革命の夜は二度来ない

白藤結

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一章(10)

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 アデライドは軽く周囲を見回す。
 時間が経ったためか最初来たころよりも少し減ったものの、広場には未だ多くの人々がいた。屋台で売っている商人に買い物をする主婦らしき人、走り回る子どもたち。こんなにも多くの人が革命の指導者を慕い、彼らのためにこの場へやって来ているのだろう。

 すごいな、と素直に思う。こんなに慕われるなんて本当にすごい、と。
 でも今まで教えられてきたこととは矛盾していて。
 むむむむ、と悩んでいると、「どうかしたのか?」とエリクが顔を覗き込んでくる。
 アデライドは首を横に振った。

「別になんでもないわ。ちょっと不思議だなあって思ってただけよ」
「なにを?」

 首を傾げるエリクに、思わずムッと顔を顰める。

「あなたがさっき言っていたことよ。だってここにいる人全員が革命の指導者を慕っているのでしょう? こんなにも大勢の人がどうしてなのかしらって思って」
「ああ、別にここにいる全員がそういうふうに熱心に慕っているわけではないからな」

 アデライドは目をぱちくりさせた。てっきり全員が慕っているのだと思っていたのだが、そうではないらしい。

「あら、そうなの?」
「そう。たとえば、商人」

 そう言って、彼はとある屋台の店主を指で示した。店主はにこにこと笑顔を浮かべて、子どもに肉の刺さった棒を渡しているところだった。

「商人は大抵、さっき言ったみたいな理由でここで物を売ってるわけじゃない」

 その言葉にアデライドは首を傾げる。

「じゃあどうして?」
「人が集まるからだよ」

 エリクはアデライドのほうに視線を向けると、人差し指をピンと立てた。

「たとえば人のいない山奥で店を開くとなると、どうなると思う?」
「どうなるって?」
「店を続けられるかどうかってことだよ」

 アデライドはうーん、とうなる。人のいない山奥で開くとどうなるのか。とりあえず客は来ないだろう。そうなると儲けもないから――

「……つぶれる?」

 するとエリクはふっと満足げに笑った。
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