔽 料理 裁縫 算術 魔力操作 魔力感知 身体強化(強)
身体系耐性MAX 精神系耐性MAX 物理攻撃耐性(強) 魔法攻撃耐性(強) 熱冷耐性(強)
無限収納
<称号>
異世界転生者 波乱万丈万歳人生 この世を統べる者≪NEW≫
――おわり――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
なんとか更新を続けて最後まで書くことができました。
みなさま本当に、ありがとうございます。
まだ、番外編など書く予定がございますので。もうしばらくお付き合いください。
沢野 りお
とうとう、解放されるときが来ましたよ。
先日、無事に私の退位に関しての諸々の手続きが終了しまして、昨日、ヴィクトル兄様が正式に王様になりましたーっ!
わー、パチパチ。
ヴィクトル三世として、戴冠式と国民へのお披露目を済ませ、祝いの夜会も終わり、今日は私たちの旅立ちの日です。
「・・・もう行ってしまうのかい?」
ヴィクトル兄様・・・そんな切なそうな眼で見つめないでください。
「うん! 王都の冒険者ギルドで再登録してリシュリュー辺境伯領地を目指すわ」
そして、飛竜を借りてアンティーブ国のアラスの町までひとっ飛びして、ゴダール男爵じゃなかった、今はゴダール子爵領地へと。
十年の間にシャルル様もベルナール様もなんとか腹黒い貴族とのやりとりにも慣れ、国王となるヴィクトル兄様の側近として及第点を貰えていた。
レイモン氏は三年前にブルエンヌへと帰っていきました。
いや、別の理由でさっさと王都を後にしたんだけどさー。
アデル王子とリリアーヌ姉様が結婚して、ミシェル陛下は自分にもしものことがあっても、二人の子供を世継ぎにすればいいと公言した。
なのでミシェル陛下は、いまだに婚約者もいない、独り者の王様である。
私は、どうせ十年経ったら退位するのがわかっていたので、そもそも婚約も結婚もない。
でも、ヴィクトル兄様の婚約者は探さないとねー、とレイモン氏とオルタンス様と話し合っていたのだが・・・。
まさかの伏兵が出てきたのだ!
レイモン氏は愛妻家なんだけど、十年近くも王都に単身赴任なのが嫌だったのか、すぐに妻子を呼び寄せて王城で家族と一緒に生活を始めた。
まだトゥーロン王国の政情が安定していないときだったから、お城で一緒に住めば? と進言したのは私だけど、まさかそうなるなんて思わないじゃない。
レイモン氏の愛娘、カロリーヌ姫がヴィクトル兄様に一目惚れするなんて!
ちょっと年が離れているけど、好きになったのはカロリーヌ姫のほうだから、ヴィクトル兄様がロリコンの訳ではない。
最初の頃は、ヴィクトル兄様も狼狽えていたしね。
レイモン氏は反対したけど、いや、あの人は誰が相手でも反対したと思うけど、意外にオルタンス様を始めリシュリュー辺境伯家は大賛成。
シャルル様やベルナール様、冒険者ギルドのロドリスさんも賛成だし、お嫁に行ったリリアーヌ姉様も賛成。
外堀をしっかりと埋められた結果、二年前に無事婚約し、来年の春には結婚式ですよ。
「シルヴィーも結婚式には参列してくれるよね?」
「うっ! しかし・・・私はそのぅ・・・」
本当の妹ではないのですよ?
「絶対だよ。カロリーヌもシルヴィーと会えるのを楽しみにしているんだ」
今は、何故かブルエンヌの屋敷で花嫁教育中のカロリーヌ姫だけど。
「・・・はい」
最後にヴィクトル兄様とハグしてお別れです。
アルベール、リュシアン、セヴラン、ルネ、リオネルも、この十年間で仲良くなった人たちと別れを惜しんでいる。
・・・いやいや、二年に一度は帰ってこいって命じられているから、ちょくちょく顔を出しますけどね?
久しぶりにカヌレが牽く馬車に乗り込んで出発!
窓から大きく体を乗り出して手を振って・・・ヴィクトル兄様たちの姿が見えなくなるまで手を振って・・・ぐすん。
「いや、すぐに帰ってくるじゃないですか」
うるさい、セヴラン! 涙腺が弱いお年頃なのだ。
はあーっ、馬車の中でお茶を楽しみながら十年間の王様生活を思い出していたけど、やっぱり・・・あれが一番強烈だったわー。
即位して五年ぐらい経った頃だったかしら? 各国に帝国から親書が届けられた。
帝国よ? あの帝国よ? 一体何を企んでいるのよーっ!
「あん? 皇帝即位?」
その中身は、誰が皇帝になるかで分裂し内紛が絶えなかった帝国にン十年ぶりに皇帝が誕生したという報せ。
しかも、無理やり併合されていてた小国の独立戦争も起きていた帝国なのに、その小国を一つにまとめ上げた男が皇帝になったとか。
その親書の真偽を確かめなければと、我が国の商業ギルドに残ってくれたオレールさんと冒険者ギルドマスターのロドリスを招集して、会議よ、会議。
「帝国の皇帝についての情報は・・・あまりなく・・・」
クッと苦しそうに顔を歪めるオレールさん。
情報部というか暗部というか、そういうことに長けているオレールさんたちは、もちろんピエーニュの森で隣接している帝国の情報は集めていた。
皇帝になったという青年が、いち地方領地から軍を起こしたのも知っていた。
しかし、その後、小国をまとめ上げ帝都に攻め上ってくるスピードが桁違いに速かったらしい。
正直、青年の素性を確かめるところまでしか、手元に情報がないと悔やんでいる。
「つまり、どんな奴なのか、どんなことを考えているのかはわからん、てことか?」
「ええ、ロドリス殿の言う通りです。過去の皇帝のように領土拡大を狙っているのか・・・それとも荒れた国を立て直す賢帝となるか。まだ未知数です」
ちなみに素性は、前皇帝の庶子・・・らしい。
皇帝の血族を現す銀色の瞳が証拠らしいけど・・・どうなんでしょうね?
「魔法や魔道具で瞳の色は変えられるしねー」
私は、帝国からの親書をピラピラと手で弄びながら言う。
なんせ、私自身が金色の瞳を変えていたんだから。
「・・・小国がそれぞれの思惑を越えて、本当の意味で一つの国として纏まっているのならば、脅威です」
シャルル様の顔が若干青い。
トゥーロン王国の今の国力は、帝国どころかどこの国を相手取っても厳しい戦いになる。
リシュリュー辺境伯ぐらいしかまともな戦力ないしね。
「・・・こんなときになんなんだが・・・実は、冒険者ギルドマスターとして報告しなければならないことがある」
ロドリスさんが急に真面目な顔をした。
「ど・・・どうしたの?」
「ピエーニュの森に変化が見られるらしい。森の奥で棲息しないはずの中級ランクの魔獣がいた。カミーユが調査をしているが、はぐれ魔獣ではなく・・・こちら側に流れてきているらしい」
カミーユさんの見立てでは、ピエーニュの森の向こう側、つまり帝国側に多く棲息していた高ランク魔獣がこちら側、トゥーロン王国側に移動してきていると。
「移動つーか、正しい棲息分布になってきているらしい」
今まで、トゥーロン王国側に低ランクの魔獣しかいなかったのが不自然だとカミーユさんは断言した。
「まさか、なにかの結界とかで魔獣の行き来が制限されていたとか? 今回の皇帝誕生の動きと関連があるの?」
うーん、と会議出席者全員で悩むが答えが出ない。
しょうがない、没交渉だった帝国の内情なんて知るはずもなく、情報通のオレールさんたちでさえお手上げなのだ。
「ふーん。新しい皇帝ねぇ・・・。ん?」
私は親書の最後に記されていた皇帝本人のサインの下に違和感を持った。
光に透かしてみると・・・何か書いてある?
「ファイアー」
掌にポワッと蝋燭の火程度の火魔法を展開させ、その上に親書を翳す。
「うわっ! 出た」
炙ったら文字が浮き出てきましたよ。
「・・・おいおい」
そこに書かれていたのは、懐かしい日本語でした。
「まっさか、帝国の皇帝があっちからの転生者だとは思わないわよね。しかも人族と魔族のハーフで私より劣るけどチート能力持ちだなんて」
モグモグとマカロンを次々に口に運びながら、当時のことを思い出す。
その親書に書かれていた内容は、皇帝の日本での名前と職業・・・て学生だったらしいけど。
あとは切々たる要望で、「日本食が恋しい」と。
すぐに送ったわよ、日本食っぽいもの。
それからミュールズ国やアンティーブ国に対しては帝国に対して少し様子を見てくれるように頼んで、特にアンティーブ国には連合国に対して牽制して欲しいって頼んだわよ。
それからは、いい文通相手です。
今回、私が退位することを知って、「遊びに来てくれ」と誘われているので、いつか行ってみたい!
独自にチハロ国と貿易も始めたみたいだしね。
「お嬢。着いたぞ」
「はーい」
では、冒険者ギルドで冒険者登録しましょうか。
Aランクのアルベールには期限はないけど、まだまだ駆け出し冒険者だった私たちは十年間冒険者としての活動をしていなかったので、資格がなくなってしまった。
なので、王都の冒険者ギルドで再登録です!
「陛下・・・じゃなかった。嬢ちゃん、本当に冒険者になるのか?」
ギルドマスターの執務室で出迎えてくれたロドリスさんはしょっぱい顔で、サブマスのモーリスさんはニコニコ顔だ。
「そうよ。名前もヴィー・シルヴィーにして登録よ」
ちなみに、みんなもファミリーネームを「シルヴィー」にして登録です。
ガシガシと髪を掻きまわしたあと、疲れた声でロドリスさんは私たちの冒険者登録手続きをしてくれました。
実際にしてくれたのは、モーリスさんだけど。
「はああっ、また一番下からやり直しか・・・」
「いいじゃねぇか。魔獣討伐してたら、すぐに上がるぞ」
リュシアンは軽く言うけども、セヴランなんか涙目で新しい冒険者ギルドカードを握りしめているわよ?
「ああ・・・せっかく、鞭から離れていたのに・・・。最初からやり直しですぅ」
アンタ・・・ちゃんと鞭スキルを磨いておきなさいよ。
「ヴィー様。ルネの新しいカード、ピカピカです!」
かわいい黒猫から、ダイナマイトバディの黒猫お姉様に成長したルネだが、中身はかわいい子猫のままである。
愛い!
「・・・。ちっ」
リオネルは舌打ちしたあと、カードをポイッと自分のアイテムボックスに入れる。
身長も伸びて青年らしい体付きになって、もの凄いイケメンに育ったリオネルだけと、中身は食いしん坊なバトルジャンキーのままだ。
アルベールはモーリスさんと言葉を交わしたあと、私たちの背中を押して部屋から出す。
「さあさあ、自分たちのステータスも確認しましたね。ある程度の無茶はいいですけど、張り切りすぎて怪我などしないように。では、行きましょう」
・・・ステータスか・・・。
冒険者に登録するときの水晶型魔道具に手を翳すと、自分のステータスが確認できる。
ギルドカードには、名前と年齢、種族と職業みたいなものが記載されるだけなんだけど、自分にしか見えないステータス表示には全て記載されている。
私は自分の能力「鑑定」でいつでも見れるから、気にしないけど。
「んー! さあ、馬車に乗って行こう!」
どこまでも、みんなで行こう! 楽しいことも苦しいことも一緒に乗り越えて!
名前 ヴィー・シルヴィー
性別 女
年齢 十八歳
種族 ハイエルフ
<スキル>
全魔法属性 生活魔法 鑑定(探査・探知)MAX 隠蔽 料理 裁縫 算術 魔力操作 魔力感知 身体強化(強)
身体系耐性MAX 精神系耐性MAX 物理攻撃耐性(強) 魔法攻撃耐性(強) 熱冷耐性(強)
無限収納
<称号>
異世界転生者 波乱万丈万歳人生 この世を統べる者≪NEW≫
――おわり――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
なんとか更新を続けて最後まで書くことができました。
みなさま本当に、ありがとうございます。
まだ、番外編など書く予定がございますので。もうしばらくお付き合いください。
沢野 りお
373
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。