革命の夜は二度来ない

白藤結

文字の大きさ
26 / 67

二章(1)

しおりを挟む
 侍女たちに手伝ってもらい、外出用のドレスに着替えていく。これからのことが楽しみでふんふんと鼻歌を歌っていれば、「なにか楽しみなことがあるのですか?」と侍女が尋ねてきた。

「ええ、そうなの。とっても楽しみなことがあるのよ!」

 アデライドは満面の笑みで答える。

 ――エリクとの再会から一週間。今日は彼の仕事が休みであるため、いつもより長い時間一緒にいられるのだ。
 今までも少しの時間なら会えていたとはいえ、やはり長くいられると思うだけで嬉しいし気分が高揚する。

 早くエリクに会いたかった。

 侍女の一人が、「それはようございます」と言って微笑む。
 彼女たちはシルスター王国から連れてきた、アデライド専属の侍女だ。この国に来てからもずっと、身の回りの世話は彼女たちがしてくれている。

「では、本日はとびっきり可愛らしい髪型にしましょうか」

 髪結い担当の侍女はそう言うと、アデライドを化粧台の前に導いて座らせる。鏡に映るのは蜂蜜色の髪に瑠璃の瞳の、幼い顔立ちをした少女。

「アデライド様はどんな髪型がいいですか?」
「うーん、そうね……」

 侍女の質問に、アデライドは自らの顔を見つめて考える。できることならばエリクに可愛いと言ってもらえるような髪型がいい。けれど可愛すぎるのはこどもっぽ過ぎて嫌だ。もっとこう、女性らしい大人っぽい髪型がいい。
 悩み、結局「子供っぽくない髪型」と、ふんわりとした要望を伝えた。侍女は「かしこまりました」と言い、テキパキと髪を結んでいく。

 最終的に編み込みをいくつかしたハーフアップになった。動くたびに長い金髪がさらりと揺れる。髪飾りは少しだけ大人っぽく、白百合の形を模したものだ。

「ありがとう」

 アデライドはお礼の言葉を口にし、椅子から立ち上がった。馬車を出してもらえるとはいえ、そろそろ屋敷を出ないと待ち合わせの時間に間に合わないだろう。
 エリクと一緒にいられる。そのことを楽しみにしつつ、屋敷のエントランスへ向かって歩いていく。

 アデライドが借りているのは屋敷の一階にある客間だ。フィリップもすぐ近くの部屋を借りており、エントランスへ向かうためには彼の部屋の前を通ることになる。

(そういえばお兄さま、最近特に忙しそうよね……)

 元々フィリップはいろいろなことに手を出していて忙しそうにしていたが、この国に来てからはよりいっそうドタバタしている気がする。最近では夕食も一人で摂っていて、顔を合わせることもない。使用人に聞いたところ、部屋でなにやら考えごとをしているらしい。

 そんなに追い詰められていて、はたして体調とかは大丈夫なのだろうか。彼のことだからきちんと管理をしているのだろうが、不安なものは不安で。
 そんなことを思いながらフィリップの部屋の前を通過しようとした、まさにそのとき。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

転生皇女はフライパンで生き延びる

渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。 使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。 ……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。 自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。 そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。 「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」 ※※※ 死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。 ※重複投稿作品※

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...