異世界立志伝

小狐丸

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魔族の大陸

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 サーメイヤ王国やゴンドワナ帝国がある大陸から、海を越えて遥か南にある大陸には、人族や獣人族とは違う種族が暮らしていた。

 魔法の適性が高く、身体能力も比較的高いこの種族を魔族と呼んだ。

 魔族の住む大陸にも幾つかの国があり、その国の王は魔王と呼ばれていた。

 魔族が魔物を操り他種族を襲う様な事もなく、魔物は全種族共通の脅威だった。
 ようするに、魔族も他の種族と変わらない一つの種族と言う事だ。
 人族同士で争いがある様に、魔族にもそれは当てはまる。魔族同士での戦争や、外の大陸への進出を考える国があっても可笑しな事ではない。

 ただ、魔族も魔物に襲われる事なく海を渡る術を持たなかった為、大規模な侵攻は行われなかった。

 そこで、魔族の中でも翼を持つ種族が、時折偵察に訪れる程度だった。

 そして二人の蝙蝠の羽を持つ魔族が、ある海岸に辿り着いた。

「……これは、ここは未開地だったのではないのか……」

 以前偵察に来た時、ここは強力な魔物が跋扈する魔物の領域に囲まれた未開地だった筈だ。魔族もこの地を囲む魔物の領域に棲む魔物が、手に負えない為に、この地からの侵攻を断念した経緯がある。

 その場所に街や村が出来ていた。

 魔族は他種族よりも優れていると自負している。
 エルフ程ではないが、寿命も永く、獣人族程ではないが身体能力も高いのだから、そう思うのも仕方のない事かもしれない。
 ただ、魔族はエルフと同じで出生率が低く人口は多くない。だが、少数精鋭で他種族には負けないと思っていたのだ。

 彼等が偵察した海沿いの村や街には人族と獣人族やエルフ、ドワーフ、ホビットが混在していた。この国は比較的種族に寛容だという情報はあったが、ここまで様々な種族が混在して暮らしているのを確認したのは初めてだった。

 しかも街や村の守備隊が確認出来たのだが、魔力に長けた魔族には、相手の魔力からある程度の実力を測る事が出来るのだが、こんな村や街の守備隊に属している兵士の実力が、魔族の大陸でも遜色のないレベルだという事に戸惑いをみせていた。

「どう思う?」

「……こんな場所の兵士が主力なわけないと思うが、大きな街の兵士の実力を調べる必要があるな」

 そう言って二人の魔族は、認識阻害の魔法を自身にかけ、大きな街の調査を決める。



 領都近くの森に潜み、街を遠くから監視していた魔族は、驚きの光景を目にする。

「……なんだアレは…………」

「…………」

 魔族の目に映ったのは、巨大な虎に乗った獣人族の幼女と、護衛だろうか?熊の獣人族が側にいる。

「幼い見た目は見せ掛けか?」

「いや、獣人族の子供には間違いない」

「獣人族の子供が乗っているモノも異常だが、あの子供に我等は勝てるか?」

「護衛らしき熊人族の男の実力など、魔王様クラスに見えるぞ」

「!!」

 その時、幼女に近付く一人の人族の青年に気付く。次の瞬間、魔族の二人の身体がガタガタと震えだす。

「こっ、ここは何なんだ。
 あの男、魔王様よりも遥かに強い。
 今まで、魔王様の事はバケモノの様に強いと思っていたが、……奴は本当に人間なのか」

「一刻も早くこの情報を持ち帰らなければ」

 二人の魔族はその場を逃げる様に離れる。





「なぁボーデン、今の帝国かなぁ」

「……さぁ?」

 認識阻害系の魔法を使って、こちらを監視していた視線を捉えていたけど、実力的にどこかの間者だろうけど……。

「パパー、帰ろうー」

 おおそうだ、ルキナを迎えに来てたんだった。

「あゝ帰ってお風呂にしようか」

「うん!パパと一緒に入るのー!」

 フーガに跨るルキナの横を歩き屋敷に戻る。






 疲労でボロボロになりながら、二人の魔族が偵察から戻った。

 そこで伝えられた報告により、北の大陸への侵攻作戦が無期限で凍結される事になる。

 魔族が不幸だったのは、よりにもよってドラーク子爵領を偵察に来てしまった事。そしてルキナやボーデンを見てしまった事。極め付けは、カイトという規格外を知ってしまった事で、北大陸の兵士の正確な実力が測る事が出来ないようになってしまった。
 さすがの魔王も、自身よりも遥かに強い者など、俄かに信じられなかったが、偵察に出ていた二人は、魔王も信頼する諜報部隊の精鋭。二人が嘘をついても何のメリットもない事から、暫くは定期的に偵察する事が決まった。

 ゴンドワナ帝国とローラシア王国にとっては、幸運だっただろう。帝国には現状、魔族まで相手にする体力はないのだから。

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