酒呑童子 遥かなる転生の果てに

小狐丸

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第三十九話 帰省

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 王都の職人街の一画、余り人の寄り付かない鍛治工房にホクト達の姿を見つける事が出来た。

 ホクト達は、鉱物迷宮から王都へ帰還して二日後、ガンツの工房を訪ねていた。

 ホクトは前回リクエストした片刄で身幅の広い小烏丸造りの剣と、槍とバルディッシュを併せたハルバードや戟のような、斧槍を造る為の打ち合わせだ。

 ホクトが二度目に転生したのが、弘治元年1555年、戦国時代の真っ只中だった。
 その時、前世と同じ越後に生まれ、侍大将として闘争の人生だった。その時ホクトが愛用したのは大身槍(穂先が一尺を超える物)だった。そういう理由もあり、今世でも槍の訓練を続けて来た。
 ただ今世では、対人戦だけでなく魔物が存在する世界故に、より威力の大きいモノが望まれた。
 そこで導き出された答えが斧槍だった。

 当然、普通に考えると剣や槍で巨大な魔物を相手するのは無理なのだが、この世界にはそれを可能とする技術や魔法、魔剣、魔槍がある。
 ただ、威力を強化するにしても、元になる武器の攻撃力が高い事に越した事はない。
 ホクトは、何度か転生した折、前世での鬼であった酒呑童子だった頃の膂力を活かして、大太刀や大槍を軽々と振り回してきた。今世では、身体能力が高くても奇異の目を向けられる事は少ない。
 結果的に、一尺以上ある片鎌槍に分厚く巨大な斧刃を組み合わせた斧槍にたどり着く。


 サクヤは、アブソリュートガーディアンを手に入れたのでメインの長剣を造る。
 サクヤはあくまで後衛職なのだが、近接戦時の為に、右手にロングソード、左手にアブソリュートガーディアンという形に落ち着いた。


 カジムは大剣を造る事にした。
 ガンツの岩を斬れる剣をと言う言葉に痺れたカジムは大剣のみにしたようだ。

「そういやお前達、防具はどうするんじゃ。
 サクヤは、アブソリュートガーディアンがあるが、一応防具はいるじゃろうしの」

 現状、普通の革鎧を使用しているホクトとサクヤ。カジムにしても革鎧に金属補強した軽鎧だ。

「それなんですけど、僕とサクヤは今から二~三年が一番体の成長する時期だと思うんですけど……」

 それだけでホクトの言いたい事が分かったカジムが問題ないと言う。
 現在のホクトは身長が165センチを超えている。サクヤも160センチを超えている。将来的に成長する余裕を考えて防具を造り、サイズ自動調整のエンチャントを掛ければ良いとガンツは言う。

「どうせフルプレートの鎧なんぞ望んでおらんのじゃろう。なら大丈夫じゃ。
 おそらくホクトはあと20センチは身長も伸びるだろう。じゃが、籠手、胸当て、脛当て又は丈夫なブーツとパーツ毎にサイズ自動調整のエンチャントを掛けるからの、長く使えるぞ。
 それに、良い素材が手に入ったら造り直せばええ」

「それなら防具も考えてみるかな。実は籠手というか、ガントレットというか、ちょっと考えているんだ」

「ほぅ、面白そうじゃのう。
 まぁ、何にせよ、急ぐ事はあるまい。
 ホクトよ、革鎧に使う素材を調達する必要があるから防具は少し時間がかかると思ってくれ。
 どうせお前達も帰省するんじゃろう」

「そうですけど、革鎧の素材でお勧めって何かありますか?」

 今回のダンジョンで十二分な量の鉱石は確保したが、革鎧の素材となる物に付いては、一般的な知識しかないホクトは、ガンツが勧める素材を購入するか、ギルドで依頼を出す必要があった。

「どっちにしてもホクトの剣と斧槍はお前達が帰って来てからじゃな。
 ゆっくり帰省して英気を養って来い」

 ガンツには、ダンジョンで採掘した鉱石の精錬作業が待っていた。大量にある各種希少金属をインゴットへと精錬する。その際、大量の魔力を使用するために、ガンツとしても時間が必要だった。






 王都の屋敷で帰省の準備をする。

「母上はどうされます?」

「私は王都に居るわよ。今はジェシカが領地に居るから、王都の屋敷は私が守らないと」

 一応、一緒に領地へ帰るか母のフローラに聞いてみると、フローラは王都に残るらしい。多分父のカインがまだ王都での仕事が残っているからだろう。
 あと、ヴィルハイム家が子爵となって、何時迄も男爵時代の屋敷というのも差し障りがあるので、新しい屋敷を探す必要もあった。

「分かりました。僕とサクヤで帰って来ます」

「エヴァによろしくね」






「たった数ヶ月だけど、懐かしく感じるな」

 久し振りに感じる辺境のヴィルハイム領は、たった数ヶ月でも開発が進み、街が大きくなっている。
 珍しくローブのフードを外したホクトとサクヤが、屋敷の中庭に長距離転移で現れた。

「本当ね。後でギルドにも顔を出しましょう」

「おっ!冒険者ギルドか!楽しみだぜ!」

 ヴィルハイム家の中庭には、ホクトとサクヤだけでなく、大柄の虎人族の少年がいた。

「はぁ~、何でカジムが……」

 ホクトとサクヤが帰省すると言うと、カジムがどうしても一緒について行くときかなかった。
 仕方なく連れて行く事を了承する。

「ホクト様、アルバン様、ジョシュア様、ジェシカ奥様にご挨拶を」

 ホクトとサクヤの帰省という事で、一緒について来ている、ホクト専属の侍女であるアマリエが屋敷の中へ促す。

 屋敷に入り、王都に居る父の代わりに領地を代理で治めている嫡男アルバンと、それを補佐しているジョシュア、第一夫人のジェシカに挨拶をした。

「アルバン兄上、ジョシュア兄上、ジェシカ母上、ただいま帰りました」

「よく帰って来たねホクト。元気そうで安心したよ」

「おかえりホクト。
 しかし転移魔法って便利だね。一瞬で王都から帰って来れるんだから」

「本当ね。でも、本来なら貴族としてはダメなのよ」

 ジェシカは貴族なら移動の際に、立ち寄る途中の街でお金を落とす事も貴族としての役割だと言う。

「ジェシカ母上すいません」

「良いのよ。貴方は自由にしなさい。
 それで、お友達を連れて来たの?」

 ジェシカがホクト達の背後で珍しく大人しくしているカジムを見て言った。

「初めまして、アニキと姐さんにお世話になっています。カジムと言います」

 カジムがホクト達を「アニキ、姐さん」と呼んだ瞬間、アルバンやジョシュアが吹き出しそうになっていたが、ジェシカはニッコリとして普通に挨拶を返していた。





 サクヤがバグスとエヴァと久しぶりの親子水入らずの時間を過ごしている時、アルバンがホクトを執務室へ呼び出した。

「でもホクトがこのタイミングで帰って来てくれて助かったよ」

 ホクトの夏季休暇は、実家でゆっくり過ごせそうになかった。




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