私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

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第5部 厳しさにこめられた優しい想い

2-2安全飛行講習の最終日に決意を新たに前に進み始める

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 私は〈西地区〉にある〈飛行教練センター〉に来ていた。『安全飛行講習』も、十日目。長かった講習も、今日でいよいよ最終日だ。

 だが、ここで気を抜く訳にはいかない。今日は、実技による『最終試験』があるからだ。もし、落ちてしまったら、三日間、追加の『再講習』になってしまう。

 今日は、練習場のすぐそばの教室で、講義が行われていた。私と同じで、みんな最終日の人たちなので、いつになく、緊張感が漂っている。

 今までの講義は、特に問題なく、クリアしていた。けれど、この最終試験だけは、非常に厳しく、実際に落とされる人も、結構いるらしい。

 席に着いて、しばらく待っていると、初老の男性が入って来た。彼は講壇に立つと、教室内を、ゆっくり見回した。

「どうも、おはようございます。当教練施設のセンター長、デービスです。本日は、私が皆さんの、指導及び、試験を行います。数日間にわたる、安全飛行講習、大変お疲れ様でした。最後まで、気を抜かずにやっていきましょう」

 彼は、静かに挨拶する。

 とても穏やかそうな感じの人だ。それにしても、この施設の一番、偉い人が、直接、指導と試験をするとは、思ってもみなかった。

「それでは、本日まで行った、座学と実技の、おさらいをして行きましょう」 
 彼は、マギコンを操作すると、正面に大きな空中モニターを表示した。

 音声付きの動画が流れ、初日から今日までやって来た、講義の重要ポイントを、順番に説明していく。

 起きやすい事故の事例・よくある航空法違反。機器のメンテナンス・交通標識・安全な離陸と着陸。徐行運転・ブレーキのかけ方・他の機体との交差方法など。今までの講義の内容が、全て出てきた。

 最初は、面倒に感じてたけど、初日の講義を終えて、すぐに『来てよかった』と思うようになった。私は『シルフィード学校』に行っていないので、こういう本格的な授業は、初めてだからだ。

 それに、意外と忘れていたことや、知らない知識も多かった。やっぱり、独学だけだと、知らないことや学べない知識も、色々あるよね。

 三十分ほどの動画が終わると、このあとの予定が、詳細に説明される。まずは『魔力チェック』からスタートだ。各自、すぐにマギコンを起動し『マナチェッカー』を立ち上げた。

 この『マナチェッカー』は、先日の実践講習前に、インストールしたアプリだ。マギコンに指を当てると、マナの状態を、確認することができる。機体についている『魔力ゲージ』よりも、細かい測定が可能だ。

『一日一回は、チェックするように』と、先日の講義で、指導があった。なぜなら、マナの状態が悪いと、時には、事故につながる場合もあるからだ。まさに、私の事故が、これだった。

 もし、調子が悪い場合は、その日は乗らない。もしくは、すぐに病院に行って、検査が必要だ。

 マギコンに指を置き、意識を集中すると、空中モニターの『魔力ゲージ』が、スーッと上がって行く。ここ数日、体力があり余ってるせいか、すぐにゲージが『グリーンゾーン』一杯になった。
 
 空中モニターには『測定結果』が表示された。

 マナ供給量  68.6mp  
 マナ反応速度 4.20ms
 マナ安定度  99.2%
 MC値    正常

 人によって、魔力量や反応速度が違うし、計測する日によっても、微妙に結果が違う。ただ『MC値』が正常になっていれば、安全運転が可能だ。
 
 ちなみに、マナ供給量は、エンジンパワー。マナ反応速度は、加速・減速の反応速度。マナ安定度は、魔力の正常な流れ。MC値は『マナ・コンディション』のことで、総合的な魔力の調子。

 今日は、どれも数値が高くて、とてもいい感じだ。マナ安定度を見ると、今の集中状態がよく分かる。

「どうやら、特に問題がある人は、いないようですね。それでは、シールド・ジャケットを着用後、練習場に移動。各机の番号と、同じ機体の前に集合してください」

『シールド・ジャケット』は、万一、転倒したりした場合、マナ・フィールドが発生し、体を衝撃から保護してくれる。警察官やレスキュー。また、レーサーなどの、危険が伴う仕事をする人たちが、着用しているものだ。

『普段から、着ればいいじゃん?』と思うかもしれないけど、ライフジャケットと同じで、結構、大きくて目立つ。見た目が重要なシルフィードは、使えないよね。あと、これ一着で、数十万ベルするらしい。

 私は、ジャケットを素早く装着すると、外の練習場に向かって行った……。


 ******


 外に出て、各機体の前に集合すると、すぐに練習が始まった。乗る機体は、持っているライセンスによって違う。

 エア・カートや、ロード・カート。中には、大型のエア・コンテナの人もいる。私が乗るのは、いつもと同じ、小型のエア・ドルフィンだ。

 まずは、路面走行で、信号や標識を見ながら、順番にコースを走っていく。これは、ライセンスの取得試験でも、やった記憶がある。特に難しいコースではなく、標識も、至って基本的なものだ。

 しかし、練習走行が始まると、

「ほらそこっ! 停止線をはみ出している。違うだろっ! 横断歩道は、二メートル前に停止。遅いっ! ウインカーは、車線変更の三秒以上前。この数日間、何を学んで来たんだっ!!」

 突然、人が変わったかのように、センター長が怒鳴り始めた。

 なるほど。最終試験が厳しいって、こういう意味だったわけね――。このままだと、試験も相当、厳しくチェックされそうだ。

 私は、信号が青になったあと、発進が遅れて『遅いっ! すぐに発進しないのは事故の元だ』と、怒鳴られてしまった。だって、緊張してたんだもん……。

 路面走行が終わったあとは、飛行練習に切り替わる。その後も『周囲確認が足りない!』『機体間距離が近すぎる!』など、続々と怒鳴り声が飛び交った。

 みっちり、一時間半の実地講習が終わると、いよいよ、本番の試験が始まる。名前を呼ばれた人が、機体に乗り、一人ずつ、試験がスタートした。

 なお、試験の際は、一人ずつ、コースや標識が変わる。教官が持っている端末で、自由に変更が可能だからだ。なので、コースを覚えることはできず、臨機応変な対応力が必要だった。

 試験中は、教官は無言のまま、チェクリストに記入をして行く。ミスしても、何も言って貰えないので、むしろ怖い。

 一人ずつ試験が進み、四番目の、私の順番が回って来た。あらかじめ、他の人の様子を見ていて、落ち着けたのが、幸いだった。

 先ほどの、練習中に指摘されたことを注意し、慎重かつ迅速に進めて行く。あまり、のんびりやり過ぎても、ダメだからだ。

 まずは、周囲を確認したあと、エンジンを起動。再び、周囲と上空を確認してから、ゆっくり浮上を始める。地上用の機体と違って、上空を確認することが、とても重要だった。エンジン起動直後の、上昇中に事故が多いからだ。
 
 高度計をしっかり見て、標準規定高度の、七メートルまで上昇する。そのまま、標識をみながら、速度や高度を微調整していく。最後は、指定された駐車スペースに、静かに着陸する。しっかり、指定のマークがついた位置に合わせて、着地ができた。

 操縦が終わると、エンジンが切れたことを確認し、サッと降りて、機体の左側に立つ。機体を降りて、横に立つまでが試験だ。教官が、コクリと頷くと、私は小さく息を吐いて、練習場をあとにした――。

 
 ******


 私は、待合ロビーの、長椅子に座っていた。試験の結果発表待ちだ。全員の試験が終わったと、ロビーの空中モニターに、試験の結果が発表される。

 試験は、練習中に言われたことは、全部できたと思う。それでも、やっぱり、結果発表待ちの間は、物凄く緊張する。それに、全員で十八人いるので、結構、待ち時間が長い。

 私が、悶々としていると、少し離れたところに、大きく息を吐きながら、眼鏡をかけた女の子が座った。私と同じで、シルフィードの制服を着ている。

「試験は、どうでしたか?」
 私は、少し横にずれながら、彼女に声を掛けた。
 
「えっ、あぁ……。緊張してたので、あまり自信がないんですけど」
 彼女は、ずいぶんと疲れた顔をしていた。

「私も同じです。シルフィードの方ですよね? 私は〈ホワイト・ウイング〉所属の、如月風歌です。まだ、見習いですけど」 

「えっ、あぁ、えぇと――私は〈ホワイト・ハート〉所属の、リスティー・メイソンです。私も見習いです、はい」
 
 彼女は、あせあせしながら答える。急に声を掛けたから、驚いちゃったのかな? でも、他社のシルフィードと、交流できる機会って少ないし。何か、仲間を見つけた感じで、つい嬉しくなっちゃって。

「同じ見習いだし『ホワイト』つながりだね」
「あぁ、そう言われて見れば、そうですねぇ」 
 ようやく彼女は、笑顔になってくれた。

「リスティーちゃんも、事故で?」
「えぇ、離陸した直後に、接触事故を起こしてしまって」

「えっ、それだけで、安全飛行講習なの?」
「はい、しっかり十日間。私、物凄くどんくさいので……」

 話を聴いたところ、全員、一律で十日間らしい。罰金や被害報告書で、済む場合もある。ただし、ライセンスを取り立ての人は、小さな事故でも、全員『安全飛行講習』に回されるらしい。この世界は、事故に対して、かなり厳しいんだね。
 
「私なんか、墜落事故なんで。二週間の、営業停止処分も受けちゃって」 
「えっ?! 墜落事故って、大丈夫だったんですか?」

「機体は、壊れちゃったけど。私は無傷だったんで」
「ふぅー、それは、よかったです」

 彼女は息を吐き出し、ホッとした表情をする。のんびりしてるけど、ずいぶんと、表情が豊かな子だ。コロコロと表情が変わる。

「お互いに、気を付けないとだね。怪我もそうだけど。見習いで、長期間、仕事ができないのは、痛いから」

「ですよねぇ。ただでさえ、不器用なのに。下手に休んだら、どんどん、みんなに置いて行かれちゃいますよぉ」

 彼女は、しょぼんとした表情で、軽くため息をついた。 

「それに、長期間、休むと、会社に顔を出し辛くなるよね」 
「そう、それなんです。白い目で見られないか、凄く怖くて――」
 
 やっぱり、お互いに、悩みは同じようだ。二週間も休むと、どんな顔をして、会社に行けばいいのか、よく分からない。それに、なんてお詫びを言えばいいか、まだ考え中なので……。

 しばらく二人で話をしていると、待合席の正面に、空中モニターが表示された。モニターには『最終試験 午前の部 結果発表』と、表題がついている。

 その下には、赤い色で、受験者の番号が表示されていた。私は、自分の番号の『A04』を、素早く探す。

「あった!! よし、合格!」
 私は、声を上げたあと、すぐに隣を見る。

「ありましたー!! 合格です!」
 彼女も、しっかり受かっていたようだ。

「やったね、リスティーちゃん!」
「はい、風歌さんも、おめでとうございます!」

 二人で手を握り合い、大喜びする。

 周りにいた人たちも『よしっ!』『やった!』と、歓喜の声を上げている人たちが多い。みんな、無事に受かったようだ。

「でもこれ、よく見たら、全員、受かってない?」
「あぁ、そう言われて見れば、そうですねぇ。番号、全部、出てますし」

『A01』から『A18』まで、全ての番号が表示されていた。あれだけ厳く怒鳴られていたので、最悪の事態も、考えてたんだけど。よくよく考えてみたら、あれは試験に落ちないための、アドバイスだったのかもしれない。

 ほどなくして、センター長がやって来ると、
「みなさん、十日間の講習、お疲れ様でした」
 穏やかな声で、挨拶をした。

「これは、毎回、言っていることですが。できれば、もう二度と来ないで欲しいです。別に、仕事が面倒だから、言ってる訳じゃありませんよ」

 周囲から、小さな笑いが起こる。

「私は元々、警察の『事故処理課』にいた人間です。だから、沢山の事故を見てきました。目も当てられないような、大怪我をした人。中には、命を落としてしまった人。そんな惨状を、嫌というほど見てきました」

「あと、事故に遭った家族の人たちの、悲しい表情も、たくさん見てきました。実は、一番つらいのは、事故に遭った本人よりも、その家族や友人たちなんです」

「どうか、あなたを愛してくれている人たちを、二度と悲しませないでください。そして、あなた自身の命を、大事にして欲しい。だから、もう、二度とここには、来ないように」
 
 センター長の、静かで穏やかだけど、とても重みのある言葉に、誰もが真剣に耳を傾けていた。その言葉には、思いやりや優しがあふれている。練習の時、厳しく怒鳴っていたのも、優しさだったのかもしれない。

「では、皆さんのライセンスの、失効を取り消します。これは、安全飛行ができることの、証明書です。それを、くれぐれも、忘れないように」

 センター長が、マギコンを操作すると、周囲から一斉に、着信音が鳴った。私は、すぐにライセンスを表示すると、でかでかと表示されていた『失効』の文字が消えていた。

「それでは、みなさん、安全飛行で気を付けてお帰り下さい。十日間、おつかれさまでした」 
 センター長が頭を下げると、

「ありがとうございました!」
 みんなも、一斉に頭を下げて挨拶をする。

 私は、リスティーちゃんと一緒に、軽やかな足取りで〈飛行教練センター〉を出た。彼女と別れの挨拶をすると、気持ちを引き締め、歩き始める。

 もう、二度と事故は起こさない。周りの人に、心配を掛けたくないから。また、一からやり直すつもりで、初心に戻って頑張ろう。

 私は歩きながら、新たな決意をするのだった……。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回――
『どんなに凄い人でも昔は一杯失敗してたんだね』

 試行錯誤を繰り返して 何度でも失敗して その過程があるからこそ皿は輝く
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