244 / 363
第6部 飛び立つ勇気
5-6明るい世界への最初の一歩を踏み出す勇気
しおりを挟む
午前中の仕事を終えたあと、私は〈西地区〉にある、ユメちゃんの家に来ていた。何度、見ても、驚くほど大きなお屋敷だ。最初のころに比べれば、だいぶ慣れてきたけど。やっぱり、入り口をくぐる時は、凄く緊張する。
毎度のことだけど、屋敷に入る時は、執事やメイドの人たちが、ずらりと整列し、とても丁寧な、出迎えをされている。私は、この家では、賓客扱いらしい。
ちなみに、先日の一件のあと。私は、ユメちゃんが外に出て、普通の生活ができるようになるための、お手伝いをすることに決めた。困ってる人を助けるのは、当然だし。親友なら、なおさらだ。
最初は、二人だけの約束だったけど。後日、リチャードさんから、正式な依頼として、私に指名がやってきた。これは、ユメちゃんのご両親の、意向でもあるそうだ。
もちろん、これには、超ビックリした。だって、お客様からの初指名が、まさか、親友のユメちゃんからなんて、思っても見なかったから……。
リリーシャさんに相談したところ、最初は驚いていた。アリーシャさんが助けた少女が、私と親友だったなんて、全く知らなかったからだ。でも、私だって、つい先日、知ったばかりだからね。
当然、リリーシャさんにも、複雑な想いはあったはずだ。アリーシャさんが、命を落とす原因になったのは、ユメちゃんを助けたからだし。だから、私もこの話を切り出すのには、かなりの勇気が必要だった。
でも、リリーシャさんは、快く承諾してくれた。『風歌ちゃんが、力になってあげて。母も、それを望んでいると思うから』と、即答してくれたのだ。
結局、午前中は町を飛び回って、通常の営業活動を行い、午後はユメちゃんの家に行って、お手伝いをすることになった。ちゃんと、シルフィード本来の仕事も、こなさないとだからね。
とはいえ、相変わらず、お客様が見つからないので、練習飛行をしてるようなものなんだけど――。
私は、正式に依頼を受けた翌日から、ユメちゃんの家に通っている。まずは、ユメちゃんの部屋に行って、色々お話をすることから始めた。いきなり、外に連れ出す訳にも行かないし。まずは、彼女をよく知ることが、必要だからだ。
ちなみに『ユーメリア・アッシュフィールド』が、彼女の本名だ。アッシュフィールド家は、代々続く、有名な資産家だった。ELで話してた時も、何となく感じてはいたけど、ユメちゃんは、正真正銘のお嬢様だ。
とはいえ、ナギサちゃんやアンジェリカちゃんとは、全く違うタイプで、物凄く気さくな子だ。特に、形式ばったところもなく、今時の若者風だった。なので、何の気がねもなく、普通に話せる。
呼び方は、今まで通りで、私はユメちゃん、彼女は風ちゃんで行くことになった。EL友の時と、同じほうが話しやすいし。呼び方って、友人関係では、とても重要だからね。
初日は、お互いに色んな話をして、盛り上がった。普段ELで話しているのと、変わらない内容だ。でも、直接、相手の顔を見ながら話すのは、とても楽しい。
ただ、二日目からは、少しずつ、本題に入っていった。彼女の口から、直接、過去の話を聴いたり。今まで、どのように過ごして来たかを、細かく訊いて行く。
ただ、やっぱり、事故のことを思い出すのは、相当に辛そうだった。途中で頭を押さえたり、息苦しくなったり。今でも、心の傷は、そうとう深いように見える。カウンセリングを受けてすら、治らなかったのだから。そんなに軽いはずがない。
そもそも、リチャードさんが、私のところに来たのも、八方手を尽くして、ダメだっからだ。でも、ずっと、ふさぎ込んでいたユメちゃんが、私とELを始めてから、とても明るくなったと、リチャードさんが言っていた。
私は、明るいユメちゃんしか知らないから、暗くふさぎ込んでいる姿なんて、全く想像もつかないんだけど……。
通い始めて、三日目。私は、ある挑戦をすることを勧めた。と言っても、そんなに難しいことじゃない。窓際に行って、外を眺めるだけだ。でも、空を見るのが怖い彼女にとって、それは、大変な行為だった。
写真なら、空を見ても大丈夫らしいけど、実際の空は、全くダメらしい。現状、窓際には、近づけないので、カーテンの開け閉めは、執事やメイドの人たちがやっている。部屋の家具なども、全て入り口側に置いてある、徹底ぶりだ。
今私は、部屋のカーテンを開けた状態で、ユメちゃんの手を、しっかり握っていた。でも、部屋の半分ぐらいまで来たところで、彼女は腰が引けて、立ち止まってしまった。顔が真っ青になっており、手も汗ばんで来ていた。
「ねぇ――。やっぱ、無理……。絶対に無理っ――」
「大丈夫だよ。私が、ずっと手を繋いでるから」
「でも……。怖い――怖いよ……」
「平気だよ。この屋敷の上は、何も飛んでないから」
先ほどから、ほとんど、前に進んでいない。彼女は、膝がガクガクと震えている。まるで、生まれたての小鹿のようだ。
「大丈夫。私はシルフィード。『幸運の使者』なんだから」
「でも――。幸運の使者が、空から降って来たんだよ……」
うぐっ――そうだった。事故を起こしたのは、シルフィードなんだから……。
「けど、私は、特別に幸運なシルフィードだから、大丈夫。運には自信あるからね」
「でも――。墜落したでしょ?」
んがっ……。そうだった!
「それでも、かすり傷一つ、なかったんだよ。『ノア・マラソン』だって完走したし。ユメちゃんも、言ってたじゃん。私は、不可能を可能にするシルフィードだって。私のこと、信用できない?」
「してる――。もちろん、信用してるよ。でも……怖くて。体が、全然、言うこときかなくて――」
確かに、ユメちゃんの言う通り、完全に、体が拒絶反応を起こしていた。このままじゃ、いくら頑張っても、無理かもしれない。
私は、少し考えたあと、彼女の前にしゃがみ込んだ。
「じゃ、私に乗って」
「えっ?」
「おんぶだよ、おんぶ。お嬢様は、そういうの、やった事ないかな?」
「流石に、それぐらいは有るよー。私を何だと思ってるの?」
「引きこもりの、お姫様?」
「あっ、ひっどーい! まぁ、実際、引きこもりだけどさぁ……」
彼女は、ブイブイ言いながら、私の背中に引っ付いた。
よし、作戦通り。私は、サッと彼女の足を抱えると、前進を始める。
「ちょっ、待って待って!! 心の準備が、まだ! 超安全運転で、お願いします」
「ちゃんと、安全運転だよ」
私が、ゆっくり前進すると、ユメちゃんは、ギューッとしがみついて来た。物凄く動き辛いけど、彼女も、恐怖と戦うので、必死なんだと思う。
私は、なるべく揺らさないように、静かに進んで行く。やがて、大きな窓の目の前までやって来た。窓に映った姿を見ると、彼女は、目をギュッと閉じ、うつむいている様子だった。
「お客様、目的地に到着しましたよ。目を開けて、ご覧ください。目の前の、とても平和で、最高に素敵な青空を」
私が、そっと声を掛けると、彼女はゆっくり顔をあげる。だが、目は閉じたままだった。
「あっ、流れ星」
「えっ、嘘っ?!」
ユメちゃんは、パッと目を開けた。もちろん、嘘だけど。
「ね、とても平和で、素敵な青空でしょ?」
「うっ、だましたのね? てか、超眩しい! 本物の空を見るの、二年ぶりぐらいだし」
「二年って、また、凄いねそれ。でも、もう、空見れるようになったでしょ?」
「まぁ、一応は――。超だまされたけど」
「そこは、忘れてー!」
いつの間にか、思い切りしがみついていた、ユメちゃんの力が、スーッと抜けていた。眩しそうにはしているけど、普通に外を眺めている。
心の問題って、繊細で難しいけど。時には、多少、強引な方法も、必要なのかもしれないね……。
******
ユメちゃんが、窓の外を眺められるようになってから数日。彼女は、私と手を繋いでなら、外を見ることが、出来るようになった。最初と違って、ちゃんと、自分の足で歩いている。
それから、さらに数日が過ぎると、誰かがそばにいれば、手を繋がなくても、窓際に行けるようになった。カーテンの開け閉めも、普通に自分でやっている。
あまりの急激な進歩に、リチャードさんも、ご家族も、滅茶苦茶、驚いていた。今まで、医者でも治せなかったのが、ほんの数日で、出来るようになったのだから。確かに、驚くのも無理はない。
まぁ、お医者さんじゃ、強引な方法なんて、そうそうやらないよね。ましてや、大資産家のお嬢様じゃ、手荒なことは、絶対にできないし。友達の私だからこそ、出来たことだ。
私が、ユメちゃんの家に通い始めてから、十日目。今日は、ある挑戦を行う予定になっていた。外を見るのも、平気になって来たので、いよいよ、外出に挑戦することになったのだ。
家の中から外を眺めるのは、安全だと、ユメちゃん自身も、理解できた。ただ、外に出るのは、全くの別の問題。二年も、部屋にこもっていた彼女にとって、外は完全に未知の世界だからだ。
それに、心の傷が、治った訳じゃない。おそらく、死の恐怖体験は、一生、消えないと思う。私だって、怪我はなかったものの、墜落した時の恐怖は、いまだに残っている。たまに、ふと思い出して、冷や汗が出ることもあるし。
ユメちゃんの場合は、とんでもない大怪我をしたうえに、何人もの人が、命を落としている。当然、私とは比べ物にならない、恐怖の大きさだと思う。だから、いくら考えなしの私でも、外に出ることは、強要できなかった。
ただ、何度も話し合った結果、ユメちゃん自身が、外に出る挑戦を希望したのだ。『いつまでも、怖がっていても、しょうがないから』という彼女の意思で、ちゃんと、日にちも決めた。それが、今日だった。
ユメちゃんと私は、屋敷の入口の、大きな扉の前にいた。扉の両側には、扉を開けるために、二人の執事さんが待機している。
私たちの後方では、リチャードさんを始め、この屋敷で働いる人たちが集まり、不安そうな目でユメちゃんに視線を向けていた。その中には、ユメちゃんのご両親もいる。わざわざ、今日のために、仕事を休んだみたいだ。
ユメちゃんは、さっきから深呼吸したり、目を閉じたりして、必死に気持ちを落ち着けていた。周囲には、妙な緊張感が漂っている。
「それにしても、ずいぶんと、人が集まったね――」
「もう、何でお父さんやお母さんまでいるのよ? 見世物じゃないのに」
「まぁまぁ。それだけ、ユメちゃんを、心配してるからだよ」
私は、そっとユメちゃんを、なだめる。周りで見守っている人たちの気持ちは、凄くよく分かる。私だって、正直、かなり心配だ。
初めて会った日の、錯乱状態も見ているし。窓から外を見る時だって、最初は、とんでもなく大変だった。彼女は、常人には計り知れない、恐怖という名の爆弾を、抱えているのだ。いつ爆発したって、おかしくはない。
扉の前に立ってから、すでに、ニ十分以上が過ぎている。ユメちゃんは、胸を押さえて、気持ちを落ち着けようとしているが、どうしても、踏ん切りがつかない様子だ。
「なぁ、ユーメリア。別に、無理しなくても、いいんだぞ。十分、頑張っているんだから。日を改めたらどうだね?」
「そうよ。無理しなくたって、ゆっくりで、いいのよ」
じっと見守っていた、ユメちゃんのお父さんとお母さんが、見かねて、声を掛けてきた。
「お父さんとお母さんは、黙ってて! 私は、やるって決めたら、やるのっ!」
ユメちゃんは、少しイライラしながら答える。
ここしばらく、一緒にいて分かったけど。ユメちゃんは、結構、頑固だ。ELでは、とても素直で、大らかな感じだったけど。本質的には、かなり芯が強い子で、やると言ったら、絶対やる性格だ。案外、私に性格が似てるのかも。
あと、家族たちに対しては、弱いところを、見せたくないようだった。でも、その気持ちは、凄く分かる。私も、親に対しては、いつも強がってたから……。
「どうする、ユメちゃん。今日は、止めておく?」
「いやっ、絶対にやる。でも、怖い――」
私が、小さな声で尋ねると、ユメちゃんも、私にだけ聴こえる、小さな声で返してきた。私は、その答えを聴くと、小さくうなずき、彼女の前に立った。
私は、背を向けながら、
「じゃ、私の背中につかまって」
そっと声をかけた。
「えっ? また、おんぶ?」
「違う違う、つかまるだけ。目を閉じて、顔をうずめてても、いいから。もし、私のことを信じてくれるなら、一緒に行こう、ユメちゃん」
ほどなくして、ピタッと張り付いたユメちゃんの体温が、背中から伝わって来る。表情は見えないけど、不安な気持ちや息遣いが、私にも、流れ込んで来るような気がした。
「じゃ、行くよ、ユメちゃん」
「うん。ゆっくりね……」
私が、目で合図すると、待機していた二人の執事さんが、静かに扉を開いた。
私は、一歩ずつ、ゆっくりと慎重に、歩みを進めて行く。
「ねえ――まだ?」
「うん、まだだよ。まだ、家の中」
「本当に、まだ?」
「うん、まだだから、安心して」
このやり取りを、何度も繰り返したあと、私は、ピタリと足を止めた。
「ユメちゃん。とても、いい風だよ。目を閉じたままでもいいから、風を感じてみて。いつもと、違う感じでしょ?」
「確かに、いつもと違うかも……」
「じゃ、ゆっくり、目を開けてみて」
「うん――」
背中で、もぞもぞっと動く。
しばらくして、
「うそっ?! ……ここ外? また、だまされた――」
ユメちゃんは、驚きの声をあげた。
「いや、ダマしてないって。歩いてれば、いずれは、外に出るんだから」
「ちゃんと、外に出る前に『教えて』って言ったのに」
「でも、結果的には、外に出れたじゃない。おめでとう、ユメちゃん」
「もう、風ちゃんの、ばかー!」
ユメちゃんは、私の背中を、ポカポカと叩く。でも、それは、とても心地のよい痛みだった。
「これからは、いつでも、外に出られるね。ユメちゃんの大好きな、本屋にだって、行けるんだよ」
「えっ……本屋? 超行きたい!! でも、流石に、まだそこまでの勇気はないよ」
「へーき、へーき。私が、連れてってあげるから。忘れてない? 私は、プロの観光案内人なんだよ。任せて!」
まだ、新人とはいえ、私もプロだ。お客様を、行きたい場所に連れて行ってあげることに関しては、誰にも負けない自信がある。
「時々、だましたりするけどね――」
「ってもう、そこから離れてよー!」
二人の視線が合うと、同時に、ゲラゲラと笑い始めた。
まだ、これは、ほんの小さな一歩に過ぎない。でも、どんな物事でも、最初の一歩は、こんなものだよね。
ユメちゃんは、これから、もっともっと、先に進んで行けるし。元の生活を取り戻すことだって、絶対にできるはずだ。彼女が、明るい笑顔で学校に通える日も、そう遠くないのかもしれない。
私は、その日が実現するまで、彼女のことを、全力で応援して行こうと思う……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『世界中の人たちの心の支えになりたい』
あなたが世界を背負うなら、僕は世界ごとあなたを支えます
毎度のことだけど、屋敷に入る時は、執事やメイドの人たちが、ずらりと整列し、とても丁寧な、出迎えをされている。私は、この家では、賓客扱いらしい。
ちなみに、先日の一件のあと。私は、ユメちゃんが外に出て、普通の生活ができるようになるための、お手伝いをすることに決めた。困ってる人を助けるのは、当然だし。親友なら、なおさらだ。
最初は、二人だけの約束だったけど。後日、リチャードさんから、正式な依頼として、私に指名がやってきた。これは、ユメちゃんのご両親の、意向でもあるそうだ。
もちろん、これには、超ビックリした。だって、お客様からの初指名が、まさか、親友のユメちゃんからなんて、思っても見なかったから……。
リリーシャさんに相談したところ、最初は驚いていた。アリーシャさんが助けた少女が、私と親友だったなんて、全く知らなかったからだ。でも、私だって、つい先日、知ったばかりだからね。
当然、リリーシャさんにも、複雑な想いはあったはずだ。アリーシャさんが、命を落とす原因になったのは、ユメちゃんを助けたからだし。だから、私もこの話を切り出すのには、かなりの勇気が必要だった。
でも、リリーシャさんは、快く承諾してくれた。『風歌ちゃんが、力になってあげて。母も、それを望んでいると思うから』と、即答してくれたのだ。
結局、午前中は町を飛び回って、通常の営業活動を行い、午後はユメちゃんの家に行って、お手伝いをすることになった。ちゃんと、シルフィード本来の仕事も、こなさないとだからね。
とはいえ、相変わらず、お客様が見つからないので、練習飛行をしてるようなものなんだけど――。
私は、正式に依頼を受けた翌日から、ユメちゃんの家に通っている。まずは、ユメちゃんの部屋に行って、色々お話をすることから始めた。いきなり、外に連れ出す訳にも行かないし。まずは、彼女をよく知ることが、必要だからだ。
ちなみに『ユーメリア・アッシュフィールド』が、彼女の本名だ。アッシュフィールド家は、代々続く、有名な資産家だった。ELで話してた時も、何となく感じてはいたけど、ユメちゃんは、正真正銘のお嬢様だ。
とはいえ、ナギサちゃんやアンジェリカちゃんとは、全く違うタイプで、物凄く気さくな子だ。特に、形式ばったところもなく、今時の若者風だった。なので、何の気がねもなく、普通に話せる。
呼び方は、今まで通りで、私はユメちゃん、彼女は風ちゃんで行くことになった。EL友の時と、同じほうが話しやすいし。呼び方って、友人関係では、とても重要だからね。
初日は、お互いに色んな話をして、盛り上がった。普段ELで話しているのと、変わらない内容だ。でも、直接、相手の顔を見ながら話すのは、とても楽しい。
ただ、二日目からは、少しずつ、本題に入っていった。彼女の口から、直接、過去の話を聴いたり。今まで、どのように過ごして来たかを、細かく訊いて行く。
ただ、やっぱり、事故のことを思い出すのは、相当に辛そうだった。途中で頭を押さえたり、息苦しくなったり。今でも、心の傷は、そうとう深いように見える。カウンセリングを受けてすら、治らなかったのだから。そんなに軽いはずがない。
そもそも、リチャードさんが、私のところに来たのも、八方手を尽くして、ダメだっからだ。でも、ずっと、ふさぎ込んでいたユメちゃんが、私とELを始めてから、とても明るくなったと、リチャードさんが言っていた。
私は、明るいユメちゃんしか知らないから、暗くふさぎ込んでいる姿なんて、全く想像もつかないんだけど……。
通い始めて、三日目。私は、ある挑戦をすることを勧めた。と言っても、そんなに難しいことじゃない。窓際に行って、外を眺めるだけだ。でも、空を見るのが怖い彼女にとって、それは、大変な行為だった。
写真なら、空を見ても大丈夫らしいけど、実際の空は、全くダメらしい。現状、窓際には、近づけないので、カーテンの開け閉めは、執事やメイドの人たちがやっている。部屋の家具なども、全て入り口側に置いてある、徹底ぶりだ。
今私は、部屋のカーテンを開けた状態で、ユメちゃんの手を、しっかり握っていた。でも、部屋の半分ぐらいまで来たところで、彼女は腰が引けて、立ち止まってしまった。顔が真っ青になっており、手も汗ばんで来ていた。
「ねぇ――。やっぱ、無理……。絶対に無理っ――」
「大丈夫だよ。私が、ずっと手を繋いでるから」
「でも……。怖い――怖いよ……」
「平気だよ。この屋敷の上は、何も飛んでないから」
先ほどから、ほとんど、前に進んでいない。彼女は、膝がガクガクと震えている。まるで、生まれたての小鹿のようだ。
「大丈夫。私はシルフィード。『幸運の使者』なんだから」
「でも――。幸運の使者が、空から降って来たんだよ……」
うぐっ――そうだった。事故を起こしたのは、シルフィードなんだから……。
「けど、私は、特別に幸運なシルフィードだから、大丈夫。運には自信あるからね」
「でも――。墜落したでしょ?」
んがっ……。そうだった!
「それでも、かすり傷一つ、なかったんだよ。『ノア・マラソン』だって完走したし。ユメちゃんも、言ってたじゃん。私は、不可能を可能にするシルフィードだって。私のこと、信用できない?」
「してる――。もちろん、信用してるよ。でも……怖くて。体が、全然、言うこときかなくて――」
確かに、ユメちゃんの言う通り、完全に、体が拒絶反応を起こしていた。このままじゃ、いくら頑張っても、無理かもしれない。
私は、少し考えたあと、彼女の前にしゃがみ込んだ。
「じゃ、私に乗って」
「えっ?」
「おんぶだよ、おんぶ。お嬢様は、そういうの、やった事ないかな?」
「流石に、それぐらいは有るよー。私を何だと思ってるの?」
「引きこもりの、お姫様?」
「あっ、ひっどーい! まぁ、実際、引きこもりだけどさぁ……」
彼女は、ブイブイ言いながら、私の背中に引っ付いた。
よし、作戦通り。私は、サッと彼女の足を抱えると、前進を始める。
「ちょっ、待って待って!! 心の準備が、まだ! 超安全運転で、お願いします」
「ちゃんと、安全運転だよ」
私が、ゆっくり前進すると、ユメちゃんは、ギューッとしがみついて来た。物凄く動き辛いけど、彼女も、恐怖と戦うので、必死なんだと思う。
私は、なるべく揺らさないように、静かに進んで行く。やがて、大きな窓の目の前までやって来た。窓に映った姿を見ると、彼女は、目をギュッと閉じ、うつむいている様子だった。
「お客様、目的地に到着しましたよ。目を開けて、ご覧ください。目の前の、とても平和で、最高に素敵な青空を」
私が、そっと声を掛けると、彼女はゆっくり顔をあげる。だが、目は閉じたままだった。
「あっ、流れ星」
「えっ、嘘っ?!」
ユメちゃんは、パッと目を開けた。もちろん、嘘だけど。
「ね、とても平和で、素敵な青空でしょ?」
「うっ、だましたのね? てか、超眩しい! 本物の空を見るの、二年ぶりぐらいだし」
「二年って、また、凄いねそれ。でも、もう、空見れるようになったでしょ?」
「まぁ、一応は――。超だまされたけど」
「そこは、忘れてー!」
いつの間にか、思い切りしがみついていた、ユメちゃんの力が、スーッと抜けていた。眩しそうにはしているけど、普通に外を眺めている。
心の問題って、繊細で難しいけど。時には、多少、強引な方法も、必要なのかもしれないね……。
******
ユメちゃんが、窓の外を眺められるようになってから数日。彼女は、私と手を繋いでなら、外を見ることが、出来るようになった。最初と違って、ちゃんと、自分の足で歩いている。
それから、さらに数日が過ぎると、誰かがそばにいれば、手を繋がなくても、窓際に行けるようになった。カーテンの開け閉めも、普通に自分でやっている。
あまりの急激な進歩に、リチャードさんも、ご家族も、滅茶苦茶、驚いていた。今まで、医者でも治せなかったのが、ほんの数日で、出来るようになったのだから。確かに、驚くのも無理はない。
まぁ、お医者さんじゃ、強引な方法なんて、そうそうやらないよね。ましてや、大資産家のお嬢様じゃ、手荒なことは、絶対にできないし。友達の私だからこそ、出来たことだ。
私が、ユメちゃんの家に通い始めてから、十日目。今日は、ある挑戦を行う予定になっていた。外を見るのも、平気になって来たので、いよいよ、外出に挑戦することになったのだ。
家の中から外を眺めるのは、安全だと、ユメちゃん自身も、理解できた。ただ、外に出るのは、全くの別の問題。二年も、部屋にこもっていた彼女にとって、外は完全に未知の世界だからだ。
それに、心の傷が、治った訳じゃない。おそらく、死の恐怖体験は、一生、消えないと思う。私だって、怪我はなかったものの、墜落した時の恐怖は、いまだに残っている。たまに、ふと思い出して、冷や汗が出ることもあるし。
ユメちゃんの場合は、とんでもない大怪我をしたうえに、何人もの人が、命を落としている。当然、私とは比べ物にならない、恐怖の大きさだと思う。だから、いくら考えなしの私でも、外に出ることは、強要できなかった。
ただ、何度も話し合った結果、ユメちゃん自身が、外に出る挑戦を希望したのだ。『いつまでも、怖がっていても、しょうがないから』という彼女の意思で、ちゃんと、日にちも決めた。それが、今日だった。
ユメちゃんと私は、屋敷の入口の、大きな扉の前にいた。扉の両側には、扉を開けるために、二人の執事さんが待機している。
私たちの後方では、リチャードさんを始め、この屋敷で働いる人たちが集まり、不安そうな目でユメちゃんに視線を向けていた。その中には、ユメちゃんのご両親もいる。わざわざ、今日のために、仕事を休んだみたいだ。
ユメちゃんは、さっきから深呼吸したり、目を閉じたりして、必死に気持ちを落ち着けていた。周囲には、妙な緊張感が漂っている。
「それにしても、ずいぶんと、人が集まったね――」
「もう、何でお父さんやお母さんまでいるのよ? 見世物じゃないのに」
「まぁまぁ。それだけ、ユメちゃんを、心配してるからだよ」
私は、そっとユメちゃんを、なだめる。周りで見守っている人たちの気持ちは、凄くよく分かる。私だって、正直、かなり心配だ。
初めて会った日の、錯乱状態も見ているし。窓から外を見る時だって、最初は、とんでもなく大変だった。彼女は、常人には計り知れない、恐怖という名の爆弾を、抱えているのだ。いつ爆発したって、おかしくはない。
扉の前に立ってから、すでに、ニ十分以上が過ぎている。ユメちゃんは、胸を押さえて、気持ちを落ち着けようとしているが、どうしても、踏ん切りがつかない様子だ。
「なぁ、ユーメリア。別に、無理しなくても、いいんだぞ。十分、頑張っているんだから。日を改めたらどうだね?」
「そうよ。無理しなくたって、ゆっくりで、いいのよ」
じっと見守っていた、ユメちゃんのお父さんとお母さんが、見かねて、声を掛けてきた。
「お父さんとお母さんは、黙ってて! 私は、やるって決めたら、やるのっ!」
ユメちゃんは、少しイライラしながら答える。
ここしばらく、一緒にいて分かったけど。ユメちゃんは、結構、頑固だ。ELでは、とても素直で、大らかな感じだったけど。本質的には、かなり芯が強い子で、やると言ったら、絶対やる性格だ。案外、私に性格が似てるのかも。
あと、家族たちに対しては、弱いところを、見せたくないようだった。でも、その気持ちは、凄く分かる。私も、親に対しては、いつも強がってたから……。
「どうする、ユメちゃん。今日は、止めておく?」
「いやっ、絶対にやる。でも、怖い――」
私が、小さな声で尋ねると、ユメちゃんも、私にだけ聴こえる、小さな声で返してきた。私は、その答えを聴くと、小さくうなずき、彼女の前に立った。
私は、背を向けながら、
「じゃ、私の背中につかまって」
そっと声をかけた。
「えっ? また、おんぶ?」
「違う違う、つかまるだけ。目を閉じて、顔をうずめてても、いいから。もし、私のことを信じてくれるなら、一緒に行こう、ユメちゃん」
ほどなくして、ピタッと張り付いたユメちゃんの体温が、背中から伝わって来る。表情は見えないけど、不安な気持ちや息遣いが、私にも、流れ込んで来るような気がした。
「じゃ、行くよ、ユメちゃん」
「うん。ゆっくりね……」
私が、目で合図すると、待機していた二人の執事さんが、静かに扉を開いた。
私は、一歩ずつ、ゆっくりと慎重に、歩みを進めて行く。
「ねえ――まだ?」
「うん、まだだよ。まだ、家の中」
「本当に、まだ?」
「うん、まだだから、安心して」
このやり取りを、何度も繰り返したあと、私は、ピタリと足を止めた。
「ユメちゃん。とても、いい風だよ。目を閉じたままでもいいから、風を感じてみて。いつもと、違う感じでしょ?」
「確かに、いつもと違うかも……」
「じゃ、ゆっくり、目を開けてみて」
「うん――」
背中で、もぞもぞっと動く。
しばらくして、
「うそっ?! ……ここ外? また、だまされた――」
ユメちゃんは、驚きの声をあげた。
「いや、ダマしてないって。歩いてれば、いずれは、外に出るんだから」
「ちゃんと、外に出る前に『教えて』って言ったのに」
「でも、結果的には、外に出れたじゃない。おめでとう、ユメちゃん」
「もう、風ちゃんの、ばかー!」
ユメちゃんは、私の背中を、ポカポカと叩く。でも、それは、とても心地のよい痛みだった。
「これからは、いつでも、外に出られるね。ユメちゃんの大好きな、本屋にだって、行けるんだよ」
「えっ……本屋? 超行きたい!! でも、流石に、まだそこまでの勇気はないよ」
「へーき、へーき。私が、連れてってあげるから。忘れてない? 私は、プロの観光案内人なんだよ。任せて!」
まだ、新人とはいえ、私もプロだ。お客様を、行きたい場所に連れて行ってあげることに関しては、誰にも負けない自信がある。
「時々、だましたりするけどね――」
「ってもう、そこから離れてよー!」
二人の視線が合うと、同時に、ゲラゲラと笑い始めた。
まだ、これは、ほんの小さな一歩に過ぎない。でも、どんな物事でも、最初の一歩は、こんなものだよね。
ユメちゃんは、これから、もっともっと、先に進んで行けるし。元の生活を取り戻すことだって、絶対にできるはずだ。彼女が、明るい笑顔で学校に通える日も、そう遠くないのかもしれない。
私は、その日が実現するまで、彼女のことを、全力で応援して行こうと思う……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『世界中の人たちの心の支えになりたい』
あなたが世界を背負うなら、僕は世界ごとあなたを支えます
0
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる