223 / 226
エピローグ
聖女と第二王子
しおりを挟む
アラサー女子が転生した、みそっかすちびっ子王女は、紆余曲折がありましたがこの度、八歳の女王としてトゥーロン王国に君臨することになりました。
ワハハハハ、崇め跪くがよい。
ボコン!
「あいたっ」
うー、叩かれた後頭部を手で押さえて振り向くと、丸めた書類を手の上でポンポンと遊ばしているアルベールの姿が。
「真面目におやりなさい。まだまだ仕事は山積みなんですよ」
「うー、わかっているけどぉぉぉっ。亜人たちの住まいと仕事をどうするか・・・。王都にはまだ亜人に対して悪い感情を持っている人もいるし」
悩みどころなのですよ。
奴隷として無理やり連れて来られた亜人の方々は、解放されたなら生まれ故郷や家族の元へ帰るだろうと思っていましたし、そのための移動方法と予算も組んでおりました。
でも、蓋を開けてみたら、実際トゥーロン王国を出て行ったのは奴隷の三分の一。
元々、王都から離れた領地では自由に過ごしていた亜人もいたけど、その人たちはそのまま市民権を得てこの国に留まってくれているけど。
問題は、王城や高位貴族の奴隷たち。
まず、数は少ないけどエルフ族のほとんどは居座っている。
これは、ノアイユ公爵の所のエルフたちと同じ理由で、エルフとして奴隷に堕とされたのはプライドが許さないので、他のエルフに知られたくない、だから帰らない。
獣人の皆さんで、この国に残っているのは元冒険者で独り者とか、孤児上がりで天涯孤独だったりとか、どこの土地に行っても同じ境遇という人たち。
他にもドワーフ族とか小人族とか、ハーフエルフとかいろいろだけど、残ってくれるからには仕事と住居を用意してあげたい!
「なんか、仕事ないかなぁ」
「この国は、これといった産業も鉱山もダンジョンもないですものね」
「うん、そうなの」
この国は、宝石や魔石のお宝ザクザク! もないし、ダンジョンや魔獣討伐で冒険者稼業でウハウハもできないの。
「農業か・・・。でも、これ以上の農作物を増やしてもなぁ」
土地も必要だし、農作物は国内で消費する分は足りているから、外国に売りつけたいけど・・・、私の即位からまだ半年しか経ってないから、トゥーロン王国の評判は現状維持のまま。
半年後の戴冠式に、外国からの参加者は来るのかな? ミュールズ国とアンティーブ国からしか来なかったりして。
とにかく、亜人たちの生活基盤について頭の隅で考えながら、他の書類を捌いていきます。
シュババババ!
「大変です―! 結婚ですー!」
バッターン! と珍しくシャルル様が血相変えて、王の執務室に飛び込んできた。
「シャルル様。どうしたの?」
結婚て・・・シャルル様が結婚するの?
「ち、違います! これ、この新聞を見てください」
バササッと机の上に置かれたのは、「号外」と書かれた手刷りの新聞。
「ふむふむ。結婚! 聖女とミュールズ国第二王子 アデル様・・・。って、なんじゃこりゃーっ!」
ビリリリ! あ、勢いで破いちゃった。
「大変だーっ! シルヴィー、アデルが結婚するってー! しかも聖女と」
今まさに、私の手の中で真っ二つになった「号外」を手に握りしめ、ヴィクトル兄様とユーグ君が駆け込んできました。
ねえ、ちょっと、リュシアン。
ここってば、王の執務室よね? なんでこんな簡単に人をガバガバ通しちゃうのよ?
「は? お嬢が退屈しなくていいじゃん」
おバカ! 私は王様の仕事で過労死寸前だってば!
「アデルが結婚。それはいいんだ。いつまでもリリアーヌを引き摺っていてはいけないし」
ヴィクトル兄様は、友達の結婚を喜びながらも少し寂しそうです。
「それよりも、ミシェル陛下はご存知なのですか? そもそもあの人、教会に入り浸ってミュールズ国に帰国してませんよね? 帰国命令が出ていたのに」
アデル王子は、ミュールズ国だって未曾有の譲位劇でてんやわんやな自国を、実の兄を放っておいて、聖女護衛だけをしていたのよ。
「・・・知らないと思う」
「ダメじゃん」
シーンと執務室の面々が黙り込むと、またもや誰かが飛び込んできた。
「シルヴィー様、大変です! 元教皇猊下と聖女様とアデル王子が・・・登城されましたーっ」
ベルナール様がビャーッと駆け込んで、ハアハアと肩で息をしている。
「なんだ? なんだ?」
何をしに来たのだ?
「と・・・とりあえず、みんなで応接室に移動しようか?」
ルネはペコリとお辞儀をした後、シュンと姿を消す。
お客様の誘導と、お茶の準備をしてくれるのだろう。
「はあ・・・。私、すごい忙しいんだけど?」
なんつーか、世の中には不思議なこともあるものよねぇー。
今、ヴィクトル兄様は号泣中です。
聖女と抱き合って、ワンワン泣いてます。
私もちょっとウルウルしてますけどね。
だって、誰が思うのよ? ある日突然出てきた聖女の正体が、死んだはずのリリアーヌ姉様だったなんて!
「ふぉふぉ。連れてくるのが遅くなってすまなんだ。オレールがまだ連合国の影があちこちを嗅ぎまわっていると言ってたのでな、用心に用心を重ねたのじゃ」
「いえいえ。お気遣いありがとうございます。ところで、何故リリアーヌ姉様が教会に保護されていたので?」
リリアーヌ姉様はあのパーティーでユベールたちに剣で斬られたあと、パチリと目を覚ました。
そのときには、斬られた傷は綺麗に塞がっていたらしい。
とにかく、ここから逃げなければと血塗れのドレスの上にテーブルクロスを撒きつけて、大広間から出た。
外では、奴隷契約から解放された亜人たちとザンマルタン家の騎士たちがあちこちで争っており、裸馬が何頭も縦横無尽に駆け巡っている恐ろしい状況だった。
正門から脱出するのは諦めて、通用門の一つに向かいながらも、突然飛び出してくる馬に怯え、大木の影に身を潜めていたとき、教会へと戻る神官様が乗る馬車に助けられた。
「一目見てリリアーヌ様だとわかりましたが、非常に怯えられていましてな。次の日に事情をお聞きすればさもありなんと。しばらくは身を潜めお味方を探すように進言しましたのじゃ」
そこで、リリアーヌ姉様はタダで居候するのは申し訳ないと、自分の治癒魔法を怪我した人たちへ無料奉仕した。
「そこから、聖女と・・・」
私はヴィクトル兄様やユーグ君と手を取り合って泣き笑いしている、美しいリリアーヌ姉様を見て納得する。
その後、解放軍が進軍する際、護衛に付いたときにアデル王子とリリアーヌ姉様は再会したと。
「婚約を結ぶ寸前だったのだから、そのまま結婚するのはいいけど・・・。問題はあるわね」
そうなのだ。
今のトゥーロン王国はミュールズ国と縁を結ぶ訳にはいかない。
また、何か良からぬことを企んで手を結んだなどと、疑われてはならぬのだ!
「リリアーヌ姉様は死んだことになっているから、聖女としてアデル王子と結婚する。それって、問題ないのですか?」
「うーむ。聖女として教会預かりになっているのでな、今のリリアーヌ様はトゥーロン王国の民ではない。だが、結婚するならば還俗しなければ・・・」
「あー、引受人が必要か」
当然、トゥーロン王家は無理だし、トゥーロン王国の貴族もダメ。
ミュールズ国の誰かに頼むか? いやいやミシェル陛下だって、今はまだ足元を掬われないようにしているのだから、下手な貴族に借りを作るわけにはいかないでしょう。
「あ! アルベール。確かクリストフ様がいらしてたわよね? 呼んできて。あとリオネルーっ。カミーユさん呼んできてー」
いいこと、考えちゃった!
結局、リリアーヌ姉様は教会から還俗してゴダール男爵家に養女として入ることに。
これは、私がゴダール男爵にお手紙を書きました。
クリストフ殿下には、アンティーブ国の了解を得るのに利用しました。
ゴダール男爵領地で半年間過ごしてもらって、その後、カミーユさんの伝手でサン・ブルージュの町を作ったという元宰相さんのお家に養女へ行ってもらいます。
最終的にはアンティーブ国の侯爵令嬢としてミュールズ国第二王子へ嫁いでもらう。
「侯爵家といっても元宰相のおじいさんの養女で、爵位は息子さんがとっくに継いでいるからアンティーブ国に影響はないからいいよね。でもミュールズ国の王子に嫁ぐだけの身分は申し分ないし」
レイモン氏のお墨付きをもらえました。
トゥーロン王国の作法を捨て、アンティーブ国のそれを学んでもらうため、サン・ブルージュでは一年間過ごしてもらう。
そして、ミュールズ国へと。
「ごめんなさい。アンティーブ国の淑女教育を受けてもすぐに必要なくなっちゃう。でも・・・」
必要なのだ。
リリアーヌ姉様がトゥーロン王国出身とバレないために。
「いいのよ、ありがとう、シルヴィー。どれだけお礼を言っても足りないわ。私を助けてくれた守りの魔道具を、あの日渡してくれてありがとう」
リリアーヌ姉様が私の体をギュウと強く抱きしめる。
私も目を瞑って、リリアーヌ姉様の背中に手を回す。
まだ、王城の外れのお屋敷に住んでいた頃、王都のお祭りにみんなで出かけて迷子になった私。
そこで出会った、素敵なお姉さんに渡した針金で作ったブローチ。
お姉さんのお守りにと渡したそのブローチが、私の祈りを魔力に変えて魔道具となって、リリアーヌ姉様の命を助けてくれた。
それがとっても嬉しい。
「リリアーヌ姉様。お幸せに」
「ええ」
こうして、みんなが幸せになっていけばいい。
亜人たちの仕事と住居もどうにかなりそうです。
リリアーヌ姉様の「国営農場にすれば?」との一言で、私の中で算盤じゃなかった、企画がゴゴゴッと音を立てて組み立っていきました!
私たちが住んでいたお屋敷側の城壁の向こうの草原は国営地で、放って置かれた土地。
そこに農場と果樹園と住居を建てて、亜人たちが働く場所と住居にする。
でも人族と隔離しては、折角の亜人差別撤廃が意味を成さないから、オレールさんを通じて人族との繋がりも持ってもらう。
「でもお嬢。農作物は余っているんだろう?」
「そうよ。だから珍しいモノを作るのよ。それと美味しい物! スイーツとか。バーベキュー大会とかもいいわね! 催し物を定期的に開いて王都の人たちとの交流もするのよ!」
モルガン様が騎士団の寮が欲しいて言ってたから、ついでに建てて、農場の見回りもしてもらおう。
騎士団は亜人も人族も偏らずに採用しているし。
「ああーっ! また忙しくなるわ。行くわよっ、大臣たちを集めて会議を開かなきゃ!」
この一年後、国営農場で採れた最初の作物が取引され、その半年後ミュールズ国で第二王子の結婚式が開かれた。
私、トゥーロン王国女王の名代として、摂政ヴィクトル王兄が出席したと記録されている。
ワハハハハ、崇め跪くがよい。
ボコン!
「あいたっ」
うー、叩かれた後頭部を手で押さえて振り向くと、丸めた書類を手の上でポンポンと遊ばしているアルベールの姿が。
「真面目におやりなさい。まだまだ仕事は山積みなんですよ」
「うー、わかっているけどぉぉぉっ。亜人たちの住まいと仕事をどうするか・・・。王都にはまだ亜人に対して悪い感情を持っている人もいるし」
悩みどころなのですよ。
奴隷として無理やり連れて来られた亜人の方々は、解放されたなら生まれ故郷や家族の元へ帰るだろうと思っていましたし、そのための移動方法と予算も組んでおりました。
でも、蓋を開けてみたら、実際トゥーロン王国を出て行ったのは奴隷の三分の一。
元々、王都から離れた領地では自由に過ごしていた亜人もいたけど、その人たちはそのまま市民権を得てこの国に留まってくれているけど。
問題は、王城や高位貴族の奴隷たち。
まず、数は少ないけどエルフ族のほとんどは居座っている。
これは、ノアイユ公爵の所のエルフたちと同じ理由で、エルフとして奴隷に堕とされたのはプライドが許さないので、他のエルフに知られたくない、だから帰らない。
獣人の皆さんで、この国に残っているのは元冒険者で独り者とか、孤児上がりで天涯孤独だったりとか、どこの土地に行っても同じ境遇という人たち。
他にもドワーフ族とか小人族とか、ハーフエルフとかいろいろだけど、残ってくれるからには仕事と住居を用意してあげたい!
「なんか、仕事ないかなぁ」
「この国は、これといった産業も鉱山もダンジョンもないですものね」
「うん、そうなの」
この国は、宝石や魔石のお宝ザクザク! もないし、ダンジョンや魔獣討伐で冒険者稼業でウハウハもできないの。
「農業か・・・。でも、これ以上の農作物を増やしてもなぁ」
土地も必要だし、農作物は国内で消費する分は足りているから、外国に売りつけたいけど・・・、私の即位からまだ半年しか経ってないから、トゥーロン王国の評判は現状維持のまま。
半年後の戴冠式に、外国からの参加者は来るのかな? ミュールズ国とアンティーブ国からしか来なかったりして。
とにかく、亜人たちの生活基盤について頭の隅で考えながら、他の書類を捌いていきます。
シュババババ!
「大変です―! 結婚ですー!」
バッターン! と珍しくシャルル様が血相変えて、王の執務室に飛び込んできた。
「シャルル様。どうしたの?」
結婚て・・・シャルル様が結婚するの?
「ち、違います! これ、この新聞を見てください」
バササッと机の上に置かれたのは、「号外」と書かれた手刷りの新聞。
「ふむふむ。結婚! 聖女とミュールズ国第二王子 アデル様・・・。って、なんじゃこりゃーっ!」
ビリリリ! あ、勢いで破いちゃった。
「大変だーっ! シルヴィー、アデルが結婚するってー! しかも聖女と」
今まさに、私の手の中で真っ二つになった「号外」を手に握りしめ、ヴィクトル兄様とユーグ君が駆け込んできました。
ねえ、ちょっと、リュシアン。
ここってば、王の執務室よね? なんでこんな簡単に人をガバガバ通しちゃうのよ?
「は? お嬢が退屈しなくていいじゃん」
おバカ! 私は王様の仕事で過労死寸前だってば!
「アデルが結婚。それはいいんだ。いつまでもリリアーヌを引き摺っていてはいけないし」
ヴィクトル兄様は、友達の結婚を喜びながらも少し寂しそうです。
「それよりも、ミシェル陛下はご存知なのですか? そもそもあの人、教会に入り浸ってミュールズ国に帰国してませんよね? 帰国命令が出ていたのに」
アデル王子は、ミュールズ国だって未曾有の譲位劇でてんやわんやな自国を、実の兄を放っておいて、聖女護衛だけをしていたのよ。
「・・・知らないと思う」
「ダメじゃん」
シーンと執務室の面々が黙り込むと、またもや誰かが飛び込んできた。
「シルヴィー様、大変です! 元教皇猊下と聖女様とアデル王子が・・・登城されましたーっ」
ベルナール様がビャーッと駆け込んで、ハアハアと肩で息をしている。
「なんだ? なんだ?」
何をしに来たのだ?
「と・・・とりあえず、みんなで応接室に移動しようか?」
ルネはペコリとお辞儀をした後、シュンと姿を消す。
お客様の誘導と、お茶の準備をしてくれるのだろう。
「はあ・・・。私、すごい忙しいんだけど?」
なんつーか、世の中には不思議なこともあるものよねぇー。
今、ヴィクトル兄様は号泣中です。
聖女と抱き合って、ワンワン泣いてます。
私もちょっとウルウルしてますけどね。
だって、誰が思うのよ? ある日突然出てきた聖女の正体が、死んだはずのリリアーヌ姉様だったなんて!
「ふぉふぉ。連れてくるのが遅くなってすまなんだ。オレールがまだ連合国の影があちこちを嗅ぎまわっていると言ってたのでな、用心に用心を重ねたのじゃ」
「いえいえ。お気遣いありがとうございます。ところで、何故リリアーヌ姉様が教会に保護されていたので?」
リリアーヌ姉様はあのパーティーでユベールたちに剣で斬られたあと、パチリと目を覚ました。
そのときには、斬られた傷は綺麗に塞がっていたらしい。
とにかく、ここから逃げなければと血塗れのドレスの上にテーブルクロスを撒きつけて、大広間から出た。
外では、奴隷契約から解放された亜人たちとザンマルタン家の騎士たちがあちこちで争っており、裸馬が何頭も縦横無尽に駆け巡っている恐ろしい状況だった。
正門から脱出するのは諦めて、通用門の一つに向かいながらも、突然飛び出してくる馬に怯え、大木の影に身を潜めていたとき、教会へと戻る神官様が乗る馬車に助けられた。
「一目見てリリアーヌ様だとわかりましたが、非常に怯えられていましてな。次の日に事情をお聞きすればさもありなんと。しばらくは身を潜めお味方を探すように進言しましたのじゃ」
そこで、リリアーヌ姉様はタダで居候するのは申し訳ないと、自分の治癒魔法を怪我した人たちへ無料奉仕した。
「そこから、聖女と・・・」
私はヴィクトル兄様やユーグ君と手を取り合って泣き笑いしている、美しいリリアーヌ姉様を見て納得する。
その後、解放軍が進軍する際、護衛に付いたときにアデル王子とリリアーヌ姉様は再会したと。
「婚約を結ぶ寸前だったのだから、そのまま結婚するのはいいけど・・・。問題はあるわね」
そうなのだ。
今のトゥーロン王国はミュールズ国と縁を結ぶ訳にはいかない。
また、何か良からぬことを企んで手を結んだなどと、疑われてはならぬのだ!
「リリアーヌ姉様は死んだことになっているから、聖女としてアデル王子と結婚する。それって、問題ないのですか?」
「うーむ。聖女として教会預かりになっているのでな、今のリリアーヌ様はトゥーロン王国の民ではない。だが、結婚するならば還俗しなければ・・・」
「あー、引受人が必要か」
当然、トゥーロン王家は無理だし、トゥーロン王国の貴族もダメ。
ミュールズ国の誰かに頼むか? いやいやミシェル陛下だって、今はまだ足元を掬われないようにしているのだから、下手な貴族に借りを作るわけにはいかないでしょう。
「あ! アルベール。確かクリストフ様がいらしてたわよね? 呼んできて。あとリオネルーっ。カミーユさん呼んできてー」
いいこと、考えちゃった!
結局、リリアーヌ姉様は教会から還俗してゴダール男爵家に養女として入ることに。
これは、私がゴダール男爵にお手紙を書きました。
クリストフ殿下には、アンティーブ国の了解を得るのに利用しました。
ゴダール男爵領地で半年間過ごしてもらって、その後、カミーユさんの伝手でサン・ブルージュの町を作ったという元宰相さんのお家に養女へ行ってもらいます。
最終的にはアンティーブ国の侯爵令嬢としてミュールズ国第二王子へ嫁いでもらう。
「侯爵家といっても元宰相のおじいさんの養女で、爵位は息子さんがとっくに継いでいるからアンティーブ国に影響はないからいいよね。でもミュールズ国の王子に嫁ぐだけの身分は申し分ないし」
レイモン氏のお墨付きをもらえました。
トゥーロン王国の作法を捨て、アンティーブ国のそれを学んでもらうため、サン・ブルージュでは一年間過ごしてもらう。
そして、ミュールズ国へと。
「ごめんなさい。アンティーブ国の淑女教育を受けてもすぐに必要なくなっちゃう。でも・・・」
必要なのだ。
リリアーヌ姉様がトゥーロン王国出身とバレないために。
「いいのよ、ありがとう、シルヴィー。どれだけお礼を言っても足りないわ。私を助けてくれた守りの魔道具を、あの日渡してくれてありがとう」
リリアーヌ姉様が私の体をギュウと強く抱きしめる。
私も目を瞑って、リリアーヌ姉様の背中に手を回す。
まだ、王城の外れのお屋敷に住んでいた頃、王都のお祭りにみんなで出かけて迷子になった私。
そこで出会った、素敵なお姉さんに渡した針金で作ったブローチ。
お姉さんのお守りにと渡したそのブローチが、私の祈りを魔力に変えて魔道具となって、リリアーヌ姉様の命を助けてくれた。
それがとっても嬉しい。
「リリアーヌ姉様。お幸せに」
「ええ」
こうして、みんなが幸せになっていけばいい。
亜人たちの仕事と住居もどうにかなりそうです。
リリアーヌ姉様の「国営農場にすれば?」との一言で、私の中で算盤じゃなかった、企画がゴゴゴッと音を立てて組み立っていきました!
私たちが住んでいたお屋敷側の城壁の向こうの草原は国営地で、放って置かれた土地。
そこに農場と果樹園と住居を建てて、亜人たちが働く場所と住居にする。
でも人族と隔離しては、折角の亜人差別撤廃が意味を成さないから、オレールさんを通じて人族との繋がりも持ってもらう。
「でもお嬢。農作物は余っているんだろう?」
「そうよ。だから珍しいモノを作るのよ。それと美味しい物! スイーツとか。バーベキュー大会とかもいいわね! 催し物を定期的に開いて王都の人たちとの交流もするのよ!」
モルガン様が騎士団の寮が欲しいて言ってたから、ついでに建てて、農場の見回りもしてもらおう。
騎士団は亜人も人族も偏らずに採用しているし。
「ああーっ! また忙しくなるわ。行くわよっ、大臣たちを集めて会議を開かなきゃ!」
この一年後、国営農場で採れた最初の作物が取引され、その半年後ミュールズ国で第二王子の結婚式が開かれた。
私、トゥーロン王国女王の名代として、摂政ヴィクトル王兄が出席したと記録されている。
405
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。