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第1部 家出して異世界へ
5-1喧嘩中の親にメールを誤送信しちゃって発狂した件
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仕事を終え、外で夕飯も済ませて帰宅した夜。私は静まり返った屋根裏部屋で、机の前に座布団を置いて、正座しながら黙々と勉強していた。
別に、勉強に目覚めたわけではない。相変わらず、勉強は大の苦手だ。でも、お祭りの前だからこそ、気を引き締めなければならない。ここのところ、ずっと浮かれっぱなしだったし。
会社の名に傷を付けないため、シルフィードとしての誇りを守るため……。と言うのは、建前で、あることから目を背けるために、勉強に取り組んでいただけだ。
ほら、何か不安だったり、やりたくないことがある時って、別の何かに集中していれば、気がまぎれるじゃない。だからと言って、物凄く苦手な勉強で気を紛らわせるのは、それだけ事が重大だからだ。
本日分の勉強を全て終えると、ファイル閉じ、軽く息を吐きだした。時計を見ると、十時を少し回ったところ。まだ、時間は十分にある。
「どうしよ……。せっかくだから、もう少し勉強しておこうかな? いやいや、逃げちゃだめだ、私――」
どうにも、これからやる事に、気が進まなかった。普段なら、何でも勢いでやっちゃうのに、どうしてもこればかりは、踏ん切りがつかない。
私は立ち上がって、何度か大きく深呼吸したあと、再び正座して背筋をピンと伸ばす。だが、それからしばらくの間、マギコンを開いたまま、ずっと固まっていた。
マギコンの前で腕を組んだり、首を傾げたり、唸り声をあげたり、瞑想してみたり、色々やってみたけど、どれもダメだった。いざ、文章を書こうとすると、完全に固まってしまう。
たった一通のメールを書くだけなのに、どうしても指が動かなかった。普段、ユメちゃんやナギサちゃんと『EL』をやっている時は、何も考えなくても、スラスラ文章が出てくるのに。
今は、なぜか一文字すら出てこない。最初の一言を考えるだけで、どんどん時が過ぎて行った――。
そもそも、昔からメールって、ほとんど書いたことないんだよね。向こうの世界にいた時は、ずっと『LINE』だったし。こっちに来てからは『EL』しか使っていない。
リリーシャさんと、仕事のやり取りをする時も『EL』を使ってるし。『EL』と『魔力通信』があれば、コミュニケーションには困らない。
どちらの世界も、若い子たちは、みんな『チャットアプリ』を使ってるからね。メールは仕事で使うイメージがあって、何か堅苦しい感じがする。
それはさておき、今回は『送り先』が問題だった。メールの送信先は、私の母親なのだ。書き慣れてないとかの問題じゃない。送るのが、死ぬほど気まずいんですけど……。
大喧嘩して飛び出してきた上に、あれ以来、全く連絡をとっていなかった。『いつか連絡しなければ』とは思っていたけど、日が経つにつれ、どんどん連絡し辛くなっていた。
あぁ、毎日、先送りにしていたツケが、今になってやって来たんだ。いずれ、こうなるとは、分かってたのに――。
しかし、これだけ間が空いちゃって、なんて書けばいいんだろう? やっぱり、怒ってるよね? いや、確実に超怒ってると思う。となると、近況報告の前に、まずは謝らないと……。
でも、私は今も、何一つ後悔していない。こっちの世界に来て正解だったと、自信をもって言える。
つまり、間違ったことをしたとは、全く思ってないんだよね。間違ったことしてないのに、謝るって、おかしくない?
形だけでも、謝って和解するのが、賢い方法なのは分かってる。でも、私はそこまで大人になれないよ。『悪くない』と思ってるのに、謝るなんて出来ないもん。それに、心に引っかかってることが、まだ沢山あるから。
だって、親に『シルフィードになりたい』って言った時。『お前には絶対に無理』『一人で生活できる訳がない』『軽い気持ちでものを言うな』とかさ、頭ごなしに否定してきたんだよ。酷いと思わない?
こっちは、物凄く真剣に考えて話したのに。自分の将来を話すのだって、物凄く勇気いるんだからね。
なのに、まるで冗談でも聴いているかのような態度で、全く取り合ってくれなかった。だから、頭に来て家を飛び出したわけで……。
向こうも怒ってるだろうけど、私だって、超怒ってるんだからね。そもそも、親は好きなだけ怒っていいのに、子供は怒っちゃいけないって、おかしいでしょ? 親が全て正しいって訳じゃ、ないんだしさ。
あの時の話し合いを思い出したら、急にムカムカしてきた。こんな気持じゃ、とてもじゃないけど、気持ちよくメールを書けないよ――。
「うきゃーー!! どうすればいいのよー!」
私は立ち上がると、ベッドに勢いよくダイブした。枕に顔を埋めると、ゆっくりと気持ちを落ち着ける。
思えば、今までも、何度か連絡しようと思ったことはあった。でも、考えただけで、メールを書いたことは一度もない。
でも、今回、無理にでも書こうとしているのは、昼間、会社でリリーシャさんに『魔法祭にご家族もお呼びしたら』言われたからだ。
無論、勘当されている今の状態では、呼べるわけがない。そのことを話すと『せめて、近況報告のメールを送ってみたら』と言われた。
『魔法祭』は、この町ではとても特別な行事だった。なぜなら『魔法祭』が終わると、新年度が始まるからだ。
ちなみに〈グリュンノア〉では『世界歴』と『ノア歴』の二つが使われている。現在は『世界歴』2060年。『ノア歴』は121年。世界歴は1月1日に変わるが、ノア歴は、建国された『9月』が新年度になる。
8月の『魔法祭』は、年度終わりの節目なので『家族に連絡をしたほうがいいのでは』というのが、リリーシャさんの提案だ。でも、リリーシャさんは、決して私に押し付けたり、強要したりはしない。
だから、本当に私のためを想って、言ってくれてるのがよく分かる。だからこそ、今回は、チャレンジしてみようと思ったのだ。
でも、実際、何を書いていいんだか、サッパリ分からないんだよね。物凄く色々な経験や勉強をしたし、自分も結構、成長したとは思う。
ただ、認めてもらうに足る実績は、何一つなかった。本当は、昇級して一人前になってから、連絡とろうと思っていた。それなら、認めてもらえる確率も上がるからだ。
いくら頑張ってるとはいえ『見習いやってます』なんて書いたら、絶対に認めてくれるわけないよね……。
見習い期間は、社員と言っても『契約社員』なので、仮採用の状態だ。これでは『就職が決まった』とは、自信を持って言えない。
かといって、嘘をつくのは絶対に無理だ。嘘をつくのは大嫌いだし、そもそも、嘘が超下手なので、すぐにバレるに決まっている。
「もー、どうしよ、どうしよー!」
私は枕を抱えたまま、ベッドの上を左右にゴロゴロと転がった。ただ無心になって、ひたすら転がり続ける。何やってんだろ、私――。
しばらく転がって疲れると、私は大の字になって、天井をボーッと眺めた。
「んー、とりあえず、書くだけ書いてみようか……」
そう、何事もやってみるべきよ。私の取り柄って、行動力だし。やれば、たいてい何とかなる!
私はコンソールを出すと、開きっぱなしのメールに、文字を打ち込んでいった。
『元気にやっています。
如月 風歌』
散々迷った挙げ句に書いたのが、この一行だ――。
あれっ、私ってば、こんなに文才なかったっけ? いや『EL』やってる時は、もっと色々書いてるじゃん。普段は言いたいことも言ってるのに、家族が相手になると、とたんに書けなくなる。
やっぱり、家を出る時の喧嘩が、トラウマになってるのかな……。
言いたいことを言えば、また喧嘩になるのは、目に見えている。だから、なかなか素直な気持ちが書けなかった。かと言って、嘘を書く気にもなれない。
「はぁー、やっぱ、こんなんじゃダメだよね」
私は削除ボタンを押して、メールを削除した。はずだった……。
だが『メールの送信を完了しました。時空間送信は、到着に数時間かかります』とメッセージが表示される。
「って――あれ? もしかして、やっちゃった?!」
そう……『削除』と『送信』のボタンを、間違えて押してしまったのだ。
「いやぁぁぁぁーー!!」
私は再び、ベッドの上で激しく転がり回った。
あぁー、どうしよう? ただでさえ険悪な仲なのに、今のしょうもないメールのせいで、間違いなく火に油を注いでしまった。これじゃあ、もう、二度と家に帰れないよぉ……。
「終わった――全て終わった……」
私は、天井を眺めながら、完全に呆けていた。
でも、しばらくして、頭が冷えてくると、
「退路は完全になくなった。こうなったら、もう、やるしかないよ。どんどん昇級して、嫌でも認めさせてやる!」
もう、楽しければいいとか、甘いことは言わない。行けるところまで、行ってやる。そう、狙うはグランド・エンプレス! これなら、親も認めざるを得ないだろう。
結局、誤送信でメールを送っただけで、ちゃんとしたメールは書けなかった。でも、予期せぬ形で、再び私のやる気に火がついた。
「うおぉぉー! 明日から、死ぬ気で頑張るぞぉぉーー!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『前夜祭という名の乙女の秘密作戦会議』
お祭りです。最後は派手に行きましょう。
別に、勉強に目覚めたわけではない。相変わらず、勉強は大の苦手だ。でも、お祭りの前だからこそ、気を引き締めなければならない。ここのところ、ずっと浮かれっぱなしだったし。
会社の名に傷を付けないため、シルフィードとしての誇りを守るため……。と言うのは、建前で、あることから目を背けるために、勉強に取り組んでいただけだ。
ほら、何か不安だったり、やりたくないことがある時って、別の何かに集中していれば、気がまぎれるじゃない。だからと言って、物凄く苦手な勉強で気を紛らわせるのは、それだけ事が重大だからだ。
本日分の勉強を全て終えると、ファイル閉じ、軽く息を吐きだした。時計を見ると、十時を少し回ったところ。まだ、時間は十分にある。
「どうしよ……。せっかくだから、もう少し勉強しておこうかな? いやいや、逃げちゃだめだ、私――」
どうにも、これからやる事に、気が進まなかった。普段なら、何でも勢いでやっちゃうのに、どうしてもこればかりは、踏ん切りがつかない。
私は立ち上がって、何度か大きく深呼吸したあと、再び正座して背筋をピンと伸ばす。だが、それからしばらくの間、マギコンを開いたまま、ずっと固まっていた。
マギコンの前で腕を組んだり、首を傾げたり、唸り声をあげたり、瞑想してみたり、色々やってみたけど、どれもダメだった。いざ、文章を書こうとすると、完全に固まってしまう。
たった一通のメールを書くだけなのに、どうしても指が動かなかった。普段、ユメちゃんやナギサちゃんと『EL』をやっている時は、何も考えなくても、スラスラ文章が出てくるのに。
今は、なぜか一文字すら出てこない。最初の一言を考えるだけで、どんどん時が過ぎて行った――。
そもそも、昔からメールって、ほとんど書いたことないんだよね。向こうの世界にいた時は、ずっと『LINE』だったし。こっちに来てからは『EL』しか使っていない。
リリーシャさんと、仕事のやり取りをする時も『EL』を使ってるし。『EL』と『魔力通信』があれば、コミュニケーションには困らない。
どちらの世界も、若い子たちは、みんな『チャットアプリ』を使ってるからね。メールは仕事で使うイメージがあって、何か堅苦しい感じがする。
それはさておき、今回は『送り先』が問題だった。メールの送信先は、私の母親なのだ。書き慣れてないとかの問題じゃない。送るのが、死ぬほど気まずいんですけど……。
大喧嘩して飛び出してきた上に、あれ以来、全く連絡をとっていなかった。『いつか連絡しなければ』とは思っていたけど、日が経つにつれ、どんどん連絡し辛くなっていた。
あぁ、毎日、先送りにしていたツケが、今になってやって来たんだ。いずれ、こうなるとは、分かってたのに――。
しかし、これだけ間が空いちゃって、なんて書けばいいんだろう? やっぱり、怒ってるよね? いや、確実に超怒ってると思う。となると、近況報告の前に、まずは謝らないと……。
でも、私は今も、何一つ後悔していない。こっちの世界に来て正解だったと、自信をもって言える。
つまり、間違ったことをしたとは、全く思ってないんだよね。間違ったことしてないのに、謝るって、おかしくない?
形だけでも、謝って和解するのが、賢い方法なのは分かってる。でも、私はそこまで大人になれないよ。『悪くない』と思ってるのに、謝るなんて出来ないもん。それに、心に引っかかってることが、まだ沢山あるから。
だって、親に『シルフィードになりたい』って言った時。『お前には絶対に無理』『一人で生活できる訳がない』『軽い気持ちでものを言うな』とかさ、頭ごなしに否定してきたんだよ。酷いと思わない?
こっちは、物凄く真剣に考えて話したのに。自分の将来を話すのだって、物凄く勇気いるんだからね。
なのに、まるで冗談でも聴いているかのような態度で、全く取り合ってくれなかった。だから、頭に来て家を飛び出したわけで……。
向こうも怒ってるだろうけど、私だって、超怒ってるんだからね。そもそも、親は好きなだけ怒っていいのに、子供は怒っちゃいけないって、おかしいでしょ? 親が全て正しいって訳じゃ、ないんだしさ。
あの時の話し合いを思い出したら、急にムカムカしてきた。こんな気持じゃ、とてもじゃないけど、気持ちよくメールを書けないよ――。
「うきゃーー!! どうすればいいのよー!」
私は立ち上がると、ベッドに勢いよくダイブした。枕に顔を埋めると、ゆっくりと気持ちを落ち着ける。
思えば、今までも、何度か連絡しようと思ったことはあった。でも、考えただけで、メールを書いたことは一度もない。
でも、今回、無理にでも書こうとしているのは、昼間、会社でリリーシャさんに『魔法祭にご家族もお呼びしたら』言われたからだ。
無論、勘当されている今の状態では、呼べるわけがない。そのことを話すと『せめて、近況報告のメールを送ってみたら』と言われた。
『魔法祭』は、この町ではとても特別な行事だった。なぜなら『魔法祭』が終わると、新年度が始まるからだ。
ちなみに〈グリュンノア〉では『世界歴』と『ノア歴』の二つが使われている。現在は『世界歴』2060年。『ノア歴』は121年。世界歴は1月1日に変わるが、ノア歴は、建国された『9月』が新年度になる。
8月の『魔法祭』は、年度終わりの節目なので『家族に連絡をしたほうがいいのでは』というのが、リリーシャさんの提案だ。でも、リリーシャさんは、決して私に押し付けたり、強要したりはしない。
だから、本当に私のためを想って、言ってくれてるのがよく分かる。だからこそ、今回は、チャレンジしてみようと思ったのだ。
でも、実際、何を書いていいんだか、サッパリ分からないんだよね。物凄く色々な経験や勉強をしたし、自分も結構、成長したとは思う。
ただ、認めてもらうに足る実績は、何一つなかった。本当は、昇級して一人前になってから、連絡とろうと思っていた。それなら、認めてもらえる確率も上がるからだ。
いくら頑張ってるとはいえ『見習いやってます』なんて書いたら、絶対に認めてくれるわけないよね……。
見習い期間は、社員と言っても『契約社員』なので、仮採用の状態だ。これでは『就職が決まった』とは、自信を持って言えない。
かといって、嘘をつくのは絶対に無理だ。嘘をつくのは大嫌いだし、そもそも、嘘が超下手なので、すぐにバレるに決まっている。
「もー、どうしよ、どうしよー!」
私は枕を抱えたまま、ベッドの上を左右にゴロゴロと転がった。ただ無心になって、ひたすら転がり続ける。何やってんだろ、私――。
しばらく転がって疲れると、私は大の字になって、天井をボーッと眺めた。
「んー、とりあえず、書くだけ書いてみようか……」
そう、何事もやってみるべきよ。私の取り柄って、行動力だし。やれば、たいてい何とかなる!
私はコンソールを出すと、開きっぱなしのメールに、文字を打ち込んでいった。
『元気にやっています。
如月 風歌』
散々迷った挙げ句に書いたのが、この一行だ――。
あれっ、私ってば、こんなに文才なかったっけ? いや『EL』やってる時は、もっと色々書いてるじゃん。普段は言いたいことも言ってるのに、家族が相手になると、とたんに書けなくなる。
やっぱり、家を出る時の喧嘩が、トラウマになってるのかな……。
言いたいことを言えば、また喧嘩になるのは、目に見えている。だから、なかなか素直な気持ちが書けなかった。かと言って、嘘を書く気にもなれない。
「はぁー、やっぱ、こんなんじゃダメだよね」
私は削除ボタンを押して、メールを削除した。はずだった……。
だが『メールの送信を完了しました。時空間送信は、到着に数時間かかります』とメッセージが表示される。
「って――あれ? もしかして、やっちゃった?!」
そう……『削除』と『送信』のボタンを、間違えて押してしまったのだ。
「いやぁぁぁぁーー!!」
私は再び、ベッドの上で激しく転がり回った。
あぁー、どうしよう? ただでさえ険悪な仲なのに、今のしょうもないメールのせいで、間違いなく火に油を注いでしまった。これじゃあ、もう、二度と家に帰れないよぉ……。
「終わった――全て終わった……」
私は、天井を眺めながら、完全に呆けていた。
でも、しばらくして、頭が冷えてくると、
「退路は完全になくなった。こうなったら、もう、やるしかないよ。どんどん昇級して、嫌でも認めさせてやる!」
もう、楽しければいいとか、甘いことは言わない。行けるところまで、行ってやる。そう、狙うはグランド・エンプレス! これなら、親も認めざるを得ないだろう。
結局、誤送信でメールを送っただけで、ちゃんとしたメールは書けなかった。でも、予期せぬ形で、再び私のやる気に火がついた。
「うおぉぉー! 明日から、死ぬ気で頑張るぞぉぉーー!!」
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次回――
『前夜祭という名の乙女の秘密作戦会議』
お祭りです。最後は派手に行きましょう。
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