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異世界で新たな一歩目を!
第六十三話 『その普通こそがおかしい』
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(クソックソッ、こんな奴らにナギサが!)
私は、ナギサとの「以心伝心」によって伝わって来た感情を思い返して、また自分の中で憤怒を燃え滾らせる。
「以心伝心」とは文字通り、相手と言葉を発さずとも意思疎通を取れるスキルだ。
慣れてくれば、お互いの距離が離れていたとしても交信が出来たりする。
あの時ナギサは、突然「以心伝心」を使って私に勇者の一人であるキヨハラショウスケとやらのステータスを伝えてきた。
不審に思って聞き返してみると、軽く「もうすぐ殺されそうだから、この情報を使って」みたいなことを言ってのけたのだ。
(ふざけないでよ!)
私には、ナギサ程冥皇様に忠誠を誓っている訳じゃない。
ただ、奴隷だった私たちを救い出してくれただけだ。
感謝もしているし、尊敬だってしている。
ただ、私にとっては冥皇様よりも実の弟であるナギサの方が何億倍も大事というだけだ。
目の前で談笑している魔族の男への憎悪に内心を染めつつも、私は冷静に現状を打破する術を考えていた。
(両手は切られてしまったから、「変形」は使えない。それに、大半のステータスをあの魔族に持っていかれたから、ステータスはもはや二桁まで落ちてしまった。ここから、どう逃げろって言うのよ。)
そんなことを考えている内に、私の意識は徐々に薄れていった。
..........................................................
.............................
.............
私が目を開けると、そこには雲一つない夜空があった。
空には数多の星々が輝いており、思わず見惚れてしまう。
「いやいや、そんなことしてる場合じゃないわよ。」
私はバッと体を起こすと、周囲を警戒する。
どうやら私は、薄暗い路地裏の中で無防備に寝ていたらしい。
そこまで動ける範囲は無く、路地裏の出口の先には普通に人々が歩いている。
そして路地裏の奥には、静かに座っている一人の青年が居た。
私はすぐさま地面に手をついて、「変形」を発動する。
《変形を発動します》
私は地面を変形させ、その青年を縛り上げる。
だが、青年は薄く笑いながら私を見ているだけで一向に動揺した素振りを見せない。
「ちょっとあなた、あなたの生殺与奪件は私がもらったわ。だというのに、どうしてそんな風にいられるのかしらね。」
私は青年への拘束を強めて問う。
「どうやら、認識に違いがあるらしいね。」
「何に対する?」
「この現状に対する認識だよ。何か、違和感は無いのかい?」
「どこにもおかしな所なんて無いわ!」
「本当に?」
青年は私の目をしっかりと捕えて質問してくる。
私はその眼の気迫に押されて、若干のけぞってしまう。
(違和感?)
普通に立っているし、普通に動ける。
普通に話せているし、「変形」だって普通に使える。
どこにも違和感なんて......いや、ある。
その普通がおかしいんだ。
当たり前、当然の様に「変形」が使えているということがおかしい。
私は、ナギサとの「以心伝心」によって伝わって来た感情を思い返して、また自分の中で憤怒を燃え滾らせる。
「以心伝心」とは文字通り、相手と言葉を発さずとも意思疎通を取れるスキルだ。
慣れてくれば、お互いの距離が離れていたとしても交信が出来たりする。
あの時ナギサは、突然「以心伝心」を使って私に勇者の一人であるキヨハラショウスケとやらのステータスを伝えてきた。
不審に思って聞き返してみると、軽く「もうすぐ殺されそうだから、この情報を使って」みたいなことを言ってのけたのだ。
(ふざけないでよ!)
私には、ナギサ程冥皇様に忠誠を誓っている訳じゃない。
ただ、奴隷だった私たちを救い出してくれただけだ。
感謝もしているし、尊敬だってしている。
ただ、私にとっては冥皇様よりも実の弟であるナギサの方が何億倍も大事というだけだ。
目の前で談笑している魔族の男への憎悪に内心を染めつつも、私は冷静に現状を打破する術を考えていた。
(両手は切られてしまったから、「変形」は使えない。それに、大半のステータスをあの魔族に持っていかれたから、ステータスはもはや二桁まで落ちてしまった。ここから、どう逃げろって言うのよ。)
そんなことを考えている内に、私の意識は徐々に薄れていった。
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私が目を開けると、そこには雲一つない夜空があった。
空には数多の星々が輝いており、思わず見惚れてしまう。
「いやいや、そんなことしてる場合じゃないわよ。」
私はバッと体を起こすと、周囲を警戒する。
どうやら私は、薄暗い路地裏の中で無防備に寝ていたらしい。
そこまで動ける範囲は無く、路地裏の出口の先には普通に人々が歩いている。
そして路地裏の奥には、静かに座っている一人の青年が居た。
私はすぐさま地面に手をついて、「変形」を発動する。
《変形を発動します》
私は地面を変形させ、その青年を縛り上げる。
だが、青年は薄く笑いながら私を見ているだけで一向に動揺した素振りを見せない。
「ちょっとあなた、あなたの生殺与奪件は私がもらったわ。だというのに、どうしてそんな風にいられるのかしらね。」
私は青年への拘束を強めて問う。
「どうやら、認識に違いがあるらしいね。」
「何に対する?」
「この現状に対する認識だよ。何か、違和感は無いのかい?」
「どこにもおかしな所なんて無いわ!」
「本当に?」
青年は私の目をしっかりと捕えて質問してくる。
私はその眼の気迫に押されて、若干のけぞってしまう。
(違和感?)
普通に立っているし、普通に動ける。
普通に話せているし、「変形」だって普通に使える。
どこにも違和感なんて......いや、ある。
その普通がおかしいんだ。
当たり前、当然の様に「変形」が使えているということがおかしい。
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