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閉ざされた街
17 生存者達
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女将が手にするランプの灯かりを頼りにダレス達は階段を降りて一階の広間を目指す。
宵の口を迎えた頃だが〝白百合亭〟の中は窓も含めて完全に閉鎖させているため、昼間でもランプの灯がなければ移動するのも一苦労だろう。
「ここが広間だよ。見張り以外は皆ここに集まっているはず。じゃ、私達は言われたとおり、この子とバリケードの様子を再確認してくるよ!」
「ああ、俺達の力が必要になったら呼びに来てくれ」
表面に花をモチーフにした彫刻が施された扉を指差しながら女将はダレスに告げると、そのままミシャとクロットを連れて廊下の奥に消えて行った。
「ところでアルディア・・・俺の判断で色々と進めているが、不満はないか?」
二人きりとなったダレスは一度アルディアに確認を取る。これまで成り行きでリーダー役を果たしている自分ではあるが、本来のリーダーは彼女だ。相談もせずに先に進めて不満を持っているのではと心配したのだ。
「いえ、大丈夫です。経験豊富なダレスさんの判断に期待しています。これからもお願いします!」
だが、アルディアは満面の笑みで答える。それは妥協からの選択ではなく、心からダレスを信頼していると言葉以上に語っていた。
「そうか。では、このまま俺のやり方で進めるとしよう!」
一部に問題があるとはいえ、本質的には純粋なアルディアの信任を得たダレスは、改めてハミル救出に全力を尽くすことを誓う。
ユラント神の思い通りの展開となっているような予感もするが、美女にここまで頼りされては男としての存在意義に関わるからだ。
『俺もまだ若いな・・・』
ダレスは心の中で呟くと、今やるべきことに集中した。
「失礼する」
自分とアルディアとの確認を終えたダレスは最低限のあいさつとノックとともに広間に足を踏み入れる。
廊下の暗さとは対照的に中はランプの光で煌々と照らされており、部屋の隅々までがはっきり見渡せることが出来た。
広間には所々にソファーが置かれており生存者達、多くは若い女性達が幾つかのグループに分かれて寄り添うように座っていて、広間に入って来たダレスとアルディアに不安な視線を送っている。エイラとノードの姿もあるが、この二人も緊張しているのには変わりなかった。
本来この広間は〝白百合亭〟にやって来た客達をもてなし、娼婦達が自分を売り出すための場所だったはずだが、今はどこか閑散としており中が間延びして見える。おそらくは備わっていた家具の多くを外に持ち出してバリケードの材料にしたためだろう。
そして広間と同じように空いた心の不安を埋めるために、彼女達はランプの灯かりに頼り親しい者同士で寄り添っているのだ。
「俺達はハミルを救うために来た。そのためにあんた達から話を聞いて情報を集めたい。順番に聞いて回るから協力してくれ!」
床に敷かれている毛足の長い絨毯の踏み心地を感じながら、そんな生存者達にダレスは訴え掛ける。
既にエイラから事情を聞かされているのか、彼女達の表情に大きな変化は見られない。助けに来たと言ってもたった三人である。街を襲っている怪物の数からすれば焼石に水と思えたのだろう。
それでもダレスの堂々とした態度は彼女達の不安を和らげる効果があったのか、広間に流れる張り詰めた気配は徐々に緩くなっていた。
「・・・怪我や病気、または体調を崩している方がいたら、遠慮なく申し出て下さい。微力ながら私が癒して差し上げましょう!」
次いでアルディアが皆に訴えることで、広間の空気は更に軟化する。
実は正式な神官でも、怪我を癒せる神の奇跡または神聖魔法を扱える者はさほど多いわけではないのである。特に病気まで癒せるとなると、それは高位の司祭の証でもあった。アルディアの言葉はそれほどの徳の高い神官が〝外から助けに来た〟ことを意味するのだった。
宵の口を迎えた頃だが〝白百合亭〟の中は窓も含めて完全に閉鎖させているため、昼間でもランプの灯がなければ移動するのも一苦労だろう。
「ここが広間だよ。見張り以外は皆ここに集まっているはず。じゃ、私達は言われたとおり、この子とバリケードの様子を再確認してくるよ!」
「ああ、俺達の力が必要になったら呼びに来てくれ」
表面に花をモチーフにした彫刻が施された扉を指差しながら女将はダレスに告げると、そのままミシャとクロットを連れて廊下の奥に消えて行った。
「ところでアルディア・・・俺の判断で色々と進めているが、不満はないか?」
二人きりとなったダレスは一度アルディアに確認を取る。これまで成り行きでリーダー役を果たしている自分ではあるが、本来のリーダーは彼女だ。相談もせずに先に進めて不満を持っているのではと心配したのだ。
「いえ、大丈夫です。経験豊富なダレスさんの判断に期待しています。これからもお願いします!」
だが、アルディアは満面の笑みで答える。それは妥協からの選択ではなく、心からダレスを信頼していると言葉以上に語っていた。
「そうか。では、このまま俺のやり方で進めるとしよう!」
一部に問題があるとはいえ、本質的には純粋なアルディアの信任を得たダレスは、改めてハミル救出に全力を尽くすことを誓う。
ユラント神の思い通りの展開となっているような予感もするが、美女にここまで頼りされては男としての存在意義に関わるからだ。
『俺もまだ若いな・・・』
ダレスは心の中で呟くと、今やるべきことに集中した。
「失礼する」
自分とアルディアとの確認を終えたダレスは最低限のあいさつとノックとともに広間に足を踏み入れる。
廊下の暗さとは対照的に中はランプの光で煌々と照らされており、部屋の隅々までがはっきり見渡せることが出来た。
広間には所々にソファーが置かれており生存者達、多くは若い女性達が幾つかのグループに分かれて寄り添うように座っていて、広間に入って来たダレスとアルディアに不安な視線を送っている。エイラとノードの姿もあるが、この二人も緊張しているのには変わりなかった。
本来この広間は〝白百合亭〟にやって来た客達をもてなし、娼婦達が自分を売り出すための場所だったはずだが、今はどこか閑散としており中が間延びして見える。おそらくは備わっていた家具の多くを外に持ち出してバリケードの材料にしたためだろう。
そして広間と同じように空いた心の不安を埋めるために、彼女達はランプの灯かりに頼り親しい者同士で寄り添っているのだ。
「俺達はハミルを救うために来た。そのためにあんた達から話を聞いて情報を集めたい。順番に聞いて回るから協力してくれ!」
床に敷かれている毛足の長い絨毯の踏み心地を感じながら、そんな生存者達にダレスは訴え掛ける。
既にエイラから事情を聞かされているのか、彼女達の表情に大きな変化は見られない。助けに来たと言ってもたった三人である。街を襲っている怪物の数からすれば焼石に水と思えたのだろう。
それでもダレスの堂々とした態度は彼女達の不安を和らげる効果があったのか、広間に流れる張り詰めた気配は徐々に緩くなっていた。
「・・・怪我や病気、または体調を崩している方がいたら、遠慮なく申し出て下さい。微力ながら私が癒して差し上げましょう!」
次いでアルディアが皆に訴えることで、広間の空気は更に軟化する。
実は正式な神官でも、怪我を癒せる神の奇跡または神聖魔法を扱える者はさほど多いわけではないのである。特に病気まで癒せるとなると、それは高位の司祭の証でもあった。アルディアの言葉はそれほどの徳の高い神官が〝外から助けに来た〟ことを意味するのだった。
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