召喚術士は魔物と踊る

小狐丸

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初めての村へ

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 フランを抱いて歩いていると、前方にまたスライムを見つけた。
 湿地帯が近いからだろうか、ムサシは気になった事をフランに聞いてみる。

「なぁフラン、同族を倒すとかってアリなの?」

『…………』フランから平気だよー。と気持ちが伝わってくる。
 ならばフランの経験値になって貰おう。

 ムサシはその場にしゃがむと、適当な石を拾い投げつける。
 倒してしまわない様に鑑定しながら、あと一撃で斃せるタイミングでフランに指示を出す。

「フラン、行け!」

 フランは弱ったスライムに近付くと、上から覆い被さり、スキル溶解を使って攻撃しはじめる。
 HPがほとんど残っていなかったスライムは、フランの攻撃を受け、その体が溶けて赤い石を残した。


 NAME フラン(スライムG)
 AGE  0
 Lv   1→2
 HP   20/20→25
 MP   10/10→12
 STR  5→7
 AGR  5→7
 DEX  5→7
 INT  5→7
 MEN  5→7

 SKILL  溶解 吸収

 召喚者 ムサシ


 スライムを一匹倒しただけでレベルが上がった様だ。そうなればムサシはフランを積極的に育てることにする。

 スライムを探しながら、見つけるとムサシが石を投げつけ、フランがトドメをさす。
 すると何故かムサシの投石の威力は上がっている事に気付く。一投で削れるHPが大きくなっているのだ。

 そしてスライムを倒し続けて何匹目かの時、ムサシの投石一投でスライムを斃してしまった。
 フランが自分の出番がないと抗議してくる。

「ごめんごめん、次はちゃんと手加減して投げるから」

 フランに謝り許して貰うと、ムサシは自分のステータスを確認する事にした。投石の威力が上がったのは、ムサシのレベルが上がったからだと思ったからだ。


 NAME ムサシ
 JOB  召喚術士
 AGE  15
 Lv   1→3
 HP   20/20→30(+11)
 MP   20/20→30(+5)
 STR  10→16(+4)
 AGR  10→16(+4)
 DEX  10→16(+4)
 INT  10→16(+4)
 MEN  10→16(+4)

 SKILL  投擲Lv.1
      魔物との絆 鑑定Lv.1


「レベルが2上がってるな。それと投擲スキルを取得したのか。フランのステータスの1/5が加算されているな、どおりでいくら歩いても余り疲れない筈だよ」

 ムサシは、フランのステータスを確認してみる。



 NAME フラン(スライムG)
 AGE  0
 Lv   2→8
 HP   25/25→55
 MP   12/12→24
 STR  7→19
 AGR  7→19
 DEX  7→19
 INT  7→19
 MEN  7→19

 SKILL  溶解 吸収

 召喚者 ムサシ


「……レベルアップが早くないか?」

 ムサシのユニークスキル、【魔物との絆】の魔物の成長を早めるという効果のお陰なのだが、これはレベルアップにかかる経験値が1/5になるという強力なスキルだった。

 フランにステータスで負けている事に、少し思う所もあるが、フランが強くなるのはムサシにとっても喜ばしい事なので、納得しておく事にする。


 フランを抱き上げ、歩き始めたムサシの目に、村らしきモノが見えてきた。
 太陽もだいぶ低くなってきていたので、歩くスピードを上げて村へ急ぐ。

 その時フランがムサシの腕の中から飛び出す。

「うん?どうしたフラン」

『…………』

「えっ!魔物?」

 フランは魔物を見付けて臨戦態勢に入っている。

 ムサシもフランが警戒していた魔物を見付けた。


 NAME 一角ウサギ
 Lv   6
 HP   40/40
 MP   20/20


 ウサギとはいえ、ムサシに知るどのウサギよりも
大きかった。中型犬程はあるだろうか、だが一番の特徴は、その鋭く尖った角だろう。
 ひょっとして大人しい草食獣かな、と思ったムサシの考えを、一角ウサギの凶暴な牙が打ち砕く。

 ムサシは拾って置いた石を右手に持ち、左手にナイフを構える。
 フランもジリジリと一角ウサギへにじり寄る。

 一角ウサギが跳び掛かろうとしたのが、筋肉の動きで分かった。
 ムサシは反射的に右手に持つ石を投げつける。
 跳び掛かろうとした瞬間に、攻撃を受けた一角ウサギの動きが一瞬止まる。それを待っていたのか、フランが一角ウサギの体に取り憑く。
 ムサシはナイフを右手に持ち替え走り出す。

 フランが脚に纏わり付き、身動きの出来ない一角ウサギの首筋にナイフを突き立てる。
 ムサシにとって、生き物を直接その手にかけるのは初めての事だが、歯を食いしばり手から伝わる肉の感触に耐える。
 一角ウサギはビクリと痙攣したあと、その動きを止めた。

 日本で40年以上暮らしていたが、生き物を殺す経験のないムサシにとって、魔物とはいえ殺した事に、もっと衝撃を受けたり、動揺したりするかと思ったが、案外平気でいられる事に気付く。
 動揺が全くない訳ではないが、明らかに以前の自分では考えられない冷静さだ。

「もしかしてレベルアップの恩恵か?」

 ムサシの推測は半分は正解だった。レベルアップにより、MEN値の上昇で冷静に対処できる様になった事も理由の一つ。
 もう一つは、本来ムサシは割り切りの早い性質をしていたということだ。
 離婚して独り暮らしになったが、直ぐにその環境を受け入れていた。
 神様から教えられた、この世界の常識や価値観に早くも順応し始めている。

「血抜きだけでもしておくか」

 ムサシは一角ウサギの首筋を血抜きし易い様に切ると、フランがその傷口に、自分の身体を変形させて触手状にすると差し込んだ。

「ん?フランが血抜きをしてくれるのか?」

『……』プルプルと震えて、血抜きは任せてと伝えてくる。

「ありがとうフラン。じゃあ頼むな」

 フランの血抜きは直ぐに終わり、血抜きの終えた一角ウサギをムサシが肩に担ぐ。
 フランを右手に抱いて、遠くに見える村に向かって歩みを急いだ。

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