異世界立志伝

小狐丸

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休戦協定

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 ザシュ! ドドォーーン!!

 堅牢なはずの砦の城門が、バルディッシュの一閃で紙のように斬り裂かれた。
 倒壊した門をこえて兵士が雪崩れ込む。
 その時点で、砦に籠城していた帝国の兵士達が投降する。

 俺達はゴンドワナ帝国チラーノス辺境伯領に侵攻してから、重要な砦や街を占領して行った。
 抵抗なく砦を開け渡したり、投降して来る兵士ばかりではなかった。
 チラーノス辺境伯は、永年バスターク辺境伯と争って来たので兵士の数も多く、サーメイヤ王国の風下には立てないと、徹底抗戦を訴える勢力も多かったみたいだ。

 そのせいで散発的な戦闘はあるが、たいていは俺達の漆黒の鎧を纏った軍団を見た途端に白旗を掲げる。
 この大陸の騎士団で、漆黒の鎧を纏うのはドラーク子爵軍のみだ。ゴンドワナ帝国にとって、漆黒の鎧は恐怖の象徴となっているみたいだ。

 事前の打ち合わせでは、チラーノス辺境伯領の半分を占領する予定だったが、この調子なら帝都まででも侵攻出来そうだ。
 いきなり敵国の領地を広範囲に統治するのは、サーメイヤ王国にとっても負担でしかない。

 バスターク辺境伯軍も複数部隊でチラーノス辺境伯領へ侵攻し、砦や街の制圧をして行った。

 今は、捕虜となった帝国兵士の管理と、制圧地域の町や村を支配下に治めるべく武官、文官が忙しく動き回っている。
 捕虜の中でも、チラーノス辺境伯で働いていた武官や文官を積極的に雇用してまで、占領地の安定につめている。



 クレモン王子は既に王都へ帰還して、現在は俺と義父がチラーノス辺境伯領の統治に働いていた。
 俺は自分の領地と転移で行き来しながら、チラーノス辺境伯領の街や村の開発や砦の防御力を上げる為の工事にと寝る暇もなく働いていた。

 支配下に置いたチラーノス辺境伯領の街や村を、広く整備された街道で結び、治水工事と開墾を魔法で急ピッチで進めて行った。
 エルやルシエルも手伝ってくれたおかげで、作業は随分とはかどった。帝国では、街道整備、治水工事、開墾などに魔法使いが魔法を使用して作業する発想がなかったのか、周りから不思議なものを見るような目で見られた。



 そんな日々が続き、チラーノス辺境伯領での散発的な戦闘が終息した頃、領都に本営を置いていた俺達のもとに帝国の使者が訪れた。

「皇帝陛下よりの書状をお持ちしました」

 壮年の文官が、本営が置かれたトロルの街の旧領主館に訪れ、俺と義父が対応した。
 義父が書状を読んだ後、俺に手渡す。

 内容としては概ね予想通りのものだった。

 現在俺達が占領した地域を境界に、国の国境とする。
 捕虜の解放と、今回の帝国からの侵攻に対しての賠償金が記されていた。

「ドラーク卿、御主はどう思う?」

「……問題ないと思います。陛下の承認を得なければいけませんが、陛下も今回はこれで承認されると思います」

 今回は、モーティスの反乱だったとはいえ、こちらは王が弑虐されている。それに対する賠償も含まれての額なので、捕虜の引き渡しを含めると賠償金は莫大な額になっていた。

 捕虜の引き渡しに対する金額については、今後何度か擦り合わせる必要があるが、一応この条件で停戦協定を結ぶ事を目指す。

 王都のクレモン王子へと書状を届ける。
 クレモン王子の承認を得て、休戦協定についての帝国側と細かな条件を決める為に、宰相のメルコム殿を領主館に転移で運ぶ。
 バージェス王の有能な右腕だったメルコム殿に、面倒な帝国との交渉は任せる事にした。王弟モーティスやオース元伯爵の身柄確保も要求しているが、帝国側からは行方不明との回答しか返ってこない。
 俺も義父も、デスクワークよりも体を動かす方があっている。細かな事はメルコム殿に任せ、俺と義父は占領地の治安回復と開発に走り回る。



 一日中働いて領主館に戻った俺と義父に、メルコム殿が話があると言ってきた。

「……このチラーノス辺境伯から切り取った領地と、テンプルトン伯爵と反乱に参加した貴族達の領地の運営に関してなのだが、バスターク卿とドラーク卿の領地として治めてもらいたい」

「他の貴族家から反発があると思いますが?」

「いやドラーク卿、今回の陛下弑虐から帝国とモーティスを擁するテンプルトン伯爵達と戦ったのは、我等バスターク辺境伯軍とドラーク子爵軍だ。勝敗が決まってから参戦した貴族家にも多少の褒美は必要だろうが、多少の反発はあろうが問題ないだろう」

「それでドラーク卿には申し訳ないのだが、飛び地になるが、このチラーノス辺境伯領を治めてもらいたい」

 どちらにせよ、テンプルトン伯爵領もチラーノス辺境伯領も、飛び地になるから変わりはないから問題はない。

 結局、テンプルトン伯爵領はその2/3をバスターク辺境伯領とし、残りのうち大半を王家の直轄地となった。
 後から参戦した貴族家も、報奨金や僅かに領地を得た。


 こうしてようやく、王弑虐からの帝国侵攻は一応の終わりを迎えた。

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