異世界立志伝

小狐丸

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頑張るクリストフ

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 危険な場所に行くとあって、準備は万端にしたい。
 俺以外のメンバーは、少しでもレベルアップする為に、魔物狩りに出掛けている。
 クリストフ君は、さすがに貴族のご子息だけあって、小さな頃から剣の訓練を受けていた。

「クリストフ君の装備は、剣と盾だったな」

 クリストフ君は将来的に、バスターク家の騎士団を率いる立場になるのだから、正統派の騎士の装備を造る。

 剣と盾は、アダマンタイト合金の物と、鋼鉄製の物を造って置く。
 レベルが上がるとアダマンタイト製の重さも大丈夫になるだろう。
 剣と盾は、あえて重量軽減のエンチャントを掛けない。重さが武器になるからだ。
 逆に鎧には重量軽減のエンチャントは掛けてある。バスターク辺境伯軍の騎士鎧の色が分からなかったから、黒い鎧にした。剣と盾も黒いので、暗黒騎士みたいになってしまった。

 あと、全員分の緊急時に障壁を張るアクセサリーを作る。

 クリストフ君の育成計画は、戦士、狩人、僧侶ジョブをカンストにもっていって、騎士職へと考えている。時間的余裕があれば、魔法使いも鍛えたい。



 二日掛けて鋼鉄製の装備と、アダマンタイト製の装備を造った後、ルフトの強化に取り掛かる。

 今回は森の中なので、虎型のルフトが役に立つと思った。出力のアップと、爪に魔力を纏わせ風属性の攻撃が出来る様にした。その為、前脚に魔石を追加した。
 遠距離攻撃も出来るよう、口からエアバレットを放てるよう改造した。

 これでルキナの助けにもなるだろう。

 アンナさんは、短剣と魔導銃をもう一丁リクエストされた。
 防具は、メイド服の上に胸当てと、籠手、脛当てのリクエストだった。戦闘に置いてもメイド服は譲れないみたいだ。

 スーラは、武器に戦鎚(ウォーハンマー)を用意した。元々戦鎚術のレベルが高かったから、戦鎚に決めた。


「森で活動出来るゴーレムを造った方が良いかな。これは少し考える必要があるな」

 そこでふと思った、俺って人型ゴーレム造った事ないな。
 そこで、クリストフ君をサポートするゴーレムを造る事にする。
 クリストフ君と連携が取れる様に、体長150センチ程度にして、クリストフ君より少し高い位にした。
 身体のバランスは、魔物のゴーレムに近いズングリとして腕が長いタイプだ。ただ、構造はオートマトンにゴーレム核を埋め込んだ、ルフト達と同じタイプだ。
 鋼鉄製の鎧を纏い、太く長い腕にはアンカーを射出するギミックを仕込む。左腕にラウンドシールドを取り付け、槍を両手持ちで使える様にした。
 ズングリしたスタイルを活かし、足や腕にスラスターを装備、二の腕を蛇腹式にして5メートル位伸びる様にした。フクラハギのスラスターに加え、某機動戦士みたいなランドセル型スラスターを背負い、機動力を確保する。

「うん、調子に乗りすぎた」

 工房に籠っていると、ついつい暴走してしまうので、俺もクリストフ君達の訓練を手伝う事にする。





 僕の名前は、クリストフ・フォン・バスターク。
 バスターク辺境伯家の次男だ。家督は、アルフォンス兄上が継ぐ予定なので、僕はバスターク辺境伯領を支えていく為に、領軍を率いて王国の盾になりたい。

 そう、バスターク辺境伯家は、王国の盾と呼ばれる。それは王国の南に、ローラシア王国とゴンドワナ帝国と接する広大な領地を治めている。
 その二カ国からの侵略に王国の盾として、国防の要としてあり続けている。

 ただ最近、そのバスターク辺境伯の領地が、帝国の軍勢に蹂躙される危機に直面する。
 バスターク辺境伯領と領地を接するゴンドワナ帝国のチノーラス辺境伯家が、一万の軍勢を持って侵攻して来た。
 その時、父上と兄上がバンスで籠城し、僕と母上は、王都へ避難する事になった。
 バスタークの血を遺す為にも、僕が王都へ避難するのは仕方ないけど、僕は正直悔しかった。

 結局、帝国による侵攻は、エルレイン姉上の彼氏である、カイトさんのお陰で事なきを得た。

 カイトさんが一万の軍勢に、単騎で突撃して行く姿は衝撃だった。
 強さの次元が違う。
 矢も魔法も物ともせず
 魔法を自在に操り
 バルデッィシュを振り回し敵を蹴散らす。

 僕も少しでも近付きたい。
 そう思ってしまった。

 カイトさんが指名依頼で、危険な場所の探索に行く事になった。
 僕は、カイトさんに同行をお願いした。

 それから僕の特訓が始まった。
 最初は姉上に連れられ、イリアさん、コレットさん、スーラさん、ルキナちゃんで魔物狩りに出掛けた。

 驚いた事に、ルキナちゃんも戦闘に参加している。見た事もない魔導具で魔物を斃していく。魔導銃と言うらしい。
 姉上専属メイドのアンナや姉上も魔導銃を持っていた。アンナは二丁の魔導銃を撃ちまくり「二丁拳銃です」と悦に入っていた。
 イリアさんは、ナイフ二本を持ち魔物と戦っていた。兎人族とは思えない戦士だ。
 コレットさんは、メイスで魔物を撲殺している。神官服風の装備で魔物を撲殺する姿は少し怖かった。
 スーラさんは、僕と変わらない体格なのに、僕なら持てそうにない戦鎚を振り回していた。

(なんなんだこの人達)

 戦闘に向かないとされる兎人族の女性から小さな女の子まで、精強で知られるバスターク辺境伯軍よりも強いのか?

 カイトさんが僕の装備を造ったり、準備をしている間、草原でゴブリンや狼系の魔物や角兎系の魔物を相手に訓練をしていたけど、僕以外の人は皆瞬殺している。

「この辺りの魔物では、こんなものよ」

 姉上がそう言っていた。もう少し馴れれば難易度が上げるそうだ。

 そしてカイトさんが合流すると、ノトスの街の北側に行くことになった。
 ノトスの北側は、深淵の森がある為、森に近付くほど、強い魔物が出て来るの。
 段々と強くなる魔物を、危なげなく斃していく姉上達と、カイトさんがバインドで動きを止めた魔物のトドメをさす僕。少し情け無いけど、今は基本ステータスの上昇が大事なんだそうだ。

 魔物討伐の合間に、カイトさんに剣術を指導してもらう。自分より強い相手と模擬戦などの訓練をすると、スキルやジョブの成長幅が大きいらしい。
 実際、父上や兄上と剣の稽古をしてた時に比べ、格段に上達している気がする。

 その後の訓練は野営の訓練も含め、深淵の森外縁部で魔物を討伐するまで訓練は続いた。

 僕も何とかCランクの魔物、キラーエイプを一人で斃す事が出来る様になった。

 訓練は、僕が騎士のジョブに就く事で終わりを告げた。

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