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異世界で新たな一歩目を!
第五十七話 『既に決定事項』
しおりを挟む「あんた、何したんだよ!?」
ナギサは状況を理解したのか、俺に問いただしてきた。
「おいおい、この状況でそんなことを気にしてる余裕があるのかよ? 俺に生殺与奪の権を握られているこの状況でよ!」
俺はいつでも上空に待機している土の壁をナギサの元へ落とすことが可能だ。
俺がこの固有スキルを解除した瞬間、ナギサはあの土の壁と地面にぶつかって圧迫死をすることだろう。
「クッ、」
ナギサは全力で「浮遊」を自身の衣類にかけて高速移動をする。
だが、
「遅い遅いっ!」
俺は上空の土の塊を端から順に落としていく。
土の塊は上空およそ200メートル程の高さで浮遊している。
その土が重力に従って落ちてきたのなら、当然その運動エネルギーの大きさは想像を絶するものだろう。
とても身体強化を使用したナギサが耐えられるとは思えない。
「この土から、何故か僕が「浮遊」を使用した時と同じ波長の魔力を感じる!? つまり、つまり、」
ナギサは俺の方向を向いて怒鳴った。
「何であんたが、俺の「浮遊」を使えているんだ!!」
「さあな、俺もどうやってこのスキルを手に入れたのかは分からないよ。だが、一つだけ確実なことを教えてやろう。」
俺は、土の塊にかけている「浮遊」の力を強めて土の落下速度をどんどん上げながら答える。
「お前は俺に殺される。」
「ふっざけんなぁぁー--!!」
ナギサは怒りのままに俺へ突進してきた。
俺は当然、「次元転移」でナギサと距離を取る。
《次元転移を発動します》
すると、ナギサは俺に追いつくのを諦めたのか、今度は逆に土の壁の真正面に飛んで行った。
「何をしようとしてるんだ?」
そして、土の塊との距離がもう数メートルというところで、いきなり急降下を始めた。
「なるほどな。自分も土と同じ方向に落下することで、土からの衝撃を緩めようとしているのか。だが、」
俺は、手元に持っていた短剣をナギサの落下の進行方向に転移させた。
「グハッ、」
「言ったろ、お前は俺に殺されるって。俺のスキルが証明してんだよ。」
俺は、ナギサの首元に刺さっている短剣を俺の左手へと転移させる。
そして、致命傷のナギサの元に転移した。
《次元転移を発動します》
ナギサは俺に最後の抵抗とばかしに近くに落ちている石を這いずりながら逃げていた。
「に、逃げるんだ。ツカサ姉ちゃんのところまで......」
ナギサはそんなことを言ってから、力尽きた様に倒れた。
俺は構わずにナギサの元まで歩いていく。
まだ、天の声が聞こえていないから。
「おい、死んだふりは止めろよ、ナギサ。」
俺はナギサの前に立ち、そう言った。
当然、ナギサはピクリとも反応しない。
「仕方ないな。」
俺は、ナギサの頭蓋骨目掛けて短剣を差し込もうとする。
すると、
「来るなっ!」
《反射を発動します》
「グハッ、」
ナギサは、自分の最後の魔力を振り絞って自身に身体強化を掛けてから俺に投石をしてきたが、俺の「反射」によって逆にナギサの腹にその石がめり込む。
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