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第四十七話 飛べない竜は・・・
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たった一日ではぐれ劣飛竜の討伐を済ませ、ベルンの冒険者ギルドの受付嬢を驚かせたホクト達は、休みを取る事なく、今日は死の森へと来ていた。
死の森へと足を踏み入れると、この森が尋常じゃない事が良く分かる。
とにかく魔物とのエンカウントが多い。しかも奥に行く程強力な魔物が生息していると言う。それこそ下位竜どころが、中位竜、上位竜種まで生息すると言う。
アダマンタイト製の黒い大重量の剣が振り下ろされ、2メートルを超える巨猿の魔物の頭が潰れた。
カジムは結果を確認する事もなく、次の獲物へと大剣を振りかぶる。
死の森の外縁部から一路地竜を目指して森を歩く。ただ余りにも魔物と遭遇する為に中々目的地へとたどり着かない。
今、ホクト達は、キラーエイプと言う魔物の群れと戦闘をしていた。銀色に輝く毛皮が美しい巨猿は、その毛皮が素材として高値で取り引きされている。
二十匹を超えるキラーエイプの群れを、倒していくホクト達。
ホクトは、キラーエイプに対して無手で仕留めて行く。
襲いかかるキラーエイプに、カウンターで魔力を込めた掌底が打ち込まれ、キラーエイプを内部から壊す。
背後から襲いかかるキラーエイプを、腰を沈め足元からの捻りの力と腰の回転を連動させ、内功を込めた肘打ちが当たると、キラーエイプの内臓が破裂する。
ホクトは、この氣と魔力を練り込んで闘う術を、魔闘術と呼ぶ様になった。
サクヤは、アブソリュートガーディアンを展開しながら、アイスバレットで傷を最小限にして倒していく。
「しかし、魔物との遭遇率が高過ぎだな」
ホクトは、最後のキラーエイプへ剣を抜き放ち喉へ突き刺した。
倒したキラーエイプを素早くアイテムボックスへ収納すると、皆を促して先を急ぐ。
ホクトの探知魔法で地竜の位置は掴んでいた。
「そろそろ地竜と遭遇するぞ」
やがて森の樹々の間から茶色い巨大な地竜が見えた。そのサイズは、まるで大型バスのよう。
樹々を薙ぎ倒しながらホクト達の方に進んで来る。
巨体を揺らしながら地響きを立てる。
退化した翼の代わりに、高い防御力を身に付けた地竜の咆哮が響く。
GHAAAAAA!!
重い体重を支える太い四本の脚で、踏み潰さんと進む。下位竜故にブレスの心配がない事は幸いだった。
これが中位以上の竜種なら、属性に応じたブレスを吐いただろう。
この世界には、火属性の火竜、水属性の水竜、風属性の飛竜と、雷属性の雷竜、氷属性の氷竜、光属性の光竜、闇属性の闇竜が居るとされている。
属性を持つ中位竜以上の竜は高い知能を持ち、特に上位竜は独自の竜言語魔法を操る。
ホクト達の目の前にいる地竜などの下位竜は、知能も低い。
ホクト達を踏み潰さんと進む地竜の足下の地面ががいきなりボコリと穴が開く。
穴に前足を取られた地竜が、その勢いのままにつんのめる。
顔を地面に強かに打ち付けた地竜に、追い打ちをかけるように、跳び上がったカジムの大剣が、地竜の頭に振り下ろされた。
ゴォーーーン!!
鈍い音が鳴り、地竜が怒りの声をあげるが、カジムは地竜の頭をめった打ちにする。
「硬てえなこの野郎!」
カジムが舌打ちする。防御力に特化した地竜の鱗は、想像以上に硬かった。
「アースプリズン」
サクヤが土魔法を発動する。
前足が穴にはまり、抜け出そうと暴れる地竜の身体に、地面から土で出来た鎖が何本も伸びて絡まり拘束する。
カジムが地竜の頭を乱打し、半ば地竜が脳しんとうを起こしかけてたその時、魔力を纏わせた剣に、さらに白炎を纏わせたホクトが、裂帛の気合いを発して上段から剣を振り下ろした。
ザンッ!ホクトの放った斬撃が地竜の頸を落とし、斬り口が炎で焼かれて出血を止める。
地竜の頸を落ちた次の瞬間、ホクトが残心の構えを解くと、手に持つ剣が柄を残してバラバラに崩れ去った。
「あ~、やっぱり鉄の剣じゃ持たなかったか」
鉄だった筈の剣は、見る影もなくボロボロになっていた。
防御力に特化した地竜の鱗を斬り裂くために、ホクトは大量の魔力を圧縮して剣に流し込んだ。それは氣による剣の強化を超え、さらに炎を纏わせた事も剣の崩壊を加速させた。
ホクトは予備の剣を装備すると、地竜を素早くアイテムボックスへと収納する。
「解体はギルドでするとして、早いとこここを離れよう」
「そうね、今の戦いで周りの魔物が集まって来ているわ」
「じゃあアニキ、俺が先行するぜ」
そう言ってカジムが先頭で森を脱出する。
その後、ベルンの冒険者ギルドで地竜の肉を指定量納品してワイバーンと共に討伐依頼を報告した。
ワイバーンの頭部と、地竜の頭部を持ち込み討伐を証明したホクト達だが、アイテムボックスの中にワイバーンと地竜がまるまる回収されていると思わない冒険者達が、オコボレにあずかろうと探し回る事になる。
ホクト達は、ワイバーンと地竜以外にも死の森で多数の魔物を回収していたが、騒がれるのを避ける為に、王都やヴァルハイム領で素材を売却する事にした。
当初の目的を達成したホクト達は、明日の朝王都へと帰還するつもりだった。その日の夜、ホクト達が宿泊する宿にフランソワからの遣いが来るまでは…………。
死の森へと足を踏み入れると、この森が尋常じゃない事が良く分かる。
とにかく魔物とのエンカウントが多い。しかも奥に行く程強力な魔物が生息していると言う。それこそ下位竜どころが、中位竜、上位竜種まで生息すると言う。
アダマンタイト製の黒い大重量の剣が振り下ろされ、2メートルを超える巨猿の魔物の頭が潰れた。
カジムは結果を確認する事もなく、次の獲物へと大剣を振りかぶる。
死の森の外縁部から一路地竜を目指して森を歩く。ただ余りにも魔物と遭遇する為に中々目的地へとたどり着かない。
今、ホクト達は、キラーエイプと言う魔物の群れと戦闘をしていた。銀色に輝く毛皮が美しい巨猿は、その毛皮が素材として高値で取り引きされている。
二十匹を超えるキラーエイプの群れを、倒していくホクト達。
ホクトは、キラーエイプに対して無手で仕留めて行く。
襲いかかるキラーエイプに、カウンターで魔力を込めた掌底が打ち込まれ、キラーエイプを内部から壊す。
背後から襲いかかるキラーエイプを、腰を沈め足元からの捻りの力と腰の回転を連動させ、内功を込めた肘打ちが当たると、キラーエイプの内臓が破裂する。
ホクトは、この氣と魔力を練り込んで闘う術を、魔闘術と呼ぶ様になった。
サクヤは、アブソリュートガーディアンを展開しながら、アイスバレットで傷を最小限にして倒していく。
「しかし、魔物との遭遇率が高過ぎだな」
ホクトは、最後のキラーエイプへ剣を抜き放ち喉へ突き刺した。
倒したキラーエイプを素早くアイテムボックスへ収納すると、皆を促して先を急ぐ。
ホクトの探知魔法で地竜の位置は掴んでいた。
「そろそろ地竜と遭遇するぞ」
やがて森の樹々の間から茶色い巨大な地竜が見えた。そのサイズは、まるで大型バスのよう。
樹々を薙ぎ倒しながらホクト達の方に進んで来る。
巨体を揺らしながら地響きを立てる。
退化した翼の代わりに、高い防御力を身に付けた地竜の咆哮が響く。
GHAAAAAA!!
重い体重を支える太い四本の脚で、踏み潰さんと進む。下位竜故にブレスの心配がない事は幸いだった。
これが中位以上の竜種なら、属性に応じたブレスを吐いただろう。
この世界には、火属性の火竜、水属性の水竜、風属性の飛竜と、雷属性の雷竜、氷属性の氷竜、光属性の光竜、闇属性の闇竜が居るとされている。
属性を持つ中位竜以上の竜は高い知能を持ち、特に上位竜は独自の竜言語魔法を操る。
ホクト達の目の前にいる地竜などの下位竜は、知能も低い。
ホクト達を踏み潰さんと進む地竜の足下の地面ががいきなりボコリと穴が開く。
穴に前足を取られた地竜が、その勢いのままにつんのめる。
顔を地面に強かに打ち付けた地竜に、追い打ちをかけるように、跳び上がったカジムの大剣が、地竜の頭に振り下ろされた。
ゴォーーーン!!
鈍い音が鳴り、地竜が怒りの声をあげるが、カジムは地竜の頭をめった打ちにする。
「硬てえなこの野郎!」
カジムが舌打ちする。防御力に特化した地竜の鱗は、想像以上に硬かった。
「アースプリズン」
サクヤが土魔法を発動する。
前足が穴にはまり、抜け出そうと暴れる地竜の身体に、地面から土で出来た鎖が何本も伸びて絡まり拘束する。
カジムが地竜の頭を乱打し、半ば地竜が脳しんとうを起こしかけてたその時、魔力を纏わせた剣に、さらに白炎を纏わせたホクトが、裂帛の気合いを発して上段から剣を振り下ろした。
ザンッ!ホクトの放った斬撃が地竜の頸を落とし、斬り口が炎で焼かれて出血を止める。
地竜の頸を落ちた次の瞬間、ホクトが残心の構えを解くと、手に持つ剣が柄を残してバラバラに崩れ去った。
「あ~、やっぱり鉄の剣じゃ持たなかったか」
鉄だった筈の剣は、見る影もなくボロボロになっていた。
防御力に特化した地竜の鱗を斬り裂くために、ホクトは大量の魔力を圧縮して剣に流し込んだ。それは氣による剣の強化を超え、さらに炎を纏わせた事も剣の崩壊を加速させた。
ホクトは予備の剣を装備すると、地竜を素早くアイテムボックスへと収納する。
「解体はギルドでするとして、早いとこここを離れよう」
「そうね、今の戦いで周りの魔物が集まって来ているわ」
「じゃあアニキ、俺が先行するぜ」
そう言ってカジムが先頭で森を脱出する。
その後、ベルンの冒険者ギルドで地竜の肉を指定量納品してワイバーンと共に討伐依頼を報告した。
ワイバーンの頭部と、地竜の頭部を持ち込み討伐を証明したホクト達だが、アイテムボックスの中にワイバーンと地竜がまるまる回収されていると思わない冒険者達が、オコボレにあずかろうと探し回る事になる。
ホクト達は、ワイバーンと地竜以外にも死の森で多数の魔物を回収していたが、騒がれるのを避ける為に、王都やヴァルハイム領で素材を売却する事にした。
当初の目的を達成したホクト達は、明日の朝王都へと帰還するつもりだった。その日の夜、ホクト達が宿泊する宿にフランソワからの遣いが来るまでは…………。
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