114 / 180
覚醒編
47話 それからの、リル
しおりを挟む深夜3時
『シオン様・・・・』
『シオン様・・・・・・・』
『ふあぁぁ・・・・なに?』
『不審車両2、今、地下駐車場に入ってきました』
『マジできたか・・・・』
『そのまま監視、人数と、移動ルートわかり次第教えてくれ』
そして、紫音はゆっくりと目を開ける
隣に寝るのは蘭である
先日と同じく、著しく拒否ったのだが
蘭と鈴に無理やり言いくるめられ
昨日と同じく、3人並んで寝ることになったのだ
真ん中に蘭、左右に紫音と鈴が寝ている状態である
その魂年齢は、千歳に及ぶ紫音だが
現在の自分の母親と一緒に寝るのは、かなりの抵抗があったのだ
いや、本当は母親の記憶がないシオンは
ただ単に恥ずかしかったのだが、それもすぐに心地よいものとなる
無理やり、一緒に布団に入れられた紫音
蘭は最愛の子供を片手に1人づつ抱き寄せる
鈴は喜んで、蘭にしがみつくが
紫音は半ば強制的に抱き寄せられたのだが
そこには、母の心音と、母の身体を通して聞こえてくる鈴の心音
その2つの鼓動は、紫音の身体に染み付いた記憶を蘇らせる
生を受け、母のお腹の中で10ヶ月の時ずっと聞いていた鼓動
大きく力強い母親の鼓動と、優しく鳴る、双子の妹の鼓動
それは、紫音の身体に、穏やかさと、安心を思い出させ
紫音は、今日もゆっくりと眠りに付いた
そして、今、リルの念話で起こされたのだ
紫音は、蘭と鈴が寝ている事を確認すると
静かに寝室を出て玄関に向かう
前の紫音は、普段、家では、パンツ1丁にTシャツだったが
母の実家に帰るので、よそ行きの薄い水色のパジャマを用意してあった
恥ずかしながら、そんな姿で家の外に出ることになる
そして、玄関のドアを開けると、その足で非常階段にむかった
リルからの連絡で、車両2、運転手2人は、車で待機中らしい
それは、すでに、コハクの支配下であり、逃げ出すことは不可能であった
ちなみに、ギンは、蘭と鈴を守るため部屋の前で警戒中である
そして、残りの人物は、非常階段から上がってくる5人の男
リルが、不審人物達の会話を聞く上では
井門圭人が居た会社の人間が、新しく闇組織の傭兵を雇ったと
だが、井門と同様、その人物達は蘭の誘拐が目的で
深くまでは、詳細を知りえないだろうと言うことである
その男達を、迎え撃つため、アクビをしながら、歩く紫音
その歩調は、寝ぼけているのか、右や左にと不安定であった
外の非常階段に通じるドアを開け
3月入ったばかりの寒い深夜に
震えながら、両腕を組み柵にもたれかかる
カカン カツカツ カッカ
足音を立てないように、階段を上がってくる男達
だが、シオンの、スキルの感度をあげた耳には
彼らの足音が手に取る用にわかる
一番前で、階段を上がってきた男と、紫音は、出くわすこととなり
その男は、すぐさま、子供の男の子に拳銃の銃口を向け
拳銃を持っていない手で、後続の人間を止めた
「お前達、三千風蘭を誘拐に来たんだよな?」
「・・・・・・・・・」
「まぁ、その様子じゃぁ、忠告は聞いてなさそうだから
なら改めて忠告をしよう、このまま帰るなら、俺は何もしない
でも、歯向かうなら容赦はしないよ
ああ、忘れてた、俺は三千風紫音、蘭さんの子供だ」
5人の男達は、すでに聞いていたのだ
いや、紫音が井門に伝えた、警告のことではない
他組織の人間ではあるが、あの●●山 (やまさんと呼ばれた男)をも凌駕する子供がいると
それは、捕獲対象、三千風蘭の息子、9歳
だが、だれ1人として信じてはいなかったのだが
それを聞いていた男達は、階段でであった、少年に躊躇なく拳銃を向けた
そして、拳銃を持つ男は、軽く脅せば、小便をチビって動けなくなる物と自分を疑わない
視線は、紫音を見据えたまま、ほんの少し銃口をずらし
威嚇射撃を行なった、サイレンサー付き、魔法弾
それは、発砲時、多少の光を伴うが、完全無音で発射された
正しい選択の1つである
任務遂行するため、無駄な話はしない
●●山と、渡り合える格闘術がもしあるとしても
拳銃は回避不能、威嚇ではあるが、もし当たっても死ななければいい
もし死んでも自分たちの知ったことではない、まずは動けなくする事が
最優先と、子供相手でも躊躇なく、男は行動する
他の男達も、同じような行動をしたであろう
井門達と居た寄せ集めの人材とは、プロ意識がちがったのだ
紫音は見ていた、銃口が自分から、そらされるのを
そして、引き金を引く、その指までもをだ
そこから判断する、子供だと思って
威嚇射撃で脅そうという事が、すぐに解る
そんな事で、怯むことは、ありえない紫音は、何の警戒もなく動かない
そして、男の銃口から魔法弾は発射された
実弾と違い、その速度は多少遅い、それでも秒速200mは超えていただろう
発射された瞬間、紫音は意思加速を使い弾道計算をする
まったく、驚いたことに、その弾丸は当たるではないか
紫音の左肩付け根に、この男どれだけ下手くそなんだと
内心びっくりしながら、紫音は身体を右にずらし弾丸を回避する
そのはずであった
弾道計算を済ませた時にはすでに、弾丸は銃口から、1mほど離れていた
紫音の左肩に当たるまで、5mほど
意思加速、数十倍から、一気に数百倍まで上げて対処する紫音だが
その意思に身体はついて来ないのだ、昔の体なら、動ける速度
事実、あの【ザ・ワールド】魔法結界の中では、数倍の動きができたのだ
その感覚のまま、今身体を動かそうとするが、まったく動かないのだ
『うごかねえ!まじか?』
紫音の意思加速での叫びに、リルが反応する
『なにがでしょか?』
『体が、意思加速についてこねぇ』
『私は動けますが?』
事実、リルの身体は、その存在は信じられない速度で動くことができた
それは、10年にも渡る、あの空間で生きて来られた証でもあった
『俺は、動けんなんでだ?』
『さぁ、わかりませんが、此処に魔核がない為か?
その身体はこの世界の物な為か?』
『マジでか!?』
実際に、リルの言葉は当たっていた
あの時は魔核の補助があったため、この世界の体でも数倍の速度で動けていたのだ
あの結界内で有ったことも、大いに関係してもいた
そして、あちらの世界の紫音としては、使い慣れていない、この世界の体では
いきなりの加速に体が付いてこれなかったのだ
そして、威力より貫通に特化させた魔法弾は、紫音の左肩を貫通する
プロである男達は、それを見ても、何一つ表情抱えない
そして、紫音が叫ばない用に取り押さえるため
紫音を撃った男の後ろに居た4人の男は
すかさず行動にでるのだった
左肩を打ち抜かれようが、男たちが迫ってこようが
そんな事は気にしない紫音
そんな事より、想い通り動けない自分の事の方が重大であった
男達が紫音に掴み掛かる瞬間男たちの後ろで静かな呻き声が上がった
近くにいた、2人の男性は後ろを振り返ると
そこには、拳銃を撃った男が崩れ落ちようとしていた
何かの違和感を感じる2人
いきなりの出来事に、崩れ落ちる男に右腕が無いことに気がつかずにいた
それ以上に、振り向いた男の目を引いたのは
崩れ落ちる男の後ろから現れた
空中に浮かぶ、15cmほどの少女
横に広げた右腕の先には、空中に浮く、成人男性の右腕が存在していた
そして、その命をも奪うかの勢いのリル
「シオン様を、傷をつける事は、許されません、許しません
その罪、その命で償いなさい」
「待て!」
その言葉で、リルは動きを止める
2人の男は、後ろから聞こえた、声の主に振り返る
その先には、先ほどのパジャマ姿の子供
足元には、その子供を襲った2人男性が倒れていた
後ろを振り向いた一瞬の合間に
紫音は音もなく、襲ってきた2人を無力化していた
「リル空間魔法が使えるなら、あれに似た事はできるか?」
「あれとは?」
「あれだ、あれ、えぇ~~と、そう、マジックポケットだ
空間にアイテムを収納できるあれだ」
「はい、それでしたら、虚数空間を作れば
そこに、アイテムを保存することは可能です」
「おう、なら、そこに生き物を入れたならどうなる?」
「実行してみないと、どうなるか分かりませんが
多分、そこに入った瞬間から、その存在の時間経過が止まるものと
生きたまま、保存ができると、思います」
「わかった、なら確認も兼ねて。こいつら全員つっこんどけ
死んでも構わん、後で使うから捨てるなよ」
「わかりました」
2人の男達を挟んでしていた、シオンと、リルの会話は終を迎える
2人の男にとってみれば、理解できない事が多かったが
すぐに、紫音とリルに向けて臨戦態勢をとる
それは、紫音とリルを、敵だと認めた証でもあるのだろう
だが、それも無駄と帰す
リルと対峙した男は、気づかないうちに
リルの作った、虚数空間の中に取り込まれる
紫音と対峙した男は拳銃を紫音に向ける
紫音は左肩を撃たれ、左腕の機能は低下し
右腕しか、まともに動かないが、そんなこと紫音にとって些細なことであり
男に向けて、一歩、また一歩と足を進めていく
男は紫音に銃口を向けたまま、何かの威圧感に、額から滝の用に汗をかく
今までに、感じたことのない恐怖に支配され
拳銃の引き金を引くことすら許されずにいた
ある程度まで、近づいた紫音は、軽く右腕を大きく横に振るう
それは、スキルを使った技の1つ
頭を触って脳震盪を起こす技の1段階上の技、空気振動のみで相手の脳を揺らす技
それを今、実験的に使ってみたのだ
だが、男を倒すまでに至らない
少し脳を揺らしたか?目に映る視界を歪めたか?くらいであろう
それを確認した紫音は・・一言
「こんなもんか」
その言葉を聞くと同時に、男は、リルの虚数空間に引きずり込まれていった
「やっぱり、この身体に俺自身が、慣れていない事ってことだな」
「そのようですね」
リルは、すでに、5人全員を虚数空間に取り込み、紫音の側に浮いていた
「リル、地下駐車場の奴らも、たのむ」
「シオン様」
「なんだ?」
リルは、両手を胸の前で組み
上目遣いで、ある想いを紫音に聞きただす
「ご褒美は?ご褒美は無いのですか?
昨日も、今日も、すこしは、シオン様のお役にたてたはずです
それだけでは、ダメなんでしょうか?」
「ん?ダメじゃないが、なんで、ご褒美なんだ?」
リルは、シオンの言葉に
瞳に涙が溜まり
両手で目頭と口を押さる
涙ながらに、シオンに訴える
「昨日から、ずっと我慢しているんです
・・・・・・・・・
10年の長いあいだ、ずっと待っていたんですよ
シオン様が私の事を思い出すことを
シオン様に出逢える事を
シオン様に触れれることを
ずっと・・・・まっていたんです・・・
それなのに、シオン様は
家族を守る為にまた、その命を散らそうとする
やっと出逢えたのに、すぐさま別れとなる私の・・・・
本当に・・・わかりますか・・・・
私の気持ちが・・・
・・・・・・・」
しだいに、声がしぼんでいく、リル
胸にある想いを、一気にシオンにぶつけようとするが
そのままならない感情に、言葉はつまり
両目から大粒の涙を流し
「だいたいですね、シオン様は・・・
シオン様は・・・・・・・
シオンさま・・・・・」
そして、リルは紫音の左肩に飛びつき涙で濡らす
「シオン様・・・・・・
私のシオンさま・・・・
大好きです・・・
愛しています
シオン様
シオン様
・・・・・・・・」
紫音は、リルを揺らさぬよう、非常階段の手すりに、もたれかかる
朝焼けを迎える景色の中
そんな景色を、ずっと眺めながら
泣き続ける少女と同じ時間 (とき)をすごす
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる