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茨城編
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1993年の夏、茨城の空は澄んでいて、青々とした田園の広がりがまるで舞台の幕のようにきらめいていた。
名家の娘ふたり――桐子と美緒は、祖母から譲られた白い洋館のテラスで紅茶を楽しんでいた。
フリルのついたワンピースに、揃いのリボン。どちらも控えめに微笑みながらも、どこか張りつめた空気を纏っていた。
そこへ現れたのが、東京から戻ってきた青年・大吾郎だった。
学生時代の友人であり、二人にとっては幼なじみ。だが視線の行き先は、同じようでいて微妙に違っていた。
桐子は大吾郎の声に安心を覚える。けれど、隣で笑う美緒のリボンが風に揺れるのを見ると、胸の奥がざわつく。
美緒は美緒で、いつも冷静を装うが、カップに映る自分の表情がわずかに緩んでしまうのを隠せない。
大吾郎は気づいているのかいないのか、何気なく二人を見比べ、田園の向こうに目をやる。
「茨城の空は、やっぱり広いな。」
その一言に、ふたりの心も大きく揺れた。
紅茶の香りと、風に踊るフリル。
まだ三角関係とは呼べない、けれど確かに始まりつつある感情の予兆が、静かな夏の午後を包み込んでいた。
名家の娘ふたり――桐子と美緒は、祖母から譲られた白い洋館のテラスで紅茶を楽しんでいた。
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