異世界立志伝

小狐丸

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再びのパドック

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 俺はイリアとエルを連れて、以前ランカスやルシエルを買ったパドックの街へ来ていた。

 バドックの街の奴隷商と言えば、ランカスやルシエル達と出会った場所だ。確か店主はハヌックだったと思う。

「さすがにランカスやルシエルを連れて来れないよな」

「ランカス達なら気にしないと思うけど」

「そうですね。ノトスの違法奴隷商は酷かったですからね。それに比べればハヌック殿はちゃんとした商人ですね」

 イリアはノトスの違法奴隷商で瀕死の所を俺が見つけた。奴隷狩りと手を組み、人族以外の獣人族やエルフ達の集落を襲っていた。
 それに比べればパドックの街にある奴隷商は真っ当なのだろう。違法奴隷もどちらかと言えば、保護しているようだった。

「おっと、確かこの店だったな」

 久しぶりにハヌックの奴隷商前までたどり着くと、以前と変わらぬ佇まいの建物があった。

 建物の中に入ると早速、ハヌックが出て来る。

「お久しぶりです伯爵様。
 随分ご活躍のようで」

「情報が早いな」

「商売柄、情報は命ですから」

 最初の挨拶で、既に俺が陞爵している事を知ってるとは、さすがにこの手の商売をするだけあって、情報網が独自にあるんだろう。

「それでは早速ご覧になられますか?」

「話が早いな。
 あゝ、今日は色々見せてもらおう」

 ハヌックの案内で、奴隷が居る部屋を見て回る。

「なぁハヌック、今回は広く奴隷を買うつもりだから、戦闘奴隷に限定しなくても良いぞ」

「勿論わかっております。
 兵士向きの奴隷以外にも、職人や農民も見て頂きたいと思います」

 今回俺は、警護要員補充という目的以外にも、耕作地を任せられる農民や、各種職人も買うつもりだった。
 彼等には、働きに応じて賃金を支払い、そのお金で自身を買い戻せる様にする積りだった。

 ハヌックに案内されて最初の部屋を見る。

 そこには人族の大人の男が五人入れられていた。

「この者達は帝国で税金が払えず奴隷堕ちになった者達です」

 その部屋にいる人達は、皆んなが悔しげな顔をしていた。

「帝国は重税が酷いのか?」

「ええ、帝国は度重なる敗戦と領地縮小でかなり焦っている様です。
 ここに居る者達は皆が農民でしたが、重税を払えずに…………」

 ハヌックの話を聞くと、帝国はヤバイかもしれないな。

「それでこの中に家族で奴隷に堕ちた者はいるのか?」

 家族で奴隷堕ちしているなら、家族ごと買う積りだった。

「親兄弟や子供を含めて、この部屋に居る奴隷の妻や子供も奴隷堕ちしていますね」

 ハヌックによると、この部屋に居るのは三家族の父親と息子二人だそうだ。

 俺は彼達に、自分の領地で農業をする積りはないか聞いてみた。
 奴隷として買うなら、命令すれば良いだけかもしれないけど、自分達が意欲を持って働ける事が大事だと思う。

「あなた達は私の領地で農業をする気はありますか?勿論、初年度は税を免除しますし、耕作地はこちらで開墾済みの土地を管理して貰います。
 その上で、農業の合間に戦闘訓練を受けて貰います。訓練に参加する場合の賃金もお支払いします。多分三年掛からずに自分を買い戻せると思います」

 俺が考えていたのは屯田兵のシステム。
 普段は農業に従事して、有事には臨時兵士としてドラーク領の防衛にあたる。
 昔、日本で行われたシステムを導入する積りだった。

「あ、あの、俺たちが真面目に働けば三年で解放されるんですか?」

「あゝ、それに自分を買い戻した後は、そのまま管理していた農地はあなた達の物になる。当然、税は貰うけどね」

「「「お願いします!私達を買って下さい!」」」

「お願いします!
 母や妹も一緒に買って下さい!お願いします!」

 まだ成人前の少年が、その場で頭を床に擦り付けて家族ごと買ってくれと言って来た。

「それは心配しなくても大丈夫だよ。
 他の部屋に居る家族ごと買うのは最初から決めていたから」

「「「「ありがとうございます!」」」」

 全員が俺に土下座する勢いで感謝するのが居た堪れない。そこにタイミング良くハヌックが話しかける。

「では伯爵様、次の部屋へ行きますか」

「そうだな。
 じゃあ、またあとで」

 最初の部屋を後にして、ハヌックの案内で次の部屋に向かう。

「この部屋は、先程の三家族の妻や娘が居ます。
 それぞれの妻が三人と、娘が三人の六人です」

 ハヌックが扉を開けて、俺を部屋の中に入るよう促した。


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