異世界立志伝

小狐丸

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カイト造船ドックを造る

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 新たに領地となった旧チラーノス辺境伯領の開発と統治も順調に進んでいるので、前から考えていた船関係に手を出そうと思っていた。

 それはこの間、こちらを監視していた奴らに関係がある。フーガの話だと認識阻害の魔法は、闇属性で魔族が得意とする魔法らしい。

 魔族は、海を越えた先にある大陸に住んで、幾つかの国を持っているらしい。
 その中の一勢力が偵察によこしたのだろうと推測された。

「でもフーガ、あの海を普通の船じゃあ越えられないよな」

 そう、海には海竜シーサーペントなどの大型の魔物が棲息する為、この世界の木造船では、どんなに強化のエンチャントをかけても、被害なしでは海を渡るのは難しい。魔物避けの魔導具も少しは効くのだが、あまりにもリスクが多過ぎるのだ。

「カイト様、魔族の中には翼をもち、飛行魔法に長けた種族もいるのです。偵察に来たのはそういった種族でしょう」

「ふ~ん、例えば魔族がこの大陸に侵攻するとして、どういう手段をとると思う?」

「……おそらく転送陣を使うのではないでしょうか」

 フーガによると、全ての魔族が翼を持っているわけではないらしく、こちらの大陸に転送陣を設置して侵攻の足掛かりとする、と言うのがフーガの予測らしい。

 このドラーク領は、人が住むことが出来なかった未開地だったので、魔族が侵攻の足掛かりにするには格好の場所だったかもしれない。

 転送陣と言っても、一度に大量に兵士を転送する事は出来ないらしく、軍勢を送る為には人の住まない広い土地が必要で、魔物の領域に囲まれて人の居なかったこの地を偵察する理由もわかった。

「でも、今までもここに来る機会はあったと思うけど?」

「カイト様、毒蛇王の森は魔族にとっても脅威以外のなにものでもありません。魔族とは言っても、人族や獣人族程度の差しかない、一つの種族ですから」

 なるほど、小説やゲームみたいに魔族が悪で強大な力を持つわけじゃないんだね。

「やっぱり船を開発した方が良いな」

「海竜などの大型の魔物をどうにか出来るなら、抑止力の意味を含めて大きな力となるでしょうな」

 フーガは俺が侵略戦争をしない事が分かっているので、わざわざ抑止力と言っている。

「じゃあスーラにも手伝って貰わないとな」

「では私から連絡を入れておきます」

「頼むよ、俺は造船ドックを造る場所の選定に向かうから」



 フーガにスーラへの言伝を頼んで、海岸を調査する為に、ブリッツに跨り南を目指す。

 領内では護衛は必要ないが、新兵が二人馬に乗って後を追いかける。



 海岸を調査して、漁業や製塩に影響がない場所を探す。

「ここら辺なら大丈夫かな」

 漁業や製塩に影響が無く、そこそこ水深の深い場所を見つけた俺は、そこに造船ドックを建設する事に決めた。

 そこで必要になる鋼材や木材、石材などを集める様に指示を出す。
 鋼材に関しては、領内の錬金術師も育って来たので、俺だけが一人で錬成しなければならない事もない。

「では、資材の発注をして来ます」

「うん、頼んだ。
 鋼材は多めに頼むよ」

 俺は早速、周辺の整地を土魔法で進めて行く。

 資材の発注はしたけど、人員も回して貰わないと困るな。
 俺は通信の魔導具でエルに連絡をとる。

「うん、そうなんだ。船を造る施設を建設するんだけど、人員を少し回してくれないかな」

『分かったわ。鍛治師、土魔法使い、錬金術師を少し回せすように手配するわ』

「ありがとう」

『晩ご飯は屋敷で食べるのよね』

「うん、夜までには帰るよ」

 エルとの通話を終えると、整地と道の整備を続ける。
 想定している船のサイズが大きいので、余裕を持ってドック部分を土魔法で掘削して成形して行く。
 ドックの壁面を固めて強化して行く。

「後はスーラと相談しながら船の設計もしないといけないな」

 資材が揃うまで暫く時間がかかるだろう。今日の所はこの位にして帰るとするか。
 今、屋敷では妊婦が3人も居るのだがら、出来るだけ側に居てあげたい。
 でもアンナさんには邪魔になるから、早く仕事に行けって追い出されるんだけどな。

 お供していた新兵を海沿いの街へ送ってから、屋敷へ転移した。

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