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第七十五話 ジルの使い魔
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結局、ジルの使い魔は、通常の召喚魔法の様に、運に任せる事にした。
「じゃあ、召喚魔法陣はこれで大丈夫だと思うけど、どんな使い魔を望むのか、ジルのイメージ次第だからね」
「はいっ!」
王都に借りた家の庭に、ホクトが召喚魔法陣を描いていく。
手に持つ紙を見ながら、間違いがない様にサクヤがチェックしていた。
その二人を、緊張した面持ちでジルが一歩離れた場所から見ていた。
「よし!間違いはないみたいだね」
「ええ、あとはジルさんの運次第かしら」
ホクトとサクヤがジルを召喚魔法陣へと促す。
緊張しているのか、何時もより少し堅い雰囲気のジルが魔法陣へと近づく。
「ジル、召喚魔法を発動する時、出来るだけ自分が望む使い魔のイメージを明確にするんだ。
支援タイプが欲しいのか、遊撃タイプが欲しいのか、前衛タイプが欲しいのか、ジルの望む使い魔の能力をイメージして。
まぁ、それでも確実に望む使い魔が召喚出来るかは運なんだけど、確率は上がるから」
「はいっ」
ジルは深呼吸をして精神を統一すると、召喚魔法陣へと魔力を流し始める。
忍びとしての自分の助けになる使い魔。
それはすなわち、主人と決めたホクトの助けになれる使い魔。
饕餮の【シユウ】や、八咫烏の【ミサキ】とは違う性質の使い魔。
何者でもなく、何者でもあるモノ。
ジルから大量の魔力が消費され、召喚魔法陣が光を放つ。
ひときわ明るく輝いたあと、魔法陣の中心には、黒い不定形物質が蠢いていた。
ジルは迷う事なく召喚契約に移る。
「あなたの名前は、【エレボス】です」
黒い不定形物質がフルフルと震えてジルに近づいて行く。
「……えっと、スライム?」
「……多分スライムだと思うけど……、変異種よね」
満足気なジルとは裏腹に、ホクトとサクヤは少し困惑していた。
スライム……この世界では、最下級の魔物のウチのひとつ。ただの一般的なスライムは、基本的に害になる事はない。動物や魔物の屍肉をあさる掃除屋的な存在で、体内に屍肉を取り込み吸収する。
ただ、様々な種類へと変異する可能性を秘めた種族で、毒で獲物を狩るポイズンスライムや、酸で獲物を溶かして狩をするアシッドスライム等、確認されているだけでもその種類はかなり多く、未知のスライムが発見されることも珍しくない。
「ジル、その子はスライムなんだよね」
「はいっ、この子はシャドウスライムらしいです」
ジルが召喚契約した使い魔は、シャドウスライムという種類だと言う。
召喚魔法で契約された使い魔と、魔力と契約により強固な繋がりが出来ると、その使い魔についての情報を知る事が出来る。それによると、ジルが召喚した魔物は、シャドウスライムと言う種類の、スライムの変異種にあたり、その名の通り影に潜む事が出来ると言う。攻撃方法は、ポイズンスライムと同じく毒を使用する。
エレボスと名付けられたスライムは、ジルの側まで近づくと、ジルの影に溶ける様にして消えた。
「「えっ!?」」
エレボスがジルの影に溶け込むように沈み込んだのを見て、ホクトとサクヤが驚く。
「……いや、シユウとミサキも遁甲するから、影に溶け込むのも有りなのか」
「そうね、地脈や龍脈に遁甲するのとは違うけど、こういった特殊技能を持ったスライムが居ても不思議じゃないわね」
召喚獣は、必要時に呼び出す事が出来るが、ホクトとサクヤは、シユウとミサキを常時召喚していた。それはシユウとミサキが、地脈や龍脈への遁甲が出来るからなのだが、エレボスの特殊技能は影限定だが、潜むと言う点だけ見れば、近い能力なのかもしれない。
「それと、シャドウスライム自体は、ゴブリンの少し上位のランクの魔物ですが、スライムは存在進化しやすい魔物ですから、この先が楽しみです」
ほとんどの魔物は、存在進化をする事で、より強い魔物へと進化して行く。ゴブリンからハイゴブリン、その先のゴブリンジェネラルやゴブリンキングと進化する事が可能だ。
スライムも、その習性によって変異すると共に、上位種へと存在進化する。ただ、普通の野生のスライムは、存在進化に至るまでに、生存競争に負ける個体がほとんどなので、ビックスライムやヒュージスライムなどの上位種へと進化出来る個体はごく稀だった。
「そうだな、シャドウスライムの能力を鍛えて上位種に進化すれば、ジルの使い魔としては強力な相棒になるね」
「はいっ!頑張ってエレボスを鍛えたいと思います」
ジルが張り切っているのを見て、カジムにも何か考えなきゃいけないな~と、思うホクトだった。
「じゃあ、召喚魔法陣はこれで大丈夫だと思うけど、どんな使い魔を望むのか、ジルのイメージ次第だからね」
「はいっ!」
王都に借りた家の庭に、ホクトが召喚魔法陣を描いていく。
手に持つ紙を見ながら、間違いがない様にサクヤがチェックしていた。
その二人を、緊張した面持ちでジルが一歩離れた場所から見ていた。
「よし!間違いはないみたいだね」
「ええ、あとはジルさんの運次第かしら」
ホクトとサクヤがジルを召喚魔法陣へと促す。
緊張しているのか、何時もより少し堅い雰囲気のジルが魔法陣へと近づく。
「ジル、召喚魔法を発動する時、出来るだけ自分が望む使い魔のイメージを明確にするんだ。
支援タイプが欲しいのか、遊撃タイプが欲しいのか、前衛タイプが欲しいのか、ジルの望む使い魔の能力をイメージして。
まぁ、それでも確実に望む使い魔が召喚出来るかは運なんだけど、確率は上がるから」
「はいっ」
ジルは深呼吸をして精神を統一すると、召喚魔法陣へと魔力を流し始める。
忍びとしての自分の助けになる使い魔。
それはすなわち、主人と決めたホクトの助けになれる使い魔。
饕餮の【シユウ】や、八咫烏の【ミサキ】とは違う性質の使い魔。
何者でもなく、何者でもあるモノ。
ジルから大量の魔力が消費され、召喚魔法陣が光を放つ。
ひときわ明るく輝いたあと、魔法陣の中心には、黒い不定形物質が蠢いていた。
ジルは迷う事なく召喚契約に移る。
「あなたの名前は、【エレボス】です」
黒い不定形物質がフルフルと震えてジルに近づいて行く。
「……えっと、スライム?」
「……多分スライムだと思うけど……、変異種よね」
満足気なジルとは裏腹に、ホクトとサクヤは少し困惑していた。
スライム……この世界では、最下級の魔物のウチのひとつ。ただの一般的なスライムは、基本的に害になる事はない。動物や魔物の屍肉をあさる掃除屋的な存在で、体内に屍肉を取り込み吸収する。
ただ、様々な種類へと変異する可能性を秘めた種族で、毒で獲物を狩るポイズンスライムや、酸で獲物を溶かして狩をするアシッドスライム等、確認されているだけでもその種類はかなり多く、未知のスライムが発見されることも珍しくない。
「ジル、その子はスライムなんだよね」
「はいっ、この子はシャドウスライムらしいです」
ジルが召喚契約した使い魔は、シャドウスライムという種類だと言う。
召喚魔法で契約された使い魔と、魔力と契約により強固な繋がりが出来ると、その使い魔についての情報を知る事が出来る。それによると、ジルが召喚した魔物は、シャドウスライムと言う種類の、スライムの変異種にあたり、その名の通り影に潜む事が出来ると言う。攻撃方法は、ポイズンスライムと同じく毒を使用する。
エレボスと名付けられたスライムは、ジルの側まで近づくと、ジルの影に溶ける様にして消えた。
「「えっ!?」」
エレボスがジルの影に溶け込むように沈み込んだのを見て、ホクトとサクヤが驚く。
「……いや、シユウとミサキも遁甲するから、影に溶け込むのも有りなのか」
「そうね、地脈や龍脈に遁甲するのとは違うけど、こういった特殊技能を持ったスライムが居ても不思議じゃないわね」
召喚獣は、必要時に呼び出す事が出来るが、ホクトとサクヤは、シユウとミサキを常時召喚していた。それはシユウとミサキが、地脈や龍脈への遁甲が出来るからなのだが、エレボスの特殊技能は影限定だが、潜むと言う点だけ見れば、近い能力なのかもしれない。
「それと、シャドウスライム自体は、ゴブリンの少し上位のランクの魔物ですが、スライムは存在進化しやすい魔物ですから、この先が楽しみです」
ほとんどの魔物は、存在進化をする事で、より強い魔物へと進化して行く。ゴブリンからハイゴブリン、その先のゴブリンジェネラルやゴブリンキングと進化する事が可能だ。
スライムも、その習性によって変異すると共に、上位種へと存在進化する。ただ、普通の野生のスライムは、存在進化に至るまでに、生存競争に負ける個体がほとんどなので、ビックスライムやヒュージスライムなどの上位種へと進化出来る個体はごく稀だった。
「そうだな、シャドウスライムの能力を鍛えて上位種に進化すれば、ジルの使い魔としては強力な相棒になるね」
「はいっ!頑張ってエレボスを鍛えたいと思います」
ジルが張り切っているのを見て、カジムにも何か考えなきゃいけないな~と、思うホクトだった。
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