好きなんて、ウソつき。

春茶

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第7章

おままごと

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「おねぇちゃんおままごとしよー」

「うん、いーよ!」

あたしにもこのくらいの妹がいたらこうやって遊んでたのかなぁ。
女の子はやっぱりおままごととか、家庭的なことして遊ぶよね。

あたしも小さい時はこんなふうに可愛がられてたのかな、なんてね。

「おねぇちゃんはお客様で、ハナはケーキやさん!」

「はーい!」

「どのケーキにしますかぁ?」

「じゃあショートケーキで!」

「100万円でござぃまーす!」

「ひゃ、100万円!?」

ずいぶん高いな!?

「はい、どーぞ」

「ありがとーございましたぁ!」

かわいいなぁ。
…そういえば、よくみたら関村とハナちゃん顔似てないような気がする。

性格も正反対。

関村はお兄ちゃんだからあんなにしっかりしてるのか。
ちょっと怖いけど。

「ハナちゃんはいっつもお兄ちゃんと遊んでるの?」

「そうだよぉ。でもね、家にあんまり帰ってこないから寂しいの」

「帰ってないの?」

「うんっ。お兄ちゃん、遅く帰ってくる時は傷だらけだからハナが手当してあげてるんだぁ。ハナがお兄ちゃんを守ってあげてるの!」

「…そっか、優しいねハナちゃん」

「ママとパパはね、お兄ちゃんのこと嫌いだから冷たいの。だからハナだけでもお兄ちゃんの味方になりたいなって!」

「うん、それならあたしもいるから大丈夫だよ!一緒にお兄ちゃんの看病がんばろ!」

「うん!」

そう言って胸を張って誇らしく笑うハナちゃん。

…こんな小さい体でいろんなこと考えてるんだなぁ。
関村は自分の家庭のこと話してくれたことなかったから知らなかったよ。
あいつも…色んなこと抱えてるのかな。

「じゃあ今度は絵本読んでー?」

そう言ってたくさんの本を持ってきてあたしの膝の上に座った。

「いーよ?どれがいいー?」

「んー」

するとガチャっとドアが開いて
ひょこっと関村が顔を出した。

「楽しそうじゃん」

「あ、お兄ちゃんだぁ!お兄ちゃんも一緒にあそぼ」

「や、俺はいいよ。ちょっとこいつ借りるわ」

そう言ってあたしの腕を掴み立たせた。

って、関村上半身ハダカじゃん!

「ちょ、関村!服は服っ」

「風呂上がりで暑いんだからいいだろ」

「なっ…目のやり場にこまるし!」

「…エロいなおまえ。いーだろどーせお前も脱ぐんだから」

ハナちゃんの前で何を言ってるんだこの人は!

するとハナちゃんはトテトテと歩いてきてあたしの脚にしがみついた。

「だめだよ!おねぇちゃんは今ハナと遊んでるんだから!」

「今まで遊んでもらってただろ?次は俺」

「やーだ!だめ!おねぇちゃんはハナのだもん!」

「はぁ?俺のに決まってんだろ」

「ハナの!」

「俺の」

「二人ともやめなよ…」


とかいいつつ、口元がゆるゆるのあたし。
イケメンと可愛い子に取り合いされて、あたしは幸せ者です。

「やだってばぁ!」

すると大声で泣き始めたハナちゃん。

「ったく…」

「いいよ。せっかくだしもう少しハナちゃんと遊びたいなぁ。絵本続きだったし」

「…そうか?」

「うん!」

「悪いな。もう少ししたら疲れて寝ると思うからそれまで頼んでもいいか?」

「まかせて!」

関村は優しく笑ってあたしの頭をクシャッと撫でた。

「ほーら、ハナ泣くなよ。未菜が遊んでくれるってさ」

「ほんと!?やったぁ!」

「…あれ?」

号泣していたはずなのに急にニコニコして本をあたしに差し出した。

「嘘泣きの天才だからなこいつは」

「…ほぉ」

さすが関村の妹。


本を読んでしばらくすると、関村の言ってた通りハナちゃんは眠りについた。

関村を呼んで、ハナちゃんを運んでもらいベットに寝かせてあぜた。

赤くなった頬。
暖かい掌。
お兄ちゃんを守っている彼女の手はこんなにも小さくてか細い。

だけど、誰よりも暖かい心の持ち主だった。

「たくさん遊んだもんね」

「あぁ。今日はぐっすりだろうな」

「…関村、いつもはあんたがハナちゃんと遊んであげてるんだってね」

「まぁな。親は仕事であんま家にいないし遊んでやる人他にいないからさ」

「…関村はさ」

「ん?」

…家のことは触れないほうがいいのかな。
言いたくないからきっとあたしに言わないんだよね。

「ううん、なんでもない」

「…あっそ」

そっと近づいてくる関村の顔。

「ちょ…ここで?」

「…ったく焦らすなよ。こい」

手を引かれハナちゃんの部屋を出た。


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