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18巻
18-3
6 顕現
タクミが小型装甲車や中型輸送機の製作に手を取られている頃、ロマリア王国のある場所で、変化が訪れていた。
異端の鬼才錬金術師ハミット。
神の御業である生命の創造を目指す彼は、一種の天才ではある。
そしてハミットは、とうとう独学で生命創造の第一歩――アダム・カドモンの製作にまでたどり着いた。
ただ、そこから先、あと一歩で躓いていた。
「古文書の類いも漁ったが空振りばかり。本気で王家の禁書庫に忍び込むか」
大陸各地の遺跡から出土した壁画や調査書の写しも手に入る限り調べたが、人体錬成のヒントとなるものは見つけられなかった。
そんなハミットに転機が訪れる。
培養液のプールに浮かぶアダム・カドモンが、ボコボコと脈動を始め、大きくなり始める。
「!?」
それを察知したハミットは、急いで立てかけてあった愛用の魔術杖を手に取り警戒する。
あきらかに自分主導での反応ではない。では何か? 咄嗟に外からの干渉だと判断し、いつでも攻撃出来るよう魔法を待機状態にする。
やがてアダム・カドモンは、大人の男の姿に変化し始め、数分で反応が収束した。
「おいおい。物騒な魔法はやめてくれ。俺に敵対する意思はない」
アダム・カドモンだったモノは起き上がり、培養液のプールから上半身を出すと、手をヒラヒラさせて言った。
「お前は何者だ?」
「俺は別世界の神だ」
「……神? 神などと大仰な名乗りをするわりに、存在感は希薄だな」
「クックックッ、それは仕方ない。神ではあるが、俺は下位世界のマイナーな神だ。それに、この世界に潜り込むのに、本体のごく一部を分けてるからな。とはいえ、本体でもこの世界の主神と比べれば、ドラゴンとアリくらいの差があるけどな」
神だと言われてハミットが訝しむのも仕方ない。目の前の自称神からは、その程度の存在感しか感じなかった。それこそ今のハミットでも討伐可能だろう。
そして、脆弱な存在感の理由を聞かされても信じるに値しないとハミットは考える。
ただ、アダム・カドモンを依代に顕現した事を考えれば、尋常な存在ではないとも言えた。本人? 本神? が言うように、本物の神である可能性も捨てきれない。
「それにな、もし、これ以上力があったとしたら、直ぐにこの世界の主神に見つかって、今の俺なんて一瞬で消されちまう。まぁ、完全体だとしても一瞬で滅されるのは変わらないが」
「ふん。そのせいで俺でも勝てる程度の存在感なのか。で、俺が苦労して造ったアダム・カドモンを消費してまで顕現した理由は?」
ハミットの疑問は、何故自分のもとに顕現したのかという事だ。
今回、ハミットの造ったアダム・カドモンを依代に顕現したが、顕現するだけなら他の方法もあったはずだ。
「そう怒るな。この依代を使ったお陰で、この世界の主神の目を誤魔化せているんだ。俺が自力で顕現しようものなら、直ぐにバレて消されるかもしれないからな。それとここに来たのは、お前が面白い事をしているのを感じたからだな。人体錬成とは、ぶっ飛んだ研究しているじゃないか。実に面白い」
「……はぁ、ふざけた奴だ」
わざわざ自分のところに顕現した理由が面白そうだという事に、貴重なアダム・カドモンを使われたハミットの苛立ちも呆れに変わる。
「お前も一応神と名乗る存在だ。顕現したついでに、人体錬成のヒントでも置いていけ」
「クックックックッ、神である俺に対して不遜すぎる態度だな」
「勝手に俺のアダム・カドモンを依代に顕現しておいて、敬ってもらおうなどと思うな」
「まあ、いい。俺も敬い奉られるタイプの神じゃないしな。で、人体錬成だったか。残念ながら、人が成せるのはここまでだ」
「んっ? どういう事だ」
その答えに混乱するハミット。
それはそうだ。錬金術が創造するフラスコの中の小さな人擬き――ホムンクルスは古文書の中にしか登場しないが、実際に成功した事例があったとハミットは思っているのだから。
「ホムンクルスはなかったと言うのか?」
「いや、ホムンクルスならお前も直ぐに造れるぞ。お前、この場所に結界を張っているだろう」
「ああ、極力余計な要素を入れたくないからな」
「アダム・カドモンがホムンクルスにならないのは、それが理由だ」
神らしき存在が言うに、アダム・カドモンの錬成時、周囲に偶然浮遊していた魂が定着し、ホムンクルスとなるという。
「結界が邪魔をしていたのか……」
「いや、結界を張ったのは間違いじゃないと思うぞ。偶然漂っている魂任せじゃ、人間じゃなくネズミやイヌ、ネコの魂が入り込む可能性もあるからな」
「なるほど。しかしそれでもホムンクルス止まりなのか」
ホムンクルスの錬成に至らなかったのは、魂が理由だと分かったが、魂の問題をクリアしたとしてもホムンクルス止まりかとハミットが落胆する。
「それは仕方ない。現世を浮遊するのは、魂の残り滓、残滓だ。残滓じゃホムンクルスが限界だと思うぞ。死した魂は、天界に昇るからな。そもそも魂は、その世界の主神が司る。本体の俺だって無理だ。人間がどうこう出来る範疇にない」
「では、人間の創造は不可能なのか……」
「ほんのごく稀に未練を残して彷徨う人の魂があるから、それが入り込めば可能っちゃ可能だな」
「確率は低く、しかも運任せって事か」
「その通り。主神の権能だけの事はあるな」
「はぁ……」
魂は、神の中でも主神でないと扱えないレベルのものだった。
今までの努力が泡と消えた気がして、呆然とするハミット。
「魂の創造や修復、そして輪廻転生は、神の中でも本当に力ある主神クラスじゃないと無理だ。だぁーが、そんなお前に朗報だ」
落ち込むハミットをニヤニヤしながら見て、軽薄そうに話しかける神らしき存在。
「朗報?」
「ああ。俺には今、この世界の天界に封印されていたのを、こそっと掠め盗った魂が四つある」
「……それは、大丈夫なのか?」
このハミットの問いには、二つの意味がある。
この世界の天界から魂を盗んで大丈夫なのかという事と、封印されていた魂を使って大丈夫なのかという事だ。
「俺は魂を扱える格にないからな。どんな魂か詳しくは分からん。直ぐに輪廻の輪に流せない欠陥品の魂なのかもな。とはいえ、魂には違いない。しかも真っ白に修正されていない魂だ。お前にはその方が都合がいいだろう?」
「主神が直ぐに修正出来ないと判断して封印していた魂など、本当に大丈夫なのか? それに、俺にとって都合がいいとはどういう事だ?」
「真っ白な魂だと、赤子から育てる事になるぞ。まあ、お前がそれを望むなら構わないがな」
「……赤子の世話は無理だな」
「だろう」
本来、輪廻の輪に戻される魂は前世の記憶や経験を削除し、綺麗にしてから流される。だが盗み出した魂は、死した後、天界で封印されていたものだと言う。
主神である女神ノルンが直ぐに輪廻の輪に戻せず、封印するしかなかった魂と聞くと不安になるが、赤子から育てるのはごめんだった。
盗まれた魂は、ノルンにより人以外の要素を排除し、人としての部分がこれ以上壊れないよう封印されていたものだ。これから長い時間をかけて修復される予定だった。
ただそこでハミットが待ったをかける。
「まず、服を着ろ。いつまで俺は、野郎の裸を見せられているんだ」
「いや、今それ重要?」
ハミットからバサッと投げ渡された服をそう言いながらも受け取り、神らしき存在はゴソゴソとそれを着る。
「さて、話を仕切り直して、まず俺が持っているのは四つの魂。どれもこれも人以外の要素の影響で歪んだり、壊れたりしたものだ」
「……そんな魂で大丈夫なのか?」
「そこは流石に創世の主神。なんとか人の魂として成立する程度に修復されてある。まぁ、流石にこのまま輪廻には流せないだろうがな。それに俺も腐っても神の一柱だ。魂を創り出したり輪廻転生を管理したりは無理だが、ほんの少しならいじれる。ギリ、人として成立すると思うぞ」
「いや、そこは言い切れよ。しかもギリなのかよ」
聞けば聞くほど、不安になるハミット。人以外の要素が混ざっているとか、壊れているとはどういう事なのだろうか。安心出来ない。
しかも「思う」などと言うものだから、不安は増すばかりだ。
「それは仕方ないさ。俺の権能にない事だからな。とはいえ、手がつけられないほどやばい奴ってのはなさそうだぜ」
「信用ならんな」
「そこは妥協しろ。お前は、人体錬成が成功すればいいんだからよ」
「……それもそうか」
どうにも不安はなくならないが、ハミットも己の目的である人体錬成が成功するならと、様々なものに目を瞑る事にする。
「そうだ。お前の名は? いつまでもお前呼びは神に対してまずいだろう」
「そうだな。真名を教えるわけにはいかないから、プランクとでも呼んでくれ」
「偽りの名で大丈夫なのか? 神とは信仰が力になるのだろう?」
「だからだよ。これ以上俺の力が増すと、この世界の主神に滅される確率が高くなる」
「なるほど。プランク……ふざけた名前だが、お前に合っているか」
「おう。しばらくの間、よろしくな」
プランクと名乗る異世界の神。
異端の錬金術師のもとに、異世界から紛れ込んだ神が訪れ、ミルドガルドに暗雲が立ち込め始める。
7 四つの魂
お互いの名乗りを終え、話は今後の事に移る。
「さて、プランク。お前がアダム・カドモンを依代にしたせいで、俺はまた一から四体分のアダム・カドモンを錬成しなければならないんだが」
「一度錬成に成功したなら、四体追加するのも簡単だろう? それに、残りの魂を使った四体は錬成してお終いじゃないからな」
「どういう事だ?」
「俺は依代を使って顕現してから、自力でこの世界の大人のサイズになったが、残りの魂の分はそうはいかない。今時点の魂の記憶にある状態まで大きくなるには、それなりの時間がかかる。しかも、どうやら四つの魂は、普通じゃないみたいでな」
「それは普通ではないだろう。女神が直ぐに輪廻の輪に戻せないほどの異常があるのだから」
「いや、まぁ、そのせいでな、錬成後成長する時間に差があるみたいだ」
プランク曰く、ミルドガルドの天界から盗み出した魂は死亡した時と近い年齢まで成長するため、アダム・カドモンと魂を錬成してから、完成までにそれなりに時間がかかるらしい。
そして四つの魂はそれぞれ状態が異なるため、錬成して培養液のプールから出られるようになるまでの時間に、魂ごとに差があるだろうとの事だ。
「……ふん。で、どれがどんな魂か、お前には分かるのか?」
「力はなくとも、魂のおおまかな鑑定は出来るし、多少いじれると言ったろう。いじる方はあとでどんな影響が出るか分からんがな」
ヘラヘラと無責任に言うプランク。
「なら、その四つの魂を鑑定しろ。錬成するかは俺が決める」
「俺はこれでも神なんだけどな。敬うって気持ちが一ミリもないな。いっそ清々しい」
「創世の女神ノルンならいざ知らず、異界の神擬きを敬う趣味はない。それより早く鑑定しろ」
「はぁ、はいはい。神使いの激しい奴だ」
軽薄そうな笑みを浮かべ、プランクが作業台の上に直径二センチほどのガラス玉のような物を置いた。
「……魂とはこんな形なのか?」
「んなわけあるか。これはこの世界の主神が、しばらく封印しながら癒すために、こんな形へと変えたんだろう。魂なんて、神でもなければ目に見えないぞ」
「ふーん。そんなものか」
ハミットが興味津々に、四つのガラス玉擬きを観察する。この何事にも強い興味を持つのは、錬金術師のさがかもしれない。
「まずは、これかな」
四つのガラス玉のような物のうちの一つを手に取るプランク。
「……名前は、エリザベス。若い女だな。へぇ、僅かに穢れた精霊の残滓を感じる。ははぁ、歪んだ精霊の依代になってた感じか」
「名前がエリザベスで、若い女、邪精霊とくれば、旧シドニア神皇国の皇女だったエリザベスか。邪精霊の依代だった魂なんか使っていいのか?」
ロマリア王国の辺境に暮らすハミットも、シドニア神皇国崩壊の経緯は耳にしている。そのシドニアの皇女の名も知っていた。
ただ、プランクの言う穢れた精霊の残滓というワードが気になる。邪精霊の依代となっていた影響がゼロとは思えない。
「それは問題ない。他も含めて人以外の要素は取り除かれてある。流石一つの世界を統べる主神だな。影響が皆無かと問われると分からんが、あったとしても人格に多少影響がある程度だろう」
「おい。不安になる事を言うな」
「仕方ないだろう。この世界の主神が時間をかけて修復しないとダメだった魂なんだ。俺如きに、どんな影響があるか詳細までは分からないさ」
「はぁ、まぁ仕方ないか。俺は人体錬成が出来ればいいしな」
プランク曰く、人ならざるモノが錬成される心配はないらしい。
それならと、ハミットは多少の事は妥協する。
「このエリザベスの錬成が、一番早く定着するだろう。精霊の影響がなければ、まったくの一般人と変わらないみたいだからな」
「ふむ。なら一体目はソレにするか」
ハミットはプランクの勧めに従い、最初にエリザベスの魂を錬成しようと決めた。
しかし、早速アダム・カドモンの錬成準備を始めようとすると、プランクから待ったがかかる。
「ハミット。エリザベスを最初に錬成するのは俺も賛成だけど、女物の服や下着を用意してからにしろよ」
「……ああ、それもあったな」
待ったがかかった理由を聞き苦い顔をするハミット。自分が用意しないとダメなのかと、溜息を吐く。
裸のプランクに自分の服を投げ渡したのはつい先ほどの事だ。
錬成されるのが若い女となれば、あらかじめ服や下着を用意しないといけない事くらい、いくら研究バカのハミットにも分かる。
「まあ、それは用意するとして、残りの三つの魂は?」
「二つはどうやらエリザベスの関係者みたいだな。俺はこの世界に来てから日が短いから分からんが、お前なら知ってるかもな」
プランクはこの場でアダム・カドモンを依代に顕現するまで、この大陸を彷徨い情報収集していた。
上位世界と下位世界という大きな差。スキルやジョブというステータスシステム。魔法の種類など、違いは色々とある。それを知る必要があったからだ。
「一つは、アキラ・ジングウジ。もう一つが、ヤマト・タイガ。若い男だな」
「……アキラ・ジングウジに、ヤマト・タイガか。皇女エリザベスの関係者となると……」
アキラとヤマトの名を聞き、ハミットは記憶を呼び起こす。
「この二つ。最初のエリザベスとも魂が少し違う。おそらく違う世界から来た者じゃないか」
「そうか。珍しい名前だから覚えていた。そいつらは、滅びたシドニア神皇国が勇者召喚で呼び出した奴らだ」
「恐ろしい事をするな。よその世界から人を召喚するなんて、下手したら世界が崩壊してたぞ。ああ、だからやたらと世界間の結界が強固だったのか。侵入するのに苦労したんだ。きっとこの世界の主神が怒って、世界間の結界を強化したんだろうな」
当時、勇者召喚にさほど興味のなかったハミットだが、その後シドニア神皇国が崩壊し、黒い魔物の氾濫に繋がったので、ある程度詳しく知っていた。
いや、この大陸で邪精霊を女神と崇め奉る神光教と、シドニア神皇国の愚行を知らぬ者の方が少ないかもしれない。
そもそも、アキラ・ジングウジやヤマト・タイガなんていう名前は、この大陸の何処の国にもない。エリザベスの名と耳馴染みのない珍しい名前の組み合わせなので、ハミットの推測は間違いないだろう。
ただ、勇者召喚が危険な事や、既に女神ノルンにより対策がなされている事は、ハミットにとってどうでもいい話だった。
重要なのは、人体錬成が成功するかどうかだ。
「異世界の人間……勇者か。それも、直ぐに輪廻に戻せないほどまともじゃない魂なんだろう?」
「……何度も言うが、人以外の要素は排除されてある。輪廻の輪に流すには、ここから記憶や経験をリセットし、また赤子として生まれ直せるようにするんだが、それをすると決定的に壊れるんだろうな。だから封印し、時間をかけてゆっくりと魂を修復するはずだったんだろう」
「その辺の神々の事情は興味ない。その魂が、人体錬成に使えるか否かだ」
「ドライな奴だな。まあ、人体錬成には問題ないだろう。元勇者とはいえ、魂自体はこの世界の人間とそう変わりないみたいだしな。でなければ、たとえ慈悲深い主神でもわざわざ封印して修復しようと思わないだろう。まあ、悪いものと一緒に色々と削ぎ落とされて、錬成されたとしても、勇者じゃなく普通の人間だろうがな」
「それは問題ない。むしろ、勇者やなんやと、余計なものはない方がいい」
「はぁ、その辺は徹底してるな。まあ、お前がいいなら問題ない」
そしてプランクが最後の一つを、微妙な表情をしながら手の中で転がす。
タクミが小型装甲車や中型輸送機の製作に手を取られている頃、ロマリア王国のある場所で、変化が訪れていた。
異端の鬼才錬金術師ハミット。
神の御業である生命の創造を目指す彼は、一種の天才ではある。
そしてハミットは、とうとう独学で生命創造の第一歩――アダム・カドモンの製作にまでたどり着いた。
ただ、そこから先、あと一歩で躓いていた。
「古文書の類いも漁ったが空振りばかり。本気で王家の禁書庫に忍び込むか」
大陸各地の遺跡から出土した壁画や調査書の写しも手に入る限り調べたが、人体錬成のヒントとなるものは見つけられなかった。
そんなハミットに転機が訪れる。
培養液のプールに浮かぶアダム・カドモンが、ボコボコと脈動を始め、大きくなり始める。
「!?」
それを察知したハミットは、急いで立てかけてあった愛用の魔術杖を手に取り警戒する。
あきらかに自分主導での反応ではない。では何か? 咄嗟に外からの干渉だと判断し、いつでも攻撃出来るよう魔法を待機状態にする。
やがてアダム・カドモンは、大人の男の姿に変化し始め、数分で反応が収束した。
「おいおい。物騒な魔法はやめてくれ。俺に敵対する意思はない」
アダム・カドモンだったモノは起き上がり、培養液のプールから上半身を出すと、手をヒラヒラさせて言った。
「お前は何者だ?」
「俺は別世界の神だ」
「……神? 神などと大仰な名乗りをするわりに、存在感は希薄だな」
「クックックッ、それは仕方ない。神ではあるが、俺は下位世界のマイナーな神だ。それに、この世界に潜り込むのに、本体のごく一部を分けてるからな。とはいえ、本体でもこの世界の主神と比べれば、ドラゴンとアリくらいの差があるけどな」
神だと言われてハミットが訝しむのも仕方ない。目の前の自称神からは、その程度の存在感しか感じなかった。それこそ今のハミットでも討伐可能だろう。
そして、脆弱な存在感の理由を聞かされても信じるに値しないとハミットは考える。
ただ、アダム・カドモンを依代に顕現した事を考えれば、尋常な存在ではないとも言えた。本人? 本神? が言うように、本物の神である可能性も捨てきれない。
「それにな、もし、これ以上力があったとしたら、直ぐにこの世界の主神に見つかって、今の俺なんて一瞬で消されちまう。まぁ、完全体だとしても一瞬で滅されるのは変わらないが」
「ふん。そのせいで俺でも勝てる程度の存在感なのか。で、俺が苦労して造ったアダム・カドモンを消費してまで顕現した理由は?」
ハミットの疑問は、何故自分のもとに顕現したのかという事だ。
今回、ハミットの造ったアダム・カドモンを依代に顕現したが、顕現するだけなら他の方法もあったはずだ。
「そう怒るな。この依代を使ったお陰で、この世界の主神の目を誤魔化せているんだ。俺が自力で顕現しようものなら、直ぐにバレて消されるかもしれないからな。それとここに来たのは、お前が面白い事をしているのを感じたからだな。人体錬成とは、ぶっ飛んだ研究しているじゃないか。実に面白い」
「……はぁ、ふざけた奴だ」
わざわざ自分のところに顕現した理由が面白そうだという事に、貴重なアダム・カドモンを使われたハミットの苛立ちも呆れに変わる。
「お前も一応神と名乗る存在だ。顕現したついでに、人体錬成のヒントでも置いていけ」
「クックックックッ、神である俺に対して不遜すぎる態度だな」
「勝手に俺のアダム・カドモンを依代に顕現しておいて、敬ってもらおうなどと思うな」
「まあ、いい。俺も敬い奉られるタイプの神じゃないしな。で、人体錬成だったか。残念ながら、人が成せるのはここまでだ」
「んっ? どういう事だ」
その答えに混乱するハミット。
それはそうだ。錬金術が創造するフラスコの中の小さな人擬き――ホムンクルスは古文書の中にしか登場しないが、実際に成功した事例があったとハミットは思っているのだから。
「ホムンクルスはなかったと言うのか?」
「いや、ホムンクルスならお前も直ぐに造れるぞ。お前、この場所に結界を張っているだろう」
「ああ、極力余計な要素を入れたくないからな」
「アダム・カドモンがホムンクルスにならないのは、それが理由だ」
神らしき存在が言うに、アダム・カドモンの錬成時、周囲に偶然浮遊していた魂が定着し、ホムンクルスとなるという。
「結界が邪魔をしていたのか……」
「いや、結界を張ったのは間違いじゃないと思うぞ。偶然漂っている魂任せじゃ、人間じゃなくネズミやイヌ、ネコの魂が入り込む可能性もあるからな」
「なるほど。しかしそれでもホムンクルス止まりなのか」
ホムンクルスの錬成に至らなかったのは、魂が理由だと分かったが、魂の問題をクリアしたとしてもホムンクルス止まりかとハミットが落胆する。
「それは仕方ない。現世を浮遊するのは、魂の残り滓、残滓だ。残滓じゃホムンクルスが限界だと思うぞ。死した魂は、天界に昇るからな。そもそも魂は、その世界の主神が司る。本体の俺だって無理だ。人間がどうこう出来る範疇にない」
「では、人間の創造は不可能なのか……」
「ほんのごく稀に未練を残して彷徨う人の魂があるから、それが入り込めば可能っちゃ可能だな」
「確率は低く、しかも運任せって事か」
「その通り。主神の権能だけの事はあるな」
「はぁ……」
魂は、神の中でも主神でないと扱えないレベルのものだった。
今までの努力が泡と消えた気がして、呆然とするハミット。
「魂の創造や修復、そして輪廻転生は、神の中でも本当に力ある主神クラスじゃないと無理だ。だぁーが、そんなお前に朗報だ」
落ち込むハミットをニヤニヤしながら見て、軽薄そうに話しかける神らしき存在。
「朗報?」
「ああ。俺には今、この世界の天界に封印されていたのを、こそっと掠め盗った魂が四つある」
「……それは、大丈夫なのか?」
このハミットの問いには、二つの意味がある。
この世界の天界から魂を盗んで大丈夫なのかという事と、封印されていた魂を使って大丈夫なのかという事だ。
「俺は魂を扱える格にないからな。どんな魂か詳しくは分からん。直ぐに輪廻の輪に流せない欠陥品の魂なのかもな。とはいえ、魂には違いない。しかも真っ白に修正されていない魂だ。お前にはその方が都合がいいだろう?」
「主神が直ぐに修正出来ないと判断して封印していた魂など、本当に大丈夫なのか? それに、俺にとって都合がいいとはどういう事だ?」
「真っ白な魂だと、赤子から育てる事になるぞ。まあ、お前がそれを望むなら構わないがな」
「……赤子の世話は無理だな」
「だろう」
本来、輪廻の輪に戻される魂は前世の記憶や経験を削除し、綺麗にしてから流される。だが盗み出した魂は、死した後、天界で封印されていたものだと言う。
主神である女神ノルンが直ぐに輪廻の輪に戻せず、封印するしかなかった魂と聞くと不安になるが、赤子から育てるのはごめんだった。
盗まれた魂は、ノルンにより人以外の要素を排除し、人としての部分がこれ以上壊れないよう封印されていたものだ。これから長い時間をかけて修復される予定だった。
ただそこでハミットが待ったをかける。
「まず、服を着ろ。いつまで俺は、野郎の裸を見せられているんだ」
「いや、今それ重要?」
ハミットからバサッと投げ渡された服をそう言いながらも受け取り、神らしき存在はゴソゴソとそれを着る。
「さて、話を仕切り直して、まず俺が持っているのは四つの魂。どれもこれも人以外の要素の影響で歪んだり、壊れたりしたものだ」
「……そんな魂で大丈夫なのか?」
「そこは流石に創世の主神。なんとか人の魂として成立する程度に修復されてある。まぁ、流石にこのまま輪廻には流せないだろうがな。それに俺も腐っても神の一柱だ。魂を創り出したり輪廻転生を管理したりは無理だが、ほんの少しならいじれる。ギリ、人として成立すると思うぞ」
「いや、そこは言い切れよ。しかもギリなのかよ」
聞けば聞くほど、不安になるハミット。人以外の要素が混ざっているとか、壊れているとはどういう事なのだろうか。安心出来ない。
しかも「思う」などと言うものだから、不安は増すばかりだ。
「それは仕方ないさ。俺の権能にない事だからな。とはいえ、手がつけられないほどやばい奴ってのはなさそうだぜ」
「信用ならんな」
「そこは妥協しろ。お前は、人体錬成が成功すればいいんだからよ」
「……それもそうか」
どうにも不安はなくならないが、ハミットも己の目的である人体錬成が成功するならと、様々なものに目を瞑る事にする。
「そうだ。お前の名は? いつまでもお前呼びは神に対してまずいだろう」
「そうだな。真名を教えるわけにはいかないから、プランクとでも呼んでくれ」
「偽りの名で大丈夫なのか? 神とは信仰が力になるのだろう?」
「だからだよ。これ以上俺の力が増すと、この世界の主神に滅される確率が高くなる」
「なるほど。プランク……ふざけた名前だが、お前に合っているか」
「おう。しばらくの間、よろしくな」
プランクと名乗る異世界の神。
異端の錬金術師のもとに、異世界から紛れ込んだ神が訪れ、ミルドガルドに暗雲が立ち込め始める。
7 四つの魂
お互いの名乗りを終え、話は今後の事に移る。
「さて、プランク。お前がアダム・カドモンを依代にしたせいで、俺はまた一から四体分のアダム・カドモンを錬成しなければならないんだが」
「一度錬成に成功したなら、四体追加するのも簡単だろう? それに、残りの魂を使った四体は錬成してお終いじゃないからな」
「どういう事だ?」
「俺は依代を使って顕現してから、自力でこの世界の大人のサイズになったが、残りの魂の分はそうはいかない。今時点の魂の記憶にある状態まで大きくなるには、それなりの時間がかかる。しかも、どうやら四つの魂は、普通じゃないみたいでな」
「それは普通ではないだろう。女神が直ぐに輪廻の輪に戻せないほどの異常があるのだから」
「いや、まぁ、そのせいでな、錬成後成長する時間に差があるみたいだ」
プランク曰く、ミルドガルドの天界から盗み出した魂は死亡した時と近い年齢まで成長するため、アダム・カドモンと魂を錬成してから、完成までにそれなりに時間がかかるらしい。
そして四つの魂はそれぞれ状態が異なるため、錬成して培養液のプールから出られるようになるまでの時間に、魂ごとに差があるだろうとの事だ。
「……ふん。で、どれがどんな魂か、お前には分かるのか?」
「力はなくとも、魂のおおまかな鑑定は出来るし、多少いじれると言ったろう。いじる方はあとでどんな影響が出るか分からんがな」
ヘラヘラと無責任に言うプランク。
「なら、その四つの魂を鑑定しろ。錬成するかは俺が決める」
「俺はこれでも神なんだけどな。敬うって気持ちが一ミリもないな。いっそ清々しい」
「創世の女神ノルンならいざ知らず、異界の神擬きを敬う趣味はない。それより早く鑑定しろ」
「はぁ、はいはい。神使いの激しい奴だ」
軽薄そうな笑みを浮かべ、プランクが作業台の上に直径二センチほどのガラス玉のような物を置いた。
「……魂とはこんな形なのか?」
「んなわけあるか。これはこの世界の主神が、しばらく封印しながら癒すために、こんな形へと変えたんだろう。魂なんて、神でもなければ目に見えないぞ」
「ふーん。そんなものか」
ハミットが興味津々に、四つのガラス玉擬きを観察する。この何事にも強い興味を持つのは、錬金術師のさがかもしれない。
「まずは、これかな」
四つのガラス玉のような物のうちの一つを手に取るプランク。
「……名前は、エリザベス。若い女だな。へぇ、僅かに穢れた精霊の残滓を感じる。ははぁ、歪んだ精霊の依代になってた感じか」
「名前がエリザベスで、若い女、邪精霊とくれば、旧シドニア神皇国の皇女だったエリザベスか。邪精霊の依代だった魂なんか使っていいのか?」
ロマリア王国の辺境に暮らすハミットも、シドニア神皇国崩壊の経緯は耳にしている。そのシドニアの皇女の名も知っていた。
ただ、プランクの言う穢れた精霊の残滓というワードが気になる。邪精霊の依代となっていた影響がゼロとは思えない。
「それは問題ない。他も含めて人以外の要素は取り除かれてある。流石一つの世界を統べる主神だな。影響が皆無かと問われると分からんが、あったとしても人格に多少影響がある程度だろう」
「おい。不安になる事を言うな」
「仕方ないだろう。この世界の主神が時間をかけて修復しないとダメだった魂なんだ。俺如きに、どんな影響があるか詳細までは分からないさ」
「はぁ、まぁ仕方ないか。俺は人体錬成が出来ればいいしな」
プランク曰く、人ならざるモノが錬成される心配はないらしい。
それならと、ハミットは多少の事は妥協する。
「このエリザベスの錬成が、一番早く定着するだろう。精霊の影響がなければ、まったくの一般人と変わらないみたいだからな」
「ふむ。なら一体目はソレにするか」
ハミットはプランクの勧めに従い、最初にエリザベスの魂を錬成しようと決めた。
しかし、早速アダム・カドモンの錬成準備を始めようとすると、プランクから待ったがかかる。
「ハミット。エリザベスを最初に錬成するのは俺も賛成だけど、女物の服や下着を用意してからにしろよ」
「……ああ、それもあったな」
待ったがかかった理由を聞き苦い顔をするハミット。自分が用意しないとダメなのかと、溜息を吐く。
裸のプランクに自分の服を投げ渡したのはつい先ほどの事だ。
錬成されるのが若い女となれば、あらかじめ服や下着を用意しないといけない事くらい、いくら研究バカのハミットにも分かる。
「まあ、それは用意するとして、残りの三つの魂は?」
「二つはどうやらエリザベスの関係者みたいだな。俺はこの世界に来てから日が短いから分からんが、お前なら知ってるかもな」
プランクはこの場でアダム・カドモンを依代に顕現するまで、この大陸を彷徨い情報収集していた。
上位世界と下位世界という大きな差。スキルやジョブというステータスシステム。魔法の種類など、違いは色々とある。それを知る必要があったからだ。
「一つは、アキラ・ジングウジ。もう一つが、ヤマト・タイガ。若い男だな」
「……アキラ・ジングウジに、ヤマト・タイガか。皇女エリザベスの関係者となると……」
アキラとヤマトの名を聞き、ハミットは記憶を呼び起こす。
「この二つ。最初のエリザベスとも魂が少し違う。おそらく違う世界から来た者じゃないか」
「そうか。珍しい名前だから覚えていた。そいつらは、滅びたシドニア神皇国が勇者召喚で呼び出した奴らだ」
「恐ろしい事をするな。よその世界から人を召喚するなんて、下手したら世界が崩壊してたぞ。ああ、だからやたらと世界間の結界が強固だったのか。侵入するのに苦労したんだ。きっとこの世界の主神が怒って、世界間の結界を強化したんだろうな」
当時、勇者召喚にさほど興味のなかったハミットだが、その後シドニア神皇国が崩壊し、黒い魔物の氾濫に繋がったので、ある程度詳しく知っていた。
いや、この大陸で邪精霊を女神と崇め奉る神光教と、シドニア神皇国の愚行を知らぬ者の方が少ないかもしれない。
そもそも、アキラ・ジングウジやヤマト・タイガなんていう名前は、この大陸の何処の国にもない。エリザベスの名と耳馴染みのない珍しい名前の組み合わせなので、ハミットの推測は間違いないだろう。
ただ、勇者召喚が危険な事や、既に女神ノルンにより対策がなされている事は、ハミットにとってどうでもいい話だった。
重要なのは、人体錬成が成功するかどうかだ。
「異世界の人間……勇者か。それも、直ぐに輪廻に戻せないほどまともじゃない魂なんだろう?」
「……何度も言うが、人以外の要素は排除されてある。輪廻の輪に流すには、ここから記憶や経験をリセットし、また赤子として生まれ直せるようにするんだが、それをすると決定的に壊れるんだろうな。だから封印し、時間をかけてゆっくりと魂を修復するはずだったんだろう」
「その辺の神々の事情は興味ない。その魂が、人体錬成に使えるか否かだ」
「ドライな奴だな。まあ、人体錬成には問題ないだろう。元勇者とはいえ、魂自体はこの世界の人間とそう変わりないみたいだしな。でなければ、たとえ慈悲深い主神でもわざわざ封印して修復しようと思わないだろう。まあ、悪いものと一緒に色々と削ぎ落とされて、錬成されたとしても、勇者じゃなく普通の人間だろうがな」
「それは問題ない。むしろ、勇者やなんやと、余計なものはない方がいい」
「はぁ、その辺は徹底してるな。まあ、お前がいいなら問題ない」
そしてプランクが最後の一つを、微妙な表情をしながら手の中で転がす。
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