198 / 363
第5部 厳しさにこめられた優しい想い
4-9チャンピオンに手が届くまで私は絶対に諦めない・・・
しおりを挟む
場内は、割れんばかりの歓声に、包まれていた。それもそのはず、完全な番狂わせだった。誰もが、一方的かつ、一瞬で終わる試合だと思っていたはずだ。だが、5ラウンドまで、もつれ込んだあげく、乱打戦だなんて、誰が予想しただろうか?
インファイター同士ならまだしも、キラリスは、中距離から足を使って戦うタイプだ。だが、今目の前で行われているのは、かつて、俺とミシュリーがやっていた、超接近戦での激しい攻防だ。
確かに、キラリスには、接近戦の技術をしっかり教え込んだ。だが、終盤のこんな苦しい場面で。しかも、パワーファイターを相手に、ここまで果敢にできるとは、思っても見なかった。チャンピオン相手に、一歩もひるんじゃいない。
しかも、一つ一つの攻撃に、魂が籠っていた。昨日、教えた『必殺ブロー』を、しっかり実践してやがる。全ての攻撃に、明確な殺意がこもっていた。間違いなく、相手を殺すつもりで、殴りに行っている。
フッ、こいつは、滅茶苦茶、効くだろミシュリー? 本当に、痛ぇーんだよな。魂の籠ったパンチ、ってのはよ。
手数的には、キラリスのほうが当てている。だが、もらってるダメージ量では、圧倒的にキラリスのほうが多い。パンチの重さが、全く違うからだ。だが、キラリスは、全然ダメージを気にしちゃいない。闘志が、痛みを上回っているからだ。
ミシュリーの、目を見れば分かる。闘志のある目だが、そこに、チラチラと恐怖が、見え隠れしていた。チャンピオンの意地で、必死に殴り返しているが、明らかに動揺しているのが分かる。
本当に怖い相手は、パンチの強い相手じゃない。いくら殴っても、倒れない奴。いくら殴っても、反撃して来る奴。そして、殺意のある目をしている奴だ。
今のキラリスは、その全てを持っていた。しかも、体格がいいわけでもなく、自分よりも、ずっと格下。そんな相手が、いくら殴っても殴り返して来たら、恐怖以外の何ものでもないだろう。
二人は、一歩も引かずに、殴り合いを続けていた。圧倒的に、不利なはずのキラリスが、全く後ろに引かない。疲労もダメージも、すでにピークなはずだが、それでも反撃を続けている。気力が、肉体の限界を超えた証拠だ。
だが、それとて、いつまでも続く訳ではない。もう、このラウンドが限界だろう。次のラウンドは、立つことすら出来ないはずだ……。
本当によくやったよ、キラリス。この試合は、お前の負けだが、殴り合いの勝負では、お前の勝ちだ。
やがて、激しい殴り合い最中に、5ラウンド終了のゴングが鳴り響く。だが、キラリスは、攻撃を止めなかった。ひたすら、攻撃を出し続けている。
レフリーがリングに上がり、キラリスを止めに入った。私も、すぐにリングに上がり、後ろからキラリス押さえつけた。
「もういい、もういいんだ、キラリス! 試合は終了だ! よくやった、ゆっくり休め」
後ろから、思い切り羽交い絞めにすると、しばらくして、彼女の動きが止まった。と同時に、全身から力が抜け、ピクリとも動かなくなる。俺は、彼女をゆっくり抱え上げた。完全に、気を失っているようだ。
「レフリー、こいつは棄権する」
私が声を掛けると、レフリーは神妙な表情で、静かに頷いた。
直後、試合終了のゴングが鳴り響く。今まで歓声があがっていた場内が、急に静まり返った。
空中モニターには、
『WINNER ミシュリー・ウォレス
5R TKO』
でかでかと、試合結果が表示される。
本来なら、大歓声と拍手が、巻き起こるはずだが、場内は静寂に包まれていた。つい先ほどまで、互角に殴り合っていたチャレンジャーが、完全に気を失っており、何が起こったか、誰も分かっていない様子だ。
殴り合っている時、おそらく、半分意識が飛んでいたのだろう。途中から、明らかに、動きが変わっていた。普段なら、絶対にやらないはずの、超攻撃的な戦い方。まるで、練習をしている時のような、完璧な、お手本通りの動き。
全て無意識に、繰り出していたのだろう。それも全ては、今までの努力の賜物だ。それだけ、一生懸命、努力していた証だった。
私は、キラリスを抱えたまま、チラリと後ろを振り返る。だが、ミシュリーは、勝者の表情ではなかった。疲労が濃く、釈然としない表情をしていた。チャンピオンが、ファーストマッチで、浮かべる表情じゃない。
彼女は、知ったはずだ。とんでもない奴が、現れたことを。もう二度と、こいつのことを、格下とは思わないだろう。あの殺意の籠った拳の恐怖は、簡単には、消えないだろうから。
私は、ゆっくりリングを降りると、待機していた救護班の担架に、キラリスをそっと乗せた。キラリスは、担架に乗ったまま、ゆっくり会場の出口に向かっていく。だが、観客席から、一斉に拍手が巻き起こった。
「すげー、いい試合だった!」
「チャンピオンにも、負けてなかったぞ!」
「よくやった、滅茶苦茶、カッコよかったぞ!」
「次からは、お前を応援するから、また最高の試合を見せてくれ!」
次々と彼女を称える声が飛んでくる。もし、本人が起きていたら、有頂天になって、喜んでいただろう。
何だか、とても不思議な気分だった。自分が褒められている訳ではないのに、まるで、自分のことのように、誇らしく感じる。いや、自分のこと以上かもしれない。
実際、ずっと一緒に、練習をしてきたからな。こいつは、俺の半身のようなものだ。技術は、まだまだだし、反省点の多い試合だった。だが、心の強さだけは、一人前だと認めてやるよ。
俺は、そっと口元を緩め、静かに会場をあとにした――。
******
私の目の前には、敵がいた。いくら殴っても倒れない、スゲー強敵だ。実力は、自分よりはるか上で、勝ち目は、全くないかもしれない。それでも私は、がむしゃらになって、攻撃を続ける。
こちらも、かなり攻撃を受けているが、そんな事はどうでもいい。殴りたければ、好きなだけ殴れ。どうせもう、かわす体力なんて、1ミリも残っていないのだから。
一発、殴られたら、二発お返しをする。ダメージを受ける度に、果敢に反撃した。残った僅かな体力は、全て攻撃に回す。相手を、本気でぶっ殺すつもりで、殴打し続ける。
何だか、いい感じだ、スゲーいい感じ。殴られるたびに、体中に痛みが広がる。でも、こっちが、相手を殴った時の快感のほうが、それを、はるかに上回っていた。
私は、殴られれば殴られるほど、嬉々として、攻撃を繰り出していった。あぁ、なんて気持ちいいんだ。殴られる痛み、殴る時の手ごたえ。全てが、最高に気持ちよく感じて来る。
ようやく分かったよ、ミラ先輩の気持ち。何で、あんなに楽しそうに、戦っているのか。ミラ先輩は、知っていたんだ。この戦う中でしか得られない、快感と喜びを。
だが、今まで当たっていた攻撃が、急に当たらなくなった。私の拳は、全て空を切る。目の前にいたチャンピオンが、少しずつ距離をとっていく。
待て、ちょっと待て! 何で逃げるんだ? 戦えっ、もっと戦えよ! 私はまだやれるんだ!!
だが、彼女は、どんどん遠ざかっていき、やがて、完全に姿が見えなくなる。次の瞬間、暗闇だった世界が、急に明るくなった。
「……」
私は、状況が分からず、呆然とした。だが、数秒後――全てを理解する。すぐ隣には、腕を組んで椅子に座った、ミラ先輩の姿があった。
「おう、ようやく、目覚めたか。調子はどうだ?」
「まぁまぁ、っすね。悪くはないですよ」
「そうか、そいつは良かった」
ミラ先輩は、こちらを見つめたまま、それ以上は何も言わない。
私は、少し間をおいてから、
「私、負けたんですよね……? 相当、ひどい負けっぷりでした?」
ミラ先輩に、静かに質問した。
よく覚えていないけど、状況を見れば、負けたのは分かる。記憶がなくて、医務室で寝ているというのは、そういうことだ。しかし、負けたにしても、やられ方すら覚えていないってことは、かなり酷いやられ方だったんだろう。
「試合では負けたが、勝負では、勝ってたぞ」
「えっ――? いや、負けは負けですよね?」
ストイックなミラ先輩が、気を使って励ますなんて、珍しい。
「いいや、試合上のルールでは負けたが、喧嘩では、今日はお前の勝ちだ」
「喧嘩って……。これ、ちゃんとした、公式戦じゃないですか?」
「俺は、どんな戦いだって、全て喧嘩だと思ってやってるぞ」
「――MMAのチャンピオンが、言うセリフじゃないですよ、それ」
まぁ、ミラ先輩らしいと言えば、らしいけど。MMAは、ちゃんとしたルールに則った、理性的な競技だ。
「喧嘩ってのはよ、ルールがないだろ? ダウンだの判定だのなんて、何もないからな。なら、喧嘩はどうやって、勝敗を決めると思う?」
「どうって……そりゃ、負けを認めたら、とかですか?」
そもそも、私は喧嘩をしたことがないから、よく分からない。小さなころは、一方的にやられてたから、喧嘩じゃなくて、単にいじめられていただけだ。昔は、典型的な、いじめられっ子だったからなぁ。
「そうじゃねえよ。心を折られたら、負けなんだ。肉体的なダメージなんて、大したことじゃない。すぐに治るからな。でも、心に負ったダメージは、ずっと残るんだ」
「トラウマみたいな、感じですか?」
「そんな感じだ。今日のお前は、ミシュリーの心を、折りに行ってたからな」
「えっ、私が? いやいや、戦うだけで、一杯一杯でしたよ。攻撃も、全然、効いてなかったみたいですし」
流石はチャンピオン。最初から分かってたけど、やっぱスゲー強かった。何と言っても、打たれ強さが半端ない。まるで、サンドバッグでも、殴っている気分だった。殴っても殴っても、ビクともしないし。
「いいや、効いてたさ。しかも、かなりな。確かに、肉体へのダメージは、大したこと無かったかもしれないが。あいつの心には、かなりのダメージ、行ってたぞ」
「私が――チャンピオンの心に……?」
そう言われても、全くピンと来ない。いくら殴っても、表情一つ変えない相手に、ダメージが行っていた? とても、信じられないことだ。最初に速攻を仕掛けた時は、少し驚いてた感じだったけど。後半は、ビクともしなかった。
「お前、ちゃんと、出来てたじゃないか。昨日、教えた、必殺ブロー」
「あぁ、あのぶっ殺す気持ちを籠めて、殴るってやつですか? まぁ、後半、殺意が湧いてきた気は、するんですけど。よく覚えてないんですよ」
そもそも、どんなパンチだって、付け焼刃で、覚えられるものではない。殺意を籠めたパンチなんて、今まで一度も、練習したこと無いんだから。
「最初から、意識して使えるもんじゃ、ないからな。殺意なんてもんは、本当に必要な時、本当に勝ちたい時に、出るもんさ。勝つ気で、行ってたんだろ?」
「まぁ、そうですね。身の程知らずなのも、力が違いすぎるのも、分かってますけど。最後のほうは、マジで倒しに行ってましたよ。本気で『倒せるんじゃないか?』なんて、思っちゃいましたし」
今日は、途中までは、とても流れが良かった。だから、チャンピオンと、対等に戦える。自分なら、倒すことができる。なんて、つい調子に乗ってしまった。
でも、よくよく考えてみたら、ミシュリー選手は、ミラ先輩とも、互角に戦っていた、超実力派だ。とても、手の届く相手じゃない。
「アハハッ、それで、いいんだよ。身の程? 力の差? それがどうした? 俺がデビューしたてのころだって、俺よりも強い奴、ランキングがずっと上の奴らを、気にせず、殴り倒しに行ってたからな」
「相手が誰かなんて、関係ねぇ。ぶっ倒す気持ちが強い方が、勝つんだよ。もし、自分より上のやつに、勝てないんだったら。永遠にチャンピオンは、入れ替わらないじゃんかよ?」
確かに、それはそうだ。ミラ先輩だって、最下位から始めて、上の人間を全て倒して、頂点に上り詰めたのだから。でも、ミラ先輩の強さは、新人の時から、別格だったからな。だからこそ、言えるセリフだと思う。
「そりゃ、ミラ先輩が、元々強かったからですよ。現に、ミラ先輩を倒せる選手なんて、一人も、いないじゃないですか?」
「馬鹿いえ。俺だって、いつかは倒される。もしかしたら、これから現れる、無名の新人に、倒されるかもしれないしな」
「いやいや、あり得ないですよ。ミラ先輩が、倒されるなんて。ってか、ミラ先輩が負ける姿なんて、絶対に見たくないですから」
ミラ先輩は、絶対強者で、私にとって、世界最強の存在だ。だから、そう簡単に倒されては困る。
「もちろん、簡単には、負けないさ。仮に試合で負けても、喧嘩では、負けるつもりはないからな。でも、いずれ、俺を越えるやつは出て来る。もし、俺が倒されるのを見たくなければ、お前が俺を倒せ」
「って、何、無茶なこと言ってるんですか?! 倒せるわけないでしょ。まして、同門ですよ。戦うわけないでしょ?」
「まったく、何ヘタレたこと言ってんだ? リングに上がれば、敵同士。いずれ、戦う機会もあるだろうさ」
「嫌ですよ、ミラ先輩と戦うなんて。だいたい、ミシュリー選手にも、勝てないのに。勝てるわけないでしょ?」
ジュニアのチャンピオンですら、あの強さだ。オープンでも、無敗のチャンピオンのミラ先輩に、勝てるわけがない。それに、ミラ先輩は、私が最も尊敬する人だ。戦うなんて、あり得ない。
私は、少し興奮して、体をガバッと起こした。
「あだだだっ――。くぅー、体中が超痛い……」
体中がギシギシして、痛みが広がっていく。
「ま、あんだけ殴られりゃ、当然だ。いくら『LLVS』を使ったって、多少はダメージが、通過するからな。それに、痛覚再現だって、たくさん受ければ、痛みがしばらく残る。ようするに、打たれ過ぎなんだよ」
「でも、かわしながら攻撃できるほど、甘い相手じゃなかったですよ。相手の攻撃をもらう覚悟がなきゃ、全く手が出せなかったんです」
相手の攻撃を、かわすのに専念することも出来た。だが、その分、手数が減ってしまう。ただでさえ、タフ相手に、少ない手数で勝てるはずがない。あの時はもう、殴り合いに持ち込むしか、勝機が見い出せなかったのだ。
「あの、ひるまず殴り合いに行った覚悟は、褒めてやる。だが、技術的には、穴だらけだ。ちゃんと、かわしながら、デカいやつ当てる方法を、身につけないとな」
「頭では、分かってるんですけど。強敵が相手だと、難しいですよ、それ」
同レベルの相手なら、それでも通用する。でも、格上相手だと、そう上手くは行かないものだ。
「練習が足りないんだよ。練習すりゃ、いくらでも強くなる。明日からまた、今まで以上に、みっちり鍛えてやるからな」
「えぇ―!? 試合が終わったばかりなのに、いきなりですか?」
「覚悟しとけよ。ぬるいことやってっと、ミシュリーの十倍、威力のあるパンチを、腹に叩きこんでやるからな」
「ちょっ、私を殺す気ですか?! 本気でやりそうで、シャレにならないですよ!」
ミラ先輩は、拳をの指をバキバキと鳴らしながら、豪快に笑った。
まったく、敵わないな、ミラ先輩には。ミラ先輩が言うと、本当に、何でも出来そうに感じて来る。強い人間が言うと、全て真実に聞こえてしまう。
今日の試合は、負けてしまった。けど、ほんのちょっとでも、手ごたえはあったし。チャンピオンに、全く通用しない訳ではないことも、十分にわかった。
私は強くないし、気も小さい。それでも、ミラ先輩を信じて、全力でついて行こうと思う。私もいつか、チャンピオンに手が届くところまで、行ける日まで……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『黄金色に輝く街を見ているとワクワクが止まらない』
君の命には、黄金なんて比べ物にならないほどの価値がある
インファイター同士ならまだしも、キラリスは、中距離から足を使って戦うタイプだ。だが、今目の前で行われているのは、かつて、俺とミシュリーがやっていた、超接近戦での激しい攻防だ。
確かに、キラリスには、接近戦の技術をしっかり教え込んだ。だが、終盤のこんな苦しい場面で。しかも、パワーファイターを相手に、ここまで果敢にできるとは、思っても見なかった。チャンピオン相手に、一歩もひるんじゃいない。
しかも、一つ一つの攻撃に、魂が籠っていた。昨日、教えた『必殺ブロー』を、しっかり実践してやがる。全ての攻撃に、明確な殺意がこもっていた。間違いなく、相手を殺すつもりで、殴りに行っている。
フッ、こいつは、滅茶苦茶、効くだろミシュリー? 本当に、痛ぇーんだよな。魂の籠ったパンチ、ってのはよ。
手数的には、キラリスのほうが当てている。だが、もらってるダメージ量では、圧倒的にキラリスのほうが多い。パンチの重さが、全く違うからだ。だが、キラリスは、全然ダメージを気にしちゃいない。闘志が、痛みを上回っているからだ。
ミシュリーの、目を見れば分かる。闘志のある目だが、そこに、チラチラと恐怖が、見え隠れしていた。チャンピオンの意地で、必死に殴り返しているが、明らかに動揺しているのが分かる。
本当に怖い相手は、パンチの強い相手じゃない。いくら殴っても、倒れない奴。いくら殴っても、反撃して来る奴。そして、殺意のある目をしている奴だ。
今のキラリスは、その全てを持っていた。しかも、体格がいいわけでもなく、自分よりも、ずっと格下。そんな相手が、いくら殴っても殴り返して来たら、恐怖以外の何ものでもないだろう。
二人は、一歩も引かずに、殴り合いを続けていた。圧倒的に、不利なはずのキラリスが、全く後ろに引かない。疲労もダメージも、すでにピークなはずだが、それでも反撃を続けている。気力が、肉体の限界を超えた証拠だ。
だが、それとて、いつまでも続く訳ではない。もう、このラウンドが限界だろう。次のラウンドは、立つことすら出来ないはずだ……。
本当によくやったよ、キラリス。この試合は、お前の負けだが、殴り合いの勝負では、お前の勝ちだ。
やがて、激しい殴り合い最中に、5ラウンド終了のゴングが鳴り響く。だが、キラリスは、攻撃を止めなかった。ひたすら、攻撃を出し続けている。
レフリーがリングに上がり、キラリスを止めに入った。私も、すぐにリングに上がり、後ろからキラリス押さえつけた。
「もういい、もういいんだ、キラリス! 試合は終了だ! よくやった、ゆっくり休め」
後ろから、思い切り羽交い絞めにすると、しばらくして、彼女の動きが止まった。と同時に、全身から力が抜け、ピクリとも動かなくなる。俺は、彼女をゆっくり抱え上げた。完全に、気を失っているようだ。
「レフリー、こいつは棄権する」
私が声を掛けると、レフリーは神妙な表情で、静かに頷いた。
直後、試合終了のゴングが鳴り響く。今まで歓声があがっていた場内が、急に静まり返った。
空中モニターには、
『WINNER ミシュリー・ウォレス
5R TKO』
でかでかと、試合結果が表示される。
本来なら、大歓声と拍手が、巻き起こるはずだが、場内は静寂に包まれていた。つい先ほどまで、互角に殴り合っていたチャレンジャーが、完全に気を失っており、何が起こったか、誰も分かっていない様子だ。
殴り合っている時、おそらく、半分意識が飛んでいたのだろう。途中から、明らかに、動きが変わっていた。普段なら、絶対にやらないはずの、超攻撃的な戦い方。まるで、練習をしている時のような、完璧な、お手本通りの動き。
全て無意識に、繰り出していたのだろう。それも全ては、今までの努力の賜物だ。それだけ、一生懸命、努力していた証だった。
私は、キラリスを抱えたまま、チラリと後ろを振り返る。だが、ミシュリーは、勝者の表情ではなかった。疲労が濃く、釈然としない表情をしていた。チャンピオンが、ファーストマッチで、浮かべる表情じゃない。
彼女は、知ったはずだ。とんでもない奴が、現れたことを。もう二度と、こいつのことを、格下とは思わないだろう。あの殺意の籠った拳の恐怖は、簡単には、消えないだろうから。
私は、ゆっくりリングを降りると、待機していた救護班の担架に、キラリスをそっと乗せた。キラリスは、担架に乗ったまま、ゆっくり会場の出口に向かっていく。だが、観客席から、一斉に拍手が巻き起こった。
「すげー、いい試合だった!」
「チャンピオンにも、負けてなかったぞ!」
「よくやった、滅茶苦茶、カッコよかったぞ!」
「次からは、お前を応援するから、また最高の試合を見せてくれ!」
次々と彼女を称える声が飛んでくる。もし、本人が起きていたら、有頂天になって、喜んでいただろう。
何だか、とても不思議な気分だった。自分が褒められている訳ではないのに、まるで、自分のことのように、誇らしく感じる。いや、自分のこと以上かもしれない。
実際、ずっと一緒に、練習をしてきたからな。こいつは、俺の半身のようなものだ。技術は、まだまだだし、反省点の多い試合だった。だが、心の強さだけは、一人前だと認めてやるよ。
俺は、そっと口元を緩め、静かに会場をあとにした――。
******
私の目の前には、敵がいた。いくら殴っても倒れない、スゲー強敵だ。実力は、自分よりはるか上で、勝ち目は、全くないかもしれない。それでも私は、がむしゃらになって、攻撃を続ける。
こちらも、かなり攻撃を受けているが、そんな事はどうでもいい。殴りたければ、好きなだけ殴れ。どうせもう、かわす体力なんて、1ミリも残っていないのだから。
一発、殴られたら、二発お返しをする。ダメージを受ける度に、果敢に反撃した。残った僅かな体力は、全て攻撃に回す。相手を、本気でぶっ殺すつもりで、殴打し続ける。
何だか、いい感じだ、スゲーいい感じ。殴られるたびに、体中に痛みが広がる。でも、こっちが、相手を殴った時の快感のほうが、それを、はるかに上回っていた。
私は、殴られれば殴られるほど、嬉々として、攻撃を繰り出していった。あぁ、なんて気持ちいいんだ。殴られる痛み、殴る時の手ごたえ。全てが、最高に気持ちよく感じて来る。
ようやく分かったよ、ミラ先輩の気持ち。何で、あんなに楽しそうに、戦っているのか。ミラ先輩は、知っていたんだ。この戦う中でしか得られない、快感と喜びを。
だが、今まで当たっていた攻撃が、急に当たらなくなった。私の拳は、全て空を切る。目の前にいたチャンピオンが、少しずつ距離をとっていく。
待て、ちょっと待て! 何で逃げるんだ? 戦えっ、もっと戦えよ! 私はまだやれるんだ!!
だが、彼女は、どんどん遠ざかっていき、やがて、完全に姿が見えなくなる。次の瞬間、暗闇だった世界が、急に明るくなった。
「……」
私は、状況が分からず、呆然とした。だが、数秒後――全てを理解する。すぐ隣には、腕を組んで椅子に座った、ミラ先輩の姿があった。
「おう、ようやく、目覚めたか。調子はどうだ?」
「まぁまぁ、っすね。悪くはないですよ」
「そうか、そいつは良かった」
ミラ先輩は、こちらを見つめたまま、それ以上は何も言わない。
私は、少し間をおいてから、
「私、負けたんですよね……? 相当、ひどい負けっぷりでした?」
ミラ先輩に、静かに質問した。
よく覚えていないけど、状況を見れば、負けたのは分かる。記憶がなくて、医務室で寝ているというのは、そういうことだ。しかし、負けたにしても、やられ方すら覚えていないってことは、かなり酷いやられ方だったんだろう。
「試合では負けたが、勝負では、勝ってたぞ」
「えっ――? いや、負けは負けですよね?」
ストイックなミラ先輩が、気を使って励ますなんて、珍しい。
「いいや、試合上のルールでは負けたが、喧嘩では、今日はお前の勝ちだ」
「喧嘩って……。これ、ちゃんとした、公式戦じゃないですか?」
「俺は、どんな戦いだって、全て喧嘩だと思ってやってるぞ」
「――MMAのチャンピオンが、言うセリフじゃないですよ、それ」
まぁ、ミラ先輩らしいと言えば、らしいけど。MMAは、ちゃんとしたルールに則った、理性的な競技だ。
「喧嘩ってのはよ、ルールがないだろ? ダウンだの判定だのなんて、何もないからな。なら、喧嘩はどうやって、勝敗を決めると思う?」
「どうって……そりゃ、負けを認めたら、とかですか?」
そもそも、私は喧嘩をしたことがないから、よく分からない。小さなころは、一方的にやられてたから、喧嘩じゃなくて、単にいじめられていただけだ。昔は、典型的な、いじめられっ子だったからなぁ。
「そうじゃねえよ。心を折られたら、負けなんだ。肉体的なダメージなんて、大したことじゃない。すぐに治るからな。でも、心に負ったダメージは、ずっと残るんだ」
「トラウマみたいな、感じですか?」
「そんな感じだ。今日のお前は、ミシュリーの心を、折りに行ってたからな」
「えっ、私が? いやいや、戦うだけで、一杯一杯でしたよ。攻撃も、全然、効いてなかったみたいですし」
流石はチャンピオン。最初から分かってたけど、やっぱスゲー強かった。何と言っても、打たれ強さが半端ない。まるで、サンドバッグでも、殴っている気分だった。殴っても殴っても、ビクともしないし。
「いいや、効いてたさ。しかも、かなりな。確かに、肉体へのダメージは、大したこと無かったかもしれないが。あいつの心には、かなりのダメージ、行ってたぞ」
「私が――チャンピオンの心に……?」
そう言われても、全くピンと来ない。いくら殴っても、表情一つ変えない相手に、ダメージが行っていた? とても、信じられないことだ。最初に速攻を仕掛けた時は、少し驚いてた感じだったけど。後半は、ビクともしなかった。
「お前、ちゃんと、出来てたじゃないか。昨日、教えた、必殺ブロー」
「あぁ、あのぶっ殺す気持ちを籠めて、殴るってやつですか? まぁ、後半、殺意が湧いてきた気は、するんですけど。よく覚えてないんですよ」
そもそも、どんなパンチだって、付け焼刃で、覚えられるものではない。殺意を籠めたパンチなんて、今まで一度も、練習したこと無いんだから。
「最初から、意識して使えるもんじゃ、ないからな。殺意なんてもんは、本当に必要な時、本当に勝ちたい時に、出るもんさ。勝つ気で、行ってたんだろ?」
「まぁ、そうですね。身の程知らずなのも、力が違いすぎるのも、分かってますけど。最後のほうは、マジで倒しに行ってましたよ。本気で『倒せるんじゃないか?』なんて、思っちゃいましたし」
今日は、途中までは、とても流れが良かった。だから、チャンピオンと、対等に戦える。自分なら、倒すことができる。なんて、つい調子に乗ってしまった。
でも、よくよく考えてみたら、ミシュリー選手は、ミラ先輩とも、互角に戦っていた、超実力派だ。とても、手の届く相手じゃない。
「アハハッ、それで、いいんだよ。身の程? 力の差? それがどうした? 俺がデビューしたてのころだって、俺よりも強い奴、ランキングがずっと上の奴らを、気にせず、殴り倒しに行ってたからな」
「相手が誰かなんて、関係ねぇ。ぶっ倒す気持ちが強い方が、勝つんだよ。もし、自分より上のやつに、勝てないんだったら。永遠にチャンピオンは、入れ替わらないじゃんかよ?」
確かに、それはそうだ。ミラ先輩だって、最下位から始めて、上の人間を全て倒して、頂点に上り詰めたのだから。でも、ミラ先輩の強さは、新人の時から、別格だったからな。だからこそ、言えるセリフだと思う。
「そりゃ、ミラ先輩が、元々強かったからですよ。現に、ミラ先輩を倒せる選手なんて、一人も、いないじゃないですか?」
「馬鹿いえ。俺だって、いつかは倒される。もしかしたら、これから現れる、無名の新人に、倒されるかもしれないしな」
「いやいや、あり得ないですよ。ミラ先輩が、倒されるなんて。ってか、ミラ先輩が負ける姿なんて、絶対に見たくないですから」
ミラ先輩は、絶対強者で、私にとって、世界最強の存在だ。だから、そう簡単に倒されては困る。
「もちろん、簡単には、負けないさ。仮に試合で負けても、喧嘩では、負けるつもりはないからな。でも、いずれ、俺を越えるやつは出て来る。もし、俺が倒されるのを見たくなければ、お前が俺を倒せ」
「って、何、無茶なこと言ってるんですか?! 倒せるわけないでしょ。まして、同門ですよ。戦うわけないでしょ?」
「まったく、何ヘタレたこと言ってんだ? リングに上がれば、敵同士。いずれ、戦う機会もあるだろうさ」
「嫌ですよ、ミラ先輩と戦うなんて。だいたい、ミシュリー選手にも、勝てないのに。勝てるわけないでしょ?」
ジュニアのチャンピオンですら、あの強さだ。オープンでも、無敗のチャンピオンのミラ先輩に、勝てるわけがない。それに、ミラ先輩は、私が最も尊敬する人だ。戦うなんて、あり得ない。
私は、少し興奮して、体をガバッと起こした。
「あだだだっ――。くぅー、体中が超痛い……」
体中がギシギシして、痛みが広がっていく。
「ま、あんだけ殴られりゃ、当然だ。いくら『LLVS』を使ったって、多少はダメージが、通過するからな。それに、痛覚再現だって、たくさん受ければ、痛みがしばらく残る。ようするに、打たれ過ぎなんだよ」
「でも、かわしながら攻撃できるほど、甘い相手じゃなかったですよ。相手の攻撃をもらう覚悟がなきゃ、全く手が出せなかったんです」
相手の攻撃を、かわすのに専念することも出来た。だが、その分、手数が減ってしまう。ただでさえ、タフ相手に、少ない手数で勝てるはずがない。あの時はもう、殴り合いに持ち込むしか、勝機が見い出せなかったのだ。
「あの、ひるまず殴り合いに行った覚悟は、褒めてやる。だが、技術的には、穴だらけだ。ちゃんと、かわしながら、デカいやつ当てる方法を、身につけないとな」
「頭では、分かってるんですけど。強敵が相手だと、難しいですよ、それ」
同レベルの相手なら、それでも通用する。でも、格上相手だと、そう上手くは行かないものだ。
「練習が足りないんだよ。練習すりゃ、いくらでも強くなる。明日からまた、今まで以上に、みっちり鍛えてやるからな」
「えぇ―!? 試合が終わったばかりなのに、いきなりですか?」
「覚悟しとけよ。ぬるいことやってっと、ミシュリーの十倍、威力のあるパンチを、腹に叩きこんでやるからな」
「ちょっ、私を殺す気ですか?! 本気でやりそうで、シャレにならないですよ!」
ミラ先輩は、拳をの指をバキバキと鳴らしながら、豪快に笑った。
まったく、敵わないな、ミラ先輩には。ミラ先輩が言うと、本当に、何でも出来そうに感じて来る。強い人間が言うと、全て真実に聞こえてしまう。
今日の試合は、負けてしまった。けど、ほんのちょっとでも、手ごたえはあったし。チャンピオンに、全く通用しない訳ではないことも、十分にわかった。
私は強くないし、気も小さい。それでも、ミラ先輩を信じて、全力でついて行こうと思う。私もいつか、チャンピオンに手が届くところまで、行ける日まで……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『黄金色に輝く街を見ているとワクワクが止まらない』
君の命には、黄金なんて比べ物にならないほどの価値がある
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる