異世界立志伝

小狐丸

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装備発表会

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 ガウン王国へ転移で移動して、武具屋で見積もりを受け取り、その金額で武器と防具を発注した。
 代金は半金を先に支払い、納品時にもう半金を支払う事になっている。

 鎧に施されるドラーク子爵の紋章は、髑髏にハルバードと精霊紋と呼ばれる精霊を表す記号を組み合わせている。

 髑髏とハルバードはドルファレス師匠を、精霊紋は精霊女王から頂いた。

 先にランカス達に造った鎧にも刻んでおいた。



 そしてスーラとの約束の日、訓練場にフーガを呼んで、新装備のお披露目会を催した。

 エルやルシエルを始め、バルデルやサンク達も見学に来ている。

「カイト様、先ずはスーラの考えた武器を見せるです」

 スーラが取り出した武器を見て、頭が痛くなった。

「なぁスーラ、諜報部隊用の武器だよな……」

 スーラが取り出した武器は、巨大なハンマー。

「このハンマーは、インパクトの瞬間に風魔法でブーストが掛かり、大打撃を与える事が出来るのです。打撃面にも火魔法で爆発を刻印してあるので、打撃に追加ダメージを加えるであります」

「いや、だからちょっと待って!」

 自慢気に説明を続けるスーラを止める。
 フーガの目は点になっていた。

「あのなスーラ、諜報部隊用だって言っただろ。確かに面白いアイデアの武器だと思うけど、そんなデカイ武器を諜報部隊が担ぐのか」

「……あっ!忘れてたであります」

 スーラは本当に忘れてたみたいだ。

「あはははっ、途中から武器を造る事しか考えてなかったでありますよ。ははははっ」

「まぁ、守備隊で使いたい者が居るかもしれないし、まぁ良いか」

 次に俺の作品を発表する番になった。

「今回俺が造ったのはこれだ」

 そう言って俺が皆んなの前に出したのは、籠手とブーツだった。

「籠手?武器の開発ではなかったのですか?」

 スーラが不思議そうに聞いて来る。

「まぁ見ていろって」

 俺は籠手とブーツを装備して、デモンストレーションをする事にした。

 訓練場に的になる人型を土魔法で数体作り上げる。
 
 10メートル程、的から離れると、籠手を装備した腕を的に向ける。
 シュッと僅かな射出音と共にワイヤーが繋がったアンカーが飛び出し的に穴を開けた。

「なっ!」スーラの驚く声が聞こえた。

 俺はまだまだこれからだとニヤリと笑う。
 ワイヤーが途中まで巻き戻されると、次の瞬間、アンカーが自在に空中を飛び的に穴を開けて行く。

 アンカーが的の周りを回ると人型の的をワイヤーが拘束する。そこで俺がワイヤーを引っ張ると、人型の的はバラバラに斬れて崩れた。

 さらに、人型の的に向けて走り出し、籠手を装備した腕を的に叩き込む。
 インパクトの瞬間、籠手から杭が飛び出し、的に穴を開ける。
 ブーツのつま先の杭を出して、回し蹴りで的を粉砕してデモンストレーションを終える。

「なっ、ななななっ、なんですかぁー!」

 スーラが走り寄ると、俺の装備している籠手をベタベタ触りまくる。

「ワイヤーアンカーとパイルバンカーだ」

「ウッホォー!カッコイイ名前です!これぞロマンなのです!」

「パイルバンカーは、ちょっとアレですが、ワイヤーアンカーは使えそうですね」

 フーガが近付いて来てそう言った。アレってなんだよ。

「フーガ、ワイヤーアンカーの本来の使い方はこうだぞ」

 俺はフーガにそう言うと、訓練場の天井にある梁に向けてアンカーを射出する。
 ワイヤーを巻き上げると俺の体が宙を舞う。
 俺はその場で、蜘蛛男の如く立体的な空中機動をフーガに見せた。

「とっ、こんなもんだな」

 フーガの側に降り立ち籠手を外す。

「なるほど、これは使えますな」

 俺がフーガに籠手とブーツの杭を使った壁登りを教えていると、スーラが横から籠手を奪い取る。

「カイト様、これをスーラに下さい」

「いや、だってそれは諜報部隊の装備を決める為の試作だから」

「スーラが完成品を作るです。その為に分解するのです」

 余りにも必死なスーラに、どうでもよくなってスーラに任せる事にする。

「分かったよスーラ、籠手の件は任せるから、完成品の納品数はフーガに聞いてね」

 俺が言い終える前に、スーラは工房へダッシュして行った。

 仕方なく、スペツナズナイフはフーガに説明をしておく。

「何気にこのナイフは有用ですね。初見では高い効果があるでしょう」

「それは籠手に比べて簡単だから、まとまった数を揃えてフーガに渡すよ」

 フーガにそう言った俺に待ったを掛ける人物がいた。

「はい、カイトのオモチャいじりはそこまでよ」

「はい、新たな村や町への街道工事や架橋工事もあります」

 エルとルシエルがこれ以上工房に籠るのを許してはくれなかった。

「それにガウン王国でドワーフの鍛治職人をスカウトするんでしょ」

 まったくもって正論なので言い返せない。

「ルキナの遊んでもらってないの!」

 ルキナがエル達のマネをして、腕を組んでプンプンと怒っている。
 そう言えばここ何日か、ルキナと遊んでないな。

「分かったよ。開発とスカウトと遊びだな」

 俺がそう言うと女性陣の顔が笑顔になる。
 うん、男尊女卑のキツイこの世界で、見事に尻に敷かれてる。
 うん、知ってたさ……。


 俺はルシエルに連れられ訓練場を出て、開発に向かうのだった。

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