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第二十五話 学科試験
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結局、せっかくの王都散策が一件目で予想外に長引き、そのガンツの工房から帰ったホクトとサクヤは、カインとフローラからタップリと叱られた。
それから二日、ホクトとサクヤは王城近くに建つ学園の入学試験に来ていた。
「全校生徒数が300人って多いのか少ないのか」
「この世界の都市人口から考えれば、妥当だと思いますよ」
試験に向かう馬車の中で、ホクトの疑問にサクヤが答える。
何百万人の都市人口が当たり前の世界から考えると、ロマリア王国最大の都市である王都にしてこの人口なのだから、この世界の過酷さが良く分かる。
ホクト達がこれから通う予定の王立ロマリア学園の全校生徒数は、三学年全て合わせると300人。これは今回の試験で入学する100人を含めてだ。
一学年一クラス20人で5クラスで、成績順にA組~E組までに別けられる。
新入生の定員100人を志望者数が約200人が競う。倍率的には大した事がない様に思われるが、それだけこの世界では学校へ通う人間は特権階級という事になる。平民や農民の子供達の大半は、小さな内から働き始めるのが普通だ。だからどうしても学園に通うのは貴族や豪商の子息や息女になる。
この試験から漏れた者や平民が中心に通う、王立ロマリア第二学園がある。この王立ロマリア第二学園は定員が300名なので、平民と王立ロマリア学園を落ちた者の受け皿になっている。
この王立ロマリア学園は高位貴族だからといって、コネで入学出来る事は出来ない為、プライドの高い貴族は、試験に堕ちると領地の騎士団に入団する者が多い。
馬車から降りて学園内へ入ると、試験の受付に試験を受けに来た同年代の子供が並んでいた。
試験は、学科試験(数学・史学・一般教養)と実技(武器術又は体術・魔法)がある。
学科300点、実技200点の合計500点満点で、上位100人が合格者となる。
ホクト達も受付の列に並んで順番を待つが、馬車を降りた瞬間からホクトとサクヤへ集まる視線が物凄い事になっている。今日は試験なので、当然の事ながらローブのフードで顔を隠す事は出来ない。
必然的に、ホクトとサクヤには羨望・憧れ・嫉妬・苛立ち・侮蔑、様々な視線が突き刺さる。
ホクト達の他にエルフが居ない訳ではない。
ただホクトとサクヤは、そのエルフの中でも特別な存在だった。
ザワザワと二人を遠巻きに視線を送る者達、そんな有象無象の視線を無視していると、ホクトの順番が回って来た。
「あなたの受付番号は150番です。案内板に従って筆記試験の会場へ移動して下さい」
ホクトが受付で受験票を受け取りサクヤを待つ。
「私は151番だったよ」
「じゃあ試験会場へ行こうか」
周りの目を気にせずに仲良く二人で試験会場へ向かうホクト達。何故、二人が視線に晒されても平気でいれるのかと言うと、それは二人の立場が知れ渡っている所為だ。
サクヤは、アーレンベルク辺境伯の養女となり、サクヤ・フォン・アーレンベルクとなった。養女とはいえ、国内でも随一の軍事力を誇る高位貴族の関係者に絡むバカは少ない。さらにホクトは既に男爵位を叙爵している。学園に通う高位貴族の子息息女でも、次期当主は貴族位を持っていない。ホクトは既に男爵家当主なのだから、例え伯爵家の次期当主でもめったな事は出来ないのだ。
試験会場に入り試験の時間を待つ二人。他の受験生が直前まで勉強している中、のほほんと待つ二人。ホクトとサクヤにとって、この学園の入試試験のレベルは低すぎた。
数学とは名ばかりの算数に、史学は大陸の大まかな歴史を学べは済む。一般教養に至っては常識の範囲でしか問題は出なかった。
学科試験が始まり、早々に問題を解いた二人は残りの時間を魔力操作と気を練る事で時間を潰した。
「君達、もういいのかね」
試験官がホクトとサクヤの側に来て聞く。
「はい、もう解き終えましたから」
ホクトとサクヤには不思議で仕方がない。これは十二歳が受ける試験の問題レベルじゃないんじゃないかと。
それもこの世界の学力レベルなのだが。
そもそもこの世界での識字率は五割を切る。計算も複雑な計算を必要とする職業は少なく、大人でも四則計算が出来ない者も多い。
鐘の音が鳴り試験の終了を報せる。
「次は実技試験になります。
実技試験は実技教練場で行います。直ぐに移動して下さい」
試験官の声で、試験会場に居る受験生がゾロゾロと移動し始める。それを見てホクト達も席を立つ。
「行こうかサクヤ」
「うん」
サクヤへ手を差し伸べるホクト。
ニコリとホクトへ笑い掛けるサクヤの現実離れした美しさに、周りの男女問わず見惚れさせる。
二人は堂々と手を繋ぎ、仲良く連れだって実技試験の場所へ向かった。
それから二日、ホクトとサクヤは王城近くに建つ学園の入学試験に来ていた。
「全校生徒数が300人って多いのか少ないのか」
「この世界の都市人口から考えれば、妥当だと思いますよ」
試験に向かう馬車の中で、ホクトの疑問にサクヤが答える。
何百万人の都市人口が当たり前の世界から考えると、ロマリア王国最大の都市である王都にしてこの人口なのだから、この世界の過酷さが良く分かる。
ホクト達がこれから通う予定の王立ロマリア学園の全校生徒数は、三学年全て合わせると300人。これは今回の試験で入学する100人を含めてだ。
一学年一クラス20人で5クラスで、成績順にA組~E組までに別けられる。
新入生の定員100人を志望者数が約200人が競う。倍率的には大した事がない様に思われるが、それだけこの世界では学校へ通う人間は特権階級という事になる。平民や農民の子供達の大半は、小さな内から働き始めるのが普通だ。だからどうしても学園に通うのは貴族や豪商の子息や息女になる。
この試験から漏れた者や平民が中心に通う、王立ロマリア第二学園がある。この王立ロマリア第二学園は定員が300名なので、平民と王立ロマリア学園を落ちた者の受け皿になっている。
この王立ロマリア学園は高位貴族だからといって、コネで入学出来る事は出来ない為、プライドの高い貴族は、試験に堕ちると領地の騎士団に入団する者が多い。
馬車から降りて学園内へ入ると、試験の受付に試験を受けに来た同年代の子供が並んでいた。
試験は、学科試験(数学・史学・一般教養)と実技(武器術又は体術・魔法)がある。
学科300点、実技200点の合計500点満点で、上位100人が合格者となる。
ホクト達も受付の列に並んで順番を待つが、馬車を降りた瞬間からホクトとサクヤへ集まる視線が物凄い事になっている。今日は試験なので、当然の事ながらローブのフードで顔を隠す事は出来ない。
必然的に、ホクトとサクヤには羨望・憧れ・嫉妬・苛立ち・侮蔑、様々な視線が突き刺さる。
ホクト達の他にエルフが居ない訳ではない。
ただホクトとサクヤは、そのエルフの中でも特別な存在だった。
ザワザワと二人を遠巻きに視線を送る者達、そんな有象無象の視線を無視していると、ホクトの順番が回って来た。
「あなたの受付番号は150番です。案内板に従って筆記試験の会場へ移動して下さい」
ホクトが受付で受験票を受け取りサクヤを待つ。
「私は151番だったよ」
「じゃあ試験会場へ行こうか」
周りの目を気にせずに仲良く二人で試験会場へ向かうホクト達。何故、二人が視線に晒されても平気でいれるのかと言うと、それは二人の立場が知れ渡っている所為だ。
サクヤは、アーレンベルク辺境伯の養女となり、サクヤ・フォン・アーレンベルクとなった。養女とはいえ、国内でも随一の軍事力を誇る高位貴族の関係者に絡むバカは少ない。さらにホクトは既に男爵位を叙爵している。学園に通う高位貴族の子息息女でも、次期当主は貴族位を持っていない。ホクトは既に男爵家当主なのだから、例え伯爵家の次期当主でもめったな事は出来ないのだ。
試験会場に入り試験の時間を待つ二人。他の受験生が直前まで勉強している中、のほほんと待つ二人。ホクトとサクヤにとって、この学園の入試試験のレベルは低すぎた。
数学とは名ばかりの算数に、史学は大陸の大まかな歴史を学べは済む。一般教養に至っては常識の範囲でしか問題は出なかった。
学科試験が始まり、早々に問題を解いた二人は残りの時間を魔力操作と気を練る事で時間を潰した。
「君達、もういいのかね」
試験官がホクトとサクヤの側に来て聞く。
「はい、もう解き終えましたから」
ホクトとサクヤには不思議で仕方がない。これは十二歳が受ける試験の問題レベルじゃないんじゃないかと。
それもこの世界の学力レベルなのだが。
そもそもこの世界での識字率は五割を切る。計算も複雑な計算を必要とする職業は少なく、大人でも四則計算が出来ない者も多い。
鐘の音が鳴り試験の終了を報せる。
「次は実技試験になります。
実技試験は実技教練場で行います。直ぐに移動して下さい」
試験官の声で、試験会場に居る受験生がゾロゾロと移動し始める。それを見てホクト達も席を立つ。
「行こうかサクヤ」
「うん」
サクヤへ手を差し伸べるホクト。
ニコリとホクトへ笑い掛けるサクヤの現実離れした美しさに、周りの男女問わず見惚れさせる。
二人は堂々と手を繋ぎ、仲良く連れだって実技試験の場所へ向かった。
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