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八話 双子
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野営の後、翌朝早く再び馬を駆けさせ続け、夕方には領都の屋敷にたどり着いた。前世で馬術も身に付けていた私からすると、この世界の馬、速すぎ。スタミナも半端ないわ。
これも魔物の血が濃く混じっている所為らしいけど、定期的に回復魔法を掛けているとはいえ、サラブレッドなんてめじゃないスピードで駆け続けれるなんてびっくりね。
ルミエール伯爵家の領都エルローダス。その小高い丘の上に、我がルミエール伯爵家の屋敷はあった。
日本人だった頃の記憶がある私としては、これはもう立派なお城だ。領地が辺境な事もあり、防御力も高い城なのは間違ってはいない。
ただルミエール伯爵領は、辺境だけにその領地は広い。エルローダスも王都には負けるけど、伯爵家の領都としては大きく栄えた街だ。
屋敷は、防衛を考慮した西洋風の城と普段の生活を営む洋館の屋敷からなる。兎に角、無駄に広いのだ。
それこそ、城の中の移動にでも馬車を使う程には広い。
「「「「お帰りなさいませ!」」」」
使用人達の熱烈な出迎えを受けながら門を抜け、本館の前まで馬で乗り付けると、従者が駆け寄って手綱を引いて馬を馬房へと連れて行く。
「お館様。奥方様。お嬢様。ご無事のご帰還お喜び致します」
「よくぞご無事で!」
「セドリック、ガーランド、よく留守を守ってくれた」
代表で出迎えの挨拶をしたのが、執事長のセドリックと騎士団長のガーランド。
セドリックは、年齢不詳だけど白髪をオールバックに撫で着け、綺麗に整えられた口髭がダンディなおじさん。背筋がピンと伸びた姿勢の良さと、内に秘めた魔力量から相当強いと今なら分かる。
その横で私の帰還を涙ぐんで喜んでいるガーランドは、単純な武力ではお父さまを抜けばルミエール領でも間違いなく五指に入る。
二メートルを超える巨漢でありながら、決して鈍重ではなく、手先の技量も優れている。それこそ、王都で王家を護る近衛騎士団の団長よりもずっと強いとお父さまは言っていたと思う。
そのガーランドよりもお父さまは強いんだけどね。
そこに、トコトコと小さな足音が近付いて来た。
「ねえちゃま!」
「ねえちゃまー!」
「メルティ! ルード!」
小さな女の子と男の子が走って来た。私の可愛い双子の妹と弟。メルティアラとルードルフだ。
容姿はメルティは私と同じでお母さま似。ルードはお父さま似。ただ、メルティの髪色は少し私とお母さまよりも金色が強い。私の可愛い双子の妹と弟だ。
「二人ともユーリが居なくなって心配してたからな」
「フフッ、お姉ちゃんが大好きだものね」
「旦那様、奥様。先ずは中に入られては?」
「そうだね。カサンドラ、着替えを頼む」
「用意致しております」
私達を微笑ましく見る、お父さまとお母さまに話しかけたのは、侍女長のカサンドラ。見た目は四十歳くらいに見えるけど、実際の年齢は不明。お祖父さまの代から仕えている筈だから、見た目のままっていう事はないと思うけど、これは突っ込んじゃダメな案件。女性に年齢はタブーなの。
それにルミエール伯爵領は、昔から人族以外も多いから、長寿種族の血が混じっていると、もう年齢なんて分からない。
もう一人の侍女が私に抱きつくメルティとルードを引き取ろうとするも、二人はイヤイヤして離れたくないみたい。
「ユーリお嬢様。お二人を抱いたままで大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ユノス」
そう私に話しかけた。一見、二十歳くらいに見える侍女はユノス。勿論、見た通りの年齢じゃないと思う。だって私が物心ついた頃から変わらないもの。
なんだか、私の周りって年齢不詳の人が多いわね。それに、侍女長のカサンドラや執事長のセドリック、そしてこのユノスも間違いなく強い。前世の武人としての記憶が蘇ったから分かる。ルミエール伯爵家って、ちょっと異常なくらい戦闘能力が高い人がいるわね。
「「ねえちゃま!」」
「はいはい。中に入ろうね」
私は二人を抱っこしたまま屋敷の中へと歩く。少し前までの私なら、三歳とはいえ二人を抱えて歩くなんて難しかっただろう。でも、今の私には三歳児くらい羽のようなもの。全く重くは感じない。
広い玄関ホールを抜けて、そのまま普段家族が寛ぐリビングスペースに向かう。
お客様を迎える応接室は幾つかあるし、大人だけが入れる談話室などもあるけど、家族が普段集まり寛ぐ部屋は決まっている。というか、広過ぎて私もこの屋敷の全ての部屋を知らないのよね。
ユノスに、先にお風呂に入って疲れを癒してくださいって言われたんだけど、メルティとルードが離れない。
「あたちも、ねえちゃまとお風呂はいる!」
「ぼくも! ぼくも!」
ユノスがお風呂を勧めてくれたんだけど、メルティとルードも一緒に入るときかない。
因みに、この世界でお風呂は贅沢なもので、貴族や豪商でないと家には無い。ただ、エルローダスには何ヶ所か公衆浴場が在り、領民が週に二度程度入れる程度の値段で提供している。
これはルミエール伯爵家から、お湯を沸かす魔道具を提供しているから可能な事だ。
「仕方ないわね。じゃあ、今日は母さまも一緒に入りましょう」
「「わーい!」」
「じゃあ僕も「ダメよ。あなたは」っ、君だけずるいよフローラ」
一月ぶりに会った私と離れたくないと駄々をこねる二人に、フローラお母さまが仕方なく自分も一緒に入ると言うと、アレクお父さまが自分もと主張したけど、フローラお母さまからすげなく却下され、しょんぼりしている。
日本なら小さな子供と親が、一緒にお風呂に入るのは当たり前の事だけれど、この世界、特に貴族ではそれはない。ルミエール伯爵家は、辺境の田舎貴族だからその辺は緩めだけど、メルティとルードはともかく、私ももう七歳だからね。男親と一緒なんてお母さまは許さないみたい。
広い湯船に浸かると気持ちいい。この辺は、私が前世日本人だった事もあるのかな。マーサおばあちゃんの家では、汚れは魔法で落としていたからね。
前世の記憶が戻るまでは疑問にも思わなかったけど、この世界には魔力の少ない人でも使える《生活魔法》という便利なものがある。
イグニッション(着火)、ウォーター(湧水)、ライト(点灯)、そしてクリーン(洗浄)にドライ(乾燥)。
この生活魔法には詠唱は無く、発動キーとイメージ、そして少しの魔力で発動するの。
他の属性魔法と違い、余りにもシンプルで簡単なこの生活魔法は、神が万民に与えた祝福だと言われている。
まあ、その少しの魔力も足りなくて発動できない人も多くいるから、公衆浴場は無駄じゃないんだけどね。
我が家のお風呂も浴槽がとても大きい。これも魔道具が有ってこそだ。
貴族や豪商の家には、生活を便利にする魔道具が導入されている。流石に普通の領民は、魔道具ではなく井戸の水を利用している。うちや公衆浴場なんかの大量の水が必要になる場所は魔道具を使用しているの。
「ユーリ様、お背中を流します」
「ありがとう。リンジー」
リンジーは私付きのメイドで、赤髪の可愛い十歳の女の子。
私が拐われた事に責任を感じているみたいで、ユノスに師事したって先程聞いた。リンジーは一つも悪くないからって言ったんだけどね。
それと基本的に、貴族の女性はお風呂ではメイドにお世話してもらうのが常識らしい。前世を思い出す前は、疑問を持たず任せてたけど、今は少し恥ずかしい。でも、自分で出来ると言うとメイドが悲しむのよね。
「ねえちゃま、ててどうしたの?」
「ねえちゃまのてて、かっこいい。ルードもほしい!」
「ごめんねルード。これは痛い痛いしないと付けれないのよ」
「う~ん。なら、いらない。いたい、いたいはイヤだもん」
お風呂という事は、私のアガートラムもメルティとルードにばれる訳で、メルティが不思議そうに聞いてきた。ルードに至っては、かっこいいから自分も欲しいと言う始末。痛い思いをしないとダメと言うと、直ぐに諦めたからよかったよ。
「ねえちゃま、てて、いたいの?」
「もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」
「うん!」
メルティとルードは双子だけど、見て分かるように二卵性だからなのか性格はまるで違う。ルードは男の子らしく活発で単純だけど、メルティは優しくて三歳にしては落ち着いている。これはメルティが女の子っていうのもあるのかもしれない。
「メルティ、おいで。洗ってあげる」
「わーい!」
「ねえちゃま、ねえちゃま! ルードも!」
「じゃあ次はルードね」
リンジーに洗ってもらった私は、今度はメルティを洗ってあける。勿論、メイド達も手伝ってくれる。私だけですると、それはそれでメイドが後で叱られるからね。
「あら、ユーリに洗ってもらってるのね。よかったわね、メルティ」
「あっ、おかあしゃま!」
「つぎは、ルードなの!」
「そう。よかったわね」
そこにフローラお母さまも浴場に入って来た。こんな人数でお風呂に入るのは初めてだけど、我が家のお風呂は広いので、まだまだ余裕がある。
それにしても、フローラお母さまは凄くスタイルがいい。元古い昭和の日本人だった私からすると、そのメリハリのあるボディは、自分の母親ながら見惚れてしまう。
そもそも長い歴史のある貴族家は、美形が多いみたい。サラブレッドのように、優れた血を繋いできたのだから納得だけどね。その中でも、私のアレクお父さまやフローラお母さまは、際立って美形の部類らしい。
カサンドラが言うには、その美しさから王都では有象無象が集まり、その煩わしさからフローラお母さまは領地に引き篭もっているんだって。
王都での貴族同士の付き合いなんかは、先代のルミエール伯爵。ようはお祖父さまとお祖母さまが代わりに行っているらしい。
お二人は、今は王都の学園に通っているローディンお兄さまと一緒に、王都の別邸で暮らしている。
私も十二歳になれば、王都の学園に行くという選択肢もあったんだけど、今回の誘拐騒ぎで無くなるだろう。
フローラお母さまが、あれだけ沢山あった婚約の申し込みが、一件もなくなったと嘆いていたように、貴族の令嬢にとって、今回の事件は致命的だと言える。
私としては、前世で一度結婚を失敗した所為もあり、実はその事自体にそれ程ショックは受けていないのだけど、フローラお母さまのショックは大きかったみたい。
きゃっきゃと無邪気にはしゃぐメルティとルード。私のアガートラムにももう馴れたのか、ペシペシと叩いて遊ぶ二人の相手をしながら、私は自分の将来を考えるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、作者著作の「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
それと「いずれ最強の錬金術師?」の17巻が12月中旬に発売されます。書店で手に取って頂ければ幸いです。
あとコミック版の「いずれ最強の錬金術師?」8巻が、12月16日より順次発売予定です。
また、コミック版の「いずれ最強の錬金術師?」1巻~7巻の増刷されます。
12月中頃には、お近くの書店に並ぶと思いますので手に取って頂ければ幸いです。
これも魔物の血が濃く混じっている所為らしいけど、定期的に回復魔法を掛けているとはいえ、サラブレッドなんてめじゃないスピードで駆け続けれるなんてびっくりね。
ルミエール伯爵家の領都エルローダス。その小高い丘の上に、我がルミエール伯爵家の屋敷はあった。
日本人だった頃の記憶がある私としては、これはもう立派なお城だ。領地が辺境な事もあり、防御力も高い城なのは間違ってはいない。
ただルミエール伯爵領は、辺境だけにその領地は広い。エルローダスも王都には負けるけど、伯爵家の領都としては大きく栄えた街だ。
屋敷は、防衛を考慮した西洋風の城と普段の生活を営む洋館の屋敷からなる。兎に角、無駄に広いのだ。
それこそ、城の中の移動にでも馬車を使う程には広い。
「「「「お帰りなさいませ!」」」」
使用人達の熱烈な出迎えを受けながら門を抜け、本館の前まで馬で乗り付けると、従者が駆け寄って手綱を引いて馬を馬房へと連れて行く。
「お館様。奥方様。お嬢様。ご無事のご帰還お喜び致します」
「よくぞご無事で!」
「セドリック、ガーランド、よく留守を守ってくれた」
代表で出迎えの挨拶をしたのが、執事長のセドリックと騎士団長のガーランド。
セドリックは、年齢不詳だけど白髪をオールバックに撫で着け、綺麗に整えられた口髭がダンディなおじさん。背筋がピンと伸びた姿勢の良さと、内に秘めた魔力量から相当強いと今なら分かる。
その横で私の帰還を涙ぐんで喜んでいるガーランドは、単純な武力ではお父さまを抜けばルミエール領でも間違いなく五指に入る。
二メートルを超える巨漢でありながら、決して鈍重ではなく、手先の技量も優れている。それこそ、王都で王家を護る近衛騎士団の団長よりもずっと強いとお父さまは言っていたと思う。
そのガーランドよりもお父さまは強いんだけどね。
そこに、トコトコと小さな足音が近付いて来た。
「ねえちゃま!」
「ねえちゃまー!」
「メルティ! ルード!」
小さな女の子と男の子が走って来た。私の可愛い双子の妹と弟。メルティアラとルードルフだ。
容姿はメルティは私と同じでお母さま似。ルードはお父さま似。ただ、メルティの髪色は少し私とお母さまよりも金色が強い。私の可愛い双子の妹と弟だ。
「二人ともユーリが居なくなって心配してたからな」
「フフッ、お姉ちゃんが大好きだものね」
「旦那様、奥様。先ずは中に入られては?」
「そうだね。カサンドラ、着替えを頼む」
「用意致しております」
私達を微笑ましく見る、お父さまとお母さまに話しかけたのは、侍女長のカサンドラ。見た目は四十歳くらいに見えるけど、実際の年齢は不明。お祖父さまの代から仕えている筈だから、見た目のままっていう事はないと思うけど、これは突っ込んじゃダメな案件。女性に年齢はタブーなの。
それにルミエール伯爵領は、昔から人族以外も多いから、長寿種族の血が混じっていると、もう年齢なんて分からない。
もう一人の侍女が私に抱きつくメルティとルードを引き取ろうとするも、二人はイヤイヤして離れたくないみたい。
「ユーリお嬢様。お二人を抱いたままで大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ユノス」
そう私に話しかけた。一見、二十歳くらいに見える侍女はユノス。勿論、見た通りの年齢じゃないと思う。だって私が物心ついた頃から変わらないもの。
なんだか、私の周りって年齢不詳の人が多いわね。それに、侍女長のカサンドラや執事長のセドリック、そしてこのユノスも間違いなく強い。前世の武人としての記憶が蘇ったから分かる。ルミエール伯爵家って、ちょっと異常なくらい戦闘能力が高い人がいるわね。
「「ねえちゃま!」」
「はいはい。中に入ろうね」
私は二人を抱っこしたまま屋敷の中へと歩く。少し前までの私なら、三歳とはいえ二人を抱えて歩くなんて難しかっただろう。でも、今の私には三歳児くらい羽のようなもの。全く重くは感じない。
広い玄関ホールを抜けて、そのまま普段家族が寛ぐリビングスペースに向かう。
お客様を迎える応接室は幾つかあるし、大人だけが入れる談話室などもあるけど、家族が普段集まり寛ぐ部屋は決まっている。というか、広過ぎて私もこの屋敷の全ての部屋を知らないのよね。
ユノスに、先にお風呂に入って疲れを癒してくださいって言われたんだけど、メルティとルードが離れない。
「あたちも、ねえちゃまとお風呂はいる!」
「ぼくも! ぼくも!」
ユノスがお風呂を勧めてくれたんだけど、メルティとルードも一緒に入るときかない。
因みに、この世界でお風呂は贅沢なもので、貴族や豪商でないと家には無い。ただ、エルローダスには何ヶ所か公衆浴場が在り、領民が週に二度程度入れる程度の値段で提供している。
これはルミエール伯爵家から、お湯を沸かす魔道具を提供しているから可能な事だ。
「仕方ないわね。じゃあ、今日は母さまも一緒に入りましょう」
「「わーい!」」
「じゃあ僕も「ダメよ。あなたは」っ、君だけずるいよフローラ」
一月ぶりに会った私と離れたくないと駄々をこねる二人に、フローラお母さまが仕方なく自分も一緒に入ると言うと、アレクお父さまが自分もと主張したけど、フローラお母さまからすげなく却下され、しょんぼりしている。
日本なら小さな子供と親が、一緒にお風呂に入るのは当たり前の事だけれど、この世界、特に貴族ではそれはない。ルミエール伯爵家は、辺境の田舎貴族だからその辺は緩めだけど、メルティとルードはともかく、私ももう七歳だからね。男親と一緒なんてお母さまは許さないみたい。
広い湯船に浸かると気持ちいい。この辺は、私が前世日本人だった事もあるのかな。マーサおばあちゃんの家では、汚れは魔法で落としていたからね。
前世の記憶が戻るまでは疑問にも思わなかったけど、この世界には魔力の少ない人でも使える《生活魔法》という便利なものがある。
イグニッション(着火)、ウォーター(湧水)、ライト(点灯)、そしてクリーン(洗浄)にドライ(乾燥)。
この生活魔法には詠唱は無く、発動キーとイメージ、そして少しの魔力で発動するの。
他の属性魔法と違い、余りにもシンプルで簡単なこの生活魔法は、神が万民に与えた祝福だと言われている。
まあ、その少しの魔力も足りなくて発動できない人も多くいるから、公衆浴場は無駄じゃないんだけどね。
我が家のお風呂も浴槽がとても大きい。これも魔道具が有ってこそだ。
貴族や豪商の家には、生活を便利にする魔道具が導入されている。流石に普通の領民は、魔道具ではなく井戸の水を利用している。うちや公衆浴場なんかの大量の水が必要になる場所は魔道具を使用しているの。
「ユーリ様、お背中を流します」
「ありがとう。リンジー」
リンジーは私付きのメイドで、赤髪の可愛い十歳の女の子。
私が拐われた事に責任を感じているみたいで、ユノスに師事したって先程聞いた。リンジーは一つも悪くないからって言ったんだけどね。
それと基本的に、貴族の女性はお風呂ではメイドにお世話してもらうのが常識らしい。前世を思い出す前は、疑問を持たず任せてたけど、今は少し恥ずかしい。でも、自分で出来ると言うとメイドが悲しむのよね。
「ねえちゃま、ててどうしたの?」
「ねえちゃまのてて、かっこいい。ルードもほしい!」
「ごめんねルード。これは痛い痛いしないと付けれないのよ」
「う~ん。なら、いらない。いたい、いたいはイヤだもん」
お風呂という事は、私のアガートラムもメルティとルードにばれる訳で、メルティが不思議そうに聞いてきた。ルードに至っては、かっこいいから自分も欲しいと言う始末。痛い思いをしないとダメと言うと、直ぐに諦めたからよかったよ。
「ねえちゃま、てて、いたいの?」
「もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」
「うん!」
メルティとルードは双子だけど、見て分かるように二卵性だからなのか性格はまるで違う。ルードは男の子らしく活発で単純だけど、メルティは優しくて三歳にしては落ち着いている。これはメルティが女の子っていうのもあるのかもしれない。
「メルティ、おいで。洗ってあげる」
「わーい!」
「ねえちゃま、ねえちゃま! ルードも!」
「じゃあ次はルードね」
リンジーに洗ってもらった私は、今度はメルティを洗ってあける。勿論、メイド達も手伝ってくれる。私だけですると、それはそれでメイドが後で叱られるからね。
「あら、ユーリに洗ってもらってるのね。よかったわね、メルティ」
「あっ、おかあしゃま!」
「つぎは、ルードなの!」
「そう。よかったわね」
そこにフローラお母さまも浴場に入って来た。こんな人数でお風呂に入るのは初めてだけど、我が家のお風呂は広いので、まだまだ余裕がある。
それにしても、フローラお母さまは凄くスタイルがいい。元古い昭和の日本人だった私からすると、そのメリハリのあるボディは、自分の母親ながら見惚れてしまう。
そもそも長い歴史のある貴族家は、美形が多いみたい。サラブレッドのように、優れた血を繋いできたのだから納得だけどね。その中でも、私のアレクお父さまやフローラお母さまは、際立って美形の部類らしい。
カサンドラが言うには、その美しさから王都では有象無象が集まり、その煩わしさからフローラお母さまは領地に引き篭もっているんだって。
王都での貴族同士の付き合いなんかは、先代のルミエール伯爵。ようはお祖父さまとお祖母さまが代わりに行っているらしい。
お二人は、今は王都の学園に通っているローディンお兄さまと一緒に、王都の別邸で暮らしている。
私も十二歳になれば、王都の学園に行くという選択肢もあったんだけど、今回の誘拐騒ぎで無くなるだろう。
フローラお母さまが、あれだけ沢山あった婚約の申し込みが、一件もなくなったと嘆いていたように、貴族の令嬢にとって、今回の事件は致命的だと言える。
私としては、前世で一度結婚を失敗した所為もあり、実はその事自体にそれ程ショックは受けていないのだけど、フローラお母さまのショックは大きかったみたい。
きゃっきゃと無邪気にはしゃぐメルティとルード。私のアガートラムにももう馴れたのか、ペシペシと叩いて遊ぶ二人の相手をしながら、私は自分の将来を考えるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、作者著作の「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
それと「いずれ最強の錬金術師?」の17巻が12月中旬に発売されます。書店で手に取って頂ければ幸いです。
あとコミック版の「いずれ最強の錬金術師?」8巻が、12月16日より順次発売予定です。
また、コミック版の「いずれ最強の錬金術師?」1巻~7巻の増刷されます。
12月中頃には、お近くの書店に並ぶと思いますので手に取って頂ければ幸いです。
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