始めのダンジョンをループし続けた俺が、いずれ世界最強へと至るまで~固有スキル「次元転移」のせいでレベルアップのインフレが止まらない~

Rough ranch

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異世界で新たな一歩目を!

第六十二話 『確信がある』

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 ツカサの右手にはランタンがあり、その光のお陰で何となくだが周囲の状況も把握できた。
 と言っても、ただの土に覆われた部屋だということを再認識しただけだったが。
 きっとこの部屋は、ツカサが土を変形させて作ったのだろう。

「で、僕を殺さないのかい?」
「そうね、一応あのハヤマとかいう勇者の為の人質になってもらうわ。彼女、身体能力が鬼高いから私と相性が悪いのよね。罠を張ってもごり押しで突破されちゃうし。」

 どうやら、僕はもう既に戦闘不能だと思われているらしい。
 まあ、確かに第三者から見たらそう思うかもしれないけれど、実際は違う。

「ねえ、もしかして僕がもう戦えないとか思ってたりしない?」
「は? 実際その通りでしょ。あなたのステータスじゃ、あとレベルが50くらいは無いとそこからの脱出は無理だし、あなたの「エンチャント」が付与されているボールたちだって今は使えない。」

 ツカサは僕に指をさして言う。

「私はあなたに勝った、これは紛れもない事実でしょう?」
「それはどうかな。」
「これは確信よ。いくらあなたが足掻いても私には勝てない、その現状が私に確信を与えてくれる。」

 そう思うのも、無理はない。
 ツカサが手に持っている短刀で僕に切りかかって来たら、僕は対応が出来ない。
 だが、その確信は間違っている。

「人間というのは不完全な存在だよ。誰にだって失敗は付きものだし、人間は「絶対」を生み出せやしない。」

 人は完璧になれない。
 これは「絶対」だ。

「人はいつだって不完全な存在で、スキルや法則といった始まりから存在するものにどうしても頼ってしまう。いや、頼らざる負えない。」

 人が考えたものには、必ず穴がある。

「人の確信程、当てにならないものは無いよ。」

 運命だって存在しなかったんだ。

「でもね、僕には今確信があるんだ。」
「何よ、それは?」

 僕はツカサの目を見据えて言ってやる。

「確信があるんだ、君の驕りを叩き潰せる確信が。」
「なっ、」

 そう言った瞬間、ツカサがバタリと倒れた。

「え?」
「ほら、僕はまだ負けてない。」

 そう言って、僕は地中から這い出る。

「ど、どうして!? さっきまでのあなたのステータスじゃ、地中から這い出てくるなんて到底無理だったのに。」
「僕のスキルを忘れたの?」
「付与?」
「そうだよ、付与。」

 僕は単に、ツカサの足元までの地面の全てにエンチャントをして、常時「能力吸収」を発動させていただけだ。
 ツカサは自身のステータスを確認したらしく、驚いた表情をしていた。

「な、なんで私のステータスがこんなに減っているの!? 私の体はどこにも触れてなんかいなかったのに、どうして「能力吸収」を使用されているの。」
「それは、これだよ。」

 僕は、ツカサの足元を指さす。
 そこには、不自然に地面から伸びた土が少しだけツカサの足に触れている状態だった。

「こ、これは!」
「いやぁ~、君にばれない様に土を足に触れさせるのは、結構骨が折れたよ。」

 ツカサは慌てて足を隠すが、今更だ。
 「変形」を一度見たんだから、当然「エンチャント」出来る様になっている。

「これで、形勢逆転かな。」

 僕は、歩いてツカサの元まで向かった。
 ツカサは必死に「変形」を使って逃げようとしていたが、今の体力ではそこまで意味は無い。
 それに、この部屋はさほど広くはない為僕から逃げるにも限度がある。
 ただ単に生存本能に従って動いているだけだ。

「これ魔力を食うから、あんまり使いたく無いんだよなぁ。」

 そう言って、僕は「変形」を土に使用して地上への階段を作った。

「まあ、兄さんに殺してもらって「略奪」でスキルを奪ってもらうのも悪くないかな。そろそろ兄さんもこっちに向かっているころだろうし。」

 そう思い、僕は土を「変形」させてツカサを運ぶ。
 流石に、直で触れば何をされるのか分からないからちゃんと土を挟んで運ぶ。

「いや、両手を封じれば済む話か。」

 僕はツカサの両手を切り落とした。
 ツカサから今までで一番の悲鳴が聞こえてくるが、極力スルーする。

「とにかく、兄さんと姉さんと合流しないと。」

 僕は、必死に土の階段を上っていくのだった。
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