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二十三話 黒兎、鍛治師にこき使われる
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仕事を終えオートギュール伯爵の領都バルグブルグを出発した俺は、馬車で五日の距離を街道を外れ直線距離を駆け抜ける事一日もかからずベルガドへと帰って来た。
途中何度か休憩した事もあり、戻ったのは日が暮れてからだった。流石にリルはもう寝ただろうと思っていたら、眠いのを必死に我慢してルビーと待っていてくれたみたいだ。
「にぃにぃ!」
「ただいま、リル」
「にぃにぃ! にぃにぃ!」
俺の顔を見て駆け寄って来たリルを抱き上げると寂しかったのか、頭をグリグリと擦り付けて甘えてくる。
随分と無理して起きてたのか、俺に抱かれて安心したのか、リルはそのままスヤスヤと眠ってしまった。
そのあと教会の居住区にあるリビングで、師匠やパメラさん、マリアさんに報告なんだが、何故かガンツさんやバルザさん、ザーレさんまで居る。まだ会った事がない一人を除いて「ブラッディーロータス」勢ぞろいだ。
パメラさんが淹れてくれたお茶を一口飲み、一息ついたところで師匠が報告を促す。
「で、どうだったんだい?」
「ああ、予定通り一人だけチンピラを残して全員始末した。回収した証拠に関しては微妙かな。金品はあとでパメラさんに渡すよ」
当然ながらルトール伯爵が関与した証拠なんか見つからない。一応、ブガッティ男爵の紋章入りの手紙はタナトスがヒュドラから幾つか回収している。だけどルトール伯爵は明確な証拠は残していなかった。
それでもオートギュール伯爵に渡せば、攻撃材料になりそうなものは手に入れているので、俺たちが出来るのはブガッティ男爵までだな。
俺が報告をしていると、それまで黙っていたザーレさんとバルザさんが、犯罪組織やブガッティ男爵なんてどうでもいいと装備の話をし始めた。
「そんな事より、装備の具合はどうだった?」
「そうだ。シュート君のシャツやパンツ、そしてあのロングコートには、私も触媒を惜しみなく突っ込んで付与したからね。出来上がりには満足しているが、どんなに優れた装備でも使い勝手が悪いと意味がないからね」
今回、俺が着ていた服と上着のロングコートは、ザーレさんとバルザさんの合作だ。
ザーレさんが手持ちの中から希少な魔物素材を使って仕立て、バルザさんがそれに付与魔法(エンチャント)で色々な効果を付けた逸品なんだ。
ザーレさんとバルザさんは、犯罪組織の生死や犯罪の証拠なんて二の次で、自分達の作品の感想を知りたかったみたい。
「全然問題ないな。激しい動きをしても窮屈な部分はなかったし、動きを阻害する事もなかったよ」
「うむうむ。その辺りは当然だな」
「しかし、相手がヒュドラの末端組織程度じゃ、シュートのために用意した装備だが、本来の能力は測れないな」
俺の感想にザーレさんは満足そうに頷き、バルザさんの方は、相手があの程度では装備の試しにもならないとガッカリしている。
「まあ、その辺はいいんじゃ。それより魔銃に取り掛かりたい」
「えっと、エンペラーグラトニースライムのコアと錬金する素材だよな」
「分かっとるじゃないか」
ガンツさんにとっては、ヒュドラなどどうでもいいみたいだな。それよりも俺の魔銃の製作を進めたいらしい。
「いいんじゃないかい。暫くは時間はあるからね。フランソワーズのお嬢ちゃんの方は、多少根回しも必要だからね」
「そうかい? なら私は必要な素材をリストアップしておくよ」
「ワシの方は必要な鉱石は発注済みじゃ」
師匠が言うには、腐っても貴族のブガッティ男爵を潰すのは根回しが必要らしく、フランソワーズさんのお父さんであるオートギュール伯爵と色々陰で動くみたいだな。
バルザさんは、コアに合成する錬金素材をリストアップすると言っているけど、リストアップする程色々あるのか?
ガンツさんの方は、手持ちの鉱石と足りない分に関しては既に発注済みらしい。
「俺が解体用員として一緒に行くからな」
「それは助かるよ。とてもじゃないけど俺一人じゃ解体出来ないからな」
バルザさんからリストアップされた素材は全て魔物素材なので、とても俺一人じゃ解体が出来ない。ザーレさんが来てくれるのはありがたい。
解体は技術と知識が必要で、解体ひとつで素材がダメになったりするらしい。俺は普通の動物なら解体の経験もあるし、この世界でも師匠との二人旅の間、魔物を狩っては食べる為に解体していたが、あくまで肉を得る為だ。魔物の素材に関して知識がある訳じゃない。まあ、その後教会で暮らすようになって、勉強させられた中に魔物関連の知識もあったにはあったが、実践するのとは違うからな。
「はい。これが必要な素材のリストだよ」
「あ、ありがとう」
バルザさんからリストが手渡される。
「うっ、結構いっぱい有るな」
「それはそうだよ。完成する魔銃は、イーリスのフラガラッハを超えるものになるからね」
「うへっ。なになに……」
リストを確認すると、ヤバそうな名称が並んでいる。
デュハランの魔石と鎧の一部。
火竜の火袋。
タイラントシザーフィッシュの魔石と鱗。
土竜の胆石。
ハーピークイーンの風切羽。
「大容量のマジックバッグを渡しておくよ。そのうちシュート君用のも造ってあげるね」
「了解です」
魔物の名前を見ただけで、何処に居るのかは俺には分からない。多分、ザーレさんは知ってる筈だ。
でも一つ問題がある。
「リルをどうするかだな」
「ん? なぁに?」
今もルビーを抱きながら俺の膝の上を占領しているリルをどうするかだ。
ルビーのお陰で二、三日離れても平気になったが、流石に何度も留留守番は不味いかもしれない。
これがリルがここの環境に慣れてからなら話は別なんだが、俺にべったり依存している今はちょっとかわいそうだな。
「連れて行けばいいじゃないか。シュートが魔物を狩っている時はマリアにでも面倒見させればいいさ」
「えっ、いいの?」
「マリアが一緒なら大丈夫でしょう」
「何だよ。コブ付きか」
俺が悩んでいると、師匠が軽い感じで連れて行けばいいと言う。バルザさんもマリアさんが一緒に居れば大丈夫だと太鼓判を押してくれ、ザーレさんも口ではあんな事言ってるけど、その顔は笑っている。
俺たちが自分の事を話していると分かっているんだろう。リルが不安そうな顔をして聞いてくる。
「どうしたの、にぃにぃ?」
「ん、今度、出掛ける時、リルも一緒に行こうって話だよ」
俺がそう言うと、不安そうだった顔がパァッと明るい笑顔になる。
「ほんと! にぃにぃとおでかけ?」
「そうだよ」
「やったぁーー!」
「ピィ!」
リルがバンザイして喜んで、それにルビーが驚いて一声鳴いた。
「ルビーも一緒に連れて行きな。まだ雛のうちはシュートの魔力が必要だからね」
「ああ、分かったよ」
「るびーもいっしょ!」
「ピィ」
リルもルビーも嬉しそうだ。
「じゃあ、マリアさん、リルの身の回りの物の買い物お願い出来ますか?」
「分かったわ。リルちゃん、お姉ちゃんと買い物行こうか?」
「るびーも?」
「ええ、ルビーも一緒でいいわよ」
「うん!」
「ピィ!」
マリアさんがリルを連れて市場に買い出しに出かけたところに、奴隷から解放した三人のうち、狐の獣人のルルースさんがリビングに入って来た。
「今、マリアさんとリルちゃんに会ったのですが、シュートさんの素材収集にリルちゃんを連れて行くそうですね」
「ああ、あまり長い期間の留守番はまだ無理だろうからね」
「その……、私も連れて行ってもらえないでしょうか? 私はこれでもハンターですから、自分の身は自分で護りますから」
ルルースさんの申し出は、素材収集への同行だった。
「えっと、理由を聞いてもいいですか? 別にルルースさんを連れて行く事自体は問題ないんですけど、一応理由を聞けたらと思って」
「はい。卑劣な手口で奴隷に堕とされた私たちを救って頂いて、今もなに不自由なく教会で住まわせてもらってます。与えられるばかりでは逆に不安になるのです。私にも何かお手伝いさせてもらえないでしょうか?」
理由はもの凄く真っ当なものだった。
ルルースさんの気持ちは俺にはよく分かる。
無償の愛を与えてくれるのは、普通は親くらいだ。そんな親も歪んだ奴も増えた。
今の日本には、親が子を殺すのが珍しくないのだから。
奴隷とされ地獄へと堕とされるところを、偶然にせよ助けられ、奴隷から解放され、食事を与えられ、温かなベッドに清潔なシーツ……うん、ルルースさんの言う事は正しいな。
「いいんじゃないかい。リルも少しの間でも同じ檻の中で気遣ってくれたルルースなら受け入れるだろう」
「そうだな」
師匠もルルースさんの何か役に立ちたいと言う気持ちが分かったんだろう。
「師匠からも許可が出たなら俺は問題ないよ。じゃあ装備を含めて準備してくれるかな」
そう言って多いめにお金を渡す。
「こんなに……」
「あっ、それ、犯罪組織からガメたやつだから遠慮はいらないよ」
ルルースさんが驚いているが、俺は、まだこの世界の金銭感覚に疎いから、何が幾らで買えるのか分からないんだよな。
そこにガンツさんがルルースさんに話し掛ける。
「狐の嬢ちゃん、あんたの得物は何だ?」
「え、あ、あの、魔法剣士でしたので、細めの剣と発動体を使っていました」
「へぇ、獣人族で魔法って流石狐の獣人だね」
師匠が言うように、基本獣人族は魔法の適性が低い。だけど狐の獣人は魔法に高い適性を保つ人も居るらしい。
「分かった。細剣と発動体、軽鎧は儂が用意しよう」
「あ、ありがとうございます」
ガンツさんも一から造る訳じゃなく、有り物に手を加えるそうだ。
さて、俺も準備しないとな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『いずれ最強の錬金術師?』のコミック版6巻が、7月19日より順次書店にて発売予定です。
お手に取って頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。
途中何度か休憩した事もあり、戻ったのは日が暮れてからだった。流石にリルはもう寝ただろうと思っていたら、眠いのを必死に我慢してルビーと待っていてくれたみたいだ。
「にぃにぃ!」
「ただいま、リル」
「にぃにぃ! にぃにぃ!」
俺の顔を見て駆け寄って来たリルを抱き上げると寂しかったのか、頭をグリグリと擦り付けて甘えてくる。
随分と無理して起きてたのか、俺に抱かれて安心したのか、リルはそのままスヤスヤと眠ってしまった。
そのあと教会の居住区にあるリビングで、師匠やパメラさん、マリアさんに報告なんだが、何故かガンツさんやバルザさん、ザーレさんまで居る。まだ会った事がない一人を除いて「ブラッディーロータス」勢ぞろいだ。
パメラさんが淹れてくれたお茶を一口飲み、一息ついたところで師匠が報告を促す。
「で、どうだったんだい?」
「ああ、予定通り一人だけチンピラを残して全員始末した。回収した証拠に関しては微妙かな。金品はあとでパメラさんに渡すよ」
当然ながらルトール伯爵が関与した証拠なんか見つからない。一応、ブガッティ男爵の紋章入りの手紙はタナトスがヒュドラから幾つか回収している。だけどルトール伯爵は明確な証拠は残していなかった。
それでもオートギュール伯爵に渡せば、攻撃材料になりそうなものは手に入れているので、俺たちが出来るのはブガッティ男爵までだな。
俺が報告をしていると、それまで黙っていたザーレさんとバルザさんが、犯罪組織やブガッティ男爵なんてどうでもいいと装備の話をし始めた。
「そんな事より、装備の具合はどうだった?」
「そうだ。シュート君のシャツやパンツ、そしてあのロングコートには、私も触媒を惜しみなく突っ込んで付与したからね。出来上がりには満足しているが、どんなに優れた装備でも使い勝手が悪いと意味がないからね」
今回、俺が着ていた服と上着のロングコートは、ザーレさんとバルザさんの合作だ。
ザーレさんが手持ちの中から希少な魔物素材を使って仕立て、バルザさんがそれに付与魔法(エンチャント)で色々な効果を付けた逸品なんだ。
ザーレさんとバルザさんは、犯罪組織の生死や犯罪の証拠なんて二の次で、自分達の作品の感想を知りたかったみたい。
「全然問題ないな。激しい動きをしても窮屈な部分はなかったし、動きを阻害する事もなかったよ」
「うむうむ。その辺りは当然だな」
「しかし、相手がヒュドラの末端組織程度じゃ、シュートのために用意した装備だが、本来の能力は測れないな」
俺の感想にザーレさんは満足そうに頷き、バルザさんの方は、相手があの程度では装備の試しにもならないとガッカリしている。
「まあ、その辺はいいんじゃ。それより魔銃に取り掛かりたい」
「えっと、エンペラーグラトニースライムのコアと錬金する素材だよな」
「分かっとるじゃないか」
ガンツさんにとっては、ヒュドラなどどうでもいいみたいだな。それよりも俺の魔銃の製作を進めたいらしい。
「いいんじゃないかい。暫くは時間はあるからね。フランソワーズのお嬢ちゃんの方は、多少根回しも必要だからね」
「そうかい? なら私は必要な素材をリストアップしておくよ」
「ワシの方は必要な鉱石は発注済みじゃ」
師匠が言うには、腐っても貴族のブガッティ男爵を潰すのは根回しが必要らしく、フランソワーズさんのお父さんであるオートギュール伯爵と色々陰で動くみたいだな。
バルザさんは、コアに合成する錬金素材をリストアップすると言っているけど、リストアップする程色々あるのか?
ガンツさんの方は、手持ちの鉱石と足りない分に関しては既に発注済みらしい。
「俺が解体用員として一緒に行くからな」
「それは助かるよ。とてもじゃないけど俺一人じゃ解体出来ないからな」
バルザさんからリストアップされた素材は全て魔物素材なので、とても俺一人じゃ解体が出来ない。ザーレさんが来てくれるのはありがたい。
解体は技術と知識が必要で、解体ひとつで素材がダメになったりするらしい。俺は普通の動物なら解体の経験もあるし、この世界でも師匠との二人旅の間、魔物を狩っては食べる為に解体していたが、あくまで肉を得る為だ。魔物の素材に関して知識がある訳じゃない。まあ、その後教会で暮らすようになって、勉強させられた中に魔物関連の知識もあったにはあったが、実践するのとは違うからな。
「はい。これが必要な素材のリストだよ」
「あ、ありがとう」
バルザさんからリストが手渡される。
「うっ、結構いっぱい有るな」
「それはそうだよ。完成する魔銃は、イーリスのフラガラッハを超えるものになるからね」
「うへっ。なになに……」
リストを確認すると、ヤバそうな名称が並んでいる。
デュハランの魔石と鎧の一部。
火竜の火袋。
タイラントシザーフィッシュの魔石と鱗。
土竜の胆石。
ハーピークイーンの風切羽。
「大容量のマジックバッグを渡しておくよ。そのうちシュート君用のも造ってあげるね」
「了解です」
魔物の名前を見ただけで、何処に居るのかは俺には分からない。多分、ザーレさんは知ってる筈だ。
でも一つ問題がある。
「リルをどうするかだな」
「ん? なぁに?」
今もルビーを抱きながら俺の膝の上を占領しているリルをどうするかだ。
ルビーのお陰で二、三日離れても平気になったが、流石に何度も留留守番は不味いかもしれない。
これがリルがここの環境に慣れてからなら話は別なんだが、俺にべったり依存している今はちょっとかわいそうだな。
「連れて行けばいいじゃないか。シュートが魔物を狩っている時はマリアにでも面倒見させればいいさ」
「えっ、いいの?」
「マリアが一緒なら大丈夫でしょう」
「何だよ。コブ付きか」
俺が悩んでいると、師匠が軽い感じで連れて行けばいいと言う。バルザさんもマリアさんが一緒に居れば大丈夫だと太鼓判を押してくれ、ザーレさんも口ではあんな事言ってるけど、その顔は笑っている。
俺たちが自分の事を話していると分かっているんだろう。リルが不安そうな顔をして聞いてくる。
「どうしたの、にぃにぃ?」
「ん、今度、出掛ける時、リルも一緒に行こうって話だよ」
俺がそう言うと、不安そうだった顔がパァッと明るい笑顔になる。
「ほんと! にぃにぃとおでかけ?」
「そうだよ」
「やったぁーー!」
「ピィ!」
リルがバンザイして喜んで、それにルビーが驚いて一声鳴いた。
「ルビーも一緒に連れて行きな。まだ雛のうちはシュートの魔力が必要だからね」
「ああ、分かったよ」
「るびーもいっしょ!」
「ピィ」
リルもルビーも嬉しそうだ。
「じゃあ、マリアさん、リルの身の回りの物の買い物お願い出来ますか?」
「分かったわ。リルちゃん、お姉ちゃんと買い物行こうか?」
「るびーも?」
「ええ、ルビーも一緒でいいわよ」
「うん!」
「ピィ!」
マリアさんがリルを連れて市場に買い出しに出かけたところに、奴隷から解放した三人のうち、狐の獣人のルルースさんがリビングに入って来た。
「今、マリアさんとリルちゃんに会ったのですが、シュートさんの素材収集にリルちゃんを連れて行くそうですね」
「ああ、あまり長い期間の留守番はまだ無理だろうからね」
「その……、私も連れて行ってもらえないでしょうか? 私はこれでもハンターですから、自分の身は自分で護りますから」
ルルースさんの申し出は、素材収集への同行だった。
「えっと、理由を聞いてもいいですか? 別にルルースさんを連れて行く事自体は問題ないんですけど、一応理由を聞けたらと思って」
「はい。卑劣な手口で奴隷に堕とされた私たちを救って頂いて、今もなに不自由なく教会で住まわせてもらってます。与えられるばかりでは逆に不安になるのです。私にも何かお手伝いさせてもらえないでしょうか?」
理由はもの凄く真っ当なものだった。
ルルースさんの気持ちは俺にはよく分かる。
無償の愛を与えてくれるのは、普通は親くらいだ。そんな親も歪んだ奴も増えた。
今の日本には、親が子を殺すのが珍しくないのだから。
奴隷とされ地獄へと堕とされるところを、偶然にせよ助けられ、奴隷から解放され、食事を与えられ、温かなベッドに清潔なシーツ……うん、ルルースさんの言う事は正しいな。
「いいんじゃないかい。リルも少しの間でも同じ檻の中で気遣ってくれたルルースなら受け入れるだろう」
「そうだな」
師匠もルルースさんの何か役に立ちたいと言う気持ちが分かったんだろう。
「師匠からも許可が出たなら俺は問題ないよ。じゃあ装備を含めて準備してくれるかな」
そう言って多いめにお金を渡す。
「こんなに……」
「あっ、それ、犯罪組織からガメたやつだから遠慮はいらないよ」
ルルースさんが驚いているが、俺は、まだこの世界の金銭感覚に疎いから、何が幾らで買えるのか分からないんだよな。
そこにガンツさんがルルースさんに話し掛ける。
「狐の嬢ちゃん、あんたの得物は何だ?」
「え、あ、あの、魔法剣士でしたので、細めの剣と発動体を使っていました」
「へぇ、獣人族で魔法って流石狐の獣人だね」
師匠が言うように、基本獣人族は魔法の適性が低い。だけど狐の獣人は魔法に高い適性を保つ人も居るらしい。
「分かった。細剣と発動体、軽鎧は儂が用意しよう」
「あ、ありがとうございます」
ガンツさんも一から造る訳じゃなく、有り物に手を加えるそうだ。
さて、俺も準備しないとな。
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『いずれ最強の錬金術師?』のコミック版6巻が、7月19日より順次書店にて発売予定です。
お手に取って頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。
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