スレイヤー・ギルドの非承認戦闘員

月暈シボ

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その11

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「予定通り、この街で仲間と合流します。仲良くしてね」
 ジェダの領地まで一日と迫った最後の宿場街に入ると、ミリアは隣を歩むサージに改めて告げた。
「ああ・・・」
 それに対してサージは義務的に答える。新たな仲間の加入に対して彼自身は特に望んでいない。何しろ戦力的には自分一人で充分と判断しているからである。案内役はミリアが一人いれば充分なのだ。それでも明確に否定しないのは、敵に関する情報は多いほど良いと理解しているからだ。
 敵地ギリギリに位置するこの宿場街には、以前からギルドが派遣したジェダを見張る斥候が送られており、ミリアはその者達と合流して最新情報を入手するつもりなのである。

「ここよ!」
 生返事ではあったが、サージから約束を取り付けたミリアはそのまま街の裏通りを目指す。やがて小さな商店の前で脚を止めると彼に教える。看板からすると、そこは薬屋と思われた。
 これまでの旅路では宿に逗留して他の客からコンサーラ領に関する噂話を仕入れていたが、以前から斥候が隠れ家としている拠点があるなら、わざわざ宿を取る必要はない。直接訪れて、合流するまでだ。
「いらっしゃいませ・・・ああ!」
 早速とばかりに店に入ったミリアは来店の挨拶を告げる店番の少女に向って、例のハンドサインを示す。それまでも愛想笑いを浮かべていた少女だが、ミリア本人であることを確認したことで更に口角を上げて歓迎の情を表わした。
「お久しぶりです。マイスターミリア! ところでそちらは?!」
 旧知のミリアに対しては親愛の情を隠さなかった少女だが、後から店に入ったサージには警戒の視線を送り詳細を問う。
「彼は新たなレアリングとして私が推薦しているサージです。正式にはまだギルドメンバーではありませんが、事実上の仲間として接して下さい。私が保証します」
「正式にはまだ? レアリングではない・・・でも仲間?!」
 少女としては異例な説明だったのだろう。目を大きくしながら、サージとミリアの顔を見比べて再度問い掛ける。
「ああ、ジェダを倒さないとギルドに入れて貰えないらしい」
「ええ!!」
 困惑する少女にサージが皮肉を込めて答えるが、それは更に彼女を窮させる結果となる。何しろ、彼女は打倒ジェダを実現させるためにこの街に送り込まれていたのである。それは宿願とも言える任務が成就することを意味していた。
「ええ、いよいよ決行する時が来たのです! 詳しいことはこれから説明します」
「時が来た?! わ、わかりました。では、まずは奥へどうぞ・・・荷物を降ろして休んで下さい。私は買い物に出ている姉を探して来ます!」
 ミリアが口にした決行の意味だけは正しく理解したのか、少女はミリア達を店奥の台所と食堂を兼ねた部屋に案内すると、本人は店外に出て看板を閉店とし、そのまま通りの先へと早足で消えていった。

「ここはリーザ達姉妹二人で切り盛りしている薬店なの。遠慮しないで座って」
 ミリアは旅装を解くと、サージにも薦める。
「なるほど、流行らない薬店を隠れ蓑にしているわけか・・・」
「ええ、薬店なら護衛や運搬役として傭兵がやって来ても誰も怪しまない。それでいながら、一応は堅気の店として振る舞うことが出来る。丁度いいのよ」
 どうやらこの薬店は先程の少女リーザとその姉の二人で運営しているらしい。ジェダの勢力範囲からは外れているとはいえ、相手が相手である。正体を隠すには当然の配慮と言えた。
「では、姉妹が揃うのを待つとしよう」
 納得したサージもマントを脱いで椅子に腰を降ろす。大して疲れてはいないが、彼はつまらない遠慮をする男ではなかった。
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