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第二十四話 装備発注
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「先ず坊主と嬢ちゃんの手を見せてみろ」
工房の奥に連れて行かれ、ガンツがホクトとサクヤに言った。
ホクトとサクヤの手を取り確認すると、今度は肩や腕、背中、腰の筋肉や骨折を確認するガンツ。
恥ずかしがりながらも我慢してガンツにされるがままにしているホクトとサクヤ。
「ふむ、まぁだいたい分かった」
そう言うとガンツが羊皮紙と羽根ペンを持って来た。
「それで坊主は何が欲しい?」
「ホクトです」
「んっ、ああ、ホクトは剣を打って欲しいのか?」
ガンツに聞かれてホクトは一枚の羊皮紙を渡す。
「僕は剣をメインに使っていますが、槍や棍も使います。それぞれに希望は色々あるのですが、先ずは剣の仕様を考えてみました」
ホクトがリクエストした剣は、片刄で剣先は両刃の小烏丸造り。ただ日本刀とは決定的に違うのは、その身幅が60ミリと通常の日本刀に比べ倍程ある事。重ね厚く鎬造りで波紋は小乱れになる様、土置きの方法や焼き入れの温度から色々細々と記した羊皮紙をガンツに渡した。
随所に日本刀の技術を用いた片刄のロングソードをホクトは発注した。
「…………クククッ、面白い!面白いぞ!ホクト!成る程、ふむ、鋼ならアリだな、魔鋼なら少し研究が必要か、ミスリル合金はどうだ、一層の事オリハルコンかアダマンタイトで研究するか、いや、竜素材を混ぜるとどうなる……」
ガンツはホクトが差し出した羊皮紙を食い入る様に見ながら、ブツブツと自分の世界に入り込んでいる。
「これは靭性強化のエンチャントは必須だろうな。耐蝕性強化に自動修復、斬撃強化を付ければ国宝級になるぞ!」
ガンツの大きな独り言は止まらない。
結局、ガンツの暴走は暫く続く。
「す、すまんな。儂ら鍛治師は新しいモノを造れると言うのが喜びじゃからな。年甲斐もなく興奮したわい。カッカッカッ」
ガンツが悪びれる事なく笑っている。強面の髭面のガンツだが、ホクトとサクヤは好印象を持った。
「それで嬢ちゃんは双剣なんだな。何か希望はあるのか」
「サクヤと呼んで下さい。
私は今の剣と同じ長さで、後はこだわりはありません。私は魔法をメインに使う後衛職ですから」
「ほぅ、その割には随分剣が使えるな。分かった、サクヤの剣は儂が良い様に考えてやる」
「それで僕の剣以外の装備なんですが……」
ホクトは剣以外の訓練も続けて来た。その中でも槍と弓は熟練の域に達している。
今回、ホクトがガンツに相談したのは、打撃武器についてだ。
対人戦においては、剣に魔力と気を纏わせる事で、フルプレートの鎧であっても抵抗を許さず斬る事が出来るが、この世界には驚くような魔物も存在している。ホクトはゴーレムという魔物なのか何なのか分からない存在も居る事を本で知る。
「成る程、ゴーレムか……、お前達なら剣でも簡単に斬るだろうが、戦鎚(ウォーハンマー)か戦棍(メイス)だな。ゴーレムやフルプレートの鎧を装備した相手には有効じゃ。
この際だから色々造ってみるか。
それでホクトとサクヤは防具は軽鎧が良さそうだな。革鎧に金属か魔物素材で補強する方針でいこうか」
「あとスローイングナイフと剣鉈が欲しいです」
ホクトは羊皮紙に剣鉈の形やサイズを描いて説明していく。
「剣鉈か、解体にも使えそうじゃのう」
その後、色々と相談しながら装備の話をしていたのだが、ガンツがせっかくだからとある事を提案して来た。
「素材ですか?」
そう、ガンツは鉱石やエンチャントの触媒、魔物素材の調達をホクトとサクヤに言ってきた。
「でも僕達、この後学園に入学する予定何ですが」
まだ試験があるが、カインやフローラからはホクトとサクヤなら大丈夫だと太鼓判を押して貰った。
「なに、夏の長期休暇があるじゃろ。それまではつなぎに適当な装備を儂が用意する。詳しい話は夏季休暇が近付いて来たら話そう」
聞くところによると、王都から30キロ程離れた場所に、比較的浅いダンジョンがあるらしい。
「あそこはゴーレム系の魔物ばかりじゃから人気がなくてのぅ」
「ゴーレム系が多いと人気がないんですか?」
「あゝ、ストーンゴーレムからはコアしか手に入らん。石材も土魔法で練成すれば持ち帰れるが、手間になるだけじゃ。アイアンゴーレムからは鉄が採れるが、しょせん鉄じゃしな。迷宮ボスのミスリルゴーレムからはミスリルが大量に採れるんじゃが、ミスリルゴーレムは倒すのが難しいんじゃ」
話を聞いているとあまり行く意味がわからないと、ホクトが首を傾げていると、ガンツがそのダンジョンへ行く意味を教えてくれた。
「そのダンジョンは坑道型の迷宮でな、二十階層辺りから希少金属の鉱石が掘れるんじゃ」
「えっと、僕達採掘なんてした事ないですよ」
ホクトが困惑気味に言うが、ガンツは笑いながら驚くような事を言って来た。
「カッカッカッ、採掘はドワーフの仕事じゃ。儂が一緒に着いて行くに決まっておろう」
それを聞いてホクトとサクヤは呆然とする。
「え、えっと、ダンジョンですよ」
「これでも戦鎚の扱いはそこそこの上手いからな。心配せんでもドワーフの鍛治師は大なり小なり自分で素材を調達するもんじゃ」
そこまで言われればホクト達には何も言う事はない。特に鉱石の採掘なんてホクトには何処を掘れば良いのかすら分からないだろう。
その後、ホクトはロングソードとナイフを、サクヤはショートソード二本とナイフを買って、ガンツの工房を後にした。
「鍛治工房だけで終わってしまいましたね」
アマリエが呆れたようにホクトとサクヤに言った。何故ならガンツの工房を出た時、既に日は沈み王都は闇に覆われていた。
「……ごめんアマリエ」
王都には街灯の魔導具が有る為、全くの闇に包まれる訳ではないが、貴族が馬車も使わず歩くには差し障りがあった。
ホクト達は急いで王都の屋敷へと帰路を急いだ。
工房の奥に連れて行かれ、ガンツがホクトとサクヤに言った。
ホクトとサクヤの手を取り確認すると、今度は肩や腕、背中、腰の筋肉や骨折を確認するガンツ。
恥ずかしがりながらも我慢してガンツにされるがままにしているホクトとサクヤ。
「ふむ、まぁだいたい分かった」
そう言うとガンツが羊皮紙と羽根ペンを持って来た。
「それで坊主は何が欲しい?」
「ホクトです」
「んっ、ああ、ホクトは剣を打って欲しいのか?」
ガンツに聞かれてホクトは一枚の羊皮紙を渡す。
「僕は剣をメインに使っていますが、槍や棍も使います。それぞれに希望は色々あるのですが、先ずは剣の仕様を考えてみました」
ホクトがリクエストした剣は、片刄で剣先は両刃の小烏丸造り。ただ日本刀とは決定的に違うのは、その身幅が60ミリと通常の日本刀に比べ倍程ある事。重ね厚く鎬造りで波紋は小乱れになる様、土置きの方法や焼き入れの温度から色々細々と記した羊皮紙をガンツに渡した。
随所に日本刀の技術を用いた片刄のロングソードをホクトは発注した。
「…………クククッ、面白い!面白いぞ!ホクト!成る程、ふむ、鋼ならアリだな、魔鋼なら少し研究が必要か、ミスリル合金はどうだ、一層の事オリハルコンかアダマンタイトで研究するか、いや、竜素材を混ぜるとどうなる……」
ガンツはホクトが差し出した羊皮紙を食い入る様に見ながら、ブツブツと自分の世界に入り込んでいる。
「これは靭性強化のエンチャントは必須だろうな。耐蝕性強化に自動修復、斬撃強化を付ければ国宝級になるぞ!」
ガンツの大きな独り言は止まらない。
結局、ガンツの暴走は暫く続く。
「す、すまんな。儂ら鍛治師は新しいモノを造れると言うのが喜びじゃからな。年甲斐もなく興奮したわい。カッカッカッ」
ガンツが悪びれる事なく笑っている。強面の髭面のガンツだが、ホクトとサクヤは好印象を持った。
「それで嬢ちゃんは双剣なんだな。何か希望はあるのか」
「サクヤと呼んで下さい。
私は今の剣と同じ長さで、後はこだわりはありません。私は魔法をメインに使う後衛職ですから」
「ほぅ、その割には随分剣が使えるな。分かった、サクヤの剣は儂が良い様に考えてやる」
「それで僕の剣以外の装備なんですが……」
ホクトは剣以外の訓練も続けて来た。その中でも槍と弓は熟練の域に達している。
今回、ホクトがガンツに相談したのは、打撃武器についてだ。
対人戦においては、剣に魔力と気を纏わせる事で、フルプレートの鎧であっても抵抗を許さず斬る事が出来るが、この世界には驚くような魔物も存在している。ホクトはゴーレムという魔物なのか何なのか分からない存在も居る事を本で知る。
「成る程、ゴーレムか……、お前達なら剣でも簡単に斬るだろうが、戦鎚(ウォーハンマー)か戦棍(メイス)だな。ゴーレムやフルプレートの鎧を装備した相手には有効じゃ。
この際だから色々造ってみるか。
それでホクトとサクヤは防具は軽鎧が良さそうだな。革鎧に金属か魔物素材で補強する方針でいこうか」
「あとスローイングナイフと剣鉈が欲しいです」
ホクトは羊皮紙に剣鉈の形やサイズを描いて説明していく。
「剣鉈か、解体にも使えそうじゃのう」
その後、色々と相談しながら装備の話をしていたのだが、ガンツがせっかくだからとある事を提案して来た。
「素材ですか?」
そう、ガンツは鉱石やエンチャントの触媒、魔物素材の調達をホクトとサクヤに言ってきた。
「でも僕達、この後学園に入学する予定何ですが」
まだ試験があるが、カインやフローラからはホクトとサクヤなら大丈夫だと太鼓判を押して貰った。
「なに、夏の長期休暇があるじゃろ。それまではつなぎに適当な装備を儂が用意する。詳しい話は夏季休暇が近付いて来たら話そう」
聞くところによると、王都から30キロ程離れた場所に、比較的浅いダンジョンがあるらしい。
「あそこはゴーレム系の魔物ばかりじゃから人気がなくてのぅ」
「ゴーレム系が多いと人気がないんですか?」
「あゝ、ストーンゴーレムからはコアしか手に入らん。石材も土魔法で練成すれば持ち帰れるが、手間になるだけじゃ。アイアンゴーレムからは鉄が採れるが、しょせん鉄じゃしな。迷宮ボスのミスリルゴーレムからはミスリルが大量に採れるんじゃが、ミスリルゴーレムは倒すのが難しいんじゃ」
話を聞いているとあまり行く意味がわからないと、ホクトが首を傾げていると、ガンツがそのダンジョンへ行く意味を教えてくれた。
「そのダンジョンは坑道型の迷宮でな、二十階層辺りから希少金属の鉱石が掘れるんじゃ」
「えっと、僕達採掘なんてした事ないですよ」
ホクトが困惑気味に言うが、ガンツは笑いながら驚くような事を言って来た。
「カッカッカッ、採掘はドワーフの仕事じゃ。儂が一緒に着いて行くに決まっておろう」
それを聞いてホクトとサクヤは呆然とする。
「え、えっと、ダンジョンですよ」
「これでも戦鎚の扱いはそこそこの上手いからな。心配せんでもドワーフの鍛治師は大なり小なり自分で素材を調達するもんじゃ」
そこまで言われればホクト達には何も言う事はない。特に鉱石の採掘なんてホクトには何処を掘れば良いのかすら分からないだろう。
その後、ホクトはロングソードとナイフを、サクヤはショートソード二本とナイフを買って、ガンツの工房を後にした。
「鍛治工房だけで終わってしまいましたね」
アマリエが呆れたようにホクトとサクヤに言った。何故ならガンツの工房を出た時、既に日は沈み王都は闇に覆われていた。
「……ごめんアマリエ」
王都には街灯の魔導具が有る為、全くの闇に包まれる訳ではないが、貴族が馬車も使わず歩くには差し障りがあった。
ホクト達は急いで王都の屋敷へと帰路を急いだ。
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