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第5部 厳しさにこめられた優しい想い
5-2一年の感謝を込めて町中にお礼を伝えに飛び回る
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私は、エア・ドルフィンに乗って、町中を飛び回っていた。今日は、いつもの練習飛行とは違う。後部座席に、荷物ボックスを付けて飛んでいた。ボックスの中には、大量の『クッキーの袋』が入っている。
今日は、この町の恒例行事である『クッキー配り』を行っていた。お世話になった人たちに、お礼を言いながら、クッキーを渡すイベントだ。向こうの世界の、ホワイトデーに近い感じかな。
先日、リリーシャさんと、お茶をしている時に、ちょうどその話題が出てきた。それで『一緒に作ろう』という事になった。リリーシャさんも、毎年、物凄くたくさん配るため、大量に作っているらしい。
そんな流れで、リリーシャさんの家にお邪魔して、クッキー作りを行った。でも、私は生地をこねたりする、力作業の担当。焼いたり、デコレーションしたりの、細かい作業は、全部リリーシャさんにやってもらった。
おかげで、見た目もキレイで、とても美味しいクッキーが完成した。流石は、リリーシャさん。まるで、プロが作った市販品のように、完璧な仕上がりだった。一応、私も手伝ったんだから、自作ってことでいいよね。
袋詰めした、大量のクッキーは、ダンボール数箱分になった。リリーシャさんは、超人気があるし、知り合いも多いからね。でも、私も意外と配る人が多く、ダンボール一箱分以上が、必要だった。
〈東地区商店街〉は、全てのお店に配るし。他にも、いつも通っているお店は、全部、配りに回るつもりだ。友達や知り合いも含めると、結構な数が必要なんだよね。よくよく考えてみたら、私も意外と、お付き合いしている人が多かった。
でも、富を分け合うことで、お互いが幸せになれるって、とても素敵な考え方だよね。まぁ、私には、分けられるような富はないけど、気持ちが大事だから。そう、気持ち、超大事!
そんなわけで、まずは、自分が住んでいる〈北地区〉から、回って行くことにした。最初に行ったのは、ノーラさんのところだ。部屋を貸してもらっている上に、よく食事をご馳走になってるからね。こっちに来てから、お世話になりっぱなしだ。
クッキーを渡すと、真っ先に『これ、リリー嬢ちゃんが焼いたやつだろ?』と、あっさり、見破られてしまった。見た瞬間に分かるとは、流石は、リリーシャさんの料理の師匠だ。
『一応、生地をこねたり、袋詰めは手伝いました』と言ったんだけど、鼻で笑われてしまった……。でも、ノーラさんも、ちゃんと準備していたみたいで、お返しのクッキーを渡してくれた。
そのあとは、よく通っている、パン屋さんを数件。あと、喫茶店の〈宿り木〉の女将さんのところも。さらに、以前、代行でパンの宅配に行った御宅にも、順番に配って行った。一度、会っただけでも、ご縁は大事にしたいからね。
あと、徒歩で老紳士を送って行った〈マーカス・グリーン・ファーム〉にも、渡しに行く。すると、娘さんが出てきて、お返しのクッキーに加え、また、どっさりと、とれたての野菜をもらってしまった。
なんか、渡す量より、もらってる量のほうが、はるかに多い気がする。これでは、富を分け合うんじゃなくて、私が一方的に、得しちゃってるのでは――?
結局、色々もらって荷物が一杯になったので、いったん荷物を置きに、会社に戻った。荷物を置いて、クッキーを補充すると、今度は〈西地区〉〈南地区〉の順に回って行く。
〈南地区〉は、何度か行ったことのある、喫茶店の〈水晶亭〉にも顔を出す。すると、偶然にも、ライザさんが来ていて、お互いに再会を喜び合う。ライザさんも、クッキーを渡しに来たんだって。
私は、二人にクッキーを渡すと、お礼のクッキーを受け取る。さらには、入れたてのカフェオレとケーキを、ご馳走になってしまった。
この町では、クッキーを渡しあうのって、本当にあたり前の習慣なんだね。どこに行っても、ちゃんとお返しのクッキーを、用意してあるもん。しかも、渡したのより、豪華なのが返って来るし。
〈水晶亭〉で、しばらく休憩すると、再びクッキー配りに飛び回る。まだまだ、配る所は多いし、むしろ、これからが本番だ。
ナギサちゃんたちは、今度お茶した時に渡すとして。やっぱり〈東地区商店街〉は、気合を入れて回らないとね。
〈東地区商店街〉は、全てのお店の、店主や女将さんと、知り合いだった。いつも、町内会でも会ってるし。買い物も、ここですることが、多いからだ。それに〈ホワイト・ウイング〉の、ホームエリアだからね。しっかり、挨拶をしておかないと。
おそらく、リリーシャさんも、ここは重点的に回っていると思う。でも、もらって困る物じゃないし、被っても問題ないよね。要は、気持ちの問題だから。
私は、いったん事務所に戻って、クッキーを満タンに補充することにした。すると、キッチンのテーブルには、私がもらった物の他にも、沢山のクッキーが置いてあった。おそらく、リリーシャさんが、もらって来たものだと思う。
「リリーシャさんも、かなり沢山もらうと思うから。このペースだと、夕方には、クッキーだらけになっちゃうかも……」
それはそれで、凄く楽しそうだけど。全部、食べ切れるんだろうか? まだまだ、増えそうな感じだし。
「ま、いっかー。甘いものは、大好きだし」
私は、準備を終えると、再びクッキー配りに向かうのだった……。
******
私は〈東地区〉の駐車場に、エア・ドルフィンを停めると、少し歩いて〈東地区商店街〉に向かった。両手には、クッキーの袋が大量に入った、紙袋を持っている。端から端まで配るので、結構な量が必要だ。
軒数が多いので、かなり大変だけど、日ごろから、凄くお世話になってるからね。ちゃんと、今年一年のお礼を言わないと。
私は、こっちの世界に来てから、いつも色んな人に、お世話になりっぱなしだ。でも、冷静に考えてみると、ちゃんと、お礼を口にしたことって、あまりないんだよね。私も故事にならって、一軒ずつ心を込めて、お礼を言って行こう。
商店街に入ると、一番、端にあるお店から回って行く。最初のお店は、八百屋の『リンド青果店』だ。
「こんにちは。いつも、お世話になっています」
「おや、風歌ちゃんじゃないかい。いらっしゃい!」
恰幅のよい女将のメイズさんが、元気に声を返してきた。
「今年、一年間、大変お世話になりました。つまらない物ですが」
私は、頭を下げながら、クッキーの袋を差し出した。
「あらあら、嬉しいわ。シルフィードにクッキーをもらえるなんて、商売繁盛、間違いなしね!」
「あははっ、だと、いいんですけど」
この町では、シルフィードは幸運の象徴であり、幸運をみんなに運んでくれる、と言われている。つまり、シルフィード自体が『縁起物』なんだよね。
「はい、これ。お返しのクッキー。あと、これも持ってきな」
メイズさんは、用意してあったクッキーの他に、リンゴを一山、袋に入れて渡してくれた。
「あの、いいんですか? お礼に来たのに、逆にいただいちゃって――」
「いいの、いいの。シルフィードが来てくれるだけで、物凄い幸運なのよ。他の店も回る予定なの?」
「はい。商店街の、全てのお店を回るつもりです」
「なら、みんな凄く喜ぶわよ。風歌ちゃんは、幸運の使者に加え、この商店街の、ヒーローなんだから」
メイズさんは、腰に手を当て、満面の笑みを浮かべる。でも、私はちょっと、引きつった笑みを浮かべた。
いやいや、私はお礼に来ただけで、そんなに、凄い存在んじゃないんだけど。まぁ、喜んでもらえるなら、いいのかな……? 取りあえず、誠心誠意、お礼を伝えて行こう。
私がそう考えていると、
「みんなー、幸運の使者が、クッキーを持ってやって来たわよー!! ちゃんと、お返しを、用意しておきなさい!」
メイズさんが、大きな声で、周りの人たちに呼びかけた。
「おぉー、風歌ちゃんか!」
「いやー、物凄くご利益ありそうだな!」
「そうかい、そうかい。なら、とっておきのお返し、用意しないとね!」
お店の大将や女将さんたちが、一斉に動き出した。さらに、こちらに、期待に満ちた視線を向けて来る。私が来たという噂は、次々と、先のほうのお店まで、伝わって行った。流石に、凄いチームワークと行動力だ。
ちょっ……。普通にクッキーを渡して、お礼をしようと思っただけなのに。何で、こんな大事に?! これじゃ、まるで、何かのイベントみたいじゃない――?
「ほれ、行っといで。みんな、楽しみに待ってるからさ」
私は、バシッと、メイズさんに背中を叩かれた。
「あ、あははっ、頑張ります……」
私は、ぎこちない笑みを浮かべて、それに答える。
最初は、軽く世間話でもしながら、気楽に渡そうと思ってたんだけど。急にハードルが上がって、プレッシャーが、大きくなってきた。どのお店の人たちも、ジーッと私のことを、期待のまなざしで見ているからだ。
でもまぁ、こうなったら、精一杯シルフィードとして、振る舞うしかないよね。私は、ただの見習いだけど、みんなは、そう思ってないみたいだし。
私は、日ごろの勉強の成果と、リリーシャさんの振る舞いを、思い浮かべながら、一軒ずつ回って行った。まずは、クッキーを渡して、一年のお礼を言って、それぞれに合った世間話をする。
そして最後に『今後も〈ホワイト・ウイング〉を、よろしくお願いいたします』と、しっかり、会社の宣伝もしておく。
みんな、想像していた以上に、大喜びしてくれた。クッキーをもらうことも、大事だけど、誰からもらうかも、物凄く重要らしい。中でも、シルフィードからもらうクッキーは、最上級のご利益があるんだって。
ただ、私自身、全くお金ないし。金運が上がるかどうかは、怪しいんだけど――。でも、みんなの、素敵な笑顔が見れるのは、私もとても嬉しい。だから私は、一人前のシルフィードとして。また、幸運の使者として、精一杯に振る舞った。
ちょうど、商店の中間あたりに来たところで、声を掛けられた。この明るく軽いノリの声は、聞き覚えがある。
「やっほー、風歌ちゃん。相変わらず、超人気者ねー」
「あれ、ユキさん。何でこんな所に……?」
町内会長のお孫さんの、ユキさんだ。
相変わらず、斬新なファッションに、ビビッドな色のマニュキュアと、濃い目の化粧。服装もだけど、たくさんの装飾品を身に着けて、実に派手な格好だ。この昔ながらの商店街の中では、完全に浮いている。
「ちょっと、おじいちゃんの家に、用があってね。そうそう、聴いたわよ。あのイベントのあと、商店街の売り上げが、かなり伸びたらしいじゃない」
「みたいですね。お役に立てて、よかったです。本当に〈ホワイト・ウイング〉の知名度と、リリーシャさんの人気って、凄いですよね」
『ホワイト・ウイング・フェア』は、結局、初日で千人以上が集まるという、大盛況だった。二日目以降も、話題が話題を呼び、滅茶苦茶、人が集まったらしい。やっぱり、知名度や人気の影響力って、凄いよね。
イベントのあとも、通ってくれるようになったお客さんも、結構、多いんだって。お礼に回った各お店で、みんな、同じことを言っていた。
「何言ってんの? あのイベントの功労者は、風歌ちゃんじゃない」
「いえいえ、私なんて、大したことやってませんよ。ただの見習いですし」
結局、リリーシャさんの、懐の広い対応と多大な協力。あと、他社のナギサちゃんたちにまで、手伝ってもらった。あとは、商店街の人たちの、情熱や頑張りがあったからだ。
「そもそも、風歌ちゃんが動かなきゃ、実現しなかったイベントよ。あのイベントの、成功の七割は、風歌ちゃんの力と影響力なんだから」
「いやいや、まさか……。力も影響力も、全くありませんから」
「はぁー。何にも、分かってないわね。もう、これだから、無自覚な有名人は」
「へ――?」
ユキさんは、小さくため息をついた。
「ま、いいわ。とりあえず、写真を撮らせてちょうだい。また、アップしとくから」
「えっ……? あの、目立つのはちょっと」
「別に、お礼でクッキーを配るなんて、誰もがやってることだから、平気よ」
そういうと、ユキさんは、マギコンを起動して、パシャパシャと写真を撮り始めた。『勝手にやるから、気にしないで』と言われたので、私は再び、クッキー配りを続けて行くのだった……。
******
夕方の、四時過ぎ。私は、大量のお返しの入った荷物ボックスを持って、事務所に戻って来た。もらい物の量が多すぎて、ボックスのふたが閉まらない。
結局、全ての店を回るのに、二時間以上かかってしまった。ユキさんは、ふと気付くと、いつの間にか姿を消していた。相変わらず、神出鬼没な人だ。
事務所に入ると、リリーシャさんが、事務仕事をしていた。私に気付くと、笑顔で声をかけて来る。
「風歌ちゃん、お帰りなさい。ずいぶんと、沢山もらって来たのね」
「いやー、お礼を渡すつもりが。むしろ、一杯もらっちゃいました」
「貰ったよりも、沢山お返しするのが、習わしみたいなものだから」
「なるほど、そうだったんですね」
とりあえず、荷物を置くために、キッチンのテーブルに向かう。だが、私は部屋に入った瞬間、驚いて声を上げてしまった。
「えぇぇーっ!? 置く場所が全然ない――」
テーブルの上は、クッキーやら何やらで、完全に埋まっていた。私が想像していた量を、はるかに上回っていたのだ。中には、リボンのついた大きな箱など、高級そうなものも置いてある。
さ、流石は、リリーシャさん。人気があるとは思ってたけど、まさか、ここまで凄いとは……。
「いつも、こちらがお世話になっているので、申しわけないけれど。でも、渡された物は、受け取るのがマナーだから」
「まぁ、そうですよねぇー」
私はとりあえず、椅子の上に、ボックスをどさっと置いた。
「ところで、これどうしましょう? クッキーは、お茶の時に食べればいいとして。生ものなんかも、結構、もらっちゃったんですけど――」
もらった中には、野菜や魚なんかもある。でも、私は一切、自炊をしないので。このままだと、腐らせてしまうだけだ。
「なら、私の家で、食事会をしましょうか? 私は、ツバサちゃんに、声を掛けてみるから。風歌ちゃんも、お友達を呼ぶのはどう?」
「えっ、いいんですか?」
「一人じゃ無理でも、みんななら、食べきれるんじゃない?」
「はい、そうですね!」
そんな訳で、急きょ、リリーシャさんの家で、もらい物の食事会を行うことになった。リリーシャさんなら、料理が超上手だし、安心だよね。
それにしても、お礼に行ったはずが、こんなに沢山、もらい物をするとは、思っても見なかった。みんな、大らかというか、優しいというか、いい人たちばかりだ。しかも、シルフィードが来てくれたと、滅茶苦茶、喜んでくれてたし。
相変わらず、助けられたり、もらったりしてばかりだけど。いつか、みんなの期待に応えらえる、本物シルフィードにならないとね。
私の夢だけじゃなく、みんなの夢や希望も、一緒に抱えているのだから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『生まれて初めて来る超巨大スパで大はしゃぎ』
幸せなら歌い、笑うように。気分がいいならはしゃぐように
今日は、この町の恒例行事である『クッキー配り』を行っていた。お世話になった人たちに、お礼を言いながら、クッキーを渡すイベントだ。向こうの世界の、ホワイトデーに近い感じかな。
先日、リリーシャさんと、お茶をしている時に、ちょうどその話題が出てきた。それで『一緒に作ろう』という事になった。リリーシャさんも、毎年、物凄くたくさん配るため、大量に作っているらしい。
そんな流れで、リリーシャさんの家にお邪魔して、クッキー作りを行った。でも、私は生地をこねたりする、力作業の担当。焼いたり、デコレーションしたりの、細かい作業は、全部リリーシャさんにやってもらった。
おかげで、見た目もキレイで、とても美味しいクッキーが完成した。流石は、リリーシャさん。まるで、プロが作った市販品のように、完璧な仕上がりだった。一応、私も手伝ったんだから、自作ってことでいいよね。
袋詰めした、大量のクッキーは、ダンボール数箱分になった。リリーシャさんは、超人気があるし、知り合いも多いからね。でも、私も意外と配る人が多く、ダンボール一箱分以上が、必要だった。
〈東地区商店街〉は、全てのお店に配るし。他にも、いつも通っているお店は、全部、配りに回るつもりだ。友達や知り合いも含めると、結構な数が必要なんだよね。よくよく考えてみたら、私も意外と、お付き合いしている人が多かった。
でも、富を分け合うことで、お互いが幸せになれるって、とても素敵な考え方だよね。まぁ、私には、分けられるような富はないけど、気持ちが大事だから。そう、気持ち、超大事!
そんなわけで、まずは、自分が住んでいる〈北地区〉から、回って行くことにした。最初に行ったのは、ノーラさんのところだ。部屋を貸してもらっている上に、よく食事をご馳走になってるからね。こっちに来てから、お世話になりっぱなしだ。
クッキーを渡すと、真っ先に『これ、リリー嬢ちゃんが焼いたやつだろ?』と、あっさり、見破られてしまった。見た瞬間に分かるとは、流石は、リリーシャさんの料理の師匠だ。
『一応、生地をこねたり、袋詰めは手伝いました』と言ったんだけど、鼻で笑われてしまった……。でも、ノーラさんも、ちゃんと準備していたみたいで、お返しのクッキーを渡してくれた。
そのあとは、よく通っている、パン屋さんを数件。あと、喫茶店の〈宿り木〉の女将さんのところも。さらに、以前、代行でパンの宅配に行った御宅にも、順番に配って行った。一度、会っただけでも、ご縁は大事にしたいからね。
あと、徒歩で老紳士を送って行った〈マーカス・グリーン・ファーム〉にも、渡しに行く。すると、娘さんが出てきて、お返しのクッキーに加え、また、どっさりと、とれたての野菜をもらってしまった。
なんか、渡す量より、もらってる量のほうが、はるかに多い気がする。これでは、富を分け合うんじゃなくて、私が一方的に、得しちゃってるのでは――?
結局、色々もらって荷物が一杯になったので、いったん荷物を置きに、会社に戻った。荷物を置いて、クッキーを補充すると、今度は〈西地区〉〈南地区〉の順に回って行く。
〈南地区〉は、何度か行ったことのある、喫茶店の〈水晶亭〉にも顔を出す。すると、偶然にも、ライザさんが来ていて、お互いに再会を喜び合う。ライザさんも、クッキーを渡しに来たんだって。
私は、二人にクッキーを渡すと、お礼のクッキーを受け取る。さらには、入れたてのカフェオレとケーキを、ご馳走になってしまった。
この町では、クッキーを渡しあうのって、本当にあたり前の習慣なんだね。どこに行っても、ちゃんとお返しのクッキーを、用意してあるもん。しかも、渡したのより、豪華なのが返って来るし。
〈水晶亭〉で、しばらく休憩すると、再びクッキー配りに飛び回る。まだまだ、配る所は多いし、むしろ、これからが本番だ。
ナギサちゃんたちは、今度お茶した時に渡すとして。やっぱり〈東地区商店街〉は、気合を入れて回らないとね。
〈東地区商店街〉は、全てのお店の、店主や女将さんと、知り合いだった。いつも、町内会でも会ってるし。買い物も、ここですることが、多いからだ。それに〈ホワイト・ウイング〉の、ホームエリアだからね。しっかり、挨拶をしておかないと。
おそらく、リリーシャさんも、ここは重点的に回っていると思う。でも、もらって困る物じゃないし、被っても問題ないよね。要は、気持ちの問題だから。
私は、いったん事務所に戻って、クッキーを満タンに補充することにした。すると、キッチンのテーブルには、私がもらった物の他にも、沢山のクッキーが置いてあった。おそらく、リリーシャさんが、もらって来たものだと思う。
「リリーシャさんも、かなり沢山もらうと思うから。このペースだと、夕方には、クッキーだらけになっちゃうかも……」
それはそれで、凄く楽しそうだけど。全部、食べ切れるんだろうか? まだまだ、増えそうな感じだし。
「ま、いっかー。甘いものは、大好きだし」
私は、準備を終えると、再びクッキー配りに向かうのだった……。
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私は〈東地区〉の駐車場に、エア・ドルフィンを停めると、少し歩いて〈東地区商店街〉に向かった。両手には、クッキーの袋が大量に入った、紙袋を持っている。端から端まで配るので、結構な量が必要だ。
軒数が多いので、かなり大変だけど、日ごろから、凄くお世話になってるからね。ちゃんと、今年一年のお礼を言わないと。
私は、こっちの世界に来てから、いつも色んな人に、お世話になりっぱなしだ。でも、冷静に考えてみると、ちゃんと、お礼を口にしたことって、あまりないんだよね。私も故事にならって、一軒ずつ心を込めて、お礼を言って行こう。
商店街に入ると、一番、端にあるお店から回って行く。最初のお店は、八百屋の『リンド青果店』だ。
「こんにちは。いつも、お世話になっています」
「おや、風歌ちゃんじゃないかい。いらっしゃい!」
恰幅のよい女将のメイズさんが、元気に声を返してきた。
「今年、一年間、大変お世話になりました。つまらない物ですが」
私は、頭を下げながら、クッキーの袋を差し出した。
「あらあら、嬉しいわ。シルフィードにクッキーをもらえるなんて、商売繁盛、間違いなしね!」
「あははっ、だと、いいんですけど」
この町では、シルフィードは幸運の象徴であり、幸運をみんなに運んでくれる、と言われている。つまり、シルフィード自体が『縁起物』なんだよね。
「はい、これ。お返しのクッキー。あと、これも持ってきな」
メイズさんは、用意してあったクッキーの他に、リンゴを一山、袋に入れて渡してくれた。
「あの、いいんですか? お礼に来たのに、逆にいただいちゃって――」
「いいの、いいの。シルフィードが来てくれるだけで、物凄い幸運なのよ。他の店も回る予定なの?」
「はい。商店街の、全てのお店を回るつもりです」
「なら、みんな凄く喜ぶわよ。風歌ちゃんは、幸運の使者に加え、この商店街の、ヒーローなんだから」
メイズさんは、腰に手を当て、満面の笑みを浮かべる。でも、私はちょっと、引きつった笑みを浮かべた。
いやいや、私はお礼に来ただけで、そんなに、凄い存在んじゃないんだけど。まぁ、喜んでもらえるなら、いいのかな……? 取りあえず、誠心誠意、お礼を伝えて行こう。
私がそう考えていると、
「みんなー、幸運の使者が、クッキーを持ってやって来たわよー!! ちゃんと、お返しを、用意しておきなさい!」
メイズさんが、大きな声で、周りの人たちに呼びかけた。
「おぉー、風歌ちゃんか!」
「いやー、物凄くご利益ありそうだな!」
「そうかい、そうかい。なら、とっておきのお返し、用意しないとね!」
お店の大将や女将さんたちが、一斉に動き出した。さらに、こちらに、期待に満ちた視線を向けて来る。私が来たという噂は、次々と、先のほうのお店まで、伝わって行った。流石に、凄いチームワークと行動力だ。
ちょっ……。普通にクッキーを渡して、お礼をしようと思っただけなのに。何で、こんな大事に?! これじゃ、まるで、何かのイベントみたいじゃない――?
「ほれ、行っといで。みんな、楽しみに待ってるからさ」
私は、バシッと、メイズさんに背中を叩かれた。
「あ、あははっ、頑張ります……」
私は、ぎこちない笑みを浮かべて、それに答える。
最初は、軽く世間話でもしながら、気楽に渡そうと思ってたんだけど。急にハードルが上がって、プレッシャーが、大きくなってきた。どのお店の人たちも、ジーッと私のことを、期待のまなざしで見ているからだ。
でもまぁ、こうなったら、精一杯シルフィードとして、振る舞うしかないよね。私は、ただの見習いだけど、みんなは、そう思ってないみたいだし。
私は、日ごろの勉強の成果と、リリーシャさんの振る舞いを、思い浮かべながら、一軒ずつ回って行った。まずは、クッキーを渡して、一年のお礼を言って、それぞれに合った世間話をする。
そして最後に『今後も〈ホワイト・ウイング〉を、よろしくお願いいたします』と、しっかり、会社の宣伝もしておく。
みんな、想像していた以上に、大喜びしてくれた。クッキーをもらうことも、大事だけど、誰からもらうかも、物凄く重要らしい。中でも、シルフィードからもらうクッキーは、最上級のご利益があるんだって。
ただ、私自身、全くお金ないし。金運が上がるかどうかは、怪しいんだけど――。でも、みんなの、素敵な笑顔が見れるのは、私もとても嬉しい。だから私は、一人前のシルフィードとして。また、幸運の使者として、精一杯に振る舞った。
ちょうど、商店の中間あたりに来たところで、声を掛けられた。この明るく軽いノリの声は、聞き覚えがある。
「やっほー、風歌ちゃん。相変わらず、超人気者ねー」
「あれ、ユキさん。何でこんな所に……?」
町内会長のお孫さんの、ユキさんだ。
相変わらず、斬新なファッションに、ビビッドな色のマニュキュアと、濃い目の化粧。服装もだけど、たくさんの装飾品を身に着けて、実に派手な格好だ。この昔ながらの商店街の中では、完全に浮いている。
「ちょっと、おじいちゃんの家に、用があってね。そうそう、聴いたわよ。あのイベントのあと、商店街の売り上げが、かなり伸びたらしいじゃない」
「みたいですね。お役に立てて、よかったです。本当に〈ホワイト・ウイング〉の知名度と、リリーシャさんの人気って、凄いですよね」
『ホワイト・ウイング・フェア』は、結局、初日で千人以上が集まるという、大盛況だった。二日目以降も、話題が話題を呼び、滅茶苦茶、人が集まったらしい。やっぱり、知名度や人気の影響力って、凄いよね。
イベントのあとも、通ってくれるようになったお客さんも、結構、多いんだって。お礼に回った各お店で、みんな、同じことを言っていた。
「何言ってんの? あのイベントの功労者は、風歌ちゃんじゃない」
「いえいえ、私なんて、大したことやってませんよ。ただの見習いですし」
結局、リリーシャさんの、懐の広い対応と多大な協力。あと、他社のナギサちゃんたちにまで、手伝ってもらった。あとは、商店街の人たちの、情熱や頑張りがあったからだ。
「そもそも、風歌ちゃんが動かなきゃ、実現しなかったイベントよ。あのイベントの、成功の七割は、風歌ちゃんの力と影響力なんだから」
「いやいや、まさか……。力も影響力も、全くありませんから」
「はぁー。何にも、分かってないわね。もう、これだから、無自覚な有名人は」
「へ――?」
ユキさんは、小さくため息をついた。
「ま、いいわ。とりあえず、写真を撮らせてちょうだい。また、アップしとくから」
「えっ……? あの、目立つのはちょっと」
「別に、お礼でクッキーを配るなんて、誰もがやってることだから、平気よ」
そういうと、ユキさんは、マギコンを起動して、パシャパシャと写真を撮り始めた。『勝手にやるから、気にしないで』と言われたので、私は再び、クッキー配りを続けて行くのだった……。
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夕方の、四時過ぎ。私は、大量のお返しの入った荷物ボックスを持って、事務所に戻って来た。もらい物の量が多すぎて、ボックスのふたが閉まらない。
結局、全ての店を回るのに、二時間以上かかってしまった。ユキさんは、ふと気付くと、いつの間にか姿を消していた。相変わらず、神出鬼没な人だ。
事務所に入ると、リリーシャさんが、事務仕事をしていた。私に気付くと、笑顔で声をかけて来る。
「風歌ちゃん、お帰りなさい。ずいぶんと、沢山もらって来たのね」
「いやー、お礼を渡すつもりが。むしろ、一杯もらっちゃいました」
「貰ったよりも、沢山お返しするのが、習わしみたいなものだから」
「なるほど、そうだったんですね」
とりあえず、荷物を置くために、キッチンのテーブルに向かう。だが、私は部屋に入った瞬間、驚いて声を上げてしまった。
「えぇぇーっ!? 置く場所が全然ない――」
テーブルの上は、クッキーやら何やらで、完全に埋まっていた。私が想像していた量を、はるかに上回っていたのだ。中には、リボンのついた大きな箱など、高級そうなものも置いてある。
さ、流石は、リリーシャさん。人気があるとは思ってたけど、まさか、ここまで凄いとは……。
「いつも、こちらがお世話になっているので、申しわけないけれど。でも、渡された物は、受け取るのがマナーだから」
「まぁ、そうですよねぇー」
私はとりあえず、椅子の上に、ボックスをどさっと置いた。
「ところで、これどうしましょう? クッキーは、お茶の時に食べればいいとして。生ものなんかも、結構、もらっちゃったんですけど――」
もらった中には、野菜や魚なんかもある。でも、私は一切、自炊をしないので。このままだと、腐らせてしまうだけだ。
「なら、私の家で、食事会をしましょうか? 私は、ツバサちゃんに、声を掛けてみるから。風歌ちゃんも、お友達を呼ぶのはどう?」
「えっ、いいんですか?」
「一人じゃ無理でも、みんななら、食べきれるんじゃない?」
「はい、そうですね!」
そんな訳で、急きょ、リリーシャさんの家で、もらい物の食事会を行うことになった。リリーシャさんなら、料理が超上手だし、安心だよね。
それにしても、お礼に行ったはずが、こんなに沢山、もらい物をするとは、思っても見なかった。みんな、大らかというか、優しいというか、いい人たちばかりだ。しかも、シルフィードが来てくれたと、滅茶苦茶、喜んでくれてたし。
相変わらず、助けられたり、もらったりしてばかりだけど。いつか、みんなの期待に応えらえる、本物シルフィードにならないとね。
私の夢だけじゃなく、みんなの夢や希望も、一緒に抱えているのだから……。
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次回――
『生まれて初めて来る超巨大スパで大はしゃぎ』
幸せなら歌い、笑うように。気分がいいならはしゃぐように
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都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
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おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
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パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
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が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
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彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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