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後日談百七十五話 リベンジなるか
しおりを挟む 四隻のクルーザーと釣り道具は完成させた。あとは、いざトローリングで大物釣りだ。とはいかなかった。
何故なら、クルーザーを操舵する者。子供達のサポートをする者。それぞれの船に必要だったからだ。で、希望者を募ってみたら、それはそれで時間が掛かった。何故なら、手を挙げた人が多過ぎたんだ。
下の子供達が小さいのでまだ船は早いと、ソフィア達母親は不参加。その代わり、非番の聖域騎士団の団員が話を聞きつけ、船に乗りたいと希望者が続出したんだ。
そんな中でも一番に名乗りを上げ、もう決定だと自分で勝手に言っているのが、元冒険者パーティー「獅子の牙」の斥候で、現聖域騎士団のライルさん。
「獅子の牙」の中で、唯一いまだに独身のライルさん。落ち着いた大人って感じのヒースさんやボガさんと違って、相変わらず軽ーい感じだ。
まぁ、本人の軽い感じは別にして、僕とは付き合いも長いし、ライルさんの事はそれなりに信頼しているので一人目は決まった。
次に手を上げたのは、聖域騎士団の最初期からのメンバーで、何故かサムライ言葉のおかしな青年三人組み。ダン君、マッド君、ビル君。
そしてソフィアが不参加と聞くと「私が参加しないとダメみたいだな」と、言ってきたのが、ソフィアがユグル王国の騎士時代の元同僚で、今は聖域騎士団の団員となっているフランさん。同時期に救助されたアネモネさんとリリーさんを巻き込んで参加するらしい。もう決定なんだとか。
フランさんは、ソフィアと同期だったせいか、なんだかソフィアの事を一方的にライバル視しているみたい。
海なので、水精騎士団から何人か参加してくれれば嬉しいけど、仕事じゃなくて遊びだしな。流石に僕のプライベートに付き合わせるのは違う。
その辺、ライルさんやヒースさん、ダン君達も同じだけど、ライルさん達は付き合いの長さもあるし、ダン君達も釣りの話を噂で聞いた瞬間「某達も参加させて欲しいでござる」なんて、相変わらず変な言い回しで言ってきた。
結局、トローリングの当日、僕達家族に加え、ライルさん、ヒースさんとそのお子さん。ダン君達三人。フランさん達エルフ組み三人。フランさんも釣りは初めてらしく、無駄に張り切っているけれど、釣りをするのは子供達だよ。分かっているのかな。まあ、ブレーキ役のアネモネさんとリリーさんが居るから大丈夫か。
まだ陽も空けきらない早朝にもかかわらず、フローラを始めとして、エトワールや春香もテンションが高い。今日一日保つのか心配になる。
「こーんな、大っきいの釣るんだ!」
「魔法は使ってもいいのかな」
「身体強化ならいいんじゃないかな」
僕の前を歩く子供達。フローラが手を拡げて大物を釣るとはしゃいでいる。エトワールは、冷静にどう釣り上げるか考え、春香も身体強化の魔法を使えばと言っている。テンションは高くともフローラと違って、あの二人は落ち着いているね。
幸い今日は、晴れて風も弱くトローリングには丁度いい日和だ。
メイド達が用意した飲み物やお弁当も、それぞれの船に積んである。
僕は意気揚々と桟橋から船に乗ろうとする子供達に、慌ててストップをかける。
「ちょっと待って! ライフジャケットを着なきゃダメだよ!」
「あっ! そうだった!」
「ほら、これフローラの分!」
「ちゃんと着れたよ!」
「一人ずつチェックするから待ってね!」
人魚族の水精騎士団が居るし、僕達も居るから大丈夫だと思うけど、海に出るならライフジャケットは必須だろう。わざわざこの日の為に作ったんだから。
子供達一人一人にライフジャケットを着せて、弛みがないかちゃんと確認する。安全の為のチェックはしつこい程してもいい。
子供達が、それぞれ自分の船に向かう。そこで僕の船以外の船に、ライルさん達が何かを運び込んでいるのに気が付いた。
「あれ? 何を運び込んだの?」
「ああ、生き餌だよ。タクミ、お前は頼んでなかったのか?」
「生き餌?」
「カジキマグロが槍みたいな上顎で攻撃して来るからな。実際の生きた魚を餌にした方が、多分食い付きがいいだろう」
「そ、そうなんだ」
ライルさんが、知らないのか? と教えてくれた。運び込んでいたのは、生きたサバだと言う。事前に水精騎士団に頼んでいたらしい。いや、僕の分も頼んでおいてよ。
「僕のは……無いのね」
「タクミは、餌の魚を釣るところからスタートだな」
「クッ」
「俺達が一歩リードだな。じゃあ、頑張れよ」
手をヒラヒラさせて、ライルさんはいつもの如く軽い感じで自分の乗る船に行ってしまった。
「いや、確かイカっぽいルアーを使ってた気がする。そんなのをテレビで見た」
確かにルアーよりも生き餌の方が釣れそうな気がするけど、せっかくルアーを作ったんだ。初志貫徹だ。
「……一応、少しサバを釣ってみようかな」
そもそも地球のカジキマグロと同じとは限らないしな。聖域近海に棲息するのは、前世ではブルーマーリンと呼ばれる青く光るカジキマグロに似ている。この世界の海と地球の海では、違う事が多いしな。カジキマグロも姿が似てたとしても、習性が似ているかどうかは分からない。
まあ、そんな事考えていても仕方ないな。
「タクミ殿。もう皆んな出発したでござるよ」
「あっ、出遅れちゃった。あれ? そ、それで、僕の船はダン君だけなの?」
「そうでござるよ。タクミ殿ならサポートは必要ないでござる」
「そ、そうなんだ」
餌かルアーで悩む僕に声を掛けたのはダン君だ。そう、何故かダン君一人しか見当たらないので聞くと、僕なら操舵手が居ればあとは問題ないと考えられているらしい。
子供達の船には、水精騎士団を入れれば四人ずつ乗っているのに、僕の船には操舵するダン君だけって……。まぁ、確かに、僕にはサポートは必要ないと思うけど、それなりの大きさのクルーザーに二人っきりって、少し寂し過ぎるんじゃないかな。
「それより出発するでござるよ」
「あ、ああ、そうだね」
「ちゃんとセーフジャケットを着てくださいでござる」
「いや、着るけど。ござるが無理矢理だよ」
「某のアイデンティティでござる」
「いいんだけどね」
ダン君に促されてライフジャケットを着ると船に乗り込む。
「では出航でござる!」
「あ、ああ、行こうか」
ダン君がゆっくりとクルーザーを発進させる。
レシプロエンジンと違い、騒音や振動も無くスクリュープロペラを回転させ、滑らかに海上を走り始めるクルーザー。
「一応、餌が釣れそうなポイントに行くでござるよ」
「うん。お願い」
ダン君は、水精騎士団から何処で何が釣れるか聞いているらしい。
やがてダン君がクルーザーを止める。
「この辺りが餌になりそうな魚が釣れるポイントでござる」
「ありがとう。早速釣ってみるよ。ダン君も協力してくれたら嬉しいな」
「お任せでござるよ!」
ポイントに着いた僕とダン君は、早速糸を垂らす。このところ聖域の海は魚影が濃いので、カジキマグロの餌となる魚は直ぐに釣れるだろう。
予想通り、アタリはすぐにきた。
「ヒット!」
素早く合わせてリールを巻く。
「某もヒットでござる!」
ダン君の竿にもアタリがきたようだ。
「やった! サバかな?」
サバっぽい魚が釣り上げた。なかなか良い型だ。続いてダン君も釣り上げた。
「よぉ~し! どんどん釣るぞ!」
「お任せでござる!」
それから僕とダン君は、バンバンと大ぶりのサバを釣り上げた。
「よし! このくらいで大丈夫だろう。早く僕もカジキマグロを狙わないと」
「餌釣りでござるか?」
「せっかく作ったんだから、最初はルアーを使おうかな。餌用の魚は回復したから活きはいいし保つだろうしね」
「では、カジキマグロのポイントに向かうでござる」
僕は、トローリング用の竿にルアーを付けて準備する。ダン君がクルーザーを沖へと向けた。
今日は天気が良く波も穏やかで、クルージング日和だ。風が気持ちいい。
「タクミ殿。この辺りからルアーを流してくださいでござる」
「いや、無理矢理「ござる」って付け加えなくていいんだよ」
ポイントに到着した事をダン君から教えられ、僕はルアーを投入する。
クルーザーがルアーを引きながら波を切りはしる。
「…………」
「…………」
子供達の船は、人数も多くて賑やかなんだろうけど、僕とダン君じゃ会話なんて長く続かない。クルーザーが波を切る音と、風の音。そしてスクリュープロペラが回る音しか聞こえない。
暫くポイントを変えながらクルーザーを走らせるも、アタリはこない。
「う~ん。ルアーを別のに変えるか」
「そうでござるな。釣りは常に工夫でござるよ」
「あ、ああ、そうだね」
糸を巻き上げルアーを変更し、再び海へと投入する。
「……アタリがこないなぁ」
「こないでござるなぁ」
あれから何度かルアーを付け替えたんだけど、一度もアタリがこない。
「仕方ない。ここは気分を変える意味で餌釣りにするか」
「じゃあ、タクミ殿、仕掛けを変えるでござる。ルアーの巻き上げをお願いでござる」
「了解」
ルアー釣りを諦めた僕は、餌釣りに切り替える。生きた餌とルアー。どちらが食い付きがいいか分からないけど、アタリがこない現状を少しでも変えないとね。
ダン君の操縦でクルーザーを走らせる事暫く、漸く僕の竿にアタリがあった。
「ヒット!」
あわせを行い、竿を持ちクルーザー後方のファイティングチェアーに移動する。
「これは大物だぞ!」
「操舵はお任せでござる!」
グングンと出ていくライン。幾らカエデが出してくれた丈夫な糸だとはいえ、針に食い付いた魚の口はそうじゃない。糸が切れたり針が壊れたりする事はないけれど、かかった魚の口が破けて外れる事はある。だから、このラインが出ていくのと、僕がリールで巻くののバランスが難しい。
ダン君の適切な操舵もあり、かかった獲物が弱ってきた。ただ、嫌な予感がする。
「……ジャンプしないね」
「飛ばないでござるな」
そう。ブルーマーリンは豪快なジャンプを見せる事で知られている。それはこの世界のブルーマーリンも同じだった。
ただ、引きの強さは本物だ。針が外れる心配さえなければ、高レベルな僕の身体能力なら簡単に釣り上げられるとはいえ、大物が食い付いているのに間違いない。
「そろそろ見えてくるでござる!」
「よーし! もう少しだ!」
格闘する事暫く、巨大な魚影が近付いて来る。
「あ~、アレでござるかぁ」
「クッ、ダン君! ここ結界の外じゃないの?」
「う~、結界ギリギリを攻めていたでござる。間違って出ていたみたいでござるな。ハッハッハッハッ」
「笑い事じゃないよ!」
僕は海面に姿を現し暴れるヤツに向かって氷の矢を放ち仕留めた。
僕が釣り上げたヤツとは巨大なサメだ。しかも間違いなく魔物。ダン君は、大物を狙って結界ギリギリのポイントを攻めていたらしい。ところが、いつの間にか結界の外だったという訳。
「くぅ。カジキマグロ釣りに、サメを釣ってもノーカンだよな」
「間違いなくノーカウントでござるな」
「はぁ。次だ次。違うポイントを攻めるよ」
「了解でござる」
僕とダン君は、気持ちを切り替え次のポイントへと向かう。サメ? 一応アイテムボックスの中だよ。せっかく釣り上げたんだしね。
「はぁ、お昼にしようか」
「お腹空いたでござる」
「そうだね。朝が早かったもんね」
ダン君と男二人での船の上でのランチ。なんだかなぁ。
「おっ、おにぎりでござるか」
「最悪カジキマグロとのファイト中でも食べれるようにってね」
「ゆっくりお昼ごはんの時間がとれてよかったでござるな」
「そ、そうだね」
メイドから持たされたお昼ごはんは、おにぎりと玉子焼きに、ウインナーとプチトマト、あと唐揚げが少しだ。
カジキマグロ(ブルーマーリン)を釣り上げるのに時間がかかり、手が離せない場合でも食べやすいよう考えてくれたみたいだ。まあ、ダン君に言われるまでもなく、ゆっくりと食べる時間はあるんだけどね。
午前中は、カジキマグロじゃなくサメ。しかも魔物を釣り上げてしまった僕だけど、お昼ご飯を食べてエネルギーチャージだ。気を取り直して午後からに備えよう。
◇
タクミが餌釣りをしている頃、エトワール、春香、フローラを乗せた三隻のクルーザーは、水精騎士団の案内で、それぞれポイントへと向かっていた。
「はぁ~、風が気持ちいいぜ。ビールが飲みたくなるな」
「おい、酒は船を降りてからにしろよ」
「分かってるよ。ヒースはいちいち真面目すぎる」
エトワールの乗る船では、ライルがおもいっきりクルージングを楽しんでいた。そのライルの抑え役という訳ではないのだろうが、ヒースも同じ船に乗っていた。
「おっ、そろそろポイントが近いぞ。エトワールちゃん。準備は大丈夫かい?」
「うん! バッチリOKだよ!」
「父さん、餌の魚を投入するよ」
「よし! 大物を釣り上げて、タクミを驚かせてやれ!」
「「うん!」」
ヒースがポイントに近付いたのを告げ、準備は大丈夫かエトワールに聞く。それにエトワールが笑顔で返事し、ヒースの息子がサポートする。
そんなやり取りが他の船でも行われる。
「よぉーし! 大っきいの釣るぞぉー!」
「頑張るでござるよ」
「一番の大物を狙うでござる」
元気いっぱいのフローラに、マッドとビルのサムライコンビが応援する。
そして春香の船に乗るのは、ソフィアの元同僚であるエルフのフラン、アネモネ、リリーの三人組。
「さあ春香ちゃん! 一番大きなのを釣り上げるわよ!」
「うん! 頑張るよ!」
「フラン先輩、先輩が張り切り過ぎですよぉ」
「そうです。空回りしないでください」
「うっさいわね! どうせなら一番を目指すのよ! 釣り上げるぞ! おー!!」
「おー!」
「はぁ。今日のポイントはこの辺ですかね?」
「はい。その辺りが狙い目だと思いますよ」
やたらとハイテンションなフランを、アネモネとリリーが諌めるも、春香と二人で手を振り上げて声を出し気勢を上げている。
それを呆れた表情でちらっと見て、アネモネは水精騎士団の案内人にポイントの相談をし始める。フランは放置だ。
その後、それぞれのポイントでトローリングを開始したエトワール、フローラ、春香の三人の乗るクルーザー。
何の偶然か、それ程の時間差もなく、ほぼ同時にヒットした。
「ヒット!」
「きたぁー!」
「アッ、アタリがきたよ!」
それぞれのクルーザーの上がにわかに慌ただしくなる。
「慎重になエトワールちゃん」
「頑張ってエトワールちゃん!」
「ひょおー! こりゃ大物だぜ!」
ヒース親子がエトワールを激励し、ライルが大物の予感にはしゃぐ。
「フローラ嬢、強く巻き過ぎるとバレるでござるよ! ビル、船を動かしてフォローするでござる!」
「了解でござる! マッド、ラインの管理は任せるでござる!」
「いよーし! ぜったい釣り上げるぞぉ!」
フローラに、強く巻き過ぎるとバレるとアドバイスを出し、ビルに船の操舵を任せるマッド。ただフローラは、釣り上げる事しか頭になさそうだ。
春香の船でもフランがうるさい。
「春香ちゃん! ほら、引っ張ってぇー! 巻き上げてぇ! 引っ張ってぇ!」
「先輩、うるさいです!」
「春香ちゃん。フランさんの声は無視していいですからね」
「うん!」
横で騒ぐフランを叱りつつ春香を励ますアネモネとリリー。
それぞれの船に乗る人魚族の水精騎士団の働きもあり、カジキマグロとのファイトを楽しむ子供達。
海面から巨大なカジキマグロがジャンプして姿を現す。
「ウッヒョォー! 凄えぇ!!」
三隻のクルーザーに乗る人間の中で、一番はしゃいでいるライルが歓声を上げる。
他のメンバーも同じように感動した表情で歓声を上げている。
今回、エトワールや春香、フローラが狙うカジキマグロは、タクミが前世でテレビやネットで見た事のあるブルーマーリンに近いのかもしれない。
ただ、この世界のブルーマーリンは、体表が常に複雑にブルーやコバルトブルーにキラキラと変化している。それがジャンプして姿を見せ、太陽の光を反射しキラキラと青く輝くのだ。それを見ているみんなが歓声を上げるのも当然の事だろう。
幼児が巨大なカジキマグロとファイトしているのを、周囲の者達が見て歓声を上げている様子に、前世の記憶のあるタクミなら違和感もあるだろう。
そもそも幼児に巨大なカジキマグロを釣り上げるなど、普通ならあり得ない。しかもこの世界のカジキマグロのサイズは、地球のものと比べても大きい。ただ、この世界にはレベルがありステータスとして見る事が出来る。この世界でも一般人なら大人でも巨大なカジキマグロを釣り上げるのは大変な労力だろうが、エトワール、春香、フローラの三人に限って言えば、何も問題はない。
過保護で心配症のタクミと、厳しく鍛えたいソフィアやマリア、マーニ達母親のお陰で、娘達は下手なベテラン冒険者よりも高いステータスを誇る。
しかも周囲のサポートから適時バフがかかり強化され、体力の回復も行われている。力加減さえ間違えずバレなければ、糸の先の獲物が釣り上げられるのも時間の問題だろう。
やがて陽が傾き始めた頃、子供達のクルーザーが港へと戻って行く。
そのクルーザーには、誇らしげにブルーマーリンの絵が描かれた旗が海風にはためいていた。
何故なら、クルーザーを操舵する者。子供達のサポートをする者。それぞれの船に必要だったからだ。で、希望者を募ってみたら、それはそれで時間が掛かった。何故なら、手を挙げた人が多過ぎたんだ。
下の子供達が小さいのでまだ船は早いと、ソフィア達母親は不参加。その代わり、非番の聖域騎士団の団員が話を聞きつけ、船に乗りたいと希望者が続出したんだ。
そんな中でも一番に名乗りを上げ、もう決定だと自分で勝手に言っているのが、元冒険者パーティー「獅子の牙」の斥候で、現聖域騎士団のライルさん。
「獅子の牙」の中で、唯一いまだに独身のライルさん。落ち着いた大人って感じのヒースさんやボガさんと違って、相変わらず軽ーい感じだ。
まぁ、本人の軽い感じは別にして、僕とは付き合いも長いし、ライルさんの事はそれなりに信頼しているので一人目は決まった。
次に手を上げたのは、聖域騎士団の最初期からのメンバーで、何故かサムライ言葉のおかしな青年三人組み。ダン君、マッド君、ビル君。
そしてソフィアが不参加と聞くと「私が参加しないとダメみたいだな」と、言ってきたのが、ソフィアがユグル王国の騎士時代の元同僚で、今は聖域騎士団の団員となっているフランさん。同時期に救助されたアネモネさんとリリーさんを巻き込んで参加するらしい。もう決定なんだとか。
フランさんは、ソフィアと同期だったせいか、なんだかソフィアの事を一方的にライバル視しているみたい。
海なので、水精騎士団から何人か参加してくれれば嬉しいけど、仕事じゃなくて遊びだしな。流石に僕のプライベートに付き合わせるのは違う。
その辺、ライルさんやヒースさん、ダン君達も同じだけど、ライルさん達は付き合いの長さもあるし、ダン君達も釣りの話を噂で聞いた瞬間「某達も参加させて欲しいでござる」なんて、相変わらず変な言い回しで言ってきた。
結局、トローリングの当日、僕達家族に加え、ライルさん、ヒースさんとそのお子さん。ダン君達三人。フランさん達エルフ組み三人。フランさんも釣りは初めてらしく、無駄に張り切っているけれど、釣りをするのは子供達だよ。分かっているのかな。まあ、ブレーキ役のアネモネさんとリリーさんが居るから大丈夫か。
まだ陽も空けきらない早朝にもかかわらず、フローラを始めとして、エトワールや春香もテンションが高い。今日一日保つのか心配になる。
「こーんな、大っきいの釣るんだ!」
「魔法は使ってもいいのかな」
「身体強化ならいいんじゃないかな」
僕の前を歩く子供達。フローラが手を拡げて大物を釣るとはしゃいでいる。エトワールは、冷静にどう釣り上げるか考え、春香も身体強化の魔法を使えばと言っている。テンションは高くともフローラと違って、あの二人は落ち着いているね。
幸い今日は、晴れて風も弱くトローリングには丁度いい日和だ。
メイド達が用意した飲み物やお弁当も、それぞれの船に積んである。
僕は意気揚々と桟橋から船に乗ろうとする子供達に、慌ててストップをかける。
「ちょっと待って! ライフジャケットを着なきゃダメだよ!」
「あっ! そうだった!」
「ほら、これフローラの分!」
「ちゃんと着れたよ!」
「一人ずつチェックするから待ってね!」
人魚族の水精騎士団が居るし、僕達も居るから大丈夫だと思うけど、海に出るならライフジャケットは必須だろう。わざわざこの日の為に作ったんだから。
子供達一人一人にライフジャケットを着せて、弛みがないかちゃんと確認する。安全の為のチェックはしつこい程してもいい。
子供達が、それぞれ自分の船に向かう。そこで僕の船以外の船に、ライルさん達が何かを運び込んでいるのに気が付いた。
「あれ? 何を運び込んだの?」
「ああ、生き餌だよ。タクミ、お前は頼んでなかったのか?」
「生き餌?」
「カジキマグロが槍みたいな上顎で攻撃して来るからな。実際の生きた魚を餌にした方が、多分食い付きがいいだろう」
「そ、そうなんだ」
ライルさんが、知らないのか? と教えてくれた。運び込んでいたのは、生きたサバだと言う。事前に水精騎士団に頼んでいたらしい。いや、僕の分も頼んでおいてよ。
「僕のは……無いのね」
「タクミは、餌の魚を釣るところからスタートだな」
「クッ」
「俺達が一歩リードだな。じゃあ、頑張れよ」
手をヒラヒラさせて、ライルさんはいつもの如く軽い感じで自分の乗る船に行ってしまった。
「いや、確かイカっぽいルアーを使ってた気がする。そんなのをテレビで見た」
確かにルアーよりも生き餌の方が釣れそうな気がするけど、せっかくルアーを作ったんだ。初志貫徹だ。
「……一応、少しサバを釣ってみようかな」
そもそも地球のカジキマグロと同じとは限らないしな。聖域近海に棲息するのは、前世ではブルーマーリンと呼ばれる青く光るカジキマグロに似ている。この世界の海と地球の海では、違う事が多いしな。カジキマグロも姿が似てたとしても、習性が似ているかどうかは分からない。
まあ、そんな事考えていても仕方ないな。
「タクミ殿。もう皆んな出発したでござるよ」
「あっ、出遅れちゃった。あれ? そ、それで、僕の船はダン君だけなの?」
「そうでござるよ。タクミ殿ならサポートは必要ないでござる」
「そ、そうなんだ」
餌かルアーで悩む僕に声を掛けたのはダン君だ。そう、何故かダン君一人しか見当たらないので聞くと、僕なら操舵手が居ればあとは問題ないと考えられているらしい。
子供達の船には、水精騎士団を入れれば四人ずつ乗っているのに、僕の船には操舵するダン君だけって……。まぁ、確かに、僕にはサポートは必要ないと思うけど、それなりの大きさのクルーザーに二人っきりって、少し寂し過ぎるんじゃないかな。
「それより出発するでござるよ」
「あ、ああ、そうだね」
「ちゃんとセーフジャケットを着てくださいでござる」
「いや、着るけど。ござるが無理矢理だよ」
「某のアイデンティティでござる」
「いいんだけどね」
ダン君に促されてライフジャケットを着ると船に乗り込む。
「では出航でござる!」
「あ、ああ、行こうか」
ダン君がゆっくりとクルーザーを発進させる。
レシプロエンジンと違い、騒音や振動も無くスクリュープロペラを回転させ、滑らかに海上を走り始めるクルーザー。
「一応、餌が釣れそうなポイントに行くでござるよ」
「うん。お願い」
ダン君は、水精騎士団から何処で何が釣れるか聞いているらしい。
やがてダン君がクルーザーを止める。
「この辺りが餌になりそうな魚が釣れるポイントでござる」
「ありがとう。早速釣ってみるよ。ダン君も協力してくれたら嬉しいな」
「お任せでござるよ!」
ポイントに着いた僕とダン君は、早速糸を垂らす。このところ聖域の海は魚影が濃いので、カジキマグロの餌となる魚は直ぐに釣れるだろう。
予想通り、アタリはすぐにきた。
「ヒット!」
素早く合わせてリールを巻く。
「某もヒットでござる!」
ダン君の竿にもアタリがきたようだ。
「やった! サバかな?」
サバっぽい魚が釣り上げた。なかなか良い型だ。続いてダン君も釣り上げた。
「よぉ~し! どんどん釣るぞ!」
「お任せでござる!」
それから僕とダン君は、バンバンと大ぶりのサバを釣り上げた。
「よし! このくらいで大丈夫だろう。早く僕もカジキマグロを狙わないと」
「餌釣りでござるか?」
「せっかく作ったんだから、最初はルアーを使おうかな。餌用の魚は回復したから活きはいいし保つだろうしね」
「では、カジキマグロのポイントに向かうでござる」
僕は、トローリング用の竿にルアーを付けて準備する。ダン君がクルーザーを沖へと向けた。
今日は天気が良く波も穏やかで、クルージング日和だ。風が気持ちいい。
「タクミ殿。この辺りからルアーを流してくださいでござる」
「いや、無理矢理「ござる」って付け加えなくていいんだよ」
ポイントに到着した事をダン君から教えられ、僕はルアーを投入する。
クルーザーがルアーを引きながら波を切りはしる。
「…………」
「…………」
子供達の船は、人数も多くて賑やかなんだろうけど、僕とダン君じゃ会話なんて長く続かない。クルーザーが波を切る音と、風の音。そしてスクリュープロペラが回る音しか聞こえない。
暫くポイントを変えながらクルーザーを走らせるも、アタリはこない。
「う~ん。ルアーを別のに変えるか」
「そうでござるな。釣りは常に工夫でござるよ」
「あ、ああ、そうだね」
糸を巻き上げルアーを変更し、再び海へと投入する。
「……アタリがこないなぁ」
「こないでござるなぁ」
あれから何度かルアーを付け替えたんだけど、一度もアタリがこない。
「仕方ない。ここは気分を変える意味で餌釣りにするか」
「じゃあ、タクミ殿、仕掛けを変えるでござる。ルアーの巻き上げをお願いでござる」
「了解」
ルアー釣りを諦めた僕は、餌釣りに切り替える。生きた餌とルアー。どちらが食い付きがいいか分からないけど、アタリがこない現状を少しでも変えないとね。
ダン君の操縦でクルーザーを走らせる事暫く、漸く僕の竿にアタリがあった。
「ヒット!」
あわせを行い、竿を持ちクルーザー後方のファイティングチェアーに移動する。
「これは大物だぞ!」
「操舵はお任せでござる!」
グングンと出ていくライン。幾らカエデが出してくれた丈夫な糸だとはいえ、針に食い付いた魚の口はそうじゃない。糸が切れたり針が壊れたりする事はないけれど、かかった魚の口が破けて外れる事はある。だから、このラインが出ていくのと、僕がリールで巻くののバランスが難しい。
ダン君の適切な操舵もあり、かかった獲物が弱ってきた。ただ、嫌な予感がする。
「……ジャンプしないね」
「飛ばないでござるな」
そう。ブルーマーリンは豪快なジャンプを見せる事で知られている。それはこの世界のブルーマーリンも同じだった。
ただ、引きの強さは本物だ。針が外れる心配さえなければ、高レベルな僕の身体能力なら簡単に釣り上げられるとはいえ、大物が食い付いているのに間違いない。
「そろそろ見えてくるでござる!」
「よーし! もう少しだ!」
格闘する事暫く、巨大な魚影が近付いて来る。
「あ~、アレでござるかぁ」
「クッ、ダン君! ここ結界の外じゃないの?」
「う~、結界ギリギリを攻めていたでござる。間違って出ていたみたいでござるな。ハッハッハッハッ」
「笑い事じゃないよ!」
僕は海面に姿を現し暴れるヤツに向かって氷の矢を放ち仕留めた。
僕が釣り上げたヤツとは巨大なサメだ。しかも間違いなく魔物。ダン君は、大物を狙って結界ギリギリのポイントを攻めていたらしい。ところが、いつの間にか結界の外だったという訳。
「くぅ。カジキマグロ釣りに、サメを釣ってもノーカンだよな」
「間違いなくノーカウントでござるな」
「はぁ。次だ次。違うポイントを攻めるよ」
「了解でござる」
僕とダン君は、気持ちを切り替え次のポイントへと向かう。サメ? 一応アイテムボックスの中だよ。せっかく釣り上げたんだしね。
「はぁ、お昼にしようか」
「お腹空いたでござる」
「そうだね。朝が早かったもんね」
ダン君と男二人での船の上でのランチ。なんだかなぁ。
「おっ、おにぎりでござるか」
「最悪カジキマグロとのファイト中でも食べれるようにってね」
「ゆっくりお昼ごはんの時間がとれてよかったでござるな」
「そ、そうだね」
メイドから持たされたお昼ごはんは、おにぎりと玉子焼きに、ウインナーとプチトマト、あと唐揚げが少しだ。
カジキマグロ(ブルーマーリン)を釣り上げるのに時間がかかり、手が離せない場合でも食べやすいよう考えてくれたみたいだ。まあ、ダン君に言われるまでもなく、ゆっくりと食べる時間はあるんだけどね。
午前中は、カジキマグロじゃなくサメ。しかも魔物を釣り上げてしまった僕だけど、お昼ご飯を食べてエネルギーチャージだ。気を取り直して午後からに備えよう。
◇
タクミが餌釣りをしている頃、エトワール、春香、フローラを乗せた三隻のクルーザーは、水精騎士団の案内で、それぞれポイントへと向かっていた。
「はぁ~、風が気持ちいいぜ。ビールが飲みたくなるな」
「おい、酒は船を降りてからにしろよ」
「分かってるよ。ヒースはいちいち真面目すぎる」
エトワールの乗る船では、ライルがおもいっきりクルージングを楽しんでいた。そのライルの抑え役という訳ではないのだろうが、ヒースも同じ船に乗っていた。
「おっ、そろそろポイントが近いぞ。エトワールちゃん。準備は大丈夫かい?」
「うん! バッチリOKだよ!」
「父さん、餌の魚を投入するよ」
「よし! 大物を釣り上げて、タクミを驚かせてやれ!」
「「うん!」」
ヒースがポイントに近付いたのを告げ、準備は大丈夫かエトワールに聞く。それにエトワールが笑顔で返事し、ヒースの息子がサポートする。
そんなやり取りが他の船でも行われる。
「よぉーし! 大っきいの釣るぞぉー!」
「頑張るでござるよ」
「一番の大物を狙うでござる」
元気いっぱいのフローラに、マッドとビルのサムライコンビが応援する。
そして春香の船に乗るのは、ソフィアの元同僚であるエルフのフラン、アネモネ、リリーの三人組。
「さあ春香ちゃん! 一番大きなのを釣り上げるわよ!」
「うん! 頑張るよ!」
「フラン先輩、先輩が張り切り過ぎですよぉ」
「そうです。空回りしないでください」
「うっさいわね! どうせなら一番を目指すのよ! 釣り上げるぞ! おー!!」
「おー!」
「はぁ。今日のポイントはこの辺ですかね?」
「はい。その辺りが狙い目だと思いますよ」
やたらとハイテンションなフランを、アネモネとリリーが諌めるも、春香と二人で手を振り上げて声を出し気勢を上げている。
それを呆れた表情でちらっと見て、アネモネは水精騎士団の案内人にポイントの相談をし始める。フランは放置だ。
その後、それぞれのポイントでトローリングを開始したエトワール、フローラ、春香の三人の乗るクルーザー。
何の偶然か、それ程の時間差もなく、ほぼ同時にヒットした。
「ヒット!」
「きたぁー!」
「アッ、アタリがきたよ!」
それぞれのクルーザーの上がにわかに慌ただしくなる。
「慎重になエトワールちゃん」
「頑張ってエトワールちゃん!」
「ひょおー! こりゃ大物だぜ!」
ヒース親子がエトワールを激励し、ライルが大物の予感にはしゃぐ。
「フローラ嬢、強く巻き過ぎるとバレるでござるよ! ビル、船を動かしてフォローするでござる!」
「了解でござる! マッド、ラインの管理は任せるでござる!」
「いよーし! ぜったい釣り上げるぞぉ!」
フローラに、強く巻き過ぎるとバレるとアドバイスを出し、ビルに船の操舵を任せるマッド。ただフローラは、釣り上げる事しか頭になさそうだ。
春香の船でもフランがうるさい。
「春香ちゃん! ほら、引っ張ってぇー! 巻き上げてぇ! 引っ張ってぇ!」
「先輩、うるさいです!」
「春香ちゃん。フランさんの声は無視していいですからね」
「うん!」
横で騒ぐフランを叱りつつ春香を励ますアネモネとリリー。
それぞれの船に乗る人魚族の水精騎士団の働きもあり、カジキマグロとのファイトを楽しむ子供達。
海面から巨大なカジキマグロがジャンプして姿を現す。
「ウッヒョォー! 凄えぇ!!」
三隻のクルーザーに乗る人間の中で、一番はしゃいでいるライルが歓声を上げる。
他のメンバーも同じように感動した表情で歓声を上げている。
今回、エトワールや春香、フローラが狙うカジキマグロは、タクミが前世でテレビやネットで見た事のあるブルーマーリンに近いのかもしれない。
ただ、この世界のブルーマーリンは、体表が常に複雑にブルーやコバルトブルーにキラキラと変化している。それがジャンプして姿を見せ、太陽の光を反射しキラキラと青く輝くのだ。それを見ているみんなが歓声を上げるのも当然の事だろう。
幼児が巨大なカジキマグロとファイトしているのを、周囲の者達が見て歓声を上げている様子に、前世の記憶のあるタクミなら違和感もあるだろう。
そもそも幼児に巨大なカジキマグロを釣り上げるなど、普通ならあり得ない。しかもこの世界のカジキマグロのサイズは、地球のものと比べても大きい。ただ、この世界にはレベルがありステータスとして見る事が出来る。この世界でも一般人なら大人でも巨大なカジキマグロを釣り上げるのは大変な労力だろうが、エトワール、春香、フローラの三人に限って言えば、何も問題はない。
過保護で心配症のタクミと、厳しく鍛えたいソフィアやマリア、マーニ達母親のお陰で、娘達は下手なベテラン冒険者よりも高いステータスを誇る。
しかも周囲のサポートから適時バフがかかり強化され、体力の回復も行われている。力加減さえ間違えずバレなければ、糸の先の獲物が釣り上げられるのも時間の問題だろう。
やがて陽が傾き始めた頃、子供達のクルーザーが港へと戻って行く。
そのクルーザーには、誇らしげにブルーマーリンの絵が描かれた旗が海風にはためいていた。
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