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一章(14)
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周囲の喧騒に掻き消えてしまいそうなほどか細い声。けれどそれはどうやらきちんと彼に届いたらしく、返事が戻ってきた。
しかしどう返せばいいのかわからず、会話が途切れる。沈黙が二人の間に横たわった。
(ど、どうしよ……)
無言のままエリクに先導されながら、アデライドは冷や汗を垂らす。なんとなく気まずい。というかものすごく気まずい。どうにかしてごまかすためにも、会話を続けたいのだが――
(……あれ? ごまかす?)
一瞬湧き上がった自分の思考につい首を傾げる。いったいなにをごまかすというのだろう? 彼に黙っていることなんてないはずなのに。
自分の感情が理解できずに戸惑っていると、エリクが急停止した。「わっ」と思わず声を上げれば、彼がこちらを振り返って「ごめん」と謝罪する。
「いえ、大丈夫よ。急に止まって驚いただけだから。――それでどうしたの?」
「いや、ここ、美味しい店だからどうかなって思ったんだけど」
そう言って、彼はすぐ近くにある店を指し示す。
それは可愛らしい見た目のパティスリーだった。大きな入口と窓が並んで存在しており、その隙間を埋めるチョコレート色の壁には金色の文字で店名が書かれている。入り口のすぐそばには観葉植物が置かれていて、窓からは店内の様子が見えるようになっていた。
思わず小さな歓声を上げる。
「わあっ、可愛らしいお店ね」
「入るか?」
「ええ、もちろん!」
昂る感情を隠すことなくそう答えれば、エリクはクスリと笑って手を差し出してきた。おそらくエスコートしてくれるのだろう。そのことが嬉しくて頬を緩めつつ、アデライドはその手を取って店内へ足を踏み入れる。
店内も外観と違わず可愛らしい雰囲気だった。外よりも少しだけ色味の違うチョコレート色の壁に、ちらほらと置かれた観葉植物。そして――
「すごいわね、エリク! すごく美味しそう!」
カウンターや棚にずらりと並んだ洋菓子の数々。宝石のように輝いて見えるそれらにうっとりしつつ、アデライドはじりじりとそちらににじり寄った。
するとエリクが笑う。
「気に入ったのならよかったよ。――それで、食べたいものとかはあるか? あっちに食べられる場所あるから、そこで食べよう」
エリクの示した先を見れば、確かにテーブルと椅子がいくつも並んだスペースがあった。そこでは市民風ドレスを纏った女性たちが、上品な笑顔を浮かべて優雅に洋菓子を口にしている。おそらくここで買ったものなのだろう。
それなら、と思ってアデライドは洋菓子を眺める。だがいかんせん種類が多い。あれもこれも全部食べてみたくて、一つになんて選べる気がしない。
「うー……」
選ぶためにじっくりと舐め回すように見ていると、「ふっ」と笑いをこらえるような声がした。そちらを見れば、エリクが口元を押さえて肩を震わせていて。
ムッと顔を顰める。
「なによ? なにかおかしい?」
「いや、目がものすごく真剣だったから……」
ぷるぷると身を震わせるエリクに、アデライドはぷいっとそっぽを向いた。
「だってどれも美味しそうなんだもの、仕方ないじゃない!」
しかしどう返せばいいのかわからず、会話が途切れる。沈黙が二人の間に横たわった。
(ど、どうしよ……)
無言のままエリクに先導されながら、アデライドは冷や汗を垂らす。なんとなく気まずい。というかものすごく気まずい。どうにかしてごまかすためにも、会話を続けたいのだが――
(……あれ? ごまかす?)
一瞬湧き上がった自分の思考につい首を傾げる。いったいなにをごまかすというのだろう? 彼に黙っていることなんてないはずなのに。
自分の感情が理解できずに戸惑っていると、エリクが急停止した。「わっ」と思わず声を上げれば、彼がこちらを振り返って「ごめん」と謝罪する。
「いえ、大丈夫よ。急に止まって驚いただけだから。――それでどうしたの?」
「いや、ここ、美味しい店だからどうかなって思ったんだけど」
そう言って、彼はすぐ近くにある店を指し示す。
それは可愛らしい見た目のパティスリーだった。大きな入口と窓が並んで存在しており、その隙間を埋めるチョコレート色の壁には金色の文字で店名が書かれている。入り口のすぐそばには観葉植物が置かれていて、窓からは店内の様子が見えるようになっていた。
思わず小さな歓声を上げる。
「わあっ、可愛らしいお店ね」
「入るか?」
「ええ、もちろん!」
昂る感情を隠すことなくそう答えれば、エリクはクスリと笑って手を差し出してきた。おそらくエスコートしてくれるのだろう。そのことが嬉しくて頬を緩めつつ、アデライドはその手を取って店内へ足を踏み入れる。
店内も外観と違わず可愛らしい雰囲気だった。外よりも少しだけ色味の違うチョコレート色の壁に、ちらほらと置かれた観葉植物。そして――
「すごいわね、エリク! すごく美味しそう!」
カウンターや棚にずらりと並んだ洋菓子の数々。宝石のように輝いて見えるそれらにうっとりしつつ、アデライドはじりじりとそちらににじり寄った。
するとエリクが笑う。
「気に入ったのならよかったよ。――それで、食べたいものとかはあるか? あっちに食べられる場所あるから、そこで食べよう」
エリクの示した先を見れば、確かにテーブルと椅子がいくつも並んだスペースがあった。そこでは市民風ドレスを纏った女性たちが、上品な笑顔を浮かべて優雅に洋菓子を口にしている。おそらくここで買ったものなのだろう。
それなら、と思ってアデライドは洋菓子を眺める。だがいかんせん種類が多い。あれもこれも全部食べてみたくて、一つになんて選べる気がしない。
「うー……」
選ぶためにじっくりと舐め回すように見ていると、「ふっ」と笑いをこらえるような声がした。そちらを見れば、エリクが口元を押さえて肩を震わせていて。
ムッと顔を顰める。
「なによ? なにかおかしい?」
「いや、目がものすごく真剣だったから……」
ぷるぷると身を震わせるエリクに、アデライドはぷいっとそっぽを向いた。
「だってどれも美味しそうなんだもの、仕方ないじゃない!」
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