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和歌山編
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紀伊の海から吹き上げる潮風は、夏の終わりをほんの少し早く告げていた。
1993年、和歌山の名家に育った二人の令嬢――桐子と真澄は、白いフリルとリボンのワンピースを纏いながら、庭先の石畳を踏みしめていた。
彼女たちは幼い頃から姉妹のように育ったが、今は互いに視線を合わせるのをためらっている。理由はただ一つ――桐子の幼なじみであり、東京から帰郷した青年・大吾郎の存在だった。
真澄は柔らかな声で桐子に問いかける。
「……ねえ、桐子。あの方に、手紙を渡したの?」
桐子は少し俯き、薄桃色のリボンを結んだ麦わら帽子を指で押さえた。
「渡せなかったわ。だって……あなたの気持ちを知ってしまったもの。」
遠くから聞こえる蝉の声と、庭の水盤に浮かぶ睡蓮の白が、二人の沈黙を包み込む。
そこへ、大吾郎が縁側から現れる。彼のシャツは風に揺れ、穏やかな笑みを浮かべていた。
「二人とも、昔と変わらないね。和歌山に戻ってくると、不思議と時間が緩やかになるよ。」
桐子も真澄も、一瞬だけ笑みを交わしたが、その胸の内には小さな波紋が広がっていた。
三人の間に漂う空気は、まだ三角関係と呼ぶにはあまりに繊細で、けれど確かに形を帯び始めていた。
やがて夕暮れ。橙色の光が石垣を染め、二人のリボンの影が長く伸びて交わる。
その重なりは、互いの心の奥に秘められた想いを映し出すかのように――。
1993年、和歌山の名家に育った二人の令嬢――桐子と真澄は、白いフリルとリボンのワンピースを纏いながら、庭先の石畳を踏みしめていた。
彼女たちは幼い頃から姉妹のように育ったが、今は互いに視線を合わせるのをためらっている。理由はただ一つ――桐子の幼なじみであり、東京から帰郷した青年・大吾郎の存在だった。
真澄は柔らかな声で桐子に問いかける。
「……ねえ、桐子。あの方に、手紙を渡したの?」
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遠くから聞こえる蝉の声と、庭の水盤に浮かぶ睡蓮の白が、二人の沈黙を包み込む。
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