『婚約破棄された令嬢ですが、隣国の冷徹王子に溺愛されて困ってます』

Rough ranch

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第一章

第11話 『影の黒幕と囁きの網』

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書斎の重々しい空気が張り詰める中、アリシアは牢獄へ続く鉄格子の前に立っていた。松明の炎が揺れる薄暗い通路に、捕らえられたアモン侯爵の荒い呼吸だけが響く。
レオンは静かに格子を引き、侯爵を確かめるように見据えた。

「侯爵、裏で糸を引く“黒幕”の名を吐け」
冷静だが鋭い声に、侯爵は顔色を一層青ざめさせた。ひと呼吸置いてから、かすれた声で絞り出す。

「――エストリオン伯爵だ。王国最高議会の議長で、表向きは調停役を務めるが、実際は貴族たちを煽動し、王権を弱体化させようとしている」

アリシアはその言葉を受け止め、すぐに隣の大テーブルへ歩み寄った。広げられた議会図と領地地図に、彼女の指先が静かに触れる。火影が揺れるたび、伯爵領を示す赤い印が薄暗い地図の上で浮かび上がる。

「議長の立場を利用し、法案の可決や拒否を差配する…」
アリシアは低く呟き、レオンも頷いた。

「公の場で追及すれば、彼の権威も大きく揺らぐ。しかし議会を混乱させれば民心に不安が広がる」

二人は言葉を交わすことなく、暗い書斎の隅で意思を合わせた。
アリシアは侯爵の証言を胸に、次の一手を決める。

「まず、私は議会に“公式招待”を要請し、公開質疑の場を設けます。貴族たちの前で彼の言質を取る。あなたは親衛隊を動かし、議場周辺の警備を強化してください」

レオンはアリシアの手をそっと取り、真剣な眼差しを向けた。

「君の言う通りだ。民衆の信頼も得ながら、黒幕を公然と暴く。君がいれば、必ず成し遂げられる」

鱗のように冷たい書斎の空気が、ふたりの決意によって温かく満たされる。
夜明け前の月光が差し込む窓辺で、王妃と王子は互いに頷き合い、次なる舞台――議会へと歩みを進めるのだった。
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