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一章(15)
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笑われるのが恥ずかしくてそう言い、アデライドは数多の洋菓子に視線を戻した。背後でエリクがなにやら言っているが、無視をしてどれにしようかと決めていく。
しかし結局目移りしてしまい悩んでいると、
「あー、アデラ……笑ってごめん。お詫びに奢るからさ、きげ――」
「本当!? 奢ってくれるの!?」
バッと勢いよくアデライドは振り返る。その雰囲気に押されたのか、エリクは若干引き気味に「あ、ああ、うん……」と答えた。
となると問題が解消する。アデライドは満面の笑みを浮かべ、言った。
「じゃあこの店の商品全部食べたいわ!」
「それはさすがに無理だろ!」
即座に言葉が返ってきた。さすがにこの店の全商品を買えるだけの資金力がなくて諦めていたのだが、彼が払ってくれるのならば……と上向きかけた気分が急降下した。
ムスッと頬を膨らませる。
「えー、でも……」
「お腹はちきれるぞ! いいのか!?」
「それは無理ね……」
そんなことになってしまっては大変だ、と納得すれば、エリクは安心したように息をついた。冗談半分なのだからそんなふうにしないでいただきたい。
……残り半分は本気だったのだけれど。
それにしても、とため息をつく。全部食べるという手段が使えないのならば、どうにかしてこの中から一つ、もしくは数種類を選ばなければならない。それはアデライドにとってかなり難しいことだった。
はあ、とため息をついてもう一度洋菓子に向き合うと、ぼそりとエリクが言う。
「別に、これから通っていずれ全制覇すれば――」
「それだわ! そうよ、これから三週間かけて全部食べればいいのね! エリク、あなたやっぱりすごいわ!」
勢いよく彼のほうを振り返り、手を取ってそう告げる。エリクは「あ、ああ」とどこか戸惑った様子で気になったが、とりあえずは注文することにする。
結局左から数えて五つのケーキを注文した。エリクが大金を払ってくれて「ありがとう」と言うと、アデライドはすぐさま飲食スペースへと向かう。
席に着席すると、エリクがやって来るのを待って食べ始めた。
まずはいちごジャムのついた小さなケーキだ。ほろりと口の中でほどけるスポンジ、いちご特有の甘酸っぱさ、滑らかなクリーム。あまりの美味しさに頬を緩めていると、エリクが口を開く。
「アデラって美味しそうに食べるなあ」
「そうかしら? でも美味しいんだもの。仕方ないわよね?」
「んー、まあそうだな」
苦笑をこぼしながらエリクはそう言う。その視線がちらちらとケーキに向いていることに気づき、アデライドは身をよじる。
「あげないわよ?」
「わかってる。俺もあんまり甘いのは好きじゃないし」
「そうなの?」
「ああ。ただアデラがあまりにも美味しそうに食べるもんだから、食べてみたくなっただけ」
ひらひらと手を振りながらそう言うエリクの言葉に、少しだけ考える。迷って、あまり甘くなさそうなチョコレートのケーキを一部切り取って口にする。
ほんのりと口の中に広がる苦味に、これならエリクも食べられるのかもしれないと気づく。
アデライドはチョコレートのケーキを指差した。
「食べてもいいわよ。元々あなたのお金だし」
「……いいのか?」
「ええ、もちろん。どうぞ?」
「ありがと」
そう言うと、エリクはテーブルに置かれていたカトラリーを取り、そのケーキを口に含んだ。静かに咀嚼する。
「どう?」
アデライドが尋ねると、彼はへにゃりと頬を緩めた。
「なんとかいける。――それにしても美味しいな」
「でしょう?」
「なんでアデラが自慢げなんだよ」
エリクはそう言ってカラリと笑った。
しかし結局目移りしてしまい悩んでいると、
「あー、アデラ……笑ってごめん。お詫びに奢るからさ、きげ――」
「本当!? 奢ってくれるの!?」
バッと勢いよくアデライドは振り返る。その雰囲気に押されたのか、エリクは若干引き気味に「あ、ああ、うん……」と答えた。
となると問題が解消する。アデライドは満面の笑みを浮かべ、言った。
「じゃあこの店の商品全部食べたいわ!」
「それはさすがに無理だろ!」
即座に言葉が返ってきた。さすがにこの店の全商品を買えるだけの資金力がなくて諦めていたのだが、彼が払ってくれるのならば……と上向きかけた気分が急降下した。
ムスッと頬を膨らませる。
「えー、でも……」
「お腹はちきれるぞ! いいのか!?」
「それは無理ね……」
そんなことになってしまっては大変だ、と納得すれば、エリクは安心したように息をついた。冗談半分なのだからそんなふうにしないでいただきたい。
……残り半分は本気だったのだけれど。
それにしても、とため息をつく。全部食べるという手段が使えないのならば、どうにかしてこの中から一つ、もしくは数種類を選ばなければならない。それはアデライドにとってかなり難しいことだった。
はあ、とため息をついてもう一度洋菓子に向き合うと、ぼそりとエリクが言う。
「別に、これから通っていずれ全制覇すれば――」
「それだわ! そうよ、これから三週間かけて全部食べればいいのね! エリク、あなたやっぱりすごいわ!」
勢いよく彼のほうを振り返り、手を取ってそう告げる。エリクは「あ、ああ」とどこか戸惑った様子で気になったが、とりあえずは注文することにする。
結局左から数えて五つのケーキを注文した。エリクが大金を払ってくれて「ありがとう」と言うと、アデライドはすぐさま飲食スペースへと向かう。
席に着席すると、エリクがやって来るのを待って食べ始めた。
まずはいちごジャムのついた小さなケーキだ。ほろりと口の中でほどけるスポンジ、いちご特有の甘酸っぱさ、滑らかなクリーム。あまりの美味しさに頬を緩めていると、エリクが口を開く。
「アデラって美味しそうに食べるなあ」
「そうかしら? でも美味しいんだもの。仕方ないわよね?」
「んー、まあそうだな」
苦笑をこぼしながらエリクはそう言う。その視線がちらちらとケーキに向いていることに気づき、アデライドは身をよじる。
「あげないわよ?」
「わかってる。俺もあんまり甘いのは好きじゃないし」
「そうなの?」
「ああ。ただアデラがあまりにも美味しそうに食べるもんだから、食べてみたくなっただけ」
ひらひらと手を振りながらそう言うエリクの言葉に、少しだけ考える。迷って、あまり甘くなさそうなチョコレートのケーキを一部切り取って口にする。
ほんのりと口の中に広がる苦味に、これならエリクも食べられるのかもしれないと気づく。
アデライドはチョコレートのケーキを指差した。
「食べてもいいわよ。元々あなたのお金だし」
「……いいのか?」
「ええ、もちろん。どうぞ?」
「ありがと」
そう言うと、エリクはテーブルに置かれていたカトラリーを取り、そのケーキを口に含んだ。静かに咀嚼する。
「どう?」
アデライドが尋ねると、彼はへにゃりと頬を緩めた。
「なんとかいける。――それにしても美味しいな」
「でしょう?」
「なんでアデラが自慢げなんだよ」
エリクはそう言ってカラリと笑った。
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