11 / 38
第一章
第11話 『影の黒幕と囁きの網』
しおりを挟む
書斎の重々しい空気が張り詰める中、アリシアは牢獄へ続く鉄格子の前に立っていた。松明の炎が揺れる薄暗い通路に、捕らえられたアモン侯爵の荒い呼吸だけが響く。
レオンは静かに格子を引き、侯爵を確かめるように見据えた。
「侯爵、裏で糸を引く“黒幕”の名を吐け」
冷静だが鋭い声に、侯爵は顔色を一層青ざめさせた。ひと呼吸置いてから、かすれた声で絞り出す。
「――エストリオン伯爵だ。王国最高議会の議長で、表向きは調停役を務めるが、実際は貴族たちを煽動し、王権を弱体化させようとしている」
アリシアはその言葉を受け止め、すぐに隣の大テーブルへ歩み寄った。広げられた議会図と領地地図に、彼女の指先が静かに触れる。火影が揺れるたび、伯爵領を示す赤い印が薄暗い地図の上で浮かび上がる。
「議長の立場を利用し、法案の可決や拒否を差配する…」
アリシアは低く呟き、レオンも頷いた。
「公の場で追及すれば、彼の権威も大きく揺らぐ。しかし議会を混乱させれば民心に不安が広がる」
二人は言葉を交わすことなく、暗い書斎の隅で意思を合わせた。
アリシアは侯爵の証言を胸に、次の一手を決める。
「まず、私は議会に“公式招待”を要請し、公開質疑の場を設けます。貴族たちの前で彼の言質を取る。あなたは親衛隊を動かし、議場周辺の警備を強化してください」
レオンはアリシアの手をそっと取り、真剣な眼差しを向けた。
「君の言う通りだ。民衆の信頼も得ながら、黒幕を公然と暴く。君がいれば、必ず成し遂げられる」
鱗のように冷たい書斎の空気が、ふたりの決意によって温かく満たされる。
夜明け前の月光が差し込む窓辺で、王妃と王子は互いに頷き合い、次なる舞台――議会へと歩みを進めるのだった。
レオンは静かに格子を引き、侯爵を確かめるように見据えた。
「侯爵、裏で糸を引く“黒幕”の名を吐け」
冷静だが鋭い声に、侯爵は顔色を一層青ざめさせた。ひと呼吸置いてから、かすれた声で絞り出す。
「――エストリオン伯爵だ。王国最高議会の議長で、表向きは調停役を務めるが、実際は貴族たちを煽動し、王権を弱体化させようとしている」
アリシアはその言葉を受け止め、すぐに隣の大テーブルへ歩み寄った。広げられた議会図と領地地図に、彼女の指先が静かに触れる。火影が揺れるたび、伯爵領を示す赤い印が薄暗い地図の上で浮かび上がる。
「議長の立場を利用し、法案の可決や拒否を差配する…」
アリシアは低く呟き、レオンも頷いた。
「公の場で追及すれば、彼の権威も大きく揺らぐ。しかし議会を混乱させれば民心に不安が広がる」
二人は言葉を交わすことなく、暗い書斎の隅で意思を合わせた。
アリシアは侯爵の証言を胸に、次の一手を決める。
「まず、私は議会に“公式招待”を要請し、公開質疑の場を設けます。貴族たちの前で彼の言質を取る。あなたは親衛隊を動かし、議場周辺の警備を強化してください」
レオンはアリシアの手をそっと取り、真剣な眼差しを向けた。
「君の言う通りだ。民衆の信頼も得ながら、黒幕を公然と暴く。君がいれば、必ず成し遂げられる」
鱗のように冷たい書斎の空気が、ふたりの決意によって温かく満たされる。
夜明け前の月光が差し込む窓辺で、王妃と王子は互いに頷き合い、次なる舞台――議会へと歩みを進めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~
水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。
彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。
失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった!
しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!?
絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。
一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる