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新生活の始まり
2話 女の子は知りたがり
しおりを挟むミサキレンは異世界転生した。
この衝撃の事実を半信半疑な状態で受け入れ、レンは今、異世界と思われる場所で出会った少女ーーアイリと共に『光明都市ルーチェ』と呼ばれる街の正門までやって来ていた。
ワイワイワイワイ――
街の中から聞こえる歓声あふれる賑やかな声。街から吹き付ける風に乗せられて香るのは、レンが今まで嗅いだ事の無い香ばしい香り。
アイリと共に巨大な正門を潜り抜け、街の中へ入る。とそこは、出店がたくさん並んだまるで祭りの最中の様。更に、遠くの舞台の上ではひらひらの衣装を着た女性達が優雅に踊っている。
しかし、一番レンの目を疑わせた驚きといえば、人間の服を着た獣が二足歩行で街を歩いて話しをしていること。頭に角が生え背中には白い羽を生やした馬、いわゆるペガサスが鳴き声を上げながら後ろに取り付けられた台車を砂埃を巻き立て走っていることだろう。
「なるほどな…。本当に異世界へ飛ばされたってことか。さっきのアレといい、もはや現実を受け入れるしかないのか…」
その驚愕の光景と真実を目の当たりにして、ここはかつて過ごしていた東アジアの平和な国ではないことは痛いほどに痛感した。
しかし、それにしても騒がしい。街の様子を見るからに何かのイベントをしていることは確かである。
「今日は、なにか祭りでもしてるの?」
「……」
ん?どうやら無視されたようだぞ?それとも聞こえなかったのか?
「あの…アイリさん?」
「アイリさんは無視してます!」
少し怒り気味な口調でアイリは頬を膨らませ、そっぽ向いている。
とりあえず、返事が返ってきたので無視されていない事は確かだ。
「あ、あのー、どうしてそんなにご機嫌斜めなんでしょうか?」
全く心当たりのないレンは、恐る恐る問う。
すると、
「だって、レンが私の話無視するから」
ご機嫌斜めのお嬢様は、ブツブツとはぶてた様子で話した。 頭をかき、困った表情を浮かべるレンは、自分が何をしでかしたのか考えた。
そして結論が出た。
さっぱり分からない。
「えっと……?」
「私が「ナニケンって何?」って聞いても、ずーっと無視してたじゃない!だから、私もレンを無視することにしたの!話しかけないで下さい。無視するんで」
ああ、それか…。この娘はそんなことで怒っているのか。
ようやく不機嫌の理由を知ったレンだが、その話は今の場所がどこか…つまりは何県なのかという意味で聞いたのが、どうやら県など存在しないこの世界では通じなかったらしい。
それに、自分が異世界に飛ばされたという事実を受け入れるのに頭が働かなかった。今は落ち着き、現実を受け入れている。というより、受け入れざるを得ないというか。
そんなこんなで、結局アイリの話を後回しにしていた。
「ご、ごめん、ごめん。あの……アイリが可愛くて、そう!つい見とれてて」
苦しいかもしれないが、咄嗟に浮かんだ言葉を口にする。正直これが通用するか不明であるが……
「なっ…!そっ、そんなこと急に言わないでよ!バカ!」
おっと?これは想像以上に効果抜群のようだ。
被害者のアイリは顔を赤らめ、下を向き、何やら言っている。その声は小さくて聞き取れないが、照れているのは間違いない。
「それで、アイリさん?今は何か祭りをしてるの?」
レンはアイリの顔を覗き込んだ。
白く艶やかな肌に夕暮れ色の紅髪がよく似合っている。付け加えると、薄い紅色の目がその可憐さをさらに際立てている。 変な妄想に取り付かれながらレンは、アイリの顔を見た。
機嫌も直ってる様で、アイリは仕方ないなと肩を竦めて話す。
「もう。今この街では、街の生誕を記念したお祭りをしてるの。言い伝えによると、『燐光の神ルーチェ』がこの街を創造したのが今日で、それを記念したお祭り」
「へぇ、何か面白そう」
「行ってみる?」
好奇心を見せるレンだが、それ以上に隣のアイリが目をキラキラさせてレンを見つめる。 確かにレンも行きたいが、今のこの格好で行くのは少し気が引けた。
こんな可愛い女の子と祭りに行けるなど人生で二度と来ないであろう。そんな貴重な体験を見す見す逃すのは勿体ないが、それ以上に女性に対する礼儀というものがある。
「行きたいけど、服も汚いしまた今度にしようかな。ごめん」
また今度とは言ってもあるかどうかは分からないが、期待を込めて次に繋げようと試みた。 アイリは「分かった」と笑顔で応え、歩を進める。
「あ、そうだ!私の屋敷なんだけど、街の活気から少し外れたところにあるの。そこまで少し歩くんだけど大丈夫?」
「全然大丈夫」
そこから市街地を抜けて、街外れの木々が立ち並ぶ場所へ来ると大きな屋敷が見えてきた。
「あそこが私の住んでいる屋敷よ」
「お、おぉー」
そこは、柵に囲われて、正面には広い庭が広がっており、中世の本などで出てくるような邸宅。お城と言った方が正しいかもしれない。 その風貌は気品のある由緒正しい人々が作り上げ、守り抜いてきた記憶。しかしその反面、どこか寂しい雰囲気を漂わせ、まるで飼い主を待つ子犬の様。
アイリは門を開けて「入って」と促す。
門をくぐり、庭を進んでいく。庭の真ん中にはコンクリートで出来た通路が中央に通っており、その先に屋敷の玄関が建っている。
玄関まで辿り着き、アイリが玄関のドアに手をかけ開けようとした瞬間、内側から勢いよくドアが開いた。
開いたドアは、アイリが手にかけたのとは反対であり、その前に立っていたレンはその勢いで後ろに吹っ飛ばされた。 そして中から現れたのは、ロングスカートのメイド服を着用した女性。薄い緑色の髪をして、そのショートの髪を風でなびかせながらアイリに挨拶をする。
「おかえりなさいませ、アイリ様」
メイド服の女性は深々とお辞儀した。
頭を下げたときに香った香りが、彼女又はこの屋敷の気品というもの感じさせる。 屋敷の全体像とメイド服女性の姿勢や態度から見て、かなり高貴な家柄であることは間違いない。
「ただいま、セルヴィ。屋敷の方は何も問題はなかった?」
「はい。屋敷の方は特に問題はございませんでした。アイリ様もお勤め、お疲れ様でした。しかしアイリ様。護衛もつけずに一人で調査に出かけるのはいかがなものかと思いますが?」
セルヴィと呼ばれたメイド女性はアイリにねぎらいの言葉と合わせて嫌味的な口調の言葉を並べた。
「もう!私だって子供じゃないんだし、護衛なんか居なくったて、一人で出来ます!」
「この際ご無事だったのでいいですが、光魔法をむやみやたらと使うのはおやめくださいと普段から再三言っているはずです。もう少し、アテンシア家の当主としての自覚をお持ちください」
「だって…それは、その…ごめんなさい」
始めは強気だったアイリだが、少しづつ小さくなり、最終的に押し負けた。意外と押に弱い女の子だ。
「ところで、そこに落ちているゴミ…いえ、生ゴミはどこで拾われてきたものですか?」
「おい。何でゴミ扱いだよ。何で生ゴミに言い換えるんだよ」
アイリとの話が終わり、尻もちをついているレンを見下しながら、セルヴィは言った。
その目はまるで、道にゴミが落ちていて、それをため息を付きながら拾う人の目。
「生きているようでしたのでつい、生ゴミかと…。普通のゴミなら捨てるだけで良いですが、生ゴミとなると処分に手間が掛かってしまうので、その辺の区別は重要かと思いますが?」
「うーん。どうして初対面の奴にここまで言われないといけないんだ?」
言われたい放題のレン。
さすがに人生の中で、ここまで言われたことが無いため心を痛めながらも反論する。
「ちょっとセルヴィ!何言ってるの!ごめんなさい、セルヴィは照屋さんだから、初対面の人には緊張して変な口調になっちゃうの」
「そっか、俺は照れてる相手にゴミ扱いされたのね。残りの人生かけて納得できるようがんばるよ」
哀れんだアイリがレンとセルヴィの会話に割って入る。
しかし性格上、少し天然が入ったアイリの弁解になっていない弁解は余計にレンを傷つける。
「本当に…申し訳ございません…。どうしても緊張してしまって…シクシク」
「セルヴィ、泣かないで…。ちょっとレン!セルヴィに謝りなさい!」
急に泣き出したセルヴィを見てなぜかアイリは怒った。
先程まで味方だった筈ののアイリがほんの数秒後に敵になるとは予想だにしていなかった。この綺麗な手の平返しに驚き、困惑の入り交じった複雑な表情を作る。
「いや、でも、シクシクとか自分で言ってる時点で泣いてないよね?」
「いいから謝りなさい!」
濡れ衣を晴らそうとするレンをアイリは、赤く光る瞳で睨む。
「ごめん…なさい…」
アイリに圧倒され、仕方なしに謝罪を行う。
もちろん、謝ったレンに罪の意識など微塵もない。
「いえ、お気になさらず…」
両手で顔を隠しており、表情は分からないが、おそらく笑っているのであろう。
時折、フフッと笑い声が聞こえてくる。
よし!いつか後ろから刺してやる!
「それじゃあ改めて。この人はセルヴィ。屋敷の使用人で、小さい頃から私のお世話をしてくれているの」
アイリは機嫌を戻し、お互いの自己紹介をする。
紹介をされたセルヴィはお辞儀をする。
「それで、こっちが私が森で調査をしているときに会った子で、ミサキレンっていうの」
「森で出会ったですか…。ということはアイリ様の仕掛けた罠に掛り、魔獣に襲われているところをアイリ様に助けていただいた。といったところでしょうか?」
「すげぇ…」
ずばりそのとおりの回答をされ、思わず賞賛の言葉が口から零れ出た。
悔しいが、今までの出来事をここまで短くまとめられてしまい、レンは感心するほかなかった。
「あの…えっ…と、その、私の…せいでは…」
そんなレンをよそに、アイリはおどおどしながら必死に否定をしている。
この期に及んでまだ言い逃れをしようとしているが、この場に居るアイリ以外の2人は既に事の顛末を知っている。
「なるほど、そういうことですか。今の状況を把握しました」
さすが、伊達に小さい頃からアイリの世話をしているだけある。
アイリの表情や、口調などで出来事の経緯を把握するとは、中々の高スペックである。
「でしたらお詫びとして、そちらのゴミもとい、ミサキレン様にはその不浄な御体を綺麗いしていただいた後、おもてなしをしてや…させていただきます」
「どうしてトゲのある言い方しかできないのかな?」
****************************
「ふぅ…」
湯船に首まで浸け、小さく息を吐く。
森で『魔獣』と呼ばれる獣に追いかけられ、今現在に至るまでおそらく1時間ほどしか経っていないであろう。
しかし、レンにとってその1時間の内容はとても濃く、そして危険だった。
その為たかが1時間でも、それが1週間労働をしたような感覚に陥るのは無理もないことかもしれない。
そんな体をこのお湯は、優しく撫でるかのようにレンの体を包み、癒していく。
「きもちぃぃーーーぃ」
あまりの気持ちよさに、つい変な声を出してしまった。
まあいい、どうせこの広い大浴場には俺一人だし。
「あの毒舌女め、俺の異世界でのニックネームをゴミにするつもりかよ。それにしても…この風呂広すぎない?」
レンが入浴している浴場は床一面に大理石のようなタイルが敷き詰められ、入浴場の中央に畳み10畳くらいの広さを誇る浴槽が設置されている。
現在レンは、アイリのご好意でこの広い浴場を使わせてもらっている。
今まで一般家庭にある様な風呂を使用していたレンにとって、こんなに広い浴場を1人で持て余すのは大変贅沢なことであるが、それ以上に落ち着かない。
「そろそろ上がるか…」
名残惜しくはあるが、だいぶ身体の疲れ取れた取れたはずだ。
この屋敷の構造は玄関に入ると映画館ほどの広さの玄関に、赤絨毯が中央の大きな階段に向かって伸びている。
左右には4部屋ずつ設置してあり、風呂場は玄関から入って、左側の一番奥にあった。
リビングは玄関から入って右側の一番手前であるため、少し歩かなくてはならない。何かとめんどくさい構造の屋敷だ。
ドアを開け中に入ると、暖かい空気と共に甘い香りがレンの嗅覚を刺激する。
おそらく香りの基であろうキッチンを見ると、髪を下しエプロンを付けているアイリの姿があった。
服は、さっきまでとは違い長いスカートを履き、温かそうなセーターを着ている。
「あっ、お風呂気持ちよかった?」
「う、うん。ありがと、さっぱりしたよ」
ずっと思っていたことなのだが、この娘は中々可愛い。
変なところで抜けていたりするところはあるが、髪も綺麗で、胸大きく、まさに絵にかいたような美少女である。
今頃になり、アイリを意識をし始めたレンは返答に少し詰まってしまった。
「生ゴ…ミサキレン様、アイリ様の魅力に浸っていないで扉の前で立ち止まらないでいただけませんでしょうか?正直邪魔です」
「さすが期待を裏切らない演出をありがとう。でもそんなんだと、使用人としては失格だよね?」
全身全霊の皮肉を込め、毒舌腹黒女ことセルヴィに言い返す。
その言葉が以外にも彼女の闘争心に火をつけたらしく、ものすごい目つきで睨みつける。
「ほぅ…この私に喧嘩を売るとは大した度胸ですね。ゴミ風情が、この屋敷に入れただけでも感謝するべき事であるにも係わらず、アイリ様のご好意で浴場まで貸したというのに偉そうな態度をとるとは…」
「ねぇ?お前は俺に何か恨みでもあるの?」
「もう!2人とも喧嘩しないの!」
火花を散らす二人を見ていたアイリがすかさず割って入る。
「ふんっ!!」
レンとセルヴィ、2人そろって声を鳴らす。
アイリはそれを見て、「はぁー」とため息をつく。
こうして、戦いは一時休戦となり三人はリビングの中央にある、四角いテーブルに腰を下ろした。
テーブルには紅茶の入ったコップが人数分置いてあり、アイリは、それを一口飲み話を始める。
「それで、レンはどこから来たの?」
質問は単純なものだった。
しかしレンはその質問の回答に戸惑った。
なにせ、別の世界から来ましたなんて、よほどの馬鹿でない限り信じはしないだろう。
かと言って記憶喪失を装うのもまた無理矢理過ぎる。
「俺は…その…、旅をしててね。地球の1番東の方から来たんだ…」
結局切羽詰まったレンは、旅人という設定にはしたもののこれもまた、無理矢理感満載の嘘である。
「ねぇ、レン…。その、チキュウってなに?」
「へ?」
「さっき言ったでしょ?チキュウの1番東から来たって…」
まさかの根本的なところから質問が来るとは…。
予想だにしていない質問にレンは逆に戸惑ってしまう。
「えっと…地球っていうのは俺たちが今こうして立ったり座ったりしているこの大地の事。昼になると日が射すだろ?あれを俺達の国では太陽って呼んでて、地球はその太陽の周りを回っているって考えてるんだ」
合っているか分からないが、とりあえずざっくり説明をしてアイリ達の表情を見る。
この世界へ来る数日前、某○○キペディアで何となく検索してたお陰で一応の難関は越えることが出来た。
実際その時調べたりしていなければ、分かりませんという回答をしていただろう。
「何だかレンの国って凄く難しいこと考えてるんだね…。私もそこで学んでみたいなー」
「アハハ、いつかおいでよ…」
アイリは目を輝かせ、羨ましそうにレンを見つめる。
その目線に、まさかネットで数秒検索して得た浅知恵ですなどとは、いつか言うときが来たとしても言えない。
「この国に来たのが初めてなら国の事について教えてあげる!面白いこと教えてもらった代わりに!」
「是非、頼むよ」
「ここは『王建国家アトランティス』って言って、5つの都市と『王宮』と呼ばれる所からなる国なの。その5つの都市の内の1つがここ、『光明都市ルーチェ』。ルーチェっていう名前は、昔この国を創った5人の神の1人『燐光の神ルーチェ』から採ったもので、神ルーチェは、この都市のみんなが明るく、毎日楽しい時間を過ごしてほしいという願いを込めて都市を創造したといわれてるの」
「なるほど…。今の話からすると、他の4つの都市も神様の名前を採ってて、その神様の願いに合わせた都市になってるってことか」
「驚いた…、レンって見かけによらず理解力がいいのね」
「うん、見かけによらずは余計だけどね」
褒めているのか、馬鹿にしているのか分からないアイリの言葉に、思わずレンはツッコミを入れる。
異世界へ召還されたと知った以上、小さな事では動じなくなった。
それに、以外にも自分が好みの話しの流れのため、理解も早くできる。
「まあ、他の4つの都市については、レンの言ったとおりだよ。大雑把だけど、大まかなところはそんな感じかな、レンから他に聞きたいこととかある?」
「さっき、王候補が何とかって言ってたけど、アイリはこの国の王にでもなるの?」
森でアイリが自己紹介をしたとき、『王候補』という単語を使った。
普通に考えると、この国の次期王となる人物なのだろうけど、そんな人の家に今お世話になっているのだから、確かめておかなくてはならない。
「3日前、現アトランティス15代目国王ビーデルト・ゴエティア王は次期王を4つの都市から候補者を出して、その中から決めると言ったの。おかげで国中の皆が大混乱だったのよ?」
「でも普通、王族の家系が次期王をするもんじゃないのか?」
「そう、ビーデルト王は建国から1500年の歴史上異例の判断を下したの。そして数日して次の王令が出されたの…」
「次の…?」
「王令の内容は、『鉄鋼都市アドムから『アイザ・ファルティマ』。透水都市から『シール・ラサ』。緑園都市から『ベルテ・コートラ』。金商都市から『ザハル・ネゴティウム』。光明都市ルーチェから『アイリ・アテンシア』を王候補として、王建国家アトランティス16代目の王を決定する。』そういう内容だったわ」
「各都市から1人ずつ…。選ばれたのは皆貴族って感じか?」
「うーん、皆貴族っていう貴族では無いの。共通点も特にないし、王様がどうして私達を選んだのかそして、狙いが何なのか誰も知らないの」
「なるほどねぇー。王のみぞ知るってやつだな…」
「ねぇレン」
「なんだい?アイリ君?」
話しを中断するようにアイリは手を挙げ、レンの名を呼ぶ。
それにつられたレンは場の空気にのり、若手教師役を演じる。
「さっきから私達の知らない言葉ばっかり遣うけど、それもレンの国の言葉なの?」
「ふむ、そうだね。ちなみに『王のみぞ知る』とは王様だけが知っているって言う意味で、本来は『神のみぞ知る』が正しい使い方なのだよ」
「へー!レンの国って面白いね!他にはどんな言葉があるの?」
「まぁ俺の知ってる範囲の言葉なら何でも教えられるけど…知りたい?」
若手教師はアイリに何の反応もされそうにないのでここで辞任することにした。
そんな中、アイリはキラキラした目でレンを見つめる。
目を見れば分かることだが、アイリ・アテンシアという人間は知識欲の塊だ。
恐らく現在の小中高の学校にさえ、ここまで知りたい欲丸出しの子は居るまい。
「しっ、仕方ないなぁー、特別にレン先生が君達の知らない異文化について教えてあげよう!」
頼られることに不慣れなレンは照れながら胸を張って教師面をする。
「やったー!お願いします!レン先生!やったねセルヴィ!何聞こっか?」
「そうですね、では私は…」
先程まで静かに話しを聞いていたセルヴィは、はしゃぐアイリにつられてか少し楽しそうな表情でお茶を少し啜り、一息吐いて閉じていた目を開けた。
「屋敷の中に見知らぬ生ゴミが入り込んで、偉そうにしているときの対処法を是非」
「よし!お前にはまず、モラルについて学ばせてやる」
この後、ミサキレンによる道徳に関する講義は体感時間で約2時間程続いた。
知りたい一心の優等生アイリは目を輝かせ、飽きることなく話しを聞いてくれた。
一方、1番に講義を聞かせてやりたいセルヴィは開始0.1秒で寝るという記録的な事をしてくれた。
流石に開始直後に寝るとまでは予想出来ていなかったため、レンはただ唖然と涎を垂らして寝るセルヴィを見守ることしか出来なかった。
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