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7、王子様?
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聖夜くんの家に行った次の日から、私と聖夜くんは、一緒に帰ることになった。えーと………帰る方向が一緒だったから、私が声をかけたの。だって、なんか、う、うまく言えないけど………一緒に帰りたくて………。(友達はみんな部活に入ってる)
そしたら、私と聖夜くんが付き合ってるっていう噂が流れてるみたい……。聖夜くんは、「大丈夫。気にしない方がいいよ。」って言ってたけど……。
「気をつけ、礼」
『さよーならー』
ま、いっか!
「聖夜くん、帰ろ!」
「うん。」
あ、そうそう、聖夜くんね、私にだけは、笑顔見せてくれるようになったの!周りに見られる心配がある所では真顔だけど、誰も見てない時とか2人の時とかには笑ってくれるの!今も、ちょっと口元が緩んでた。
「川上。話があるんだけど、ちょっと来てくれない?」
クラスの男の子に、違うクラスの男の子も混ざって聖夜くんを呼んだ。
「少し待って……」
あ、もしかして、一緒に帰れない………?
「ゆめ、先に昇降口に行ってて。それで、5分待っても俺が来なかったら、先に帰ってて。」
聖夜くんがら小さい声で言った。私はうなずいて教室を出た。言われた通りに、昇降口で聖夜くんを待とうとした。
昇降口に行くと、男の子が沢山集まっていた。私は気にせず靴に履き替えて、座った。急に、その男の子たちに話しかけられた___
___胸騒ぎがする……。奴らについて行ったら、廊下の一番奥に着いた。
「お前さー、自分の立場わかってんの?」
「陰キャのくせに、アイドルと一緒帰ってんじゃねーよ!」
……やっぱり、これか。
「俺、ゆめから誘われたんだけど…………。」
「んだとてめぇ!」
「とぼけんなよ!」
「名前で呼ばされて、河合さんが可愛そう!」
俺はわざと、大袈裟にため息をついた。
「何ため息ついてんだよ!」
「あのさ、名前呼びも、ゆめからの提案なんだけど……。」
奴らの顔が歪んだ。コイツら、顔歪ませるのめっちゃ上手だな。
「ウソつけよ!」
「じゃあ、ゆめに聞いてみれば?」
「アイドルに、そんなくだらねーこと聞ける訳ねーじゃん!」
「『くだらねー』んだったら、口出すな。」
「クソッ………!」
言い返せなくなったな。
「フ、フン!いい気になってろよ!今、俺らの仲間がアイドルを捕まえてんだぞ‼︎」
「アイドルがどうなっても___って、オイ!」
俺は、奴らに背を向けた。
「じゃ、ゆめが心配だから、帰るわ。」
戦いにおいて、背を向けるのはダメだけど、背を向ければ、コイツらは挑んでくるはず。
___計算通り。
「待てよ!お前を足止めするためにここに呼んだのに!」
「オイ、待て!」
2人が迫って、腕に掴みかかろうとした。
ジャンプで回避。勢いで、2人は転んだ。
「ふざけんのもここまでだ!」
俺は囲まれた。
「オレらはな、お前に勝つために毎日筋トレを続けたんだ!」
「受けて驚くなよ!」
「………俺に勝てるつもりか?面白いジョーダンだな。___まとめてかかって来やがれ!」
『おりゃああああ!』
俺は、8人を相手に殴り、蹴りを急所に当てた。
………終了。僅か6秒。
「俺を甘く見過ぎだ。じゃあな。」
「ク、クソッ………覚えとけよ………!」
俺は全速力で、昇降口に向かった。
「ねえ、あんな奴と付き合うの、やめなよ。」
「そうだよ、河合さん。」
私は10人くらいの男の子に囲まれた。
「ちょっと、やめて……。私、聖夜くんを待ってるの!」
その人たちは、なかなか聞いてくれない。
「どうせ来ないよ!オレたちと帰ろう!」
「そうそう、オレら、どうせ来ない奴をずっと待ってる河合さんを見ていたくないんだ。」
「聖夜くんは、絶対に来る!」
私がそう言っても、全然効かない。
「名前呼び、強制されてるの?可哀想に。」
「違う、私から言ったの。」
「じゃあさ、オレたちのことも、下の名前で呼んでよ。」
「……嫌。絶対に、呼ばない。」
だって聖夜くんは、この人たちとは違う。優しくて、カッコよくて……特別………な感じだから。
「もー、頑固だなあ。ホラホラ、帰るよ!」
私は腕を掴まれた。私の力じゃ、男の子を振り解けない………!私はそのまま外に引っ張られた。
「嫌!離して!」
目に、涙が浮かんだ。
私の抵抗は、少しも効いていない。
すごく引っ張られて着いたのは、高い塀に囲まれた道の、一番奥だった。
見たことない場所だ………。
「……ここどこ?私は聖夜くんと帰りたいだけなのに………。」
「ここまで来れば、アイツも見つけられないだろ!」
「昇降口で、河合さんがいなくて、アイツ失望しただろうね!」
なんでこの人たちは、こんなことするの………?私が誰と帰ろうが、私の自由なのに………。
「聖夜くん………。」
私の目から、涙がこぼれた。
クソッ!あいつら、ゆめのファンクラブだな……!
ただ、俺から逃げられると思うなよ………。
「ねえ……聖夜くんと帰らせてよ………。」
もう、私の声なんて、聞いてくれない。
「オイ、テメーら。好きな子いじめて泣かせて、楽しいか?」
この声……聖夜くんだ!でも、姿が見えない。
「⁉︎どこだ!どこにいる‼︎」
「あっ!おい、あそこ!」
そう言って指差したのは、私の後ろにある塀の上。見上げると、その高い塀の上に、聖夜くんが立っていた。ジャンプしたかと思うと、私の前に降りて来た。
「ゆめ、遅くなってごめん。」
私は、聖夜くんから差し出された手を握った。その途端、すごく安心して、涙がさらに溢れた。
ゆめは、俺の手を握りながら涙を流した。
……可愛そうに。こんなクズたちのせいで………。
俺は、ゆめを自分の後ろにやった。
「お、お前、どうしてここが………⁉︎」
「五感は優れているのでね。」
「ご、五感だと⁉︎何言ってんだよ!」
「あ、ちなみにお前らの仲間は全員倒しておいたからな。」
「ク、クソッ……!オ、オラ!みんなかかれ!あいつを倒せーっ‼︎‼︎」
この偉そうに言ってる奴がボスか。
左手はゆめが握っているから、右手だけを使う。俺が雑魚たちを倒している途中で、ボスが真っ直ぐに俺の方に殴りかかってきた。ボスも、少しは考えたようだ。俺がコイツらを倒すのに夢中になっている間に、隙をついて俺を倒そうと思ったらしい。でも、それを見抜いた俺は、片手でソイツの手を止めて、腹を蹴り飛ばした。そしたら、余裕で倒れた。ボスが倒されたからか、みんな後退りしていった。
これは好都合だな。
「今後またゆめに手ェ出したら、これくらいじゃ済まさねぇからな!」
そう言って、俺はゆめをお姫様抱っこした。
泣いてたら、聖夜くんにお姫様抱っこされた……⁉︎
「ちゃんと掴まってて。」
混乱しながらもうなずいて掴まると、聖夜くんは………飛んだ⁉︎高い塀に乗って、飛び移って、いつの間にか聖夜くんの家の前に着いた。
「怖かったでしょ。とりあえず上がって。」
「うん……おじゃまします………。」
聖夜くんの部屋は、なんだか安心した。聖夜くんが入れてくれた紅茶を飲んだら、一気に肩の力が抜けた。
「ホントにありがとう………いろいろ。」
「ううん。ゆめが大丈夫なら、俺は大丈夫だから。」
もう、優しいんだから………。
「俺、今ゆめが聞きたいこと、わかるよ。」
「え?」
「俺が、飛べるのかどうか。」
「わっ、当たり!」
聖夜くんは、自慢するかのように、口元を緩めた。
「俺、多分オッドアイの代わりで、生まれつき運動神経、筋肉、持久力、五感が優れてて。だから、あれは脚力っていうのかな。結構高くジャンプしたんだ。」
え、もう最強じゃない⁉︎
「す、すごいね!え、すごい!ごめん、すごいしか言えない!」
聖夜くんは、照れ臭そうに笑った。
「あ、あのさ………」
ゆめが急に小声になった。
「あ、な、何でもない………!」
何だったんだろ。まあ、いいか。
「わ、私、そろそろ帰るね!本当に、いろいろありが___」
「あ、待って!」
ゆめが、飛んで帰ってしまいそうな勢いだったから、俺はその手首を掴んだ。
な、何……?もう少し、ここにいて、とか___?まだ帰らないで欲しい、とか___?
何でだろう、体が熱い……顔も………。
「今日は、ゆめの家まで送るよ。あんな事があった後だしさ。」
__あ、なんだ、そんなことだったのか………。って、私、何を期待してたんだろう………。なんで、聖夜くんといると、こんなにドキドキするんだろう………。
「す、すぐ近くだから、大丈夫……!」
「すぐ近くなら、尚更送るよ。」
ゆめの家の場所も把握しておきたいし。……とは言えず。
「じゃあ、お願いします………。」
ゆめの家まで、何も問題なく着いた。よし、場所、覚えたぞ。
「じゃあ、また___」
「さ、さっき言いかけたことなんだけど!」
な、何だろう……?………そんなに赤い顔されると、少し期待しちゃうんだけど………。
「お、男の子たちが、聖夜くんのこと王子様気取りって言ってたけど、あの………。わ、私は、本当に……王子様みたいに、見えた……よ……。」
え………。どうしよう、俺、今絶対顔赤い………。
あ~もう!可愛すぎるんだよ、クソッ………!
「そんなに言われると、その………。」
聖夜くんは、私から目を逸らした。耳まで真っ赤になっている。
照れてそっぽ向いてる聖夜くん、初めて見た……!か、可愛い…………‼︎
……ん?今、私結構な爆弾発言した……⁉︎王子様みたいだった、って言っちゃったよね、今⁉︎私、今顔赤いかも……。
「とっ、とにかく、送ってくれてありがとう⁉︎」
「あ、うん………?」
私が曖昧な言い方をしたせいか、聖夜くんも曖昧な言い方だった。
「じ、じゃあ、また明日………!」
「あ、ああ。じゃあな………。」
私は家に入った。
助けてくれたり、紅茶を入れてくれたり、家まで送ってくれたり、照れたり、戸惑ったり………。
聖夜くんのいろいろな面を知る度に、私の心が弾んでいる……。こんな気持ち、初めて…………。
………やばい。さっきから、心臓がめちゃめちゃうるさい………。
__王子様みたいに見えたよ__
あの一言が、俺の心に突き刺さったみたいだ。脳裏に焼き付いて離れない………。俺はやっぱり、ゆめが好きなのかもしれない………
そしたら、私と聖夜くんが付き合ってるっていう噂が流れてるみたい……。聖夜くんは、「大丈夫。気にしない方がいいよ。」って言ってたけど……。
「気をつけ、礼」
『さよーならー』
ま、いっか!
「聖夜くん、帰ろ!」
「うん。」
あ、そうそう、聖夜くんね、私にだけは、笑顔見せてくれるようになったの!周りに見られる心配がある所では真顔だけど、誰も見てない時とか2人の時とかには笑ってくれるの!今も、ちょっと口元が緩んでた。
「川上。話があるんだけど、ちょっと来てくれない?」
クラスの男の子に、違うクラスの男の子も混ざって聖夜くんを呼んだ。
「少し待って……」
あ、もしかして、一緒に帰れない………?
「ゆめ、先に昇降口に行ってて。それで、5分待っても俺が来なかったら、先に帰ってて。」
聖夜くんがら小さい声で言った。私はうなずいて教室を出た。言われた通りに、昇降口で聖夜くんを待とうとした。
昇降口に行くと、男の子が沢山集まっていた。私は気にせず靴に履き替えて、座った。急に、その男の子たちに話しかけられた___
___胸騒ぎがする……。奴らについて行ったら、廊下の一番奥に着いた。
「お前さー、自分の立場わかってんの?」
「陰キャのくせに、アイドルと一緒帰ってんじゃねーよ!」
……やっぱり、これか。
「俺、ゆめから誘われたんだけど…………。」
「んだとてめぇ!」
「とぼけんなよ!」
「名前で呼ばされて、河合さんが可愛そう!」
俺はわざと、大袈裟にため息をついた。
「何ため息ついてんだよ!」
「あのさ、名前呼びも、ゆめからの提案なんだけど……。」
奴らの顔が歪んだ。コイツら、顔歪ませるのめっちゃ上手だな。
「ウソつけよ!」
「じゃあ、ゆめに聞いてみれば?」
「アイドルに、そんなくだらねーこと聞ける訳ねーじゃん!」
「『くだらねー』んだったら、口出すな。」
「クソッ………!」
言い返せなくなったな。
「フ、フン!いい気になってろよ!今、俺らの仲間がアイドルを捕まえてんだぞ‼︎」
「アイドルがどうなっても___って、オイ!」
俺は、奴らに背を向けた。
「じゃ、ゆめが心配だから、帰るわ。」
戦いにおいて、背を向けるのはダメだけど、背を向ければ、コイツらは挑んでくるはず。
___計算通り。
「待てよ!お前を足止めするためにここに呼んだのに!」
「オイ、待て!」
2人が迫って、腕に掴みかかろうとした。
ジャンプで回避。勢いで、2人は転んだ。
「ふざけんのもここまでだ!」
俺は囲まれた。
「オレらはな、お前に勝つために毎日筋トレを続けたんだ!」
「受けて驚くなよ!」
「………俺に勝てるつもりか?面白いジョーダンだな。___まとめてかかって来やがれ!」
『おりゃああああ!』
俺は、8人を相手に殴り、蹴りを急所に当てた。
………終了。僅か6秒。
「俺を甘く見過ぎだ。じゃあな。」
「ク、クソッ………覚えとけよ………!」
俺は全速力で、昇降口に向かった。
「ねえ、あんな奴と付き合うの、やめなよ。」
「そうだよ、河合さん。」
私は10人くらいの男の子に囲まれた。
「ちょっと、やめて……。私、聖夜くんを待ってるの!」
その人たちは、なかなか聞いてくれない。
「どうせ来ないよ!オレたちと帰ろう!」
「そうそう、オレら、どうせ来ない奴をずっと待ってる河合さんを見ていたくないんだ。」
「聖夜くんは、絶対に来る!」
私がそう言っても、全然効かない。
「名前呼び、強制されてるの?可哀想に。」
「違う、私から言ったの。」
「じゃあさ、オレたちのことも、下の名前で呼んでよ。」
「……嫌。絶対に、呼ばない。」
だって聖夜くんは、この人たちとは違う。優しくて、カッコよくて……特別………な感じだから。
「もー、頑固だなあ。ホラホラ、帰るよ!」
私は腕を掴まれた。私の力じゃ、男の子を振り解けない………!私はそのまま外に引っ張られた。
「嫌!離して!」
目に、涙が浮かんだ。
私の抵抗は、少しも効いていない。
すごく引っ張られて着いたのは、高い塀に囲まれた道の、一番奥だった。
見たことない場所だ………。
「……ここどこ?私は聖夜くんと帰りたいだけなのに………。」
「ここまで来れば、アイツも見つけられないだろ!」
「昇降口で、河合さんがいなくて、アイツ失望しただろうね!」
なんでこの人たちは、こんなことするの………?私が誰と帰ろうが、私の自由なのに………。
「聖夜くん………。」
私の目から、涙がこぼれた。
クソッ!あいつら、ゆめのファンクラブだな……!
ただ、俺から逃げられると思うなよ………。
「ねえ……聖夜くんと帰らせてよ………。」
もう、私の声なんて、聞いてくれない。
「オイ、テメーら。好きな子いじめて泣かせて、楽しいか?」
この声……聖夜くんだ!でも、姿が見えない。
「⁉︎どこだ!どこにいる‼︎」
「あっ!おい、あそこ!」
そう言って指差したのは、私の後ろにある塀の上。見上げると、その高い塀の上に、聖夜くんが立っていた。ジャンプしたかと思うと、私の前に降りて来た。
「ゆめ、遅くなってごめん。」
私は、聖夜くんから差し出された手を握った。その途端、すごく安心して、涙がさらに溢れた。
ゆめは、俺の手を握りながら涙を流した。
……可愛そうに。こんなクズたちのせいで………。
俺は、ゆめを自分の後ろにやった。
「お、お前、どうしてここが………⁉︎」
「五感は優れているのでね。」
「ご、五感だと⁉︎何言ってんだよ!」
「あ、ちなみにお前らの仲間は全員倒しておいたからな。」
「ク、クソッ……!オ、オラ!みんなかかれ!あいつを倒せーっ‼︎‼︎」
この偉そうに言ってる奴がボスか。
左手はゆめが握っているから、右手だけを使う。俺が雑魚たちを倒している途中で、ボスが真っ直ぐに俺の方に殴りかかってきた。ボスも、少しは考えたようだ。俺がコイツらを倒すのに夢中になっている間に、隙をついて俺を倒そうと思ったらしい。でも、それを見抜いた俺は、片手でソイツの手を止めて、腹を蹴り飛ばした。そしたら、余裕で倒れた。ボスが倒されたからか、みんな後退りしていった。
これは好都合だな。
「今後またゆめに手ェ出したら、これくらいじゃ済まさねぇからな!」
そう言って、俺はゆめをお姫様抱っこした。
泣いてたら、聖夜くんにお姫様抱っこされた……⁉︎
「ちゃんと掴まってて。」
混乱しながらもうなずいて掴まると、聖夜くんは………飛んだ⁉︎高い塀に乗って、飛び移って、いつの間にか聖夜くんの家の前に着いた。
「怖かったでしょ。とりあえず上がって。」
「うん……おじゃまします………。」
聖夜くんの部屋は、なんだか安心した。聖夜くんが入れてくれた紅茶を飲んだら、一気に肩の力が抜けた。
「ホントにありがとう………いろいろ。」
「ううん。ゆめが大丈夫なら、俺は大丈夫だから。」
もう、優しいんだから………。
「俺、今ゆめが聞きたいこと、わかるよ。」
「え?」
「俺が、飛べるのかどうか。」
「わっ、当たり!」
聖夜くんは、自慢するかのように、口元を緩めた。
「俺、多分オッドアイの代わりで、生まれつき運動神経、筋肉、持久力、五感が優れてて。だから、あれは脚力っていうのかな。結構高くジャンプしたんだ。」
え、もう最強じゃない⁉︎
「す、すごいね!え、すごい!ごめん、すごいしか言えない!」
聖夜くんは、照れ臭そうに笑った。
「あ、あのさ………」
ゆめが急に小声になった。
「あ、な、何でもない………!」
何だったんだろ。まあ、いいか。
「わ、私、そろそろ帰るね!本当に、いろいろありが___」
「あ、待って!」
ゆめが、飛んで帰ってしまいそうな勢いだったから、俺はその手首を掴んだ。
な、何……?もう少し、ここにいて、とか___?まだ帰らないで欲しい、とか___?
何でだろう、体が熱い……顔も………。
「今日は、ゆめの家まで送るよ。あんな事があった後だしさ。」
__あ、なんだ、そんなことだったのか………。って、私、何を期待してたんだろう………。なんで、聖夜くんといると、こんなにドキドキするんだろう………。
「す、すぐ近くだから、大丈夫……!」
「すぐ近くなら、尚更送るよ。」
ゆめの家の場所も把握しておきたいし。……とは言えず。
「じゃあ、お願いします………。」
ゆめの家まで、何も問題なく着いた。よし、場所、覚えたぞ。
「じゃあ、また___」
「さ、さっき言いかけたことなんだけど!」
な、何だろう……?………そんなに赤い顔されると、少し期待しちゃうんだけど………。
「お、男の子たちが、聖夜くんのこと王子様気取りって言ってたけど、あの………。わ、私は、本当に……王子様みたいに、見えた……よ……。」
え………。どうしよう、俺、今絶対顔赤い………。
あ~もう!可愛すぎるんだよ、クソッ………!
「そんなに言われると、その………。」
聖夜くんは、私から目を逸らした。耳まで真っ赤になっている。
照れてそっぽ向いてる聖夜くん、初めて見た……!か、可愛い…………‼︎
……ん?今、私結構な爆弾発言した……⁉︎王子様みたいだった、って言っちゃったよね、今⁉︎私、今顔赤いかも……。
「とっ、とにかく、送ってくれてありがとう⁉︎」
「あ、うん………?」
私が曖昧な言い方をしたせいか、聖夜くんも曖昧な言い方だった。
「じ、じゃあ、また明日………!」
「あ、ああ。じゃあな………。」
私は家に入った。
助けてくれたり、紅茶を入れてくれたり、家まで送ってくれたり、照れたり、戸惑ったり………。
聖夜くんのいろいろな面を知る度に、私の心が弾んでいる……。こんな気持ち、初めて…………。
………やばい。さっきから、心臓がめちゃめちゃうるさい………。
__王子様みたいに見えたよ__
あの一言が、俺の心に突き刺さったみたいだ。脳裏に焼き付いて離れない………。俺はやっぱり、ゆめが好きなのかもしれない………
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